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DEAD BODY
最も危険な遊戯かもしんない
(DEAD GAME)
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男は殺し屋だった。
名は原田伍郎。
とある犯罪組織の殺し屋ランキングNo.3である。
ちなみに炊きたての御飯の香りフェチだったりはしない。
原田はスミスのKフレームを愛用していた。
スナブノーズと呼ばれる、銃身の短い38口径のリヴォルバーである。
ハーヴェイ・ロヴェル気取りかと言われたことがある。
そういう名前のガンマンが登場する小説があるらしい。
阿呆か、と原田は言った。
原田は小説が嫌いだった。
為替相場もワイドショーも、メキシコ湾流の異常によるサンマの水揚げ量の激減にも興味は無かった。
原田の関心は銃と殺しと女を喰らうことだけだった。
原田は酒場にいた。
表通りから一本奥に引っ込んだところにある、「深夜+1」という名の店だった。
時刻は午前零時を少し回っている。
客はまばらだった。
天井近くに置かれた16インチのブラウン管の中で、鶏がらのように痩せたボードヴィリアンが、「オレ、ハードボイルドだど!」と喚いていた。
壁際の席ではスーツを着たオウムが、「ビリーのビリーはロカビリーのビリーだ」などと訳の分からない独り言を呟きながら、向日葵の種を啄んでいた。
隣りに腰掛ける女王蜂の仮装をしたイタい女は見なかったことにする。
薄暗い照明の下でちびちびとブランデーのグラスを舐める原田は、どう見てもくたびれた背広を着た、冴えない中年男でしかなかった。
「隣り、いいかしら?」
甘い声が聞こえた。
原田は声のほうに視線を動かした。
美しい女だった。
光線の加減で金髪にも見える薄茶色の髪と、深い湖のように静謐な光を湛えた蒼い瞳。
体の線がくっきりと浮き出るタイトなミニのワンピースを着ていた。
大きな胸は、メロンを二つ、懐に隠しているかのようだった。
女は原田の右側のストゥールに腰掛けて脚を組んだ。
スカートの裾から伸びる美脚が艶かしい。
むっちりした太腿を覆うタイツの鈍い光沢がインモラルなムードを盛り上げる。
「ンフ…」
女は原田と目を合わせ、意味深に笑った。
全身から男を誘う妖しい色香を放っていた。
「一杯おごっていただける?」
挑発的で扇情的な声だった。
原田はああ、と言った。
二人は飲みながら世間話に興じた。
たわいない会話の中に、決められた相手だけに通じる合言葉が混じっていた。
原田は女を連れてホテルに戻った。
エレベーターに乗り合わせた男が、女のワンピースの胸を押し上げるダイナマイトな膨らみを凝視していた。
原田がちょっと眼力(メヂカラ)を込めた視線を送ると、慌ててエレベーターを止めて降りていった。
寝室に連れ込むなり脱げ、と言った。
下着姿になった女に床に這えと命じる。
四つん這いになって尻をこちらに向けさせた。
女は組織から派遣された連絡員だった。
連絡員は、組織からの指令を殺し屋に伝え、仕事のアシスタントを勤める。
さらに性欲処理係として、殺し屋に抱かれることも役目である。
贅沢な暮らしと組織からあてがわれる美女の肉体が、組織のために命を投げ出す男たちへの報酬だった。
原田の目の前に、カーペットの上に四つん這いになった、黒い下着姿の女体があった。
ブラとショーツ、ガーターベルトとストッキングは身に着けたままでいろと命じた。
白い肌と黒い下着のコントラストが殺し屋を昂ぶらせた。
これまで原田のもとに送られてきた組織の女の中でも、群を抜く美貌とプロポーションの持ち主だった。
乳と尻が豊かで、腰は信じられないほど細い。
腰のくびれと、背中を流れるセミロングの髪が、原田の嗜虐心に火をつけた。
組織の女は掟に縛られている。
殺し屋の命令には、それがどんなに理不尽なものであっても服従しなければならない。
そんな女を勝手気ままに嬲ることが、原田の最高の娯楽だった。


[挿絵1]

原田は尻から貫いた。
後背位で責め立てながら、女に話せと言った。
女はカレンと名乗った。

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