‐かつて地球を守って戦った「スーパーヒーロー」。仮面ライダー、スーパー戦隊……、そして「宇宙刑事」。
地球はかくも悪に狙われる星であり、彼等スーパーヒーローの暗闘で世界は平和を保っていた。
そして、西暦2200年。銀河連邦の雄にして、現在までに地球出身者も多数宇宙刑事に雇用している「バード星」では
地球が恒星間航行技術を身につけた事を連邦から派遣された使者と接触したことで正式に知り、
直ちに地球連邦と正式に国交を成立させた。
だが、バード星も地球連邦の対鉄人兵団戦線への救援に割ける宇宙刑事は伝説の3大刑事含めておらず、
地球連邦への救援は見送られた。バード星も今、ある星間国家相手の生存戦争の真っ只中であったからだ。

‐銀河 とある空域

銀河に新たに覇を唱える星間国家「ボラー連邦」。かつて「プロトカルチャー」が滅亡した後に
勃興し、銀河系をプロトカルチャーに代わって統一していた文明「シャルバート」が武力支配の愚かさを悟り、平和主義へ転換し、
その姿を歴史の表舞台から消した後、帝政として勃興した。だが、やがて腐敗した帝政に憤慨した国民の手で革命が起こり、帝政が
倒されると、共産主義が盛んとなって連邦制へ移行した。地球で言う所のソビエト連邦といったところか。
現首相の「ベムラーゼ」就任後は衛星国の樹立などを盛んに行なっており、白色彗星帝国亡き後の宇宙の脅威の一つとなっていた。
彼等はバード星に対し突如として宣戦を布告。バード星と戦争状態に突入していた。それを防ぐべく、
銀河連邦警察は伝説の3大宇宙刑事を中心に防衛戦を挑んでいた。

『電子聖獣ドルゥゥ!!』

この空域でボラー連邦の大艦隊相手に単身、戦いを挑む銀色のスーツを纏うこの男こそは伝説の宇宙刑事の一人「宇宙刑事ギャバン」。
彼はかつての宇宙犯罪組織群が滅んだ後も銀河連邦警察「銀河パトロール隊」の太陽系地区隊の任についていた。
彼を初めとする3大宇宙刑事は宇宙で戦い続けていたため、いつしか地球とは別の時の流れを生きており、
彼等もその事はよく認識していた。そのため彼等の姿は地球に派遣された最後の宇宙刑事であった「宇宙刑事シャイダー」が
地球で最大最強の宇宙犯罪組織「フーマ」を壊滅させた時代からさほど変わりのない容姿を保っていた。

この時、ギャバンが呼び出したのは巨大な敵に対する彼の切り札「電子聖獣ドル」。彼に配備されている宇宙船「超次元高速機ドルギラン」
の下部部分が円盤部分から分離する形で現れる。その姿は地球の聖獣の一つ「龍」そのもので、カラーリングと相まって「青龍」と言える。
ボラー連邦の高性能宇宙戦艦にも十分に対抗出来る力を備える。ただし後輩たちの保有する超次元戦闘母艦と違い、ギャバン自身が
ドルの首部分に乗っかって指示を出す必要があるので、あえて言うならそこが欠点か。

『ドルレーザー!!』

ギャバンの号令に従い、電子聖獣ドルは攻撃行動に出る。手始めに目から高出力レーザーを放ち、ボラー連邦の戦艦を2、3隻まとめて撃沈する。
このボラー連邦相手に一歩も引かない戦いぶりはギャバンの歴戦の猛者としての貫禄を感じさせる。
ボラー連邦は巡洋艦と駆逐艦群を突撃させるが、ドルの尻尾による打撃で艦橋部分を叩き潰され、操舵不能となって付近の小惑星に墜落していった。

「おのれギャバンめ……!!」
「て、提督!」
「この場は引き上げて態勢を立て直す!撤退信号を打て」

ボラー連邦艦隊はギャバンによる猛反撃に耐えかね、撤退していった。ギャバンはボラー連邦の艦隊がワープで引き上げていくのを尻目に
凱旋するが、ボラー連邦の物量戦には参っているようで、補給、整備に苦労しているようである。

「ボラー連邦め……日に日に物量が増えていっている。このままでは……」

さしもの宇宙刑事ギャバンも物量作戦の前には抗しがたい。装備も修理が追いつかないほどの連戦で傷ついている。
このままではドルギランは長期のドック入りを余儀なくされてしまう。かつて銀河を震撼させた宇宙犯罪組織「フーマ」とて、ボラー連邦ほどの物量は無かった。
このまま単独で戦っていてはジリ貧だと悟ったギャバンは直ちにバード星にいる銀河連邦警察最高責任者「コム長官」へ連絡を取った。

 

 

また、別の空域では。

『グランドバース!!』

ギャバンとは別の空域ではギャバンの後輩の一人で、地球担当刑事の一人であった宇宙刑事シャリバンが戦っていた。
彼はギャバンと異なり赤いコンバットスーツを身に纏うのが特徴で、コンバットスーツ関連技術の発展により、
ギャバンのコンバットスーツでは『蒸着』に0.05秒のタイムを必要としたが、シャリバン以降は更に早くなって1ミリ秒にすぎない。
彼が呼び出したのは銀河連邦警察でも初の本格的超次元戦闘母艦「グランドバース」である。この艦はシャリバンが地球に赴任する際に
当時、竣工間もない旅客船を買収した上で、短期間で超次元戦闘母艦として改造した代物であるため、戦闘形態に試行錯誤が
見て取れる。その格好は当時、戦闘を偶然目撃した子供に「弁当売りみたいだった」と揶揄されるほど不恰好なもので、
ボラー連邦側も「不恰好」とグランドバースにとってはいささか不名誉な識別コードを与えている。

『バトルバースフォーメーション!!』

グランドバースが変形し、戦闘形態となる。艦砲にはギャバンが地球担当刑事として現役の頃に犯罪組織「マクー」が最終兵器として
開発させていた「ホシノスペースカノン」のデータを基に小型化した「プラズマカノン」と当時最新鋭兵器であった「グランドバスター」
を搭載している。全長は410mと地球連邦宇宙軍主力空母の一つ「グァンタナモ級宇宙空母」に相当する大きさを誇る。

『グランドバスター!!』

グランドバースの肩部からグランドバスターが発射される。その威力はかつての犯罪組織「マドー」の母艦を粉砕出来るほどで、
ボラー連邦の巡洋艦や駆逐艦程度であればまとめて粉砕可能である。だが、ボラー連邦も黙ってやられてはいない。巡洋艦と駆逐艦を囮に使い、
背後から戦艦と空母による波状攻撃を仕掛けた。

「あの不恰好を落とせ!!全隊、攻撃!!」

ボラー連邦はグランドバースの弱点を突いた。グランドバースの武装はプラズマカノンとグランドバスターを失ってしまえばほぼ皆無である。
巡洋艦と駆逐艦を落としている間隙をぬって戦艦と空母艦載機による波状攻撃をかけ、グランドバースを痛めつける。

「ぐわああっ!」

360度の猛攻にグランドバースも無残な姿を晒す。グランドバスターの片方が破壊され、プラズマカノンも失われる。
この猛攻はグランドバースの各所に及び、誘爆により、戦艦形態への再変形不能に陥った。操縦席では計器があちらこちらで爆発し、
操舵系統も機能不全に陥っている。

「く、くそぉ……グランドバースをここまで追い込むとは……」

不意を突かれたとはいえ、グランドバースが撃沈寸前に追い込まれたのは初めてである。さしものシャリバンもこれには
口惜しく悔しがる。

「ふふふ。これまでだな、シャリバン!!」

旗艦の艦橋で勝ち誇るボラー連邦第8親衛艦隊司令「ハーキンス」。巡洋艦と駆逐艦を囮に使った作戦は大成功を
収め、過去に「マドー」討ち滅ぼしたグランドバースを撃沈寸前に追い込んだ事にご満悦なようで、
満足気な表情だ。だが、そんな彼のそんな表情はすぐに落胆へ変わった。

「提督!」
「なんだ」
「付近にワープアウト反応……こ、これは`バビロス`です!」
「ええい、現れたか……宇宙刑事シャイダー!!今一歩の所を……」

シャリバンとグランドバースを救ったのはシャリバンの更なる後輩の宇宙刑事シャイダーであった。彼はシャリバンと対比的に青いコンバットスーツ
を纏っており、「蒸結」にはシャリバン同様、一ミリ秒のタイムで完了する。
彼はシャリバンのそれより更に洗練され、完成された超次元戦闘母艦「バビロス」を持つ。これは事実上、シャリバンのグランドバースをテスト艦として
設計段階から人型形態への変形が盛り込まれて一から「超次元戦闘母艦」として造られたからで、戦闘力はグランドバースを上回る。
シャイダーとバビロスはシャリバンを救うために正にグッドタイミングで飛来したのだ。

「シャリバン先輩、大丈夫ですか!」
「シャイダー、来てくれたのか!?」
「ええ、後は任せて下さい」
「わかった、頼むぞ!」

シャイダーはシャリバンへの通信でそう告げると、猛然とバビロスを突っ込ませる。そして最強の超次元戦闘母艦ともボラー連邦の間で噂になっている
その変形をお披露目する。

『バトルフォーメーション!!』

バビロスの人型形態へ変形は複雑だが、それに見合うプロモーションと戦闘力を誇る。地球の人型兵器に比べれば、
マニピュレーターなどのフレームがむき出しになっている構造だが、質実剛健といった雰囲気を感じさせる。
実際、バビロスは人型兵器としてはグランドバースよりも「完成された」フォルムを持ち、高い戦闘力を発揮する。その一端を垣間見せる。

『バビロスファイヤー!!』

変形を完了したバビロスの胸部装甲板から熱光線が放たれ、ボラー連邦戦艦と空母を付近に展開していた艦載機ごと撃沈する。
バビロスの面目躍如といったところか。ボラー連邦艦隊はバビロスの反撃の前に隊列を乱す。
ミサイルやレーザーを織り交ぜた反撃にボラー連邦も対応しきれず、見る見るうちに数を減らす。

『とどめだ!シューティングフォーメーション!!』

人型形態から更に変形し、拳銃を思わせる姿となり、艦首部分が開いて二連発射口が現れる。この態勢こそ、銀河連邦警察の誇る「超次元波動砲」
を撃つための形態である。超次元波動砲は地球やイスカンダルなど「タキオン粒子」文明が発明した波動砲とは別の原理のものだが、
威力はヤマトの波動砲にも匹敵する。そしてシャイダーは号令を発する。

『ビック・マグナム!!』

まるでシャイダーが拳銃に変形したバビロスを撃つかのようなビジョンが宇宙に映しだされる。それと相まってバビロスの勇名をボラー連邦へ
印象付ける要因にもなっている。このビック・マグナムで旗艦を除いて、ボラー連邦艦隊を撃滅した

「ひどくやられましたね」
「ああ。こりゃドックでかなりの修理が必要だな……グランドバースを引っ張って近くの基地まで運んでくれ」
「分かりました」

バビロスは人型形態から戦艦形態へ戻れなくなったグランドバースを曳航し、戦艦形態へ戻すための応急処置を近くの銀河連邦警察の基地まで
曳航する。シャイダーはシャリバンとグランドバースの護衛を行うとバード星に打電。
この戦いでグランドバースの建造時(改造時)の出自ゆえの弱点が露呈してしまい、グランドバースは長期のドック入りを余儀なくされる。
ギャバンの要請を受け、コム長官が構想していた「三大刑事への地球派遣」の辞令はグランドバースが修理完了するまで、
実に一年間もの間、眠ることとなってしまったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

‐地球

さて、量産型ゲッタードラゴン(改修機)で出撃した圭子、シャーリー、ルッキーニ。彼女らは即席でチームを組み、
ゲッター真ドラゴンとは別に待機していた量産型ゲッターG軍団と対峙。無人と有人の違いもあって優位に戦いを進めていた。

(これはゲッターロボは操縦者が乗って初めてパワーを発揮できる設計であることに由来し、無人のほうが強い通常の兵器と異なる)

『斧なんて使うの初めてだけど……ダブルトマホーク!!』

圭子はレバーを音声入力で引いて、肩のアーマーに収納されているトマホークを射出、すぐに腕に持つ。
オリジナルではあくまで名称は「ゲッタートマホーク」として扱っていたが、この機体では`ダブルトマホーク`と登録されている。
オリジナルとは別の機体ゆえだろう。操縦桿を動かし、人間同様の動きで斧を振るう。

『でやあっ!!』

敵のゲッタードラゴンの脳天にダブルトマホークを突き立て、そのまま叩き斬る。ライガーの機体内に流れていたオイルが血のように飛び散り、
トマホークの刃をオイルで染める。なんともバイオレンスな倒し方であるが、スーパーロボット同士の戦闘では返り血のように相手のオイルが
付着する事はままある。すぐに別の機体がゲッタービームを掃射してくるが、これを跳躍で避ける。

『お返しだ!冥土の土産にもってけぇ〜!!ゲッタービームランチャー!!』

お返しとばかりにゲッタービームランチャーをおもむろに取り出し、連射する。この武器は新型ゲッター炉の高出力に裏付けられ、オリジナル
ゲッターGのゲッタービームに近い破壊力を発揮する。ゲッターレーザーキャノンの強化発展型な都合上、大振りな火器であるが、
普段、小銃などを扱っている圭子にとっては火器は望む所。超視力と併用しての狙撃で敵を叩き落す。

‐ゲッターロボに乗っているせいかしら……体の調子がいい……いや、能力の精度も
上がってる……!?

圭子は不思議と体調がすこぶる良くなり、能力の精度までが上がっている事を肌で感じていた。視認できる距離が全盛期の頃の記憶
よりも上がり、探知できる距離が飛躍的に長くなっているのだ。戦闘が始まった時からか、力がみなぎってくるような感覚を覚えてはいたが、
それは間違いではないようだ。これもゲッター線のなせる業なのだろうか。

ランチャーを担ぎながらとにかく突撃するが、ライガーの軍団が現れる。

『今度はライガーの突撃か!あなたの出番よ、シャーリー!』
『おっしゃあ〜!!スピードならあたしに任せろぉ!』

一端、ドラゴンから分離し、スピード重視の形態たるゲッターライガーへ合体する。無論、雄叫びは必須である。
シャーリーは日頃の鬱憤晴らしも兼ねてか、盛大に叫ぶ。

『チェェンジ!!ライガー、スイッチオン!』

ゲッター2系統の本分たる高速戦闘はシャーリーが追い求めていた音速の世界すら遥かに超えた次元での戦いである。
それをマシーンを通してではあるが、行える事に嬉しさすら覗かせ、ライガーの操縦桿を握る。

『少佐、ルッキーニ、舌噛むなよ?マッハスペシャル!!』

シャーリーもまた、不思議と初めて使うはずのゲッターライガーの機能を理解していた。レバーを引き、
ライガーの持つスピードを最大限発揮する機能に灯を入れる。これは改修された際にオリジナルのパーツが
使われた事によって付加された機能である。他の量産型にはこの機能は搭載されていないので、
これは大いに有利に働き、更にシャーリーの固有魔法である超加速も付加されたため、スペックを超えたスピードを発揮した。

(すげえ、すげえよこれ……加速が終わんねえ!!グングン伸びてく〜音速なんて問題じゃね〜!!)

そう。ゲッターライガーはオリジナルで空中でもマッハ3の速度を発揮したが、この機体ではゲッター炉の出力的違いと
素材が新型合成鋼G(ゲッタードラゴンのものより硬度の向上と軽量化がされたもので、真ゲッターに使われている世代の素材)に換装された
都合上、ブースター出力が高出力化している。更にシャーリーの超加速が加わった(ライガーの周囲にシールドを展開し、それで更に加速させた)
結果、マッハ6以上の速度を叩き出した。

「いっけぇぇぇぇ!!」

他のゲッターはそのスピードに圧倒され、あまりのスピードの違いか、シャーリーには止まって見える。単にドリルで貫くだけでは
つまらないシャーリーは艦に乗っていた時に見た、ある21世紀頃の`仮面ライダー`の都市伝説に従って作られた特撮ヒーロー
ある説で言えば、並行世界で`あり得たかもしれない`仮面ライダーの可能性である)がやっていた技を思いだし、
一部、真似していることにした。要するに超スピードで相手を吹き飛ばし、吹き飛ばした先に先回りし、回し蹴りを食らわせるというもの。
ライガーミサイルで吹き飛ばし、その先に先回りし、後ろから回し蹴りを食らわせるという『どこかで見たような』攻撃をしたわけだ。

『決まった……!』
『あなた……某ライダー、見たでしょ』
『あ、分かります?』
『同僚に付き合って見させられてたし、否応なく覚えちゃって』
『ご苦労様』

すっかりそのスピードにご満悦なシャーリーであるが、ルッキーニが「あたしにも見せ場作ってよ〜!」とぶーたれたため、分離し、
最後のポセイドンへ変形する。

『チェ〜ンジ!ポセイドン!スイッチオ〜〜ン♪』

ルッキーニとしてはパワータイプのポセイドンに乗るのは不本意であるが、こうなればもうどうにもなれとばかりに肉弾戦に打って出る。
因みによく「ゲッターGで空中戦が可能なのはドラゴンだけ」と誤解されるが、実際は全形態が空中戦が可能なように
改修されており、ポセイドンとてそれは例外ではない。スピードはドラゴンとライガーに劣るが、パワーは完全に上回る。

『にゃ〜!!』

無人機のドラゴンの土手っ腹を軽くぶちぬくパンチを見せるが、ルッキーニとしては勢い余ったらしい。ポセイドンのパワーが伺える一幕である。

『ほんじゃ、まとめてぶっ飛んじゃえ〜〜!!ゲッターサイクロン!!』

ポセイドンの首の周りに備えられた装甲も兼ねたカバーが展開されてフィンが顔を覗かせ、最大出力で周って暴風を発生させる。

単に吹き飛ばすだけだが、射線軸上の敵を全て巻き込んで互いに衝突させて自滅させる事で敵を多数撃破できる。ゲッターチームも
行なっている応用法であるが、これは偶然の一致である。

 

 

 

この戦闘の模様は付近の空中管制機を通して、地上の基地にも伝えられていた。その通信を無線で傍受していた智子は
いやにノリノリな圭子の様子に
微笑んでいたが、すぐに漫才と化する。

「圭子のやつ、やけにノリノリね」
「あんなもんに乗れば誰だってノリノリになるさ。ハルカの奴がここにいたら絶対乗りたがるぞ」
「ビューリング、冗談言わないでよ。ハルカが乗ったらゲッターロボじゃ無くって別の何かになっちゃうわよ。`中尉と一つになりたい`とか……」
「確かに。そーいう危ない台詞はあいつの十八番だったな……お前に気があったしな」
「ば、馬鹿言わないでよ!」
「しかし、だ。お前、反論できるか?」
「うっ!そりゃそうだけど……」

智子には色々と`前科`がある。初恋の相手しかり……ハルカは智子と`百合`的な関係を気付こうと階級が追いついた(智子は大尉へ昇進内定だが)
今でも以前同様にしつこく迫っており、この間は小一時間も電話に付き合わされたし、今でもジュゼッピーナ・チュインニと争っているという。
特に外見的にハルカの方が年上になってしまった今では絵面的に「何か危ない」としか言えない。
それは飛行第一戦隊時代の仲間や弟子には絶対に言えない事であり、ビューリングやハルカには口止めしている。(そのためハルカの`デート`に
付き合わされたが)。しかしどこから漏れるかわからないので、智子は気が気じゃないのだ。

「お前の弟子の攻撃魔法……、あれを習得したいんだって?」
「まーね。理論上は不可能じゃないし、要は魔力の運用次第よ」
「そーいうもんかね」

それはなのはのスターライトブレイカーやスバルのディバインバスターの事。黒江がフェイトのプラズマザンバーブレイカーを習得しようと
しているように、智子もなのはやスバルの魔法を習得しようと特訓に励んでいるのだ。なのは達は思わぬ影響を師匠らに与えていたのである。

 

‐互いに切磋琢磨することで力を鍛えること。この頃、既にこの時代に来ているウィッチと魔導師の間では当たり前の事となっており、
それは空戦に限らず、陸戦分野にも及んでいる。更に様々な機動兵器に乗ることで、
実戦での反射神経が鍛えられるというレポートが黒江綾香から連邦軍本部へレポートが提出されると、
連邦軍も興味がある者の機動兵器への試乗を積極的に奨励するようになり、翌年以降、機械好きのウィッチを中心に応募が殺到する事になる。

 

 

 

 

 

‐ギアナ高地

「扶桑海軍は超大和型戦艦の建造を我が国に委託してきたのを知っているな?」
「超大和型戦艦?たしか大艦巨砲主義が生き続ければ建造された大和の強化発展系の戦艦でしたね」
「そうだ。開戦が遅ければ確実に完成させていた日本海軍最大最強の超弩級戦艦だ」

この日、ギアナ高地では宇宙戦艦ヤマト技師長「真田志郎」が扶桑海軍から新造艦の建造を一部委託してきた事の報告を受けていた。
扶桑皇国は本土に打撃を受けた事で、工廠能力を低下させている。特に呉への攻撃は大規模なもので、
超獣戦隊ライブマンが介入しなければ呉海軍工廠は全滅もあり得た。新コスモタイガーの配備申請に来ている古代進、ヤマトの航海関連機器の
改装申請のため、古代とともに来ている島大介に事の経緯を説明する。

「奴さんはネウロイに対抗するために空母重視の建艦計画に切り替えていてな。本来なら大和型を5隻造った後は戦艦建艦を打ち切る腹積もりだったんだ。
だが、リベリオンがモンタナ級を造った事が今回の事態で判明した事で事態が急転した。大和型と同等のポテンシャルを持つ大戦艦の
存在、それがティターンズらに奪われて紀伊型戦艦を一蹴した。そのことへの恐怖が本来、計画段階で廃棄された超大和型戦艦を生き返らせた」

真田志郎は扶桑海軍のモンタナ級戦艦への恐怖心が超大和型戦艦を蘇らせた事に宿命を感じたのか、大艦巨砲主義の`そしり`である
同艦の計画が空母重視の扶桑を戦艦建艦へひた走らせた皮肉にため息をついた。

「確かに紀伊型戦艦をも一蹴できる大戦艦がいきなり現れちゃ、奴さんが慌てるのも無理ないですね」
「そうだ。扶桑は日本帝国より遥かに国力に恵まれている。それ故、空母ができてからは戦艦の更新にあまり関心が無かった。ネウロイとの決戦で
戦艦の火力が必要とされたから造ったようなもんだからな。八八艦隊計画の内、天城型巡洋戦艦は全艦が空母になっているし、加賀型戦艦は
空母の加賀以外は影も形もない。一三号型に至っては軍縮の煽りで建造中止、辛うじて紀伊型戦艦が作られたにすぎないからな」

それは扶桑が強力な空母機動部隊を有している都合上、ネウロイへの艦砲射撃のための浮き砲台としてしか戦艦は作る意義は無く、
更新が軽んじられた事へのアンチテーゼとばかりにモンタナが敵として現れた事は運命のいたずらだと真田は言った。
確かに`過去`の日本海軍は空母機動部隊の先駆者でありながら`古き良き`艦隊決戦`の夢を捨てきれなかった。
`もう一つの日本`とも言える扶桑は空母機動部隊の発祥元として栄えているため、とっくに捨て去ったはずの大艦巨砲主義が、
自身の大和型に対抗可能な大戦艦の出現で息を吹き返したのは運命のいたずらであるからだ。

日本には`望んでも手に入れることは無理`であった大戦艦。扶桑には`望んでいないけど作らないと戦艦がやられてしまうから`という理由で
作らざるを得ない大戦艦。超大和型戦艦は運命のいたずらでこの世に生れ出づる事になったのだ。

 

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