復讐のためだけに戦い、「火星の後継者」の残党を日々狩り続ける男テンカワ・アキト。
彼は2日前、木星の重力圏外で「敗北」した。

 信じられないことがあったのだ。死んだはずのヤマダ・ジロウ……いや、ダイゴウジ・ガイが現れ、彼をまさかの敗北に追いやったのだ。ただ、勝負が決するとガイのピンクヘッドのエステバリスタイプはいずこかに飛び去ってしまった。

 『てめえには今でも熱い血潮が流れている。死にたいなんて詭弁だぜ。お前に死ぬ意思なんかありゃしねーよ、このヘタレ野郎! いつまでも逃げてんじゃねーぞ』

 という痛い台詞を残して……

 「俺は戻りたいと願っているのか…心底あの頃に……」

 アキトは、片足を破壊されたフラワーワルツのコクピット内で愕然として呟いた。真空の世界にポツンと浮遊した機動兵器は主人の心情を反映すように肩が震えているようにも見えた。

 ──二日後──

 テンカワ・アキトは、ネルガルの基地で機体の修理を終えるとアカツキとエリナの声を無視し、再び木星圏にやって来ていた。

 ダイゴウジ・ガイにもう一度会うために……

 「アキト、近くの隕石帯に熱源反応がある」

 「わかった。ラピス、すぐにそこに向ってくれ。俺はフラワーワルツで出る」

 ユーチャリスが反応宙域の手前までやって来たとき、高距離光学カメラがその艦影を捉えていた。が、それはアキトの求めたガイの帆船型母艦ではなかった。

 「アキト、前方の隕石帯に艦型不明の戦艦を三隻確認」

 「なに?」

 アキトは、待機しているフラワーワルツのコクピット内で眉をしかめ、ラピスに映像を送信してもらう。確かに見慣れない型の戦艦が三隻、隕石帯から離脱しようとしている。中央の一隻は赤く塗装され艦首部分が靴べらのように平べったい流線形。その左側の戦艦は青く塗装され艦全体が一体化しているように細長くて段差がほとんどなく、艦首部分が上下に分かれてとがっている。もう一隻は黒く塗装され、他の二艦に比べると一回りほど大きく四角ばった艦首部分には砲口のような穴が八つ確認できていた。

(こいつら残党なのか? あれは新型なのか?)

 己の愚かな問いに黒い復讐鬼は冷徹に笑った。こんなところにいる奴らは残党以外の何者でもない!

 「フラワーワルツ出る!」

 仇敵の機体を駆り、テンカワ・アキトは出撃した。






 「間違いありません。戦艦ユーチャリスとフラワー・ワルツです」

 旗艦「帝釈天」の艦橋では、傍らに控える副官の憎憎しげな報告に角刈りの男は黙って頷いていた。目の前に展開されたスクリーンには苦杯を幾度もなめさせられた艦影と機影が不幸を運んできたかのようにぐんぐんと近づいてくる。

 「撤退と同時にまさか遭ってしまうとはな。数日前の戦闘はダイゴウジ・ガイのおかげで気取られなかったが、今回はそうもいかないようだ」

 「草壁指令、七連星の出撃準備は整っております」
 
 「うむ、隕石帯から母艦が離脱するまで牽制させろ。ただし、まともに闘りあう必要はないと厳命せよ。今勝ったとしてもこちらも甚大な被害を被りかねない。目的と目標を混同してはならない。データー収集程度までなら許すが、深追いは厳禁だ」

 「はっ!」

 副官が通信オペレーターに伝達するのを確認し、収監先から脱出した草壁春樹は両手を後ろに組んだまま視線を上方に向ける。その先には周りを透明なフィールドに覆われ、スマートなシートに座する見た目10歳くらいの少女が浮遊していた。背中まで届く艶のある黒髪、その左右を飾る白いリボン、黒と白の配色のなされた編み上げのドレスをまとっている。

 草壁の目が少女の黄金色の瞳と重なると、彼は厳しい顔を崩してにっこり微笑んだ。

 「マリアちゃん、ということだから迎撃体制を維持したまま、レイちゃんとアザカちゃんにも注意を喚起しておいてくれないかな? ラピス・ラズリのハッキングには油断しないようにしてね、とね」

 草壁がウインクすると、マリアと呼ばれた少女は黒髪を揺らして『はぁーい』と手を挙げて素直に返答した。少女の手の甲に円形の模様が現れ、彼女は二人のMCと直接連絡をとった。

 「おじさま、二人とも『わかった』、『言われなくてもやるわよ』だって」

 「そうかそうか、マリアちゃんありがとう。マリアちゃんがしっかりしてるからおじちゃん安心だよ」

 草壁の目じりは下がりっぱなしだった。ほとんど孫萌えする爺さん状態である。

 「ねえ……」

 少女が空中に浮くシートから顔をちょっとのぞかせた。

 「ねえ、おじさま、あの子と遊んじゃだめなの?」

 細い首をこころもち傾けるしぐさに、草壁ならず少女を支援するオペレーターたちも萌えている。

 「うーん、マリアちゃんの気持ちはわかるけど準備不足だから今回はだめかなぁ。マリアちゃんがより強くなるためにも今回は敵を知るってことでいこうよ」

 「はぁぁーい、マリア・イスマイールはおじさまの言いつけに従うますぅ☆」

 少女は、またまたゲキ萌えな返事をして艦橋を昇天させると、草壁の指揮に必要なデーターを次々に表示する。すでに七機の機動兵器はフラワー・ワルツと交戦状態に入っていた。






 「ちっ! こいつらどうなっていやがる」

 回避行動をとるフラワーワルツのコクピット内でアキトは舌打ちした。残党の新型艦と思われる戦艦三隻から出撃した七体の機動兵器が北辰七人衆を凌駕する連係と攻撃で黒い復讐鬼を苦しめていたのだ。七機のうち四機はラピスがアキトを支援するために放った無人兵器を迎撃するために途中で離れたが、厄介だったのが赤、青、黄に塗装された夜天光を改良したと思われる残った三機だった。青い機体が絶妙に距離をとりつつ遠距離から支援砲撃を行い、その間隙を縫って赤と黄色の機体が近接戦や砲撃戦を仕掛けたりする。その戦闘フォーメーションは多様にして自在であり、狭い隕石帯の中でも高機動を維持していた。フラワーワルツの放つハンドカノンの砲撃も何度かわされたかわからない。特に赤い夜天光改のパイロットが一番の強敵だった。

 「ガイといい、こいつらといい、一体何が起こっているんだ」

 考えている時間はないようだった。3時方向からのレールガンを回避し、斜め下方からの突撃をギリギリでかわす。

 「なにぃ!?」

 かわして加速した先には細長い高機動ユニットを装備した赤い機体が待ち構えていた。ナックルガードの装着された拳がフラワーワルツの横っ腹に叩き込まれる。

 「ぐっ!」

 機体が真横に吹っ飛び、アキトの身体にGがのしかかる。その先は隕石だった。

 「まだ死ねるかぁぁぁぁー!!!」

 ブースターを噴射させてかろうじて体勢を立て直したフラワー・ワルツは、そのまま天頂方向に急上昇して、連続して放たれた砲弾をよける。

 「やるな、黒い王子の名は伊達じゃない」

 赤い夜天光改のパイロットは賞賛をこめて独語した。その声は少年のようであり、青年のようでもあるが、いずれにしても若い。機体と同色のパイロットスーツに身を包んだ彼の表情もミラー処理されたシールド越しにはうかがい知ることはできない。

 不意に通信スクリーンが目の前に現れた。そこに映っていたのは青いパイロットスーツ姿の僚友だった。

 「ファイヤーイーグル、こちらブルーシャークだ。想像以上に黒い王子は手強い。ヤツを撃墜しないで母艦から離すのは至難の業だとおもうが、いかに?」

 「こちらファイヤーイーグルだ。ブルーシャーク、その気持ちはわかるが俺たちの目的はフラワーワルツを足止めすることだ。やり過ぎは禁物だ。母艦を安全圏まで後退させるまで作戦を続行する。しかし気を抜くな、足並みが乱れれば即敗北につながる」

 「了解、リーダー」

 通信が切れ、青い機体が射撃位置を確保するために離れていく。赤い機体のパイロットもフラワーワルツと交戦している黄色の僚機を支援すべく操縦桿を引いた。

 「テンカワ・アキト、俺たち三連星を相手によくやる」

 三連星とは、七機の機体のうち特に優れた操縦技術を持つ赤、青、黄色の機体の総称であり、それぞれのコードネームは大昔の戦隊ものをもじっていた。

 赤い機体は、ファイヤーイーグル (隊長機)

 青い機体は、ブルーシャーク

 黄の機体は、

 「イエロータイガー、今そちらに向かう。ムリはするな」

 そうそう、イエロータイガー……

 まてぇぇ!! もじったのはサンバルカンだよね? サンバルカンなら「パンサー」だよね? 「イエローパンサー」が正解じゃね? なんで獰猛度まで上がってるわけ? もじったの意味ないじゃん!!

 「ファイヤーイーグル、ヤツを接近戦で後方に追いやる。支援頼む」

 「了解、イエロータイガー」

 ちっ! 第三者の突っ込み見事にスルーかよ。まあ、いいや。

 ちなみに七機の総称を「北斗の七連星」という。某リアルSFロボットアニメからパクッたことは間違いない。先日開かれた部隊名決定会議において「黒い七連星」という案が出たものの、「全部黒色は見た目の華やかさがないから反対ですわ」という紅一点ララァ・シーン嬢の強い反対により、紆余曲折と壮絶な激論の末「北斗の七連星」に決定したのだった。




 アキトと三連星の交戦状況をスクリーンで確認しつつ、ラピス・ラズリは攻めあぐねていた。アキトの指示で三隻の新型艦を足止め、もしくは制圧するつもりが、MCとして隔絶した能力を有する少女のアクセスは再三にわたり失敗していたのだ。

 理由は簡単。あの三隻の戦艦にMCがいるのだ。しかも能力はかなり高い。存在を感じて語りかけてみると返事があった。
 
 『わたしマリア! 愛称はキララちゃん』
 
 『アラナミ・レイよ……』
 
 『アザカ・ランナウェイだけど、まず先にあんたが名前を名乗るべきじゃない?』

 とこんな感じだった。3人ともラピスとは年齢が近いようだった。

 しかし、ラピスが攻めあぐねているのはMCの能力だけではなかった。三隻の戦艦の行動に隙がなかったのだ。黒い戦艦『夜叉』が八連装のグラビティーブラストを間断なく放出してユーチャリスの前進を阻み、その間に二隻の戦艦が後退。次に二隻の戦艦がグラビティーブラストを交互に叩きつけている間に黒い戦艦が後退するという見事な連係だった。三隻とも斜線陣を保ったまま付け入る隙もなく、実に要領よく隕石帯を後退していくのだ。

 ラピスは無人兵器を多数出撃させて制空権を握ろうと考えたが、四機の機動兵器と重厚な防空火力に阻まれて次々に撃ち落されてしまっていた。

 「きっと優れた指揮官いる。ルリと同じ、とても手強い」

 「電子の妖精」と同じ、などとラピスに評価された草壁指令は確かに昔日の野心家とは違っていた。次々と表示されるデーターを一分も漏らさずに確認し、戦術スクリーンに展開される戦況に応じてキビキビと指示を飛ばしていた。

 まさに別人だった。地球の収監施設を脱出し、テンカワ・アキトに3度も苦杯をなめさせられた経験が彼を指揮官として大きく成長させたようだった。

「ふっ、野心家が必ず坂を転げ落ちて自爆すると思っては困る。そうじゃない人物はたくさんいる。ラインハルト・フォン・ローエングラムしかり、捲土重来をはたしたメルカッツ提督しかりだ」

 あのー、たとえが飛びすぎてるんで勘弁してくれませんか? メルカッツ提督は野心家じゃありません。能力を比較するならまあ許せるけど、超美形の金髪の孺子を比較に出すのはぶっちゃけ身のをほどをわきまえろって感じです。設定がすげー違うし……どの角度で言ってます?

 「またはスローン大提督とでもいうかなぁ……」

 マニアックすぎる比較はやめてください。ピンとくる人少ないから『???』が浮かびまくっていると思いますよ。別にペレオン提督でもいいけどさぁ……あっ、よけいにわかんねーや。

 とりあえず知りたい人はググッてくれ!

 「草壁指令、みたところ我々はかなり有利のようです。ヤツラを葬ってはいかがでしょう? 我々のMCたちもユーチャリスのMCと互角に渡り合っているようですし、一気に押せば仇敵を宇宙の塵にできるのでは?」

 副官の具申に元木連の指導者は被りを振った。

 「この狭い宙域からの撤退が先決だ。長引くとストーカーがくる。彼女が来ると厄介だ。もうその辺まで来ているかもしれないがね」

 「ストーカーでありますか?」

 「わからんかね? ホシノ・ルリだよ。黒い王子をストーカーしているらしい」

 「はあ?」

 まさに呼んじゃったらしい。青く塗装された戦艦『金剛』の右側面を重力波エネルギーが叩いた。アラナミ嬢が瞬間的にディストーションフィールドを強化して被弾はしなかったが、草壁の肩をすくめさせるには十分だった。

 「ほうら来てしまったぞ」

 スクリーン表示された映像が捉えていたのは紛れもなく「ナデシコC」だった。全銀河に名高い「宇宙の至宝」「電子の妖精」の船である。副官がその事実にやや鼻白んだ。

 「うろたえるな! 何のためのMCと七連星だ。連係とタイミングさえ間違わなければ撤退できる」

 草壁が自信をもって断言すると、上の方から少女の無垢な声がした。

 「おじさまぁ、ナデシコCからアルストロメリアの発進を確認しました。どうします?」

 草壁は表情を緩めて上を見上げた。

 「そうだねぇ、戦術プランBに変更だね。夜叉と金剛で正面のユーチャリスに集中砲火。相手が後退したら夜叉で牽制しつつ、金剛に左舷回頭してもらって我が帝釈天と共にナデシコCに攻撃。四連でアルストロメリアを迎撃させて母艦に近づけないようにって連絡してね。三連星は引き続きフラワーワルツを足止め。艦隊が隕石帯を抜けたら全機戻るように伝えてくれるかな?」

 「はぁーい、マりア連絡しますぅ」

 「ところでマリアちゃん、ホシノ・ルリはアクセスしてきてるかな?」

 「してきてまぁーす! でも全部ブロックできてるよ」

 草壁は満面な笑みで頷いた。

 「うんうん、おじちゃん嬉しいよぉ。ちゃちゃっと撤退してまた一緒にお風呂に入ろうねー」

 えっ? 聞き間違いですか草壁さん、孫萌えか娘萌えですよね? 隣の副官さんが頭抱えているんですが大丈夫ですか? あんた別の犯罪に手を染めてませんか? マリアちゃんも「はーい」とか言っちゃダメだってばさ! 




 「ラピス、ユーリ!!」

 アキトの目にはグラビティーブラストの集中砲火を受けてたまらず後退する母艦の姿が映っていた。別のスクリーンではおせっかいに来たと思われるナデシコCが赤い戦艦から放たれた大口径のグラビティーブラストの砲撃にさらされ、不本意ともいえる回避行動をとっている。サブロウタが駆るアルストロメリアは四機の夜天光改に半包囲され、ほとんど戦場宙域から追いやられようとしていた。

 「このままでは、ヤバイ!」

 直感した。この復讐は失敗だ。ここで退かなければユーチャリスもナデシコCも撃沈されてしまうかもしれない。

 「なぜこうなった?」

 アキトは考える。

 「なにが違う? 何が変わった?」

 アキトは攻撃を回避しつつ疑問を探す。

 至ったきっかけは一つ

 「ガイが全てだ」

 そう、ダイゴウジ・ガイとの「再会」から何かが変わったのだ。

 テンカワ・アキトの牙がさびたからではない。

 テンカワ・アキトの決意が揺らいだわけではない。

 テンカワ・アキトの進む修羅の道が閉ざされたわけではない

 「ワシらが強いんぜよ!!」

 音声とともに黄色い夜天光改が至近距離に迫り、DFを収束させた拳を上方から振り上げていた。

 「くらえぇぇっ!!」

 「なめるなぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 アキトは絶叫し、相手の拳を流すように受け止め、そのまま背負い投げの要領でぶん投げた。黄色い夜天光改はそのまま隕石にめり込み、アキトはすかさずハンドカノンを構えて止めを刺そうとする。

 しかし、二時方向から赤い夜天光改が迫り、両腕から白刃を出して突撃してきた。

 「させるかぁ! 刹那・F・セイエイ目標を駆逐する!」

 まてぇぇええ!! ファイヤーイーグルさんだったよね? 勝手にコードネーム変更されるのって困るんですが。しかも完全にパクリだし。ぶっちゃけノリで言うのやめてくれません。あんたのクールなイメージ台無しです。それにフラワーワルツ撃墜すんのまずいんでね?

 「そんなもの通じるか」

 アキトは冷笑して言い放ち、ディストーションフィールドが白刃を受け止めて破壊するはずだった……一瞬静止した白刃は空間歪曲とフラワーワルツの右腕をなんなく切り裂いてしまった。

 「なんだと!?」

 アキトは、驚愕しつつも素早く機体を立て直して後方に飛び、左のハンドカノンで牽制しつつ、ユーチャリスの方角へと後退する。アキトは知らなかったが、赤い夜天光改のブレードは重力をまとい、その刃先は一秒間に300万回以上も振動していたのである。

 「イエロータイガー、怪我はないか?」

 「ああ、リーダー大丈夫じゃあ。つい熱くなっちまった」
 
 通信スクリーン越しに黄色いパイロットスーツの男は応じ、レバーを引いて通常体勢に復帰する。青の僚機が牽制の射撃を行っていたが、フラワーワルツがさらに後退したので三機とも警戒態勢のまま母艦に向って飛び立った。レッドイーグル機の戦術スクリーンには敵の母艦も後退する姿が映し出されていた。

 「どうやら向うも引き際と考えたようだな」」

 ちょうど撤退命令が入ってきた。通信スクリーンには黒髪を白いリボンで飾る少女が映っている。

 「おつかれさんまでーす。各機すぐにC404宙域に集結し、すみやかに帰投してくださいな。母艦はみんなを収容しだいボソンジャンプしちゃいますぅ」

 「了解だ。全機聞こえたな、撤退するぞ」

 「了解、リーダー」×6







 ホシノ・ルリとラピス・ラズリ。宇宙に名だたる二人のMCの追撃をかわして一息ついた『帝釈天』の艦橋では、MCの少女が空中に浮くIFSシートから華奢な身体を起こし、床まで二メートル程近づいてから颯爽と飛び降りていた。

 「着地成功でーす」

 あっけらかんとした表情で自慢げに声を上げる少女の正面には、草壁指令がホンワカ笑顔で盛んに手を叩いていた。

 「マリアちゃん、よくがんばったねぇ。おじちゃんも大満足だよ」

 少女はVサインをした。

 「うん、マリアがんばった。レイとアザカもがんばった?」

 「うんうん、三人ともすごかったよ。何といっても二人の妖精に引けをとらなかったしねぇ。よく言いつけも守ったし、艦隊運動もベリーグットだよ。おじちゃんはとってもうれしいよぉ」

 少女は頬を緩め、草壁指令の横に立ってそのごつごつした手をとった。

 「おじさま、マリア疲れちゃった。お風呂に入って休みたい。一緒に入ろうよ」

 「そうだねー、約束だもんね。マリアちゃん、おじちゃんの背中流してくれるかな?」

 ちょっと草壁さん! まじですか、まじで言ってますか? やっぱロリだったんですか? ロリに覚醒しちゃったんですか? 孫と娘とかの感覚だと言ってくださいよ!! 境界踏み越えたらいけませんぜ。そんなあぶない顔をされたら引きますって!! あんた指揮官としてえらい成長したのに 倫理面で後退してるじゃん!

 頼む、娘萌えだと言ってくれ!

 第三者の声もむなしくブロックされ、草壁指令とマリア・イスマイール嬢は手を繋いでルンルン気分で艦橋を後にしたのだった。


 ほぼ同時刻、ストーカーホシノ・ルリのマジ迷惑な追跡をなんとか振り切ったテンカワ・アキトもネルガルの基地に戻り、ラピスにせがまれるまま一緒にお風呂に入って疲労した身体を癒していた。彼の体が重いのは思いがけない敗北を喫したこと。彼の心残りはダイゴウジ・ガイに会えなかったこと。

 「ガイ、どこにいるんだ……」

 フウとため息をつくアキトの頬にラピスが頬ずりする。

 テンカワ・アキトと草壁春樹……

 お前ら、もしかしてロリな部分でわかり合えるんじゃね?

 しかし、消えたダイゴウジ・ガイと三隻の戦艦を指揮する草壁の目的は? 二つの予想外の螺旋の謎とは?






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