シルフェニアリレー企画
黄昏の夢
the red world and true black

蝶外伝







その@



「グ――――なんだこの水……気持ち悪い……」
「まぁまぁ、そう言わないで、アキトさん。 データ取りは大事なんですから」
「他人事だと思ってるな、ルリちゃ……おぉぉぉっ!?」
「?! シンクロ率が何故かいきなり400%を突破っ!?」
「「「「「えええええええっ!?」」」」」」





 (生命のスープの中)


 ……な……ん……だ…………?

 暖かい……。

 これは……誰だ……? アンタは…………。








「――――久しぶりだな、復讐人よ」


 「帰れ、暗殺者!!! っつーかなんでいる北辰?!」

「ふ――――ご都合主義だ!!」

「ぶっ殺す!!!」





……数時間の罵りあい後


「……で、どーなるんだ?」
「フム、なにがだ?」
「いや……だから。
状況がさっぱり分からん」
「フム、つまり、かくかくしかじか、だ」
「ほー、シンクロ率が異常な領域になったせいで、それが過ぎて一つになってしまった、と」
「よく分かったな……やはり、シンクロ率が高くなってしまっているせいかのぅ」
「…………ん?」
「どうした、復讐人よ。
 腹でも痛くなったか? 拾い食いなどするからだぞ」
「だまってろ暗殺者。
 ……いや、なんか違和感が……」
「ふむ? 言って見るがいい。
 なぁに気にするな、既に我らは一心同体、後もう少ししたら悩みも何もかも共有してしまう仲だ。
 遅いか早いかの違い、ならば早いほうが良かろう?」
「…………あぁ、そういうことか……」
「む、分かったのか?」

「あぁ――――なんでお前なんぞとシンクロ率が高くならなきゃならんのだぁっっっ!?」

……。
…………。
………………。

「……ふむ、何を驚くかと思えば、そんなことか」
「んだよ……お前は理由が分かってるのか?」
「当然だ。
 よく言うであろう?





 ――――恋は、人を変えると!!!!」

「死にさらせぇぇぇぇぇっっ!!!
 っつーか、帰る! 俺、現実に帰るぅぅぅぅぅぅっっっ!!!」
「フハハハハハ、逃げられると思うなよ復讐人よ!!!」
















そのA



「……で。
 なんで俺が初号機に乗ってるんだ?」
「インターフェイスの交換実験って説明しましたよ、アキトさん。
 ネルフの方々も協力してくださってますし」
「あ、あの……よろしくお願いします(赤)」
「…………よろしく」
「フンッ! のっけから400%達したような男なんだから、怖いならやめれば?
 …………だ、だいたい、別の機動兵器で十分だし、今度も帰ってこれるとは限らないでしょ(照)」

「シンジ君、なんで赤くなってるのかな?
 後アスカちゃん、心配してくれるのはうれしいが、参号機の件は言うな。泣くぞ。

 ……レイちゃんが癒しっていうのは、いいのかな、コレ……」


「はいはい。
 やっぱりアキトさんは無口系が好みらしいですね。後で私とラピスで相手してあげますから部屋にどうぞ。
 ……あと、不穏なこと言ってるアスカさんは後で葛城三佐のカレーでも食ってなさい」
「死刑宣告?!」

「……馬鹿なことやってないで、実験始めていいかしら?」
「どーぞ、赤木博士。
 こっちの準備は万端よ、すでに」
「……ナデシコって、陸自の特殊機関だって聞いてたからどんなのかと思ってたら……頭痛いわね」



――――で。


「あぁっ!?
 アキト君が、またシンクロ率400%突破!!?」
「「「「「またかよ!?」」」」」
「アキトさーん!?」




……あ……二回目ともなると、なんかもー眠くなるなー、この感覚。

生ぬるいというか、風呂の中にいるというか……。


……ん? 誰か――――いる?






「――――ども、初号機です」

「めっちゃフランクっ?!!」



「いやいや、どーもどーも。
 いつもシンジ君がお世話になっているようでして……」
「あ、いえ、コレはご丁寧に……。
 じゃなくて!
 ……えっと、アンタは初号機でいいのか?」
「えぇ。
 まぁ、封じられている魂さんとは別物ですが」
「……?」
「いやいや、まぁ、そんなことはどーでもよく。
 実は、ちょいとおにーさんと話がしてみたいなー思て、ここまで引きずり込ませてもらったんスよ」
「……ちょいと、で生命のスープにされるこっちはたまったもんじゃないんだが」
「まーまー。正統なアベルなんですから、これぐらい平気でっしゃろにー」
「……? そこで難解なワードを持ち出されてもな……」
「お気になさらずー。
 で、ですな。
 二、三、聞きたいことがあるんですが、良いでしょか?」
「――――答えなきゃ帰れないんだろ。
 いいぞ。
 ……しかし、参号機の次は初号機ときたか……泣けてくるな、この人生」
「それだけ数奇ってことでっしゃろ。
 で、聞きたいことなんですけどね?」
「あん?」





「――――どちらさんが本命なんですのん?」








「……あ?」
「だーかーら、誰を落とそうと思ってるんですのん?」
「……何の話だ?」
「トボける気ぃかいな?!
 元の世界や連れてきた娘……まぁ、一部トウの立った方もおられますけど、複数の女性を落としているにもかかわらず!
 コチラの世界で、アスカ嬢ちゃんを落とし! そして予想外なことにシンジ君にまで頬を染めさせる!
 零号機なんか、“生BLだ! 生BLだっ!!”と小躍りしてましたで!?」
「何の話だ!?」
「ともかく!
 その別に狙っているワケでもないのに犠牲者を増やしている兄さんの本命を!
 私は知りたいのですよ!!


 ……あ、ちなみにイネスさんやと私はうれしい。
 何しろ大穴、配当金100倍やさかいに」
「人の恋路で金儲けするなぁっっっっ!!!!!」
















そのB



「――――で、俺を呼び出した理由はなんだ……碇ゲンドウ」

特務機関ネルフ。
その司令室にて、二人の怪しさ爆発な男達が会話していた。

「……テンカワアキト。
 君と、取引をしたいと思ってな」
「取引……だと?」

怪しい男A――――(コスプレマニア)ヒゲサングラスこと、ゲンドウの言葉に。
怪しい男B――――(ロリコン&BL疑惑)バイザースマイルこと、アキトは眉を顰めた。

「……ナデシコの情報か?
 それとも、『何故か』エヴァとシンクロできる俺の引き抜きか?」
「ふ――――話が早くて助かる。
 単刀直入に言うと、後者だ」
「……」

ゲンドウの言葉に、沈黙するアキト。
幾度か――――陸自とネルフの『協力』体制の(無論表向きだが)一環として、『ナデシコ』はネルフのサポートをしてきた。
ついでに言えば、何故かエヴァの起動実験にも付き合わされた(主にアキトが

だが、それは上述したが、あくまで『表向きの協力』であり、二機関とも仲は悪い。
っつか、障害を列挙したらキリがないのだが――――

「……出来るのか?」
「押し通す」
「……」

ゲンドウの即答に目を丸くし――――ついで、納得する。

(『エヴァ』という戦力を、その手に完璧に保有したい……辺りか?
 まぁ、理由はいくらでもあるか)

思考を巡らせる彼。
そんな彼を様子を気にした様子も無く、ゲンドウは言葉を続けるために口を開き――――



「そして君には、是非とも初号機に乗ってもらいたい」
「――――は?」


なんか今、凄いこといわれた気がする。
『初号機』に?

「あれは――――シンジ君専用だったのでは?」
「シンクロ率400%を叩き出した男の発言ではないな」
「ほっといてくれっつーか忘れろ!」

泣きそうになる過去を思い出させられ、思わず叫ぶ。
だが、ゲンドウはその叫びを気にした様子も無く、

「それに、だ」
「あん?」
「君の方が――――おそらく、資格がある」
「資格……だと?」

(まさか、アベルだとかなんだとかの、あのよく分からないフレーズのことか……?!)

驚愕するアキトに。
ゲンドウは――――ニヤリ、と笑うと、



「――――そう。
 かつて料理人であった君の方が、初号機E装備型――――通称『若奥様』には、な」


……。
…………。
………………。


「今……なんつった?」
「初号機E装備型:通称『若奥様』のパイロットとして、ウチにきてもらいたいと……」
「全力で断る!」
「何故だ!?
 料理人としての腕も振るえ、私はありし日のユイを思い出せる!
 お互いに夢を果たせるではないか!?」
「その夢はもう諦めたというかそれ以前に!!
 あんなどーみてもグロテスクな容姿の機動兵器に仮にも嫁さんを投影するなよ!?
 ――――絶対泣いてるぞ、あの世で!?」
「……感動の涙、だろう?」
「んなワケあるかぁぁぁぁぁっっ!!!」


(あ、ちなみに初号機E装備型っちゅ〜のんは、通常型に、
 エプロン形強化装甲。
 プログレッシブオタマ。
 マゴロク・E・フライパン。
 殺使徒スプレー。
 の4種の装備を付け加えたやつやからな〜)

(割り込んでくるな電波……じゃなかった初号機!!!
 つかお前も嫌がれ!!!)
(フフッ、愛しの旦那に手料理を作れる日が来るたぁ……ぼかぁ、幸せだなぁ……)

(もういやだぁぁぁぁぁっっっ!!!!)











そのC




――――で。


「……ルリちゃん、本当に乗るのか――――コレ」
「はい」


ゲンドウとの密会(?)の数日後。
ご破算となったと思われた話は、陸自特務機関『ナデシコ』の責任者であるホシノ・ルリの指揮下の元で実現しようとしていた。

――――ただし、今回のテストに成功すれば、だが。


「また400%とか出して、心配させないでくださいね?」
「……それが前回、スープから還ってきた俺の裸体をカメラで撮りまくった女の言うことか……?」
「なんのことですかねぇ……。
 ほら、そろそろ実験開始ですから、乗り込んでください」
「逃げたな……」
「そんなことないですよ。私は期待に応えただけです」
「期待?」
「はい。ほら」
「ん?」

ルリの指差した方へ視線を向け――――
「頼むぞ、テンカワくーーーーんっっ!!!」
「ちょ、父さん、恥ずかしいからやめてっ!!!」
「何を言うシンジ、お前だってうれしいくせに!」
「え、そりゃ、ちょっとは……まぁ」
「フフフ……成長したな、シンジ」
「父さん――――」






「……(唖然)」
「良かったですね、あの親子の仲、修復できて」
「……うれしくねぇ……絶対うれしくねぇ……」






――――というワケで、実験開始。


「エントリープラグ、挿入」
「L.C.L.注入」
「シンクロ開始――――あぁっ!?
 パイロットのシンクロ率、また400%突破!!?」
「「「「「あー……やっぱり?」」」」」
「皆、手馴れてきてる……。
 で、ルリ……どこ行く気?」
「え? あ、いえ、その……てへっ♪」
「似合わない」
「ほっといてください。そして見逃してください」
「ダメ。貴方は責任者。ここで見届ける義務がある」
「くっ――――分かりました。
 ラピス!」
「?」
「儲けは―――6:4でどうです?」
「7:3」
「ち――――しょうがありませんね」
「交渉成立」
「なんでアンタ達そんな平然としてるの?!」
「ナデシコですから」
「ナデシコだからね……」



――――一方その頃



三度目か……。


あー……次の展開、読めてきたなぁ……




「やっぱりな――――帰れ、初号機」
「つ、つれへんなぁ、アキぴょん。
 ちょっとしたおちゃっぴーやん……?」
「知るか。いーからさっさと帰れ。むしろ俺を帰せ。」
「いやいやいやいや。
 ここで帰したら、せっかくここまで呼び寄せた意味がなくなるっちゅーねんな」
「……意味なんぞいらん」
「そっけなー。
 けど、今回はウチの都合だけとちゃうんよー」
「BL趣味の零号機とか、どーせロクでもない趣味の持ち主だろう弐号機ならゴメンだぞ。
 後、参号機の出張サービスもいらん」
「く――――読まれとる!?」
「読まれいでか」


(閑話休題)


「で、実際の用件はちょいと違うねん」
「……ふん?」
「ココに連れて来ることは出来ひんのやけど、ウチに封じられとる魂さんからの伝言があってな?」
「……魂て……」
「まぁ、ぶっちゃけるとユイさんなんやが」
「ユイ……って、まさか……」
「うむ、なんか間違った道へ走りかけとる男達の嫁で母や」
「…………で、なんと?」
「あぁ――――






 ――――味噌は合わせ味噌を使ってください、やと」

「知るか!!!
 つか、マジで料理させる気かこの親子は!?」
「じゃないのん?
 ほな、開始しよかー」
「しよか、て……どうやって?」
「あぁ、ちょい待ってーな……ほれ」
「……ぬぉ……なんかいきなり、エプロンその他が出現した……」
「シンクロ率はえー感じやさかいな。
 実際にアキぴょんが動くことで現実のワイも動くっちゅー寸法や」
「……なるほどな。
 流されている感はあるが、しょうがない、始め――――」
「……ん?
 どないしたん?」
「あ、あの――――男やもめがぁぁぁぁぁっっ!!!」
「ぬぉ!?
 い、い、いきなりなんやの!?」
「なにもあるか!


 ――――包丁もないのに、どうしろってんだ!?」

「そっちかい。
 さすが料理人やな……」










……………………。 ←(返事がない。ただの屍のようだ)


……。
おや、遺書がある。

読みますか?



       はい
    → いいえ




「読めよ!」




……えー、というワケで折沢崎 椎名です。
鳩っちとBL大好きな某夫婦の陰謀によって作らされました。
某夫婦っつっても、決して椎名家ではないので誤解なきよう。ある意味椎名家ですけど。



さて、そーいうワケで外伝です。
会議の時なんかに、思いつきで投下したネタのうち、ある種のシリーズものが掲載される運びとなりました。

……いったい、どういう因果関係なんだよ……おい?(汗

ちなみに、今作品は『黄昏の夢』本編とは一切関係ありません。
もし本編で参号機に乗るような展開があっても、北辰が出てきたりすることはないでしょう。
っつか、あってたまるか。

ってなワケで、解説ー


@ 「アキトがエヴァに乗ったらおもしろいかも」、な発言によって椎名がノリで書いた。

A (コスプレマニア)は、ゲンドウの二つ名。そんなネタが横行している時期があった(ホントカヨ

B BL臭を出しつつ決してそうではないようにしました。某夫婦のばかーーー!(半泣


ってな感じです。
この作品を見て、『黄昏の夢』に対する興味がわいていただければ幸いです。
ただし、こんなノリでは『多分』ないと思いますので。

……まぁ、そっちの方が読者の方々は安心か、むしろ?



それではこの辺で。
私の出番か、もしくは別の外伝でお会いしましょう。
それまでは、私のよりもっとおもしろい、既に掲載されている、これから掲載される作品を楽しんでいてくださいませ。

でぁ〜☆








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