――さて、歴代仮面ライダー達は颯爽とその勇姿をフェイトの前に現した。フェイトはなのはの地球で見た、“数十年前”の漫画の主人公がそのまま飛び出たかのような出で立ちの正義のヒーローがこの世界で実在する事を再確認(以前にライダーマンこと、結城丈二と対面したので)した。

「あなた達が結城さんの言ってた……仮面ライダー…!」

「こいつらと俺たちは因縁がある。ここは引き受ける!」

2号のこの言葉が戦の始まりを告げるゴングであった。2号、V3、Xの3人ライダーは因縁の敵“デルザー軍団”へ突撃していく。その光景はフェイトから見ればヒーロー番組を見ているかのような奇妙さを覚えるが、目の前で展開されるバトルが現実であることを嫌というほど示す。

「トウ!」

2号の豪腕から繰り出されるパンチが立ち塞がる戦闘員を薙ぎ倒していく。

「V3きりもみキィ――ック!」

V3の力と技が合わさった必殺技が唸り、戦闘員は体内の機械部品をまき散らしながら倒されていく。

「ライドルホイップ!」

Xは得意のライドルによる剣術を披露、戦闘員を細切れに斬り捨てていく。フェイトはデバイスを持っていない都合上、戦闘に積極的に参加できない(魔法自体はもちろん使用可能だが、高位魔法の行使および安全確保にはデバイスの補助が必要な場合も多い)。それに戦闘員に至るまで電気エネルギーを吸収、跳ね返す力を持つデルザー軍団との相性が悪いため、彼女はライダーに守られる立場になってしまっていた。(ストロンガーが電気エネルギーを無力化させられたハンデを乗り越えられたのは、超電子ダイナモの埋め込みを伴う再改造を行なったおかげである)

(……悔しい…!私だって強くなったつもりなのに……電気エネルギー自体が効かない敵がいるなんて!)

内心でこれまでにない強大無比な敵と出会い、自らが研鑽してきた力がその敵にはほぼ無力と示されてしまった事に激しい悔しさを滲ませるフェイト。守られる立場に立つことがどれほど悔しいものなのかを実感する。歴代仮面ライダーが戦っているのに、自分は何も手助けできないという事実に打ちのめされる。











――戦闘員を打ちのめし、改造魔人達と対峙する三人ライダー。久しい改造魔人らとの再戦に闘志を燃やす。


「久しぶりだなマシーン大元帥、それと磁石団長、ヨロイ騎士」

「ハハハッ!我らデルザーは大首領様ある限り何度でも蘇る。あの時言ったはずだ、デルザーは滅びぬと」

「そのようだな」

2号ライダーにそう豪語するマシーン大元帥。かつて、ストロンガーが現役の仮面ライダーだった1975年の12月、最終決戦で7人ライダーに敗れ、敗死する今わの際に大元帥自身が言い残した“デルザーは、デルザーは滅びぬ!”の言葉が真であったと実感するライダー達。そして取っ組み合いの格闘戦を開始する。パンチやキックなどのオーソドックスなものから投げ技やエルボー、ラリアットなどのプロレス技、はたまたカポエラ(正しくはカポエイラ)に至るまでの格闘技の乱舞である。それらが地形を変えるほどの破壊力を発揮するのだから、環境には思い切り優しくない対決である。



「ライダー返し!」

2号ライダーの柔道を応用した投技がマシーン大元帥に炸裂する。高空から背負投の要領で一気に地面に叩きつける。背中から叩きつけられた形のマシーン大元帥だが、さほど堪えていないようで、平然と立ち上がる。そして大元帥の額からのレーザー光線による砲撃をかわすと、2号は自身最強の技の態勢に入る。

「トウ!ライダーァァァ……」


空中高く飛び上がり、自身を横回転させて更に捻りを入れる。空中でこれらを行うには体操選手なみの柔軟性がいるのだが、彼らはそれを人間であった過去に余裕でクリアしている。これが2号ライダー単独での最強の必殺技……

「卍キィィィック!!」

――ライダー卍キック。V3のスクリューキック、ストロンガーのドリルキックの祖となった必殺技の一つ。威力は2号の能力がパワー重視なために一号のスクリューキックの数倍。ドリルのように回転しつつ、キックがマシーン大元帥に迫る――!












「高速熱線、発射!」

――こちらはヨロイ騎士とXライダー。かつての戦い以来の宿縁である。ライドルと剣の鍔競り合いから、ヨロイ騎士は両腕の剣をこすり合わせ、交差させる。そこから熱線を発射し、周囲を爆発させる。Xライダーは優れた反応でそれを回避し、体内のマーキュリー回路をフル稼働させる。余剰エネルギーで周囲の地形を変えるほどの爆発を引き起こし、Xキックを超える最強の必殺技を発動する。

「貴様等には見せるのは初めてだが……真空地獄車ぁ!!」

現役時にマーキュリー回路装着後の決め技として多用した真空地獄車。飛び掛って組み付き、回路から供給されるマーキュリーパワーで車輪状に大地を高速回転し、そこから相手を空中高く放おり投げ、そこからXキックを放つという柔道の影響が色濃い必殺技である。更に経験を増した現在ではそれらプロセスが高速化され、地面に高速で何度も叩きつけるため、衝撃波が戦場からは離れているフェイトにも伝わってくる。

「ひゃあっ!離れているのにこんなに凄いなんて……」

「あれがXライダーの必殺技さ。……おっと、磁石団長、この子に手は出させんぞ」

V3はフェイトを守りながら改造魔人の一人“磁石団長”と戦闘を開始する。V3は仮面ライダーの中では古株である。体の性能そのものは改造魔人には劣る側面もあるが、それを補って余りある経験がV3の武器であった。

「トウ!」

回し蹴り、次いでかかと落としを加えるV3。フェイトをかばいつつも見事な格闘戦を展開する。だが、磁石団長は余裕の表情を崩さない。

「ふふふ……。V3!この俺様が磁力を自在に操れるのを忘れていたな!」

「チィ……しまった!」

V3は歴代仮面ライダーの中では活動補助用に備えられている電子頭脳の対電磁波防御がX以降の仮面ライダーに比べて、一号や二号と比べても弱いという弱点がある。ましてやストロンガーにも通じる磁力を誇る磁石団長とは相性が悪い。前回(1975年)も磁石団長に対し対戦自体は互角だが、作戦にはまってしまったので、V3は雪辱を狙っていたのだが…。

「マグネットパワー全開!」

磁石団長は自らのマグネットパワーを全開にし、V3に浴びせる。すると。

「ぐぁあああっ……」

「思えばお前の超合金製のボディが命取りになったな」

V3は歴代の仮面ライダーの中ではボディの構造上、兵器レベルの強い磁力を直接浴びてしまうと補助用電子頭脳に悪影響を生じてしまう。そしてそのダメージは風見の生身の頭脳にも波及する。頭を抑えてのた打ち回るV3。そしてそれをどうすることもできないフェイト。フェイトはこの時、初めて自分の無力を嘆いた。どうすることもできないのだ。愛機のバルディッシュ・アサルトも無く、自分の魔法の変換属性である電気もデルザー軍団の前には効かず、逆に弾かれる。そのためバリアジャケットで自分の身を守るので精一杯というどうしようもない状況。歯噛みすることしかできない事実に打ちのめされた。





















――さて、戦線を次第に好転させつつある地球連邦軍は逐次、前線の兵器を次世代機へ世代交代させていた。例えばここ、旧欧州の東欧戦線では……

「さすがはジャベリンだ、小回りが効くぜ」

ジェガンからジャベリンへ機種転換したパイロット達は口々にその機動性を褒める。ジェガンでは鉄人兵団兵を追いきれずに取り逃がすケースが多かったが、ジャベリンではそれが激減した。高性能化による恩恵で高機動機動時の旋回半径がジェガンの半分以下、小型化第一号のヘビーガンと比べても小さく、その辺はジャベリンの優れた点だ。

「さて、とコイツでとどめだ!」

背中に備えられているジャベリンユニットがせり出す。連邦軍がコスモ・バビロニア建国戦争の際にショットランサーに散々に辛酸を嘗めた経験を基に地球連邦軍がそれを再構成したこの武器はビームコーティングが先端部分に施されているためにビームシールドを貫通できる。これがジャベリンの先行配備型がクロスボーンよりも強大なザンスカール帝国に奮戦できた理由である。後期生産型では弾頭射出時の初速が高速化されており、鉄人兵団の通常歩兵程度であれば逃げる間もなく撃墜できる。射出されたジャベリンの弾頭はその高初速とガンダリウム合金製の鋭い弾頭部で兵団兵を貫き、貫通した後、近くの無人ビルに突き刺さる……。







――空では、新コスモタイガーの生産が軌道に乗り、欧州戦線へ矢次に送られて、装備を失っていた部隊へ優先供給されていた。

「おお、これが新コスモタイガーか。前のより精悍になったじゃないか。塗装がJAPONの奴らのものというのは気に入らんが……」

塗装が旧日本帝国軍機というのが、ヨーロッパ系の国、それもフランス出身の彼らは気に入らないようだが、上層部の決定では逆らいようがないし、今の連邦軍ではパーソナルカラーは戦功を上げた部隊のみの特権なのだから。

「おい聞いたか?ドイツの第71戦闘航空団はパーソナルカラーが認められたらしいぞ!」

「のわぁ……嘘だろおい!」

彼らは旧フランス空軍を祖に持つ部隊だが、彼らの戦績は振るわず、装備を全損してしまったために祖国の旧空軍カラーに機体を塗りたくる夢は遠のいてしまった。彼らは旧ドイツ空軍をライバル視しているが、先を越された事に腹が立っているようだった……。














――こちらはロシアの欧州側。ここではコスモタイガーよりもVFのほうが需要が高く、この地域に展開する空軍部隊の装備はVF主体となっていた。

「お、帰ってきた」

基地の整備員は滑走路にランディングし、格納庫から帰ってきたVF-11が格納庫に戻されていく。VF-11は癖がない素性から前線で好まれ、旧式化したとされるこの時期においても複数機が現役稼働中であった。

「戦果はどーだった?」

「敵を一個中隊ほどミサイルでぶっ飛ばしてやったぜ。これで俺も対地エースだぜ」

VFはコスモタイガーよりも対地攻撃に使えるミサイルの量が多い。特にVF-11以降はスーパーパックなどの性能向上もあって搭載量が増加。VF-17には及ばないが、それでもかなりのミサイルを積み込める。そのため現地で簡易攻撃機として運用され、この戦役に於いては本来の仕事である制空任務よりも対地攻撃撃墜王をかなり量産していた。

「そりゃおめでとう。コイツにはまだまだ頑張ってもらわんとな」

VF-11は既に調達が打ち切られた旧世代機である。既にAVFや更に次世代のYF-24の系列機が戦力化され、そちらが制空任務の花形として君臨している現状、旧式化して久しいサンダーボルトは標的機に転用された機体もかなり存在する。が、前線にはそれでも余りある機体が残置したもの、新規機体の調達が打ち切られた事もあって、中には異なる型のニコイチ修理が行わる事もあり、彼らが使う機体は中期生産型と後期生産型のニコイチとなっていて、ガンポットが中期型までの銃剣付きの型であるなどの正式型との差異がある。

「ガンポットのこの型よく用意できたもんだ。もうレアかと思ったんだが」

「部品自体はまだかなり存在しててな。それのうちの新品同様の状態のを組み立てた。どうだ?」

「いいよ。銃剣のおかげで敵を追い散らせることも多いしな」

旧世代機もこのように意外な活躍を見せる場もあるが、また別の所では最新兵器が華々しく活躍を見せていた。










――旧・ニューギニア付近 東南アジア

ここに新たに送られて来た最新可変戦闘機“VF-25F”と“VF-25S”。東南アジアに相応しい塗装に塗りたくられたこれらは主導権を握ったこの戦線での最後の仕上げとして送られた感が強い。この戦線には既にZ系モビルスーツやZZが投入され、陸戦での勝利が既に確定されている地域への投入は異論が出されたが、ゲリラに手を焼いているという現地部隊の要望により配備がされた。



「諸君らはこれから敵戦力の掃討についてもらう」

「了解です」

VF-25を受領したこの空軍部隊は旧日本国国防空軍(21世紀に自衛隊が昇格してできた三軍の空軍)の後裔にあたる部隊。先祖以来の因縁があるこの地に派遣されたのは宿縁であろう。離陸し、空からあらゆる探知方法で敵を探す。

「いたぞ!8時方向に4人潜んでいる!」

熱探知で鉄人兵団兵士を発見した彼らは早速任務を開始する。ガンポッドの安全装置を解除、火器管制システムを対地攻撃モードに切り替え、森林を縫って逃げるゲリラ化した彼らは体の塗装をウッドランド迷彩に変えており、彼らなりに地球環境に適応しようとしているのがわかる。数秒間のガンポッドの一斉攻撃でカタがつく。残ったのは機能を停止した屍だけだ。

「隊長、前方に敵を発見。ヒイフウミイ……かなりいますよ」

「欧州戦線で報告された高速ユニットを装着した奴もいるな。水面下で僅かながら補給を受けたようだな。だが、トルネードパックを装着したこの最新鋭、VF-25に立ち向かえるものか。歓迎してやれ!」

トルネードパックという希少かつ高価な装備の装着が末端のパイロットにまで許可されているあたり、彼らの練度の高さが伺える。彼らは編隊を組みながら突撃を敢行した。狙撃型のG型や通常型のA型が編成に組み込まれていないのは、彼らが“突撃ラブハート”な性質を持っているからで、ドックファイトに最適化されたF型が編隊の主力を占めていることからもそれが分かる。ややあって、ミサイルの雨霰が兵団に降り注ぎ……。






























―北米戦線 旧デトロイト市付近

ここ北米では白色彗星帝国やゼントラーディ軍の攻撃により発生した荒野が他の地域よりも広範囲に及び、旧アメリカ合衆国の主要都市の半分以上が荒野と化していた。ここデトロイト市も例外では無かった。北米にはそれを利用して鉄人兵団が拠点を築く事が多く、地球連邦陸軍はそれらを破壊するために火砲を使っていた。そして少数しかないガンタンクよりもむしろ、旧態依然としていたはずのMBTである61式戦車の数が多かった。



「偵察機より入電。距離1500m付近に敵拠点を発見。各車両、砲撃準備!」



ミノフスキー粒子のせいで衛星からのデータリンクシステムを無力化させられた61式戦車はザクなどのモビルスーツに辛酸を嘗めさせられ、軍事アナリストなどに“もはや戦車の時代に非ず”などと大手を振って馬鹿にされた時代もある。が、デストロイドやモビルスーツに比べて安価に手頃な機甲戦力を確保できるという費用対効果の観点から再配備が決定された。そのため機甲師団も再編され、三個師団が北米に回されてきたのである。装備が61式のレストア車なのは、新規開発が打ち切られていたのと、次期MBT計画がガンタンクの系譜に連なるモビルビークルに統合されてしまったために棚上げされていたからだ。これをとある世界の戦車フリーク“秋山優花里”が聞いたら卒倒しそうな話である。




「撃て!!」

61式戦車数十両が一斉に砲撃を始める。白色彗星帝国の各地の地上部隊掃討に意外な活躍をみせた事で往年に近い地位を取り戻しつつある戦車の勇姿である。発射された砲弾はコスモタイガーの正確な弾着観測によってミノフスキー粒子の影響下でも80%の命中率を記録。兵団の駐屯地は吹き飛んだ。


「あとは逃げ出した兵士の掃討のみ。全車、Panzer vor!」

履帯と電気エンジンの音が響く。61式は化石燃料が地球から枯渇した後の開発年度の都合上、ディーゼル機関やガソリンエンジンなどの内炎機関は搭載されず、俗に言うエレカである、電気駆動式の装甲戦闘車両である。22世紀最終盤の2200年次ではバッテリーも最新型の大容量かつ大パワーのものが新たに搭載された。現在では21世紀頃のMBTよりも航続距離が長いという。

「お、いたいた。基地整備用のロボットだ、全車両、あいつらの中央を突破するぞ!」

鉄人兵団の非戦闘ロボでも数が多ければ戦闘要員以上に厄介である。そのため先にこれらを撃滅するのが陸軍の最近の戦法だ。滑腔砲が一斉に火を吹き、次いで機関銃が掃射され、戦闘要員と違って彼らは地球連邦軍の火器に耐えられる装甲を持たない。みるみるうちに数が減っていき、数分で最後の一体が倒れ伏す。その残骸を61式の履帯が踏みつぶしていく。彼らが目指す先はデトロイト市跡にある補給基地である。補給車両や索敵車両を伴いつつ、コスモタイガー隊の上空援護を受けながら堂々と進攻していく……。





















――このように各地で地球連邦軍は戦局を好転させつつある。スーパーヒーローらの助力も含まれるもの、急速に好転できたのは正に僥倖という他無かった。



――メカトピア レジスタンス運動本部

「報告します。首都近郊の都市部を奪取しました。軍の元共和国派が協力してくれました」

「ご苦労様。これで首都進攻の足がかりを掴んだわね」

レジスタンス運動のリーダー……仮に今はその姿から“リルル”としておこう……は地図に新たにレジスタンスが取り戻した都市を書き加える。レジスタンスは今や軍から脱走してきた、元共和派の兵士らも大勢合流しており、今や“自由メカトピア軍”との呼称を名乗り、大手を振って敢然と圧政者に立ち向かっていた。武器の援助はメカトピア近くを通りがかった地球連邦軍の新マクロス級移民船団が行うようになり、組織の体裁が整ってきている。

「同志の救出作戦を承認して頂けますか」

「よろしい。この街を奪取出来れば敵に圧力をかけられる。会議にかけましょう」

「ありがとうございます」

彼らはレジスタンス運動の最大勢力だが、他にも抵抗運動そのものは多数あり、小勢力を統合・再編しながら正規軍に対抗できる力を確保していた。今は各勢力の元リーダー達との合議で作戦を決定していた……。この日の会議は元々休日だった日なので“会議は踊る”状態になり、決まったのはその二日後にもつれ込んでしまったとか。時に西暦2200年のことである。戦いは重要局面を迎えようとしていた。



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