短編『魔法少女達の奇妙な物語』
(ドラえもん×多重クロス)



――さて、別次元のミッドチルダへ迷い込んだなのは・フェイト・スバルの三人はそれぞれの思惑のもとに行動を開始した。なのはは17歳からの二年間の高校の長期休暇は春休みや正月を除き、ドモン・カッシュとの修行に時間を割いており、死にかけた事も一度や二度ではない。ドモンはなのはに格闘術のイロハを教えただけだと話しているが、学習力に優れるなのははいつしか流派東方不敗の演舞をこなせ、気を扱えるようになった。そのたか成長期にあった(女性の成長期は16歳頃までだが、なのはとフェイトは16歳時に飛天御剣流の修行を積んだおかげで、成長期の終わりが18歳と、遅くなった)体格も史実より大柄でがっちり(160cm台半ばから後半)の体格へ成長した。線の細さそのものは少女期と変わらないが、見かけによらない戦闘力を持つ。


(ドモンさんとの修行で死ぬ目にあって体得した明鏡止水の境地を試す絶好の機会だ)

なのははドモン・カッシュとの修行の副産物で自身の魔法属性に“炎熱”がついた。これはドモン・カッシュの石破天驚ゴッドフィンガーをスターライトブレイカーで受け止めようとした際に、その燃えたぎる爆熱エネルギーの一部をなのはのリンカーコアが吸収、組成が変化してしまったためだ。この辺は何処かの世界で闇の書の闇が生み出し存在の一つ“シュテル・ザ・デストラクター”を彷彿とさせる変化である。(ただし当人はその属性付きの砲撃をスターライトブレイカーやディバインバスターのバージョンアップと扱っているようである)そして何度か修行で死にかけた末に明鏡止水の境地を19歳を迎える春に体得。現在ではフィンガー系の技を撃てるようになったという。

「超絶的に目立つから一瞬しか使えないだろうけど」

そう。明鏡止水の境地に達すると黄金の輝きと共に爆発的な戦闘能力を得られるが、その眩い輝きは目立つことこの上ない。そのためフィンガー系の技を放つ際の一瞬でしか発動できないのが難点だ。


「死にかけたのが良かったのか悪かったのか……この世界のあたしが知ったら泡吹くだろうなぁ。それにこの腕には傷が残ってるし」







撃墜と修行とを合わせれば、有に三回は死にかけた。それを乗り越えた末に今の自分がいる。撃墜事件を除けば順風満帆な人生を送っている別の自分とは違って、ある意味では過酷そのものな人生を送っている。その証拠に左腕には撃墜事件の時に一端、爆発で切断された手を接合させた時の手術跡、ナノマシンでも消せなかった一筋の傷跡が残っている。これを見られたら、一目で『別人』と判別されてしまう。背丈も8cm近く異なるというので、遠目はともかく、近くでは一発でバレる。

「その時はその時だ。やるしかないか」

楽天的とも取れる発言だが、彼女の割り切りの良さを表していた。接近戦ならば元の世界ではシグナムには及ばないまでも、渡り合える力を持つに至った。いや、一発あたりの爆発力ならば上回る。それが今の彼女だ。肉体・精神の研鑽を重ねた今、スカリエッティの戦闘機人など敵と呼べるか怪しいのだから。



















――フェイトも修行を積んだが、内容の違いで『剣客』的側面が強くなっていた。飛天御剣流の習得度もなのはを60%とするならば、フェイトは80%。それに加えて仮面ライダーストロンガー=城茂ゆずりの格闘術と電気技も長年かけて身につけており、魔力媒介でエレクトロファイヤーなどを撃てるようになったという。剣術主体であるが、高い水準の格闘術もできると言う事だ。

「スカリエッティがこの世界でもバダンとつながりがあるというのなら、この手で斬り捨てる。“母さん”があんな事になったきっかけを間接的に作ったんだ…許すわけにはいかん。首を跳ね飛ばしてくれる」





フェイトはスカリエッティが自身の母である(正確には創造主)プレシア・テスタロッサが狂ったように実の娘のアリシアを生き返らせようと望みを託した技術を生み出した元凶であるスカリエッティを憎んでいる。そのためか、『手をかける』事に躊躇いはないようだ。これは彼女が戦争を経験したことで、『絶対悪は倒さなくては新たな犠牲者を生むだけ』と言うことを学んだためだ。その技術で生み出されたのは自分だけではない。エリオもである。そのためかフェイトはスカリエッティを裏で操っているであろうバダンに怒りを燃やし、長年かけて追っているのだ。

「さて、始めるか」





フェイトの腕には天羽々斬モードとなって日本刀の形態となったバルディッシュ・アサルトが握られているが、最適な新モードではなく、通常のインパルスフォームのままだ。剣を振るう分にはインパルスフォームでも支障はないためだが、これはバレないようにするための彼女なりの偽装工作の一環でもある。

「ハァッ!」

襲撃途上のガジェットドローン(ちなみに彼女らの故郷の世界ではナチスが直接侵攻したので、実戦投入は見送られたのか、現れていない)を一刀で複数斬り捨てる。飛天御剣流の心得によって、その速度は神速と形容しても差し支えない。今のバルディッシュであれば、カートリッジを一個ロードすればガジェットドローン程度は事足りる。もはやガジェットドローンはどのタイプであろうとも、彼女の敵ではないのだから。

「この姿なら遠目ではバレない。どうせなら一発景気づけに歌うか」

これは地球連邦軍がミンメイアタックやランカアタックなどの歌で戦局を動かす行為に衝撃を受け、熱気バサラに強い感銘を受けた彼女が時たま行う『景気づけ』。フロンティア船団在留時にグレイス・オコナーから『歌手で食べていける素養がある』と見込まれたのを期に、なのはの地球でののど自慢大会に試しに出てみたら優勝してしまった。これで何かを確信したのか、趣味の一つとしてカラオケを開拓したとか。未来世界でカラオケに行くと歌うレパートリーの一つにFireBomberの楽曲がある。オズマ・リーの策略に見事にハマった彼女はカラオケの初めにはこの曲を入れるという。『Dynamite Explosion』。


「〜〜〜!♪」

これを歌いなから(メロディーやギターは脳内補完との事)戦う。音楽をバックに戦うというのは、23世紀では常識化してしまった光景なために誰も突っ込まない。むしろ士気高揚として大手を振って船団規模で流すし、全力で歌手も歌う。シェリル・ノームやランカ・リーを見てきた彼女もやがてそれを受け入れ、決戦の際には歌の力を思い知った。二曲目は『LIGHT THE LIGHT』だ。戦いの最中に歌うというのは、この世界の常識からは大きく逸脱するが、この場では誰も聞いていないので問題はない。


「あれで一気に減らす!」



プラズマランサーの発射に使う発射台を地面に作り、その電気エネルギーと魔力を魔法陣を発生させた上で腕から直接放つ。これは魔法というにはいささか乱暴だが、御坂美琴や城茂がよく使う広範囲への放電攻撃がヒントになって編み出した。この場合はストロンガーのエレクトロファイヤーに近いため、ストロンガーに許可をとった上でこう名付けた。

『エレクトロファイヤー!!』

フェイトのそれはストロンガーのそれとは原理的に異なるが、やることと効果は似ている。敵に膨大な電気エネルギーを流し、回路を焼くことだ。フェイトの場合は魔力での物理的破壊も含まれるのでストロンガーよりも重要度は高い。大爆発と共にガジェットを屠る。



「あとは残った奴らを片付けて引くか……突撃あるのみ!」

引くといっても、この時期の彼女は突撃で大打撃を与えつつ離脱するというアナザーガンダムを思わせる戦術を取るようになったため、撃墜数は物凄い事になっている。これで機動六課と地上本部を襲うガジェットドローンの数が数百機単位で減ったというが、元々膨大な数が投入されていたので、誤差の範囲内だ。


「邪魔だどけぇ!」

フェイトの突撃はガジェットドローンを蹴散す。その勢いは獅子奮迅。撤退しながらも剣で撃破していった。飛天御剣流の心得がある彼女にとってこの程度は造作も無い事。瞬く間に蹴散らし、取り敢えずなのはに報告を入れる。

『なのは、こっちは300機落した。これから撤収する』

「了解。こっちも200機くらい落としたら撤収する」

なのはの言葉使いは長年の軍隊生活のおかげか、戦闘モードに入ると少女期と打って変わって、職業相応の口調も使うようになっていた。普段の生活ではまず使わないが、戦闘時には、時たま少女期とはかけ離れた荒い口調になる場合がある。戦略及び戦術眼も正規軍で教育を受けて実戦経験もある分、彼女は戦いに関しては別次元の自分自身より優秀である。




「さて……単騎戦闘だから周りのこと考えないでいいぶん楽にできる。吶喊あるのみ!」

内部フレームの改装でレイジングハートに最適化されたハルバードフォームの形状は真ゲッターロボのゲッタートマホーク(ゲッター線指数が高い時のハルバード型)と細かな部分以外は同一の形状になっており、魔法少女が持っていい武器の範疇を超えたデザインの武器と化した。威力面も少女期の頃より強化されており、可変戦闘機の旧型(VF-11以前)の装甲は一撃で破砕可能である。


「つぉりゃ〜!」

ガジェットの防御を破って槍部分で突き刺し、空中に放り投げ、斧の刃部分で叩き斬る。桜色の刃なのが幼い頃の名残とも言えるが、その戦いぶりは幼い頃とは別人といえるほどに雄々しかった。

「おっとっ!その程度の弾幕に当たるほどやわじゃないんでね!」

フットワークは軽快の一言。ガジェットドローンの残骸を踏み台に跳躍し、攻撃を避ける。子供の頃の運動音痴さを後天的な訓練でここまで克服できたのは流石というべきか。

「そうそう戦ってるわけにもいかないんだ。一気にこれでケリをつける!」

なのはは仮面ライダー達が使い、地球連邦宇宙軍もバスターマシンにおける必殺技に採用したある技を放つ。その名も。

「イナズマァァァ……キィィィィク!」


――イナズマキック。これは元々、仮面ライダー一号が再改造後に編み出した技で、チャージアップストロンガーの超電稲妻キックやZXのZXイナズマキックが系譜を継承した。後年に地球連邦宇宙軍のオオタ・コウイチロウ大尉(当時。死亡時は中佐。ガンバスターの開発者として著名)が断片的に残されたストロンガーとZXの記録にヒントを得、沖縄女子宇宙高校のカリキュラムとして組み込んだ。そのためある年からの同校出身者は人型機動兵器であればこの技を実践できる。特に最強とされる「スーパーイナズマキック」はガンバスターの最強の必殺技として著名。(何故、なのはが撃てるのかというと、16歳時に連邦軍の士官として、改めて実技教育を受けた際に、沖縄女子宇宙高校を見学に行き、教師に特別に指南してもらい、コツを掴んだとの事。)



彼女の場合は魔力を足先に集中させ、その魔力を跳び蹴りで敵にぶつけるもの。荒業もいいところだとシグナムやヴィータからは酷評されたが、兜甲児や藤原忍らスーパーロボット乗りからは大受けで、『努力と根性!』とお墨付きをもらったとの事。

「いっけえええええ!」

これがこの日の彼女の最終攻撃であった。これでガジェットドローン一型と三型を200機まとめて撃破し、戦場を離脱した。間接的にこの次元の機動六課に貢献した彼女らはスバルと合流してこの場を去った。取り敢えずは成功したもの、彼女らは重大事項を忘れていた。この月はこの日から数日で時空管理局の給料日である事を……。























――数日後

機動六課隊舎と地上本部が壊滅し、巡航船アースラへ隊舎機能が移される事が決定された日、時空管理局の局員への給料支払は通常通り行われたのだが……。

「な、な、な、何これぇ〜〜!!!」

この次元の住人のなのはは給与の引き落としの為に市内の銀行を訪れたが、口座から身に覚えがない引き落としが凄い金額でされている事を目の当たりにし、ワナワナと震えて思わず叫んでしまう。自宅に戻っれ見るとカードの明細書が送られてきていた。見ると、あるホテルの宿泊代、ルームサービス代などがまとめて支払いされたと書かれていた。もちろん、職務中であったのでそのホテルに行けるはずはない。そこでフェイトに相談した。

『フ、フ、フェイトちゃん!大変だよぉ〜〜!』

『ど、どうしたのなのは?』

電話口越しのなのはの声は震えていた。タダ事でない事を直感したフェイトはなのはを落ち着かせながら説明を聞く。説明を受けたフェイトはなのはに初歩的なことから順に聞いていく。 

『口座番号は誰かに教えた事は?』

『ううん。私しか知らないはずだし、しかも引き落としされてたのは仕事用じゃなくって貯金用の口座なんだ。これは仕事用とは口座番号変えてあるはずなのに……』

『何処かから漏れたのかな?』


『いや……個人情報が漏れた〜なんてのは地球でもよく聞く話だけど、銀行でそれやったら信用問題だよ?何かの理由で口座番号を知った誰かが使ったとしか……』

『そうだよね……どうしたいいのフェイトちゃん』


大いに狼狽えるなのは。だが、この時の当人は知る由もない。まさか『自分自身』によってカードが使われたというXフ○ィル張りの奇妙な経緯があるとは。







――重要作戦がもうじき発動されるというのに私事でこのような事件が起きるとはと半分涙声になるなのはにフェイトは奮起し、なのはに『必ず犯人を突き止めるから!』と半分勢いで言ってしまった。だが、重要作戦前なので時間は一週間あるかないか。フェイトはその日の内になのはからカードの明細書を受け取り、夜を徹しての調査を開始した。なのはのために奔走する彼女だが、この時は知る由もない。犯人一味にまさか自分自身が含まれていおうとは……。





























――当のカードを使っている当人らはというと、ホテルで最高のスィートルームひ部屋を変え、ルームサービスしまくりの贅沢三昧であった!これはなのはが『どうせ“あたし”のカードなんだからパーッと使おう!』と言うことで、戦いのストレス発散とばかりにルームサービスしまくりであった。これは彼女らが銃弾やら砲弾が飛び交う戦場に疲弊しており、戻ったら硝煙で“むせる”戦場生活に戻らなくてはならない事は確実。現状では『休暇?なにそれ?おいしいの?』状態なほど戦局は予断を許さない。なのはの場合は作戦立案能力のある佐官の不足で、佐官昇進後は時空管理局の地上残存部隊の現場指揮を任され、あちらこちらにてんてこ舞い。更に連合艦隊との折衝など……多忙を極め、睡眠時間は5時間もない。夜でもスクランブルがあるためだ。



「高町様、ワインをお持ちしました」

「テーブルに置いといてください」

「かしこまりました」


と、ホテルのボーイにチップを払って、置かれたワインの蓋を開け、グラスに注ぐ。ストレス発散とばかりに極上のワインを頼んだ。フェイトにもワインを入れ、グラスを渡し、二人で飲む。スバルは未成年なのでジュースで我慢している。

「極上のワインだね。何年もの?」

「25年ものだよ。殆ど使う機会ないだろうし、パーッと使うのがいいさ。あたしのカードだし、収入的にも一生困んないから、またすぐたまるさ」

ここまで彼女が使った金額は普段の一ヶ月の生活費の3分の一を優に超える。元の世界では贅沢は当分出来ないのを見込んでか、フェイトも容認している。彼女も戦場に身を置いているためにここ1年は個人的な贅沢はしていなかったためだ。

「あーーーーーー!まずい!」

スバルが突然、顔を真っ青にして悲鳴を上げる。ある事を思い出したからだ。

「フェイトさん。今日って何日ですか!?」

「何って……今日は9月の……あ、ああ……給料日だ!」


「たぶん今頃、引き落としに気づいたなのはさんがフェイトさんに相談してるはずです。そうなると数日で突き止められますよ」

「なのは、どうする?」

「今のシーズンは一般客が秋休みで混んでるはずだから、今からチェックアウトして他に移るのは無理だ。それにフェイトちゃんは“あたしのためならえんやこら”のはずだからどんな事しても犯人を突き止めようとするはずだ。下手に芝居打ったら詐欺かなにかで“逮捕”されちまう。認識番号は同じだが、階級が全員違うしね」

そう。この場にいる三人は階級が進級している。なのはは三等空佐、(フェイトも同待遇)スバルは三等陸尉である。動乱での功績などの理由で進級したためだが、この次元ではそれぞれ以前の階級のままだ。

「一戦は覚悟しなけりゃいかんなこりゃ。接近戦に持ち込めりゃ勝てるとは思うが……」

なのははこの次元のフェイトとの戦いを覚悟した。あの道を辿ってなくとも、十分に強力な魔導師として成長しているのはスバルの証言で確定している。話がもつれて戦闘になることは十分にありえる。この場にいるフェイトとの違いはスバルも未来世界に転移した時の時系列の都合で知らないので不明な点が多い。フェイト自身の推測では『ザンバーモードを強化し、真ソニックフォームで速度を更に強化しただろう』との事だ。

「防御は一切考えないで速度を追求したと思うから巴戦に持ち込めれば一撃で気絶はさせられるだろう。だけどそこに持ち込めるかどうか……」

フェイトは別の自分を分析してみる。攻略法は一点。機動性と攻撃力で追い詰め、速度を発揮出来ない状況へ追い込む事。自分は防御を考慮した成長をしたので、トップスピードはこの次元の自身には一歩及ばない。そこを考慮に入れるとドックファイトに持ち込めるかどうかが鍵となる。

「そうなったらとりあえずあたしが時間稼ぎます。二人はその間に戦闘準備を」

「OK。任せるよ」

スバルに時間稼ぎを一任するなのはとフェイト。そしてその日はその二日後にやってきた。

























――ホテルの駐車所に一台の乗用車が滑りこんでくる。そこから降りてくるのは一人の管理局執務官。フロントに行き、事情を説明するが、逆に困惑してしまう。そしてその姿を確認したスバルが二人に報告を入れる。報告を受けた二人はいざという時のために戦闘態勢を取る。そしてスバルの時間稼ぎを振り切った彼女がドアを開けた瞬間――!



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