幕間〜ノアと鬼一との邂逅〜 |
作者: さく 2016/05/30(月) 01:59公開 ID:AWJHGXqo7aA |
注意:本編はなるべく配慮して書いていますが、若干のネタバレ要素を含みます。 そのため、乱れ雪月華未プレイの場合はご注意ください。 鬼一はただならぬ気配に目が覚めた。 ──賊か?否、そういう類のものであれば、とっくにこちらに攻撃を仕掛けているはずだ。 そう思い直し、そう思い直し注意深く部屋を出る。中庭にその気配の主が立っていた。 その姿を見て、絶句した。 金髪の可憐な少女だった。 月明かりに照らされた少女は、黒いドレスのような衣服から除く白い肌を強調させていた。 その刹那、一瞬で間合いをつめて鬼一の顔を覗き込んだ。 即座に空蝉の術を発動し、間合いを取る。 無言で生剥、逆剥を両手に構えると、印を結び呪文を唱える。 少女は興味深そうに、その一連の動作を見ていると、次の瞬間、もう一人の鬼一が現れ──実際には、分身したというべきか?──少女に襲い掛かった。 「へぇ」 感嘆の声を漏らす少女は依然余裕すら見える。 ギン、と金属音がし、鬼一は驚愕の表情をしながらも、数歩後退し、間合いを取る。 この女、今、剣戟を手の平で受け止めた?? 「待ちなさい、あなたと剣を交えるつもりはない。私の言葉はわかるかしら?」 少女が口を開いた。日本語?彼女は日本語を操れるのか? 「どういうことだ。」 「この時代の手練れの気配を追ったらここにたどり着いた。といって信用できるかしら?」 この時代?何を言ってるんだこの女は。 「私は時空剣ノア。あなたは理解できないかもしれないけど、時空を超えることができるのよ。」 鬼一は絶句しつつも、ノアの言葉を理解しようとした。 以前、弟がそういうゲームか漫画にはまっていた気がする。タイムトラベルとかファンタジーとか、どちらにせよフィクションの世界だ。現実的ではない。 「…真顔で何を言っているんだお前は。」 そう言葉をつなぐのが精一杯だった。 「そうね。まぁ、こういうことよ」 その瞬間、ザクっという音とともに、ノアは消失し、その場に一振りの禍々しい剣が突きたてられていた。 ノアの着ていたドレスと同じ闇の色に染まった剣だ。 手に取ろうとした刹那、剣は消失し、背後にノアが出現する。 「悪いわね、私、勝手に触られるのは好きじゃないの。ああ、でも…あなたが私の眷属になるというならば考えてもいいわよ?」 「お前のような人外に仕える気はない。」 「そう。残念ね。これから大きな戦いが控えているから手駒は増やしたかったけれどね。」 「そういう理由ならここに来た理由も納得ができる。無論言いなりになる気もないが。」 「あなたもここにいる女性たちも実践が積めていいと思ったのだけれど。」 「口説くのならば彼女らに直接言えばいいだろう。」 「あら、いいのかしら?」 「彼女らは修行の身だ。実践経験も修行のうちだと考えれば問題はない。」 「ふぅん。じゃぁ、少しは芽があるかもってことね。あなたほどじゃないけど、2人ともなかなかの手練れだから、少しうれしいわ。」 「こんな夜中ではなければ警戒はされないだろう。」 ふっと鬼一の口から笑みがこぼれた。 「そう、じゃぁ、あなたにひとつ伝えておいてあげるわ。」 そう言って、ふわりとノアは鬼一の横にたって、耳元でささやく。 「あなた、…なのね…。それじゃ。私は行くわ。」 ノアの体はふわりと宙を飛び、気配もその場から消えていった。 その言葉を聞いて鬼一は顔に手を当てながら、柱にもたれかかった。 たぶん、今自分はひどい顔をしている。そうだ。こんなことは考えてなかったからだ。 そうだ…満月に、満月には伝えないと。 そう思い、満月の部屋を目指す。そしてふと、気づく。 ──なぜ、満月は出てこない? おかしいではないか。自分はノアの異質な気配で目が覚めた。満月も気づいて当然ではないのか? それとも、満月を溺愛するあまり、彼女を過大評価しすぎたか? 満月の部屋には、彼女の姿はなかった。 鬼一は心がざわつくのをとめることはできなかった… |
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