−2200年 日本 

フェイトは地球へ帰ってきていた。そこではやてと再会。
管理局上層部の動きなどの話をしていた。

「上の方はこの世界をなんて見てる?」
「右派の一部は`脅威`、穏健派と主流派は`友好すべき`やって。わけがわからへんな、本当」

はやてはヴィータと再会し、その面倒を見ていた黒田那佳とも顔を合せている。
その際には扶桑海軍が改装のために送り出している「雲龍型航空母艦」の後期建造分などの旧日本海軍艦艇も
見ている。「わけがわからない」と言ったのはそのへんだろうか。

「それにしてもマジンガーZとかゲッターロボとがが本当にある世界かぁ」
「もしかして……はやて、驚いてる?」
「当たり前や!!あんな18mとか38mの巨体がノシノシと歩いてるんやで!?
これで驚かないってのが無理や……」

はやては死んだ両親の事はハッキリと覚えていないが、自分が使っている言葉が関西弁である事から、
両親が関西出身であることは目星をつけていた。(ただし、ステレオタイプ的なものに比べると穏やかである)
一人暮らしをしていた時期もあるので、アニメなどは古東東西問わず「結構見た」口である。
そのためロボットアニメの産物であると思っていた「マジンガー」や「ゲッターロボ」が本当にある
世界に驚いているようだ。(ヴィータがこの世界に来て間もない頃に`マジンガーZはないよな`
と言ったのはこのためである)

「マジンガーZはもうないけどグレートマジンガーなら現役で動いてるよ」
「グレートかぁ。マニアの間じゃ人気ないんやけどなぁ」
「鉄也さんが聞いたら怒るなぁその台詞」

はやては自分の世界ではマジンガーZはリメイクされた事もあって、若い層にも人気はそこそこあるが、
グレートマジンガーは続編故か、割と軽んじられているという評判があるのを思い出す。Zの
TV最終回や劇場版の
件を根に持つ当時のファンが大人になって制作側に回ったせいもあるのだろうが、
グレートマジンガーは「アニメ続編の先例」としては名を残したが、ロボットとしての活躍は
その2例しか覚えられていない「ロボットアニメの主人公としては不憫」な機体なのだ。
最もはやては「あのサンダーブレイク、フェイトちゃんみたいやぁ」と、好きなのだが。

「私は好きやけどな、グレートマジンガー……Zにばかりスポットライト当たるのがなんとも……」

グレートマジンガーの不憫さは兄弟故の悲劇でもある。それは例を挙げるとキリがない。
タイタニックに対するブリタニック、戦艦大和に対する戦艦武蔵、RX−78−2に対する他の兄弟機などに
共通する。グレートマジンガーも`有名`なZの影に隠れがちな「二代目」なのだ。

「確かにね。この世界じゃその逆で、希望だからね」
「希望?」
「うん。何年か前の戦争の時にZがミケーネ帝国に負けた時、ちょうどゲッターロボも敵との相打ちで倒れてね。
地球連邦軍の本星防衛艦隊も組織的な戦闘能力を喪失して、もうこれまでかと思われた時にグレートマジンガーが
投入されてね。その時の活躍もあってグレートマジンガーはそう見られてるんだ」

フェイトは調べている内に得た白色彗星帝国戦役の際の模様をはやてに話す。当時の絶望的な状況を覆す一端を担った
グレートマジンガーはこの世界では「Zの正当後継者であり、偉大な勇者」として人々の間でも有名な存在だと。

「なんか絵に描いたような状況やね」
「私も最初はそう思ったよ。それと私の`先生`から頼まれてる事があるんだ」
「ああ、例の`黒江綾香さん`?」
「うん。この人の世界を探すように言われてるんだ」

フェイトは黒江から手紙で受け取った一枚の写真を見せる。それは篠ノ之箒の写真だ。

「この篠ノ之箒さんは、ややこしいけど私達とも、こことも別の地球からやって来た人なの。
それで執務官の私ならこの人の世界を探せるだろうからってね。はやて、手続き出来る?私はまだ戻れなさそうなんだ」
「いいで。私もこういう無茶はもう慣れっこや。クロノくんの方面から手を回しておくわ」
「ありがとう、はやて」

はやてはこういう無茶にはもう慣れたようで、ため息をつくと「やれやれ」と肩をすくめる。とても小学生とは
思えぬ会話だが、時空管理局という特殊な組織に身を置いていると、どうしてもこういう大人びた会話を
せざるを得なくなる。しかも二人とも士官相当なのだからなおさらだ。

「あ、そうだ。なのはちゃんに言っとき。階級が一等空尉に二階級特進してるって」
「行方不明扱いになってたからね……上の連中、プロパガンダにでも使うつもりだったの?」
「右派の連中はね。生存が明らかになったからその計画はオジャンになったらしいけど」
「まったく……呆れちゃうよ」

フェイトは時空管理局内で親友をプロパガンダに利用しようとした勢力の存在に呆れを見せた。
英雄というのを必要としたのだろうが……露骨すぎる。

「私はこれから欧州へ向かうよ。なのは一人じゃ大変だからね」
「ゾッコンやなぁ」
「は、はやてぇ〜〜!」
「あはっ。そうやってムキになるのがいい証拠やで」
「うっ……」
「ところでここからどうやってヨーロッパにいくんや?飛行機は運休してるんやろ?」

戦時下である都合上、民間の旅客機などの運行は制限され、民間人の渡航も難しくなっている。
はやてもこの地球へ来て面食らった口だ。そのため欧州へ行く手立ては少ないはずだ。

「その点は問題はないよ。あれで行くから」

フェイトは駐車場にガウォーク形態で止めてある「VF-22 シュトゥルムフォーゲルU(S型)」に目をやる。
はやては「ブフォ!」と思わず口に入れていたコーラを吹き出してしまう。

「ち、ちょっと待ちぃ!あれたしかバルキリーだよね……どうやって手に?」
「シグナムから聞いてないの?フロンティアに行ってた時にもらってね。今じゃ足がわりだよ」
「可変戦闘機を足がわり!?すんごく盛大な無駄遣いな気が……しかもミサイルとか完全装備で」
「実戦で使ってたからね。今じゃ運転も慣れたよ」

サラっといってのけるフェイトにもう何も言う気が起きないはやてであった。

 

 

 

 

 

 

 

−その頃、ギアナ高地では。

「欧州戦線は流動的だな」
「はっ……ダンケルクは放棄。ル・アーヴルへ海軍と宇宙軍艦艇を退避させます」

かつて「フランス」と呼ばれし地域の地図と向きあい、作戦会議を行うレビル将軍以下、その幕僚達。
フランス地域は最も一年戦争で打撃を受けた地域の一つ。旧・パリがほぼ丸ごと湖化しており、
往時とはまるで変化している。そのため軍も部隊を置くのに難儀していた。

「正式にヌーボパリに軍司令部を置き、反攻作戦への準備を本格化させます。バダンやクライシスの
動きが気がかりですが……これは各スーパーヒーローが対応するとのことです」
「ウム。開発部の件は上手く行っているかね」
「零式宇宙艦上戦闘機の64型がロールアウトし、大隊指揮官用に配備を開始。
それとF−Xの試作機のデータが回されてきました。これで機種を絞れます」
「ああ。ルナツーでテストしていた機体のデータが来たのか。どうだね?」

開発部はコスモゼロのマイナーチェンジを続けていた。「零式宇宙艦上戦闘機」は本格的な制空戦闘機
として開発されたが、ブラックタイガーやVFの活躍で宇宙戦闘機にもマルチロール化の波が押し寄せると
コスモゼロは制空戦闘機として特化しずぎたその性格が「汎用性に欠ける」との議会の意向で本格量産は
見送られ、より新しく、汎用性に優れるコスモタイガーUに主力戦闘機がほぼ一本化された。
だが、その空戦能力はかつての零式艦上戦闘機の末裔であるだけあって、コスモタイガーを超えるものを
持っており、ベテランパイロットにはその小回りの良さを惜しむ声が多かった。
そこでコスモゼロを更に改装して第一線級の機材に再び返り咲させる計画が行われた。
内容は機銃の口径を20ミリパルスレーザーからコスモタイガーと互換性のある30ミリへ換え、
エンジン・構造材を新コスモタイガー同様の最新型へ、空力的特性の洗練、アビオニクスの最新型への
などの大規模なモノだが、根本的な変化ではないので「マイナーチェンジ」の範疇に入る。

「新型機はどれもいい性能ですが、コスモミラージュはサイコミュシステム周りの調整に熟練を要します。
コスモパルサーとコスモファルコンの方が未熟な整備兵の手に負えるとの報告が」
「うむ……やはりオーソドックススタイルのほうがピタリくるらしいな。導入費と運用費の計算はさせたのかね」
「はい。コスモパルサーなどは現行機の延長線上なのでそんなに変わりないですが、コスモミラージュは
サイコミュシステム関連の費用が高く付き、財務省は首を縦に振らないでしょうな」
「これでF−Xは絞れたな。新コスモタイガーのライン稼働率は?」
「現在、横須賀、呉、佐世保などの工廠を中心に立ち上げを急いでおります。現在30%余りが既に稼働しておりますが……欧州に
回せるかどうか」

兵器生産分野の責任者はそう報告する。それは前線へおいそれと新兵器を贈れるわけではない事を示していた。
用兵側の要求に応えるだけでも各地域の工廠は精一杯なのだ。

「兵力の集中運用で場を凌ぐしかないか。WWU当時の米軍が羨ましいよ」

レビルは第二次大戦時に破格の生産力で日本を圧倒した最盛期の合衆国への羨望を口にした。
あの時代の米国は「日刊飛行機」、「月刊空母」の様相を呈し、枢軸国側をして「お前ら兵器作りすぎ!
魔法でも使ってんのか!!」と言われた
との伝説が言い伝えられているが、技術が進歩した今では
その時のような大量生産を行う真似は不可能である。そのため「数しか能がない」と言われた
その時代の米国の生産力が羨ましいとこぼしたのだ。できることは兵力を集中的に運用し、隙を突くことくらい。
彼は直ちに欧州兵力の再編を下令。自らも欧州へ赴き、前線指揮を取ると通達した。

 

 

 

 

‐そして。

 

 

‐ミッドチルダを標的に、次元と時間跳躍を行うべく、2200年の南米区間のとある海域へ集結した、
かつてのナチス・ドイツ海軍艦艇。その大艦隊には、我々の知る歴史上ではナチス・ドイツには所属していないはずの艦艇も多数が含まれていた。
強いて言うなら第二帝政期の大海艦隊であるはずの……。

艦容は一見するとポスト・ジュットランドタイプにも見えるほど改装されてはいたが、
プロイセン帝国海軍時代の「ヘルゴラント級戦艦」、「カイザー級戦艦」、「ケーニヒ級戦艦」、
「バイエルン級戦艦」も存在し、その威容はかつて第一次世界大戦で世界第2位を誇った、
往年のドイツ帝国海軍そのものであった。

‐そして。それらを露払い役とばかりに、ビスマルク級戦艦2隻、正規空母「グラーフ・ツェッペリン」、
「ペーター・シュトラッサー」、「エウロパ」を護衛に従えた、
一際規模の大きい`超弩級戦艦`が2隻、威風堂々と次元の穴へ突入していった。
その名は「H級戦艦」。あの戦艦大和をも凌ぐ巨体を誇り、ドイツ海軍のシンボルとしての風格と気品を兼ね備えた巨艦であった。
艦名は「フリードリヒ・デア・グロッセ」、「グロースドイッチュラント」。存在しないはずの鉤十字海軍の夢。
その艦橋にはかつての第3帝国海軍で司令長官を務めていた「エーリヒ・レーダー」元帥の姿があった。

彼は夢を果たすべく、ミッドチルダに大ドイツの歓喜の声を鳴り響かせるために、勇躍、下令した。

「全艦、突入せよ!目標は……`新暦75年のミッドチルダ`!跳躍完了後、直ちにクラナガンへ艦砲射撃を行う!!
ミッドチルダを我がドイツとドイツ民族の手に!!」

これはなのは達がいた時代より後の時代かつ、ティアナとスバルの時代のミッドチルダへナチス・ドイツ軍が次元、時間を
超えて侵攻を開始した事を示していた。しかも時代を超え、Z計画艦までもを含めた「オールスター」編成の大艦隊が、
である。しかもこれは水上艦艇群にすぎないのだ……。海中にまで広がる次元の穴にUボート達が続々と後に続いていく。
ミッドチルダは「三千世界を焼きつくす地獄から蘇りし軍隊」の洗礼を受けようとしていた……

 

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