ここは全年齢対応の小説投稿掲示板です。小説以外の書き込みはご遠慮ください。

Fate/Heroes of mythology〜神域追想呪界〜 プロローグ:レイシフト
作者:黄昏之狂信者   2017/12/18(月) 01:20公開   ID:/jW8DXujk8w
人生の終焉が訪れようとしている。

私の臥している床の足元には神官達が平伏し、家族すら伏している。
そんな所で伏していないでもっと近くに来て欲しいと思うが、今や声すら出せない。
神官や巫女達が私を『生き神』のように扱うのは解らなくもないが、家族までそんな態度とはどうなのだろうか。
少し厳格にし過ぎてしまったのか・・・
下らない感傷が胸裏をチラリと横切るがすぐに私は他の事を考えだしてしまう。
私は死して後は『英雄』として、『勇者』として祀られるそうだ。
それに不服はない。
だって『私達』はそう在ったのだから。
あの地獄の戦いを共に駆け抜けた、私の人生最高の戦友達。
遂に会う事は出来なかったが、それでも確かに友だった諏訪の■■・・・
そして我が生涯の親友■■■・・・
私達が私達の時代に出来る事は総てやり遂げた。
そのはずだ。
悔いは・・・ない・・・はずだ・・・
在ってはならない・・・
そうでなければ■■にどう報いれb・・・

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

ああ、ならば『そう』すればいいのか。
それが報いになるのなら・・・
それが償いになるのなら・・・
それが救済になるのなら・・・
私は・・・




新たな亜種特異点の発見。
それが報告されたのは下総国を修正し終えてほとんど直後だった。
「今回の特異点は相当特殊と言わざるを得ないね」
ダ・ヴィンチが何とも言えない複雑な顔をしている。
「今回は何がどう特殊なんですか?」
そう聞いたのは藤丸立香。
魔術師としては未熟と言われながら様々な英霊と縁を結び、グランドーオーダーを完遂した少女である。
「おや、来たかい立香。うん、今回はね、時代は西暦2087年、未来の完全に人類史の正史から外れてしまった剪定事象の世界で発見されたんだ」
剪定事象。
それは正史とは大きく掛け離れた歴史を辿った結果、可能性を失い滅びて逝く定めの並行世界の事。
「剪定事象であればこちらには直接の被害はないのでは?」
既にオペレーターとして待機してくれていたマシュが疑問を呈した。
「本来ならばここまで正史と掛け離れてしまえば何の問題もない筈なんだがね。『遡って来ている』んだよ」
「遡る?」
「そう、本来なら一度辿った歴史は逆行なんて出来ない不可逆のものだ。まぁ個人で時間遡行は出来ないでもないが・・・それはもう魔法だ。にも拘らず、今この特異点と化した並行世界は自身が辿って来た歴史を自身の時間軸はそのままに、丸ごとそのまま遡行して来ている」
「えっと、つまりそれって・・・」
「うん、例えたら撃った弾丸がそのまんま砲身に向けてすっ飛んで来ているようなものだね」
「そのまま遡行し続けるとどうなるんですか?」
事態を今一つ飲み込み切れない立香とマシュに、ダ・ヴィンチは最悪の結果を伝える。
「このままだと、この並行世界は自身が分岐する事となった事象にまで遡り・・・つまり過去に激突する。そうなると、同一時間軸上に過去と未来が重なって存在するという矛盾が生じるわけだ。その結果、矛盾の解消の為に抑止力は恐らくどちらも消滅させてしまおうとするだろう。そうなればその時点から先の時間軸は消滅し、それに伴いその先で起こったであろう剪定事象も編纂事象も完全に消滅し、歴史が完全に『巻き戻る』事になる」
それはゲーティアが為そうとした事よりも小規模の歴史改変かも知れない。
だが、それは許されて良いモノではなかった。
「それは・・・危険な状況ですね」
マシュも立香もようやくその危険性を理解し事の重大性を理解した。
「それで、この都度のレイシフトなんだけどね、現在進行形で遡行し続ける特異点に行く事になるから、そもそもレイシフトさせた君の存在座標を特定する事が極めて難しくてね。最悪存在証明が出来ず、君は消滅する可能性がある」
「っ!? それは危険です。そんな危険な所に先輩を送るなんて出来ません!」
余りにも危険なレイシフトにマシュが非難の声を上げるがダ・ヴィンチは構わず続ける。
「だから、今回は『縁』を使う」
「縁?」
どうしてそんなモノが使用されるのか解らず困惑する二人にダ・ヴィンチは説明を続ける。
「どうもこの特異点は特定の存在を拒み、特定の存在を積極的に受け容れる法則があるみたいでね、天と星に属する性質を有さない事、かつ日本古来の英霊であり神性を有さない事。そしてこの特異点と『縁』の深い英霊である事。この三点をクリアした英霊と一緒にレイシフトしてもらう事で、特異点が受け入れた英霊と立香君との魔力パスという『縁』を元に存在を計測、証明する事になる。だから今回は、現地で英霊を召喚するのではなく、同行する英霊も一緒にレイシフトしてもらう事になる。もう既に候補者が決定しているから、確認してくれたまえ」
ダ・ヴィンチはそう言ってリストを立香に渡した。
渡されたリストには三名の英霊が記されていた。

アーチャー・巴御前
アサシン・酒呑童子
ライダー・牛若丸

「あの・・・地、人の属性の英霊は他にも、もっとおられるのではないですか?」
リストを見てマシュが素朴な疑問を呈した。
確かに他にも日本の英霊で地、人に属する英霊はこの他にもいる。
宮本武蔵や織田信長、沖田総司など、リストに挙げられた英霊と同等、場合によってはそれ以上に強力な英霊もいるのだ。
それをリストに入れていないなど戦力的に『勿体ない』というものだ。
「ああ、だから『縁』を使うって言っただろう? そのリストに入っている英霊は特異点との『縁』が不思議と他の英霊より強いんだよ。カルデアとしては全員をレイシフトさせるほど余裕はないし、かといって強力だが『縁』が薄くて確実性に欠ける英霊を連れていくよりは『縁』の濃い英霊を連れて行って成功率が上がる事を重視しているんだ」
「なるほど・・・」
ダ・ヴィンチの説明で納得する立香と違い、マシュは更に疑問点を見つけダ・ヴィンチに聞く。
「そう言えばなんですけど、酒呑童子さんは確かに地に属する英霊ですけど神性スキル持ちですよ? 大丈夫なんですか?」
「ああ・・・うん。酒呑童子君はどうも例外的に拒絶する法則に弾かれずに入れる様なんだ」
「そんな例外が起こり得るのですか?」
神性スキル持ちを拒絶するという性質を有する特異点が例外的に酒呑童子のみ受け入れるというのは余りにもおかしい。
そう問うマシュにダ・ヴィンチも少々困惑気味に答える。
「解らない、というのがその質問への答えだよ。何故酒呑童子君のみが受け入れられるのか、そこに我々は明確な答えを見出せなかった。だからこれは仮説になるんけどね、酒呑童子君は法則より『縁』が勝っているんだろう。とにかく、酒呑童子君は他の英霊よりもこの特異点へのレイシフトの成功率が高い。僅かでも成功率を上げる為なら、私はこの不思議をこの際無視してでも挑むべきだと思う」
「先輩は・・・どう思われますか?」
「確率が上がるのなら、挑むべきだと思う」
今回のレイシフトは移動を続ける特異点へのレイシフトとなる。
僅かな不確定要素が混じっている状態でのレイシフトを不安視するマシュの問いに立香はダ・ヴィンチの提案を受け入れる姿勢を示した。
「よし、ならレイシフトに入ってもらっていいかな? 事は一刻を争うんだ」

〜霊子匿体前〜

「マスター・・・」
霊子匿体に入る直前、巴御前が立香を呼び止めた。
「ん? どうしたの?」
「私は貴女の家臣です。正確には私ではありませんが、下総での御無礼、この一戦にて雪ぐ所存です。存分に御使い潰し下さい」
「えーっと、御前。アレは貴女じゃないよ。アレは御前の姿を模しただけの別物だった。だから御前には汚名も無礼もないんだよ。気負わないで気楽に、ね?」
下総国での巴御前は、芦屋堂満の外法で既に消滅していた。
在ったのは巴御前の殻を被ったナニカでしかなかった。
そう断言する立香に巴御前は深々と頭を下げる。
「私は良き主君に見える事が出来ました・・・我が忠義は義仲様に捧げております。が、それと同じほどの忠誠を貴女に捧げましょう」
そう言ってから巴御前は自分の霊子匿体に入って行った。
「主殿、主殿」
今度は牛若丸が恐る恐る近寄って来た。
「今度は牛若丸? どうしたの?」
「その・・・私は巴殿と御一緒しても良いのでしょうか? その・・・私は巴殿のその・・・」
牛若丸は元服して後、巴御前最愛の人、源義仲を討った者。
そんな自分が彼女と一緒に行く事で暴走させてしまいはしないか、と問う牛若丸に立香は返す。
「大丈夫。御前は強い人だよ。戦場で私事を持ち込むほど未熟な『侍』じゃないから」
「っ!? ・・・そう・・・ですね。私は巴殿を謗っていたようです。平にご容赦を」
そう言い牛若丸は霊子匿体に飛び込んでいった。
「お嬢はんは、侍手懐けるのがお上手やなぁ」
酒呑童子もまた、声を掛けて来る。
「酒呑・・・よく同行してくれる気になったね?」
酒呑童子は下総の一件以来、総ての任務を『興が乗らない』と断っていた。
「今回はなぁ、どうも呼ばれとるような・・・行かなならへんような気がしてなぁ。あぁ、不思議やねぇ。こないに興が乗るんは久しぶりやねぇ」
そうケラケラ笑いながら酒呑童子もまた霊子匿体に入った。
「先輩、そろそろ・・・」
「あ、うん。解った」
立香がマシュに促され、自分の霊子匿体に入り、間もなくレイシフトが始まった。


■作家さんに感想を送る
■作者からのメッセージ
勇者であるシリーズにこの都度思いっきり嵌まってしまいまして、Fateとクロスさせてみようと思い立ったので書いてみました。文章力が無いもので、分かり辛い表現が多いかも知れませんがどうぞよろしくお願いします。
テキストサイズ:7496

■作品一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集
Anthologys v2.5e Script by YASUU!!− −Ver.Mini Arrange by ZERO− −Designed by SILUFENIA
Copyright(c)2012 SILUFENIA別館 All rights reserved.