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贋作トリップ・トラップ・トルーパー 栄光の北アフリカ戦線
作者:M4A3E4   2010/08/11(水) 22:54公開   ID:TPeaOk42jzU
スオミフム氏に捧ぐ

「どんな具合?」
「あきまへんわ。あと少しで飛行可能になりまっけど、次空間航行が出来るんはいつになるやら…」
スライド式のハッチを潜って入ってきた宇宙人は、ハルナの問いに肩をすくめた。
ハルナの隣りではすっかり退屈したマヤが、シートに体を預けて可愛い寝息をたてている。
金剛榛名(コンゴウ ハルナ)と鳥海摩耶(チョウカイ マヤ)、二人の少女が偶然UFOの墜落に巻き込まれ、時空の迷子となったのは随分と前のことだ。
いろいろな時代でいろいろな騒動を起こしてきた二人は、今現在はいつの時代のどこともつかぬ、見渡す限り岩と砂が連なる荒涼とした大地に不時着したUFOの中で、ひたすら暇を持て余している。
「まあ頑張ってね」
「へーへー」
かたちばかりの激励の言葉をかけるハルナに宇宙人が気のない返事を返したとき、何者かの接近を告げる警報が鳴り響いた。
宇宙人の操作でスクリーンが点灯すると、砂漠を行進するデザートイエローに塗られた古めかしい戦車の一隊が映し出される。
「イタリア軍だわ…」
不味いことになったと舌打ちするハルナ。
修理が終わるまではシールドを張れず、飛んで逃げることも出来ないUFOは座り込んだアヒルも同然、しかも相手は真っ直ぐこちらに向ってくる。
「私が時間を稼ぐしかないわね」
ハルナはロッカーからパルス銃を取り出した。
起動ボタンと安全装置とエネルギーパックを確認すると格納庫のハッチを開け、反重力バギーに跨りUFOを飛び出した。

1942年の夏、ドイツ・アフリカ軍団は西部砂漠における一連の戦闘でイギリス第8軍を一掃し、アレキサンドリアの入口まで迫っていた。
ロンメルはスエズ運河と中東の油田地帯まであと一押しのところにいた。
そして向うところ敵なしのドイツ軍の傍らには、兵力では上回っているもののほとんど添え物扱いのイタリア軍もいた。
8月のある日、第132アリエテ師団第8連隊に所属するエンニオ・マンスッティ中尉は、M13型戦車4両からなる戦車小隊を指揮してシジ・バラニ−マルサ・マトルー間の内陸部を移動していた。
13トンの鉄の箱に男4人と武器弾薬を詰め込んだうえ、エアコン無しで砂漠を走る乗物はもはや拷問機械である。
せめて風に当たろうと戦車のハッチから上半身を突き出し、双眼鏡で前方を監視していたマンスッティは、陽炎の向こうから豊満な肢体に肌も露わなボディスーツを着用した東洋系のハンサムな美女が、宙に浮いたオートバイと芝刈り機の合いの子ような乗物に跨り、右手にライフルを携えて接近してくるのを見て思わず自分の目を疑った。
ハルナは猛烈なスピードでイタリア戦車の隊列に突っ込むと、すれ違いざまにパルス銃の引き金を引いた。
高出力麻痺パルスは戦車の装甲に浸透し、中の乗員を一撃で無力化する。
フィアット製の中型戦車は煙もあげず火も吹かず、ゼンマイの切れた玩具のように動きを止めた。
ヒット・エンド・ランに徹するハルナは、一台を行動不能にすると全速で離脱を図る。
風に靡く長い黒髪、砲弾型に突き出した二つの胸の膨らみとほどよくくびれたウエスト、キュッと引き締まったスポーティーな尻。
一瞬の交錯でそれらを見てとったマンスッティは、砲手を務めるカルロ・シミに怒鳴った。
「直撃は避けろ、傷つけないようにソフトに撃破するんだ!」
「合点承知!」
やる気を漲らせたシミ伍長の返事。
国家や民族といったお題目のために命を捨てる気はさらさらないが、女が絡むと見違えるような精強さを発揮するのがイタリア兵である。
方向転換のため速度を緩めたバギーに向けて放たれた一弾は至近距離で炸裂し、爆
風圧をまともに受けたハルナの体は砂漠の大地に叩きつけられる。
「うっ…!」
グラマラスな肢体を砂の上に力なく横たえ、ハルナは意識を失った。
男たちはマンスッティを先頭にわれ先にと戦車を飛び降り、男好きのする肉体を無防備に投げ出したハルナを取り囲む。
美女を捕えたイタリア男がやることは決まっている。
戦場暮らしで女に飢えた男たちはぐったりと脱力したハルナを戦車に縛りつけると、一斉にズボンのベルトに手をかけた。


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