短編『異聞・扶桑海事変』
(ドラえもん×多重クロス)



――ある日、飛行64戦隊基地

「御前会議で竹井の爺さんが内親王殿下に進言したろ?あの後、貴族院と枢密院が総辞職する話まで持ち上がっちまったんだよ」

「何故なの?」

「考えてみろ。今生陛下が御前会議に出ずに内親王殿下に国の重大事を押し付けた上に、グダグダで通るはずない案が内親王殿下の一存でOKにされたんだ。面子丸つぶれな上に御前会議の存在意義を否定されたに等しい行為だ。今生陛下も重臣から嫌味言われ続けるハメになったし、お前の昇進が遅れさせられる要因になる」




黒江は元の未来での記憶を頼りに武子に話す。それは武子自身の行為が上層部に不満分子との認識を持たれ、1944年でやっと大尉になれるかどうかとされてしまった歴史上の事実。

「私が参謀本部にとっての不満分子?そんな……」

「いくら江藤隊長の仲介があるとはいえ、今のお前はたかが新米の一将校だ。そんなのがいきなり御前会議に案を提出すりゃ、参謀本部のお偉いさんらの反感を買うのは至極当然のことだ」

「それじゃどうしろっていうのよ!このままじゃ大陸方面の戦線は間違いなく崩壊するわ!参謀本部や軍令部に何の打開策があるっていうのよ、綾香!!」


武子の言い分は最もだ。いくら精鋭部隊を新設したところで現状焼け石に水の感が強い。そして状況の打開策を上層部が持っているはずないのだ。

「ヒガシが予め西園寺卿や長老達に接触している。長老達もこの状況の打開のために動いてくれている。前よりはマシになるだろう。それと海軍の堀井大将だが……竹井の爺さんに連絡取ったらきな臭い動きをしてる事が分かった。最新鋭の紀伊型を全て自分の手元に置いたそうだ」

「紀伊型って……あの天城型巡洋戦艦の改良型の?」

「ああ。新鋭戦艦は連合艦隊旗艦に任じられる通例を破って第二艦隊に全部回しやがった。第一戦隊がボヤいてるそうだ。まぁ、軍令部の隠し球に比べりゃ玩具みたいなもんだが」

紀伊型戦艦はこの時代における最新最強の艦艇である。その完成艦の全てが第一戦隊へ配属されなかったのを策略だと断じつつ、更なる船を軍令部が計画している事を示唆する。

「隠し球?」

「○サン計画の新鋭戦艦だ。全長265m、基準排水量65000トン、46cm砲9門の超弩級戦艦。名前は大和。次の戦でのウチラのシンボルだよ。7年後はそれくらいスペックないと第一線はれねーんだ」

黒江は1945年時点の記憶があるので、『次期戦艦』のことも当然知っている。大和はこの時期から見れば化け物だが、7年後では『攻撃力の優れた戦艦だが、やや防御力に難あり』との評価を受けている。これはモンタナ級が竣工したことで扶桑海軍の戦艦の防御力の優位が消えた事による。

「私は御前会議でこれを堀井のジジイに叩きつける。少尉としてじゃなく、『少佐』として。今、ここにいるのはお前から見りゃ7年後の私だ。アイツらもそうだが、この時代に生きてる『自分自身』の体におそらくは一時的に魂が宿ってるだけにすぎないだろう。いつ元の未来に戻るかも分からねー。だからこの戦いは後悔のないようにしたいんだ」

黒江は自分の精神と肉体のバランスが不釣合いな状態になっている現状を自嘲しつつも7年間抱き続けた想いを吐露する。

「未来を変えるには多少の荒療治は必要ってわけね……。」



「そういうこった。戦車にしたって、歩兵の支援兵器としか考えてないノータリン共が大勢を占めてるから、未来情報で完全に息の根止めてやるさ。75ミリ砲のパンター戦車やパーシング戦車っていう90ミリ砲戦車の情報を陸軍機甲本部に流せばパニック状態になるのは目に見えるからな」

陸軍がようやっと設立した陸軍機甲本部の面々は慌てて研究を行なっている。そこへ大戦後期に登場した対戦車用戦車の情報を流せば危機感を抱くのは目に見える。何もかもなかった大日本帝国と違って、扶桑には膨大な地下資源がある。トーションバー・スプリング方式だってその気になれば容易に製造できる冶金技術を有している。それを活用すれば戦後第一世代MBTも早期に製造できるというのに、だ。


「7年後に未来と交流した軍はどうなるの?」

「戦車関係や航空関連の部署から艦艇の部署に至るまでどこも大混乱だよ。軍需産業の長島飛行機なんて発動機部門が原因で財政悪化して傾いたぞ。軍からの大口注文が無くなったからな」

「あの長島が?」

「そうだ。あそこが作る2000馬力発動機の誉発動機が奴さんの世界で評判最悪でさ。派遣された軍人やエンジニアから欠陥エンジンだとかレース用エンジン作ってんじゃないとか設計者とか軍の担当官を前にして散々に罵りまくられて、誉の本格生産をご破算にせざるを得なかった。それが元で発動機部門の財政が悪化、未来世界でのルーツが同じ自動車メーカーに身売りするとか話も出てるくらいだ」


長島飛行機は未来世界において過去に存在した中島飛行機に相当する。未来世界においての中島飛行機は占領後に軍需産業から完全に足を洗い、自動車メーカーに転身して23世紀まで存続している、発動機部門がそこの子会社化されるという話もまことしやかにささやかれている。

「へぇ……世の中分からないわね」

「私も未来世界に行ったら色々あったしな。おかげで口調が男っぽくなっちまったぜ」

黒江も自分の口調が男っぽくなっていることは自覚していたようだ。以前の女言葉が残っていた時とは180度異なって、「くそったれぇ!」や「うぉ……あちぃ〜」など荒い言葉使いは当たり前。語尾も「だわ」などから「だぜ」などのフランクなものへ変化していることがその表れだ。

「本当、以前とは大違いね。未来世界じゃそんな言い方が当たり前なの?」

「女言葉使う機会がグンと減ったからなぁ。向こうじゃ男女平等で言葉の垣根が無くなったから内輪じゃフランクな物言いするのが当たり前になってるんだよ」

そう。日本においての男女の言葉使いの差は20世紀後半以降から縮まり、連邦樹立後に公用語の一つとして英語が使われるようになってからそれが更に加速した。黒江は1945年時は主に未来世界に在住しているので、自然とそうなったのだ。

「時代の変化って奴ね……で、あなたは見事に適応したって訳?」

武子は黒江のフランクさに若干の羨ましさを感じた。自分ではこうはいかないだろうと分かっているからだろう。武子を一言で表わすならば“この当時の智子ほどではないが、堅物ながらもユーモラスを解する”。そのため戦隊の調整役になっていた。もっとも、それは今や逆行してきた黒江が担っているが。

「ああ。色々な武隊にいたし、航空審査部にも籍置いてるから自然と適応力上がったんだ。未来の機械や兵器だって扱えるぞ」

「未来の機械って……あなた大丈夫だったの?その……カルチャーショックとか」

「慣れちまえば簡単なもんさ。噴流推進式の戦闘機とか乗り回してたし」



未来世界でVF-19Aを乗り回している事を指してそう言う。この時代ではレシプロ機が航空機の常識なので、噴流推進式とつけないとジェットエンジンだと理解されないからだ。

「噴流推進式……そうね。数百年後なんだからそうなってて当たり前ね」

「いやぁ、その。7年後にはそうなるぞ」

「え、えぇ〜!?」

「敵がどんどん強く、速くなるからレシプロじゃ限界が来てな。噴流推進が脚光浴びて、44年ごろにはカールスラントで実用試験に入るんだ。それでレシプロの限界点の時速800キロを超えた機体が続々登場、亜音速くらいは当たり前の世界が10年もしない内に訪れるのさ」


「亜音速……どんな世界なのだしら」

「まっ、未来で極超音速世界を味わった身としちゃ入門編だけどな♪」

そう。バルキリーやコスモタイガーがある時代においては音速程度の速さは自家用機や工作系の学生の作るホビーでも出せる速度。特にフロンティア船団の学園の実習用のVF-1でも音速程度は出せる。それを指して入門編と言ったのだ。

「未来の軍用機ってどんな速さなのよ」

「宇宙空間で戦うのが前提条件だから、マッハ21は有に超えてるぞ。最新鋭機じゃマッハ26行くかってところだ」


「……」

「ああ、あまりのショックで気絶しやがった!おいしっかりしろ!傷は浅いぞ〜!」

マッハ20というあまりの速さに考えただけで目が回った武子だった。しかしなのはやフェイトなどの一流の魔導師は大気圏内ではVF-19Aに追従可能な速度を出せるのだ。

(これくらいで気絶してたらあいつらの速さを聞いた暁にゃ泡吹きかねないぞ……。特にフェイトなんて斬馬刀持った状態で高速機動やらかすし)

そう。黒江の愛弟子となるフェイト・テスタロッサ・ハラオウンはバルディッシュ・アサルトのザンバーモードを持った状態で高速飛行可能だ。それは黒江も瞠目するほどのものだ。彼女のように小回りの効く高機動はISでようやっとという状態だ。

(そいやフェイトは攻撃力を重視した引き換えに日本の和室とかでの室内戦じゃ使えないとか言ってたな。確かにあれじゃ室内戦じゃ刺さるよなぁ、天井に)

かつて、フェイトは子供時代に狭い室内戦でザンバーモードを使わない理由を話していた。至極当然な理由だ。なので仮面ライダー二号からZXの電磁ナイフを手渡されてからはそれを使うようになったとの談だ。

(ヒガシの奴が確か電磁ナイフを持ち込めたーなんて言ってたっけ。あとで確認すっか)

武子を担いで部屋まで運ぶ。その後、智子&圭子と対策会議その2を行った。会議では状況の更なる改変と部隊練度の平均について話しあった。

「生き残りの奴らは1942年以降の精鋭部隊と比べても遜色ない練度なんだけど、やっぱり新規の補充兵達は練度が落ちる。名簿見ると後々の部隊長級もいるんだけど」

「誰だ?」

「角丸美佐。元の時代だとワイド島分遣隊隊長してた子よ。この頃は……坂本や若本と同年代だから12歳くらいね。固有魔法は金剛力……一度、元の時代で戦闘記録見たけど、十分にエース級よ」

圭子が新規に配属された補充兵の中に後々にエースとなる逸材がいた事を報告する。そのウィッチの名は角丸美佐。1944年時には、ワイド島分遣隊隊長の任に就いているウィッチで、飛行50戦隊でも名手の一人として名を馳せたという。それがどういう巡り合わせか、江藤や北郷たちの所に補充兵として送られてきたのだ。

「あー、思い出した!あいつか。噂は聞いた事ある」

「そ。今回の陸軍側の補充兵で一番見所あるのはその子よ」

「こういうのは運が良いというべきかしら?」

「さーな。とにかくだ。私は江藤隊長に訓練カリキュラムを具申してくる」

「例のアレ?」

「そだ。新兵共を手っ取り早く鍛えるには後世の訓練カリキュラムが役に立つ。この時代のは非効率にすぎるからな」

黒江が考えている訓練カリキュラムは後世の航空自衛隊やその後身の国防空軍などで採用され、2201年時の連邦空軍にも時代相応の手直しがされた上で使用されているカリキュラムを基本に、時空管理局の訓練カリキュラムを参考に、ウィッチ用に内容を修整したもので、この当時としては先進的すぎるとも取れる内容である。これは第二次大戦における大日本帝国の航空要員育成計画の失敗を知った事で抱いた危惧となのは達を育てたり、自身が戦闘機乗りとして戦った経験も加味されていた。それを江藤へ提出するつもりなのだ。

「行ってくる」

江藤の執務室へ足を運ぶ黒江。これは彼女の秘中の秘としていた歴史改変のトリガーの一つ。本来の歴史においては「激戦で人手不足だから陸戦ウィッチを含む他兵科から転向させる」という強引な手法が取られたことすらある扶桑軍全体の育成法の改善を願う黒江のこの行動は吉と出るか凶と出るか……。


















――扶桑海軍良識派は主流派の策謀を阻止すべく、元老を抱き込んでの行動を開始していた。

「西園寺卿と陛下が了承なされた。これで万が一の場合に備えて堀井の暴走を止める手はずは整った」

「あいわかりました米内さん。○三計画の戦艦の対空艤装は修正させましたし、紀伊型戦艦を一部、第一艦隊に配置換えさせる辞令を連合艦隊司令部に通達しました。これで名目は立ちましたぞ」

米内光政と山本五十六である。彼らは裏で手を回し、先立って紀伊型の配置換えなどの策略を仕掛け、成功していた。後の大和型の存在を知った事で、紀伊型戦艦を消耗しても大和型で補充すればいいと結論づけたのだろう。


「堀井が戦死すれば良し、御前会議で失脚させらればひとまず成功だ。いいか山本。御前会議に内親王殿下ではなく陛下をご出席させるようにしろ。内親王殿下では堀井一派を止められんからな」

「わかっております。陛下にご出席して頂けなければそもそもの意味がありませんからな」

彼らは時の今生陛下に御前会議に出る事を確約させる事を至上課題としていた。今生陛下は面倒なときには娘の内親王殿下に御前会議を取り仕切させるという国家元首としては甚だ困り果てたところがあった。御前会議に陛下が出席しないという事は国家の重大事を投げ出したばかりでなく、重臣達への背信行為となってしまい、枢密院や貴族院の総辞職問題にまで発展しかねない。そこを米内光政は危惧していた。

「陛下には重臣達や西園寺卿からも釘を刺してもらう。殿下はまだお若い……下手に政治に口を挟んだら利用されかねん。井上くんに殿下へ助言するように言っといた。これで大丈夫だろう」

「山口君や小沢君らも中堅や若手に働きかけています。堀井一派には悪いが、人柱になってもらおうではないですか」

「そうだな。アイツらは前々から堀を追放したり、気に入らんと思っていた。あの陸軍の少尉の情報に基づいて追放リストを作っておきましょう」

これは圭子が山本五十六に手渡した未来情報を元に扶桑海軍良識派が動いている表れであった。米内光政はかつての海軍長老、山本権兵衛の系譜を受け継いで軍政の担い手と期待された堀悌吉が堀井の策略で追放された事を米内光政と山本五十六は根に持っているのだ。ボケが進行していた晩年の東郷平八郎元帥をいいように使って人事を牛耳った艦隊派へ報復を行おうとしていた。

「今に見ていろ堀井一派……目に物見せてくれる」

それは米内光政の私怨とも取れる一言だった。彼も理不尽な傍若無人の前に同志を失った怒りを秘める一人の男だったのだ。その報いを政敵に浴びせたいという願望を形にできる武器が手元にある。この日から米内光政は配下や同志たちと共に極秘に動き出す。全ては大角岑生が起こした懇意的人事への復讐と軍全体の改革のため。黒江達の策謀は陸海軍良識派を巻き込んでの嵐となって、動き出した。時に1938年の事である。





















――後に大和型と名付けられる戦艦群の対空艤装はこの米内光政達の策謀が実り、建造途中で修正が加えられ、対空艤装が強化され、副砲の数が減じられた。この決定により砲戦力が減じられるのを大砲屋達は渋ったが、戦艦が浮砲台的な意味合いでしか用をなさない昨今の風潮には合致していた為に文句はあまり出ず、対空兵器の新規開発の名目としても使われ、後に秋月型駆逐艦の主砲にも採用される長10センチ高角砲の開発が早められる事になった。そして威力不足が指摘される九六式二十五粍高角機銃に換わる機銃の選定を行い、ボヨールド(ボフォース)40mm機関砲が次期主力機銃としてライセンス生産され、長門型戦艦などの有力艦から優先配備されていった。これは別世界の日本海軍がとうとう滅亡まで成し得なかった防空網の充実という願望はこの時点で成し得たという事になる……。


――艦政本部

この当時の艦政本部長は後に連合艦隊司令長官となる豊田副武。米内光政の意を汲んで次期戦艦の防空能力向上を下令。同時に電探の実用化を急がせた。これは欧米で電探が活躍するであろうという科学者らの意見を彼らが素直に聞き入れたために早期の実用化研究が叶ったためだ。

「閣下、よろしいのですかあのような学者どもの提言等を受け入れて」

「良いのだ。君も知っとるだろう?米内光政閣下にある情報を提供したウィッチの事を。下手に艦隊派に与すれば中央から追放される。あくまで局外者のスタンスを取っていれば大丈夫だ」


豊田副武は派閥の局外者として振る舞うことで、近い将来に起こると見込む軍縮条約時の条約派(現良識派)による艦隊派(現主流派)の排斥のための報復人事を免れようとしていた。この目論見は見事に成功し、後に連合艦隊司令長官に親補され、1944年〜1945年まで務めあげることになる

「電探などというのを信じてよろしいので?」

「これは噂だが……別の歴史を辿った我らは電探などの科学技術開発を怠り、海上護衛の研究も怠ったことでリベリオンに完膚なきまでに敗れ、百年以上も再軍備すら許されぬ政治的植民地に甘んじるという……最悪の事態は避けねばならぬのだ。なんとしても、な」

豊田副武は別世界の自分たちである大日本帝国の滅亡を噂の範疇であるが耳にしていた。その滅亡の顛末は半信半疑であったもの、南洋島を失えば、自分たちにも十分におこりうると予見した彼はそれを避ける為に科学技術研究の推進を強力に推し進めていることを部下に示唆する。豊田は恐れていたのだ。敵によって皇国全土が焦土になる事を。それを避けるための手立てをあらゆる手段で推し進めるという確固たる信念を持つようになった。この豊田副武の施策は大成功を収めた。後任らにも引き継がれる形で施策は継続され、1944年時には最強の誉れ高いリベリオン陸軍航空軍(後の空軍)爆撃隊も手出しが容易に出来ぬと言わしめるほどの防空能力を獲得するに至る。







「閣下は何をなさるおつもりなのですか」

「儂は滅んでほしくないだけだよ、皇国にな。政治的植民地として物質的復興と虚偽の繁栄に甘んじる未来などまっぴら御免だからな。たとえ敵が怪異共でも起こりうる未来だと思うよ」

彼は太平洋戦争敗戦後に大日本帝国が滅亡し、日本国として再興する別の未来を虚偽の繁栄と称し、侮蔑しているようだった。彼はリベリオンの物質的繁栄を快く思わないもの、その科学技術に恐れを抱いていた。それ故に皇国を守る為に先進技術の獲得を推し進めたのが本音だった。

























――海軍側の宿舎

「どうしたの徹子ちゃん」

「いや、陸軍のあの三人衆さんたちの事考えてたんだよ。あの人達は上の連中に真っ向から対峙して上手く動かしてる。いくらなんでも可笑しくないか?あの人達だってまだ15だか16くらいのはずだぜ。それが北郷隊長以上に政治的に立ち回ってるんだぜ?」

若き若本徹子は陸軍三羽烏の面々が政治的にあれこれ立ちまわっていることを感づいていた。北郷以上に上層部や元老とパイプを築き、上手く動かしている。軍の士官としてそういう素養もあったようだ。

「あの人達は私たちの知らない所で凄いことしてる。それはわかってるよ。気さくそうな人たちだけど……私達じゃ到底及びの付かない信念を持ってる」

「あの人達は何をしているんだろう?」

「さーな。少なくとも上の連中の反対押し切ってこんな部隊を作っちまうような人たちだ。ただもんじゃねーのは確かだぜ」

徹子は薄々感づいていた。陸軍三羽烏がこの戦の流れを変えようと動いているのを。そしてそれが何のためであるのかは徹子にはわからない。だが、何かかしらの大きな目的のもとに動いているのは確かだった。







――後々に徹子が智子達に再会した時、この事を問うと三人はこう返した。「自分たちの信じる正義のために、かな?」と。それは三人が歴代仮面ライダーやスーパー戦隊に多大な影響を受けていた事の表れだった。ヒーロー達の“信じるモノのために命を駆ける”姿勢は彼女らにも影響を与えていたのだ。そしてその背中を追いかけているのだ。ヒーロー達が見せた心を。



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