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終焉
2 現在
(オリジナル)
ちゅん、ちゅん…
「っ……」
鳥の鳴き声と眩しいほどの朝陽で目が覚めた。
ソファーの上で寝返りをうつ。
「眠……」
ソファーから立ち上がるもフラフラしている。
高校生が住むにはあまりにも豪華で広すぎる高級マンション。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して錠剤を数錠飲み込んだ。
寝室に入るとシャツを脱ぎワイシャツを手に取った。
芭埜瀬の右肩と腹部には痛々しい傷痕が残っている。
かつて親にチェンソーで切り落とされた時の傷痕……。
「夏姫ー?起きないとご飯なくなるわよー?」
「っ…!!!」
急いで降りていった。
日本屈指の財閥、蓬来家。
もちろん家事態が広くて屋敷か豪邸のほうがふさわしい。
今日はフレンチトーストとサラダとスープ。
「俺のスープとサラダしかないんだけど!」
「夏兄がいつまでも寝てるからでしょ?」
一つ下の妹海(ウミ)が口を開いた。
「だいたい、お前らが人のもんまで食べなきゃいいだろ!?」
「うるさいなー、朝からギャーギャー言わないでよ」
「このっ…まな板!!!」
「な、失礼ね!!!女の子に対して何てこと言うのよ!!!」
「ほらほら、出来たからケンカしないの」
夏姫の養母奈緒(ナオ)が口を挟みケンカは終了。
「夏姫」
「なに、父さん」
養父義信(ヨシノブ)が問いかける。
夏姫は赤ピンクの髪の毛をかいた。
「芭埜瀬の奴、飯食ってんのか?この前見たときフラフラしてたぞ」
「食ってないよ、あいつは裕亜(ユウア)ちゃんがいないと食べないから」
「マジであいつ、栄養失調でぶっ倒れるな…」
今日はやけに体調が悪い。
瞼が重い。
「おはよ。お前、フラフラしてっぞ」
「ん、わかってる…」
芭埜瀬の一番の理解者でもある晴香(ハルカ)。
金の髪が風でさらさらと流れている。
虐待のせいでいまだにまともにご飯を食べられないでいる。
そもそも右腕を肩から切り落とし腹にチェンソーを突き刺すなど虐待の域をこえている。
「芭埜瀬、おはよ」
「なんだよ、ピンク」
下駄箱で夏姫が近寄ってきた。
「…倒れる前になんか食えよ」
「まだ平気だけど、危なくなったら俺が無理やり食わすよ」
夏姫の言葉に晴香が返す。
「みんな、集まってなにやってんの?」
陸人(リクト)が声をかけてきた。
チャラい。
ふわふわでくせのある金よりの茶色の髪の毛。
前髪をポンパにしている。
「学校終わりに空海(クウカイ)が寄ってくれっていってたぞ」
「また、仕事?芭埜瀬フラフラなのに?」
「そんなの言い訳になんないから」
心配する晴香に陸人が返す。
芭埜瀬は保健室に行ってしまった。
「朝イチでこもらないで」
「うっさい、なんか飲みもんちょうだい」
保険医の優香子(ユカコ)がスポーツドリンクを渡す。
それを受けとると錠剤を一気に口に放り込んだ。
「ちょっと!その安定剤はキツいからやめろっていったでしょ!?」
「ゆかちゃんがくれたの効かない」
そのまま眠り込み1日を保健室で過ごした。
「芭埜瀬ー、帰るぞー」
夏姫と陸人がきた。
晴香は一般人の為三人の仕事には関われない。
「っ…!!!」
「吐きそう?」
優香子が優しく背中をさする。
「1日寝てたのにどうして体調が悪化するかなー…」
夏姫がつぶやく。
「芭埜瀬さん、また体調悪いんですか?」
黒髪の男が入ってきた。
芭埜瀬達より一つ下。
「悪いかよ…」
「悪くはないですけど」
澪(レイ)の問いに芭埜瀬が答えた。
それだけで吐きそうになる。
「ゆかちゃん、平気」
立ち上がりスポーツドリンクを飲みほした。
学校を後にする四人。
「見ぃーつーけたー♪夏姫だ、夏姫だ」
「秋茄(アキナ)、芭埜瀬もいるよ?見えてる?」
「見えてるよ、來(ライ)。だけど、芭埜瀬体調悪そうだから平気だと思うなー」
「そろそろ行く?」
「うん♪ボコボコにしてやろーっと……」
作者:
ノア
(ID:********)
投稿日:2012/08/14(火) 20:49
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