−ある日、ラー・カイラムが欧州に着くまでの間、なのはとスバルは互いに出会うことで、「元いた時空を上書きする形」となってしまった事に
気づいていた。なのはは「スバルのいた歴史では中学卒業後にミッドチルダに渡った」というが、
ここにいる当人は軍人となったことで、平穏を望んでいる両親への贖罪意識が芽生えたので、
少なくとも「高校卒業までは地球に留まる」つもりである。この時点で元の歴史と分岐しているのは明らかであった。

 

ドラえもんはそんな2人に「道のりが違っても同じ所に着くようなものだよ。例えば大阪へ行くとき、いろんな行き方があるけど、
着くのには変わりないでしょう。そんなもんさ」と言い、道を変えても大まかな流れ自体は同じだと言うことを説明した。
実際、その傾向はなのはに顕著に現れており、スバルが知る「未来」と比較して「優しさ自体は同じだが、より好戦的」との事。
智子と出会ったことで彼女から「扶桑皇国陸軍航空隊精神」を、ルーデルから「カールスラント空軍軍人の心構え」を
叩きこまれた事で戦闘スタイルは「闇の書事件」までのモノを更に突き進めたものとなっており、(空戦機動はドイツ空軍のものに近い)
なのは当人曰く、「指揮官率先」、「たとえ些細な任務でも編隊の先頭一番機として飛ぶ事を実践するよ〜」との事。
これはもし、歴史が元のまま進行した場合の本人が聞いたら卒倒間違いなしの考えである。
歴史が変わってなければ、なのはは「撃墜事件で多大なトラウマを負ったまま、それを他人へも押し付け、自分のことを棚に上げ、
他人の無茶を許容しなくなる」傾向を持つようになったが、歴史の変化により「自分が率先して突っ込む」ようになっている。
これはその自分と出会ったら口論になるのは目に見えるだろう。

「スバル、もしそのあたしと会ったら、今のあたしはどう言われるだろうね」
「う〜〜んっ……」

スバルは窮した。この場合、どちらもなのは当人に違いはない。ただし目の前のなのはは子供とは言え、
「5分前精神」などの軍人らしい考えが身についているなどの細かな点で差異が多く、言動などもスバルらの影響により、
荒っぽい言葉遣いもするようになっている。

スバルは記憶にある大人のなのはが取りそうな行動を考える。もし異なる成長をするであろう自分自身に
あまりいい顔はしないのは考えつく。ティアナへの事を考えると、真意がどうであれ、`あの時のなのはの行動への`いい印象`はない。
だが、どちらも当人なので
スバルは安易な擁護はせず、上手く誤魔化した。
どちらが良いとも限らない。並行時空の同一人物はどこかで
違いがある。ただそれだけの話だ。

 

「さて、食堂に行きましょう。そろそろ朝ご飯ですし」
「そういえばそうだね」

食堂に行くと、なんとドラえもんとドラ・ザ・キッドがラーメンの早食い競争をしていた。机の横には既に相当数の
ラーメン丼ぶりが積み上げられている。その場にいた隊の連中はすっかり「大食い大会」か何かを見るように盛り上がっている。

「のび太くん、どうしたのこれ」
「ドラえもんとキッドがドラミちゃん…ドラえもんの妹絡みの事で喧嘩始めてね……」
「ええっ!?」
「簡単なことさ。ドラえもんは可愛い妹をガサツなキッドに渡したくない。
一方のキッドはドラミちゃんを心配させるドラえもんがどうしても許せない。
それで早食い競争で決着つけることになったんだよ」

のび太とスネ夫が事の経緯を説明する。これはいわば結婚前の父と婿の対決にも似たものだと。
ドラえもんは大食いには自信があるらしく、7杯目を食い終わって余裕の表情。爪楊枝で歯を掃除する仕草まで見せている。
キッドも負けずと似たような仕草を見せている。

『さぁて大食い対決もいよいよ盛りあがってきました〜!!実況は私、ジュドー・アーシタと、解説のジャイアンさんでお送りしております!』

ノリノリで実況アナしているジュドーと、どういうわけか解説役をやっているジャイアン。ジャイアンは8杯目のラーメンの解説をし始める。

『おお、これは!味噌ラーメンで来ましたか!!』
『醤油とどう違うのですか』
『味噌は醤油と違った味わいがありますが、結構腹に来るんですよ』

まるでどこぞの番組の解説役のような物言いのジャイアン。これにのび太達はげんなりしていた。ジャイアンがどんな料理を作ったかを
覚えているからだ。それなのでぬけぬけと解説役をするジャイアンに不満気だ。

「ジャイアンが言う事じゃないよな」
「ああ。アレは食えたもんじゃ無かったからなぁ」
「ああ、ジャイアンシチューでしょ?」
「美琴さん」

いつの間にか美琴がやって来ていた。朝ご飯を食べるつもりで来たが、予想外の展開に驚きのようだ。
因みに彼女の服装は常盤台中学の制服である。

「あれは実際のところ、どうだったの?」
「ご周知の通り、あれはもう人間の食う代物じゃなかったですよ」
「セミの抜け殻が入ってるし、匂いだけで鳥が落ちましたよ。アレで何羽が犠牲になったか……」

ジャイアンが過去に作った「ジャイアンシチュー」の逸話は有名。のび太達曰く「ショッカーの改造人間でもハライタ起こすレベル」
のゲテモノで、匂いだけで犬や猫さえも卒倒する。その効果音は「ドロ〜リ」「プウン」など、
「妖怪人間」も裸足で逃げ出しそうな領域。材料はとにかく鮮度を考えない凄まじさであり、涙を出して舌が飛び出るほどの味を出す。
はてには別の機会に「ディナーショー」をやろうとし、自分で味見してみたら自分が倒れる料理を作り出してしまうほど。
そのため後年、ジャイアンの歌がバラエティー番組のネタになった時、彼の料理にも触れられ、時の料理家たちからは「料理を冒涜している」と
酷評されたとか。

そのジャイアンがこうして解説役をするというのはちゃんちゃら可笑しいのだ。スネ夫は「本当なら僕の役なのに」と、
憤慨している。

多くの人間の見守る中、ドラえもんとキッドの対決は続く。互いに譲れぬ対決。ドラえもんは「兄」として、キッドは「彼氏」として。
親友同士でのこの対決はある意味、必然かもしれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

−欧州で激戦が行われる前。レビル将軍は執務室で自らが帰還した直後のことを思いだしていた。

 

そもそもレビル将軍は一年戦争時の`戦死者`に数えられていた。
では、何故彼が再び連邦軍の指揮を取る事になったのか。
それには理由があった。

 

 

−ギアナ高地 執務室

「あれからもうニ年か。早いものだ」
「ハッ」

レビル将軍は、一年戦争を連邦軍の勝利に導いた英傑だが、最終局面で戦死したはずである。では何故戦死したはずの彼がここにいるのか。原因は彼の座乗艦が巻き込まれたソーラレイであった。コロニーレーザーの膨大なエネルギーは瞬間的に次元に亀裂を生じ、偶然にも彼が座乗していたマゼラン級戦艦「フェーベ」を飲み込んだのである。そして一年戦争から数年の時間が経過したそして白色帝国帝国との戦争の最終局面時に`帰還を果たしたのだ。
「…その際には一悶着があった。ここで連邦軍の内輪話に光を当てようと思う」

ジョン・コーウェン中将の日誌に記された白色彗星帝国戦役の一幕が紐解かれる……。

 

―2197年 連邦軍本部 ギアナ高地

「そうか、土方が逝ったか」

執務室で報告書を受け取るのは当時の地球連邦宇宙軍の大将で、宇宙軍司令長官であったジーン・コリニー。
彼は連邦軍の中では保守派であり、白色彗星帝国との戦闘で全ての戦力を投入するのは懐疑的であり、
自分を差し置いて本星防衛艦隊のほぼ全ての戦力を指揮下に収めて戦闘に臨んだ「土方竜」の事を快く感じていなかった。
そして自らの配下の艦隊は本土防衛の名目で地球に留ませておいたのだが……。

「アンドロメダが撃沈され、我が軍は総崩れになりつつあります。如何しましょうかか提督!」
「戦いたい奴だけ残ればよい」
「はあ……?」
「土方が戦死した以上、奴の命令に従う道理はない。艦隊を離脱させろ」

この言葉は暗に残存艦隊に敵前逃亡させ、従わない輩は`死ね`と言うのを示していた。
地球の危機になってもこの期に及んで派閥争いをするのか。その場にいた兵士の誰もがそう思っていた。口には出さない。
彼に疎んじられたが最後、左遷、もしくは失脚させられるのが運命だからだ。

「提督!!」

一人の将官が物凄い剣幕で怒鳴りこんできた。ジョン・コーウェン中将。
ジーン・コリニーの命で待機させられていた地球連邦宇宙軍第3地球軌道艦隊の司令で、地球連邦軍きっての猛将として知られる黒人系の将官である。

「何故我々に待機を命じられたのです!!我々の戦力があれば……」

自らの配下にある「ロンド・ベル」を始めとする戦力があればアンドロメダを救えたかも知れない。
憤るコーウェンだが、今となっては後の祭りだ。彼は今からでも善処を行おうと動いたのだが……。

「まったく……土方といい、君といい……どうして面倒事を起こすのかね」
「なっ……」
「君には待機を命じたはずだ。とっとと帰りたまえ」

この言葉でコーウェンの怒りは頂点に達した。多くの若者の命が失われ、
今また地球が戦場になろうとしているのにあまりにも無責任な発言だった。
これが仮にも栄光ある地球連邦軍の宇宙軍司令の言葉か。コーウェンは襟を掴みかからんばかりにコリニーに詰め寄るが……

銃を突きつける音がする。コリニーの傍らにいた元ティターンズ系の少将が銃をコーウェンに突きつけたのだ。

「貴様……!!」
「提督は下がれと言っている!!」
「貴様らはこの事態をなんと心得ているのだ!!土方司令が戦死なされ、我軍が破れ去れば白色彗星帝国は地球を蹂躙するのだ!!
沖田提督の忘れ形見の`ヤマト`が奮戦しているというのに何もなさないと言うのか!!」

上層部のあまりの楽観主義ぶりに殴りかかりそうな声で怒鳴るが……

「やめろ!!これ以上やると……」

コリニー配下の兵士がコーウェンを取り押さえんと殴りかかる。本気だ。
―これが今の腐敗した上層部なのか。コーウェンは心の中で嘆きながら目を閉じた。

―その時だった。銃声が響き、私を殴ろうとした兵士が鮮血を散らしながら崩れ落ちる。
私は何が起こったのか、理解出来なかった。すると提督の顔がまるで幽霊にもあったかのような顔面蒼白のそれになっていたのだ。

「あ、ああ……馬鹿な!?貴様は死んだはずだ!!」

―提督が指を差して震えている。指が指している方角には驚くべき人物が立っていた。それは……。

「久しぶりだな。コリニー中将……いや今は提督殿か」
「貴様が何故生きているのだレビル!?」
「……死んでいたさ。だが、神がそう安々と死なせてくれなくてな」

そこには一年戦争で戦死したはずのかつての英雄`レビル`将軍その人が往時の姿そのままで立っていた。手にはコルトパイソンが握られている。

「し、将軍!?生きて……ご無事でおられたのですか!?」

驚きのあまり目が点になるコーウェンにレビルは笑みを浮かべつつ答えた。コーウェンがこうありたいと願っていた毅然とした武人の態度で。

「タイムスリップという奴だよ、コーウェン。あの時、ジオンの超兵器のエネルギーに巻き込まれたときに艦ごと飛ばされてな。気がついたらこの時代に飛ばされていた。
幸いエゥーゴの艦隊に保護されてな。半年ほど療養していた」

レビルは自嘲気味に言うとコリニーに一つの通達を突きつけた。それはコリニーにとって死の宣告だった。

「ジーン・コリニー!!君は只今を持って宇宙軍司令の任を解かれ、更迭となる」
「ふん。エゥーゴの奴らとつるんで参謀本郡の藤堂平九郎総長を抱き込んだか。だが……」

しかしレビルが突きつけたその書類は政府決定の正式なものだった。軍の上部の国防省の最高幕僚会議の正式な辞令もセットになっている。

「どういうことだ貴様!!」
「見ての通りだ。只今を持って君はもう司令でも何でもないのだよ。ただの`少将閣下`」
「おのれぇ〜!!」
「やれ」
「ハッ、`元帥`」

レビル配下の憲兵がコリニーを強引に連れて行く。彼の副官や彼に味方していた人員も拘束され、連行されていく。執務室にはコーウェンとレビルの2人だけが残された。

「状況はマノク陸将補から聞いている。君の第3軌道艦隊を直ちに出撃させたまえ。私も直接艦で指揮をとる」
「ハ、ハッ!!」
「アーガマ級2番艦の`ペガサスV`を臨時旗艦とする。土方君の弔い合戦だ」

レビルはその後、持ち前のカリスマ性で直ぐ様連邦軍を掌握。人類に勝利をもたらした。

コーウェンら連邦軍改革派にとっては何よりも嬉しい事件だった。これをきっかけに連邦軍は少しづつ腐敗から抜けだしていくことになる。
この時が正に歴史が変わった瞬間だと後の世の軍人たちの間で有名になる出来事だった。

 

 

 

「これから欧州は激戦になる。私も老骨に鞭打ち頑張るとしよう」

レビル将軍は普通に歳を重ねていれば、グリプス戦役時には元帥になっていない限り、退役して然るべき年齢だ。だが、
特異な事態と、地球連邦軍の事を考えると、まだまだ隠居は遠いなと遠い目で窓の外の景色を見るレビル将軍であった。
コーウェンは白色彗星戦役での損失により、レビルの後継者が育っていない地球連邦軍を憂いた。既に引退していてもおかしくない年齢の
老将が鞭打って戦わなくてはならぬ連邦軍の人材不足は深刻だ。若手を進級させるには経験不足である。だが、古代進らならそれに値するだろう。

コーウェンは古代進らの世代に期待し、それが彼等の超特急進級に繋がっていく。

 


−ウェブ握手へのお返事

[19]投稿日:2012年04月12日23:32:44 きむらたかし
レーザー(等、電磁波を含む波)の相殺は「同一波長の逆位相」ですよ。
対C.E.艦艇は“宇宙戦艦ヤマト2199”仕様のゆきかぜでも十分涙目。
メビウスなんか目じゃない回頭速度と逆シャアMS並みの加速だったもんなぁ…

>おっとまたしても。今後、それを逆手に取ってみます。
CE艦艇が波動エンジン艦の驚異的機動性を見た暁にはアズラエルが泡吹くでしょうな。

[20]投稿日:2012年04月12日23:33:46 ゼロン
シローさんだめですか・・・アフリカに必要な人と思ってましたが・・
ところでガトーがドライゼンに乗っているのはソロモンでリック・ドムに乗っていたからですか?<イグルーのヅダはどうでしょうか?>
あと芳佳にガンダムがだめならYF−29はどうですか?

>ガトーがドライセンに乗るのはソロモンでのアレにかけています。リゲルグに乗るかも。ヅダは空中分解起こしますよ(笑)

 

 

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