短編『地球連邦軍の次なる戦争準備』
(ドラえもん×多重クロス)



――西暦2201年。メカとピアとの終戦条約から一年が経過しようとしていたが、宇宙戦艦ヤマトが結果的に暗黒星団帝国に宣戦布告を行った事で、そう遠くない時期に新たな戦乱が招来される事を悟った地球連邦はまたも戦時状況入りを宣言。平時編成であった宇宙軍艦隊などは戦時編成へ移行した。奇しくもベガ星連合軍との局地戦が開始されていた事も相なって、予算は速やかに通った。











――地球連邦宇宙軍艦隊のこの時期における太陽系直掩部隊である、『太陽系連合艦隊』の構成は以下の通り。ただし記述は一部に留める)

アンドロメダU級(戦略指揮戦艦アンドロメダ改級から類別変更)×3(しゅんらん、ネメシス、新造された『ガイア』。拡大波動砲テストベッド艦でもある)、ヱルトリウム級×1(アレクシオン)、スーパーヱクセリヲン級×20、ツインヱクセリヲン級×40(白色彗星帝国戦時に完成したが、時期が時期で、問題で銀河殴りこみ艦隊には組み込まれなかった艦。工廠能力が大きく低下した今では貴重な艦)、バトル級可変ステルス攻撃宇宙航空母艦×2、もしくは3(これはバトル13以外の艦は持ち回り制なので、流動)、主力戦艦級前期型×20(共食いで修理したり、撃沈直前で帰還し、放置されていたの艦を再生した)、主力戦艦級後期生産甲型(40.6cm砲から42cm砲へ砲を格上げ、通常型波動砲装備の艦隊決戦型)×30、同じく乙型(空母直掩艦隊用戦艦と水雷戦隊旗艦としての運用可能な高速を持つ。次世代エンジンのテストベッド&データ収集も兼ねる)×20、両型(装甲強化を主眼に改造された艦。波動砲未装備であるが、通常艦隊戦での運用に目的を絞ったため)×25、主力戦艦改級戦闘空母×16(主力戦艦改級はコストがかかるので建造数は他の空母より抑えられている)、ヤマト型宇宙戦艦×3、外洋型駆逐艦および巡洋艦×多数である。









これは内惑星用艦と数の多い艦を省いた上での数である。連邦宇宙軍は外洋海軍としの能力は保持するものの、銀河殴りこみ艦隊を遠征させている都合上、往時の20%にも満たない。特に波動砲搭載戦艦の不足は白色彗星帝国戦における拡散波動砲の無力へのトラウマからか、拡散波動砲は少数派に成り下がり、代わりに収束型波動砲とその派生型の拡大波動砲が主流派となっていた。拡大波動砲は拡散波動砲とは別のアプローチで波動砲を改良し、艦隊戦と要塞戦双方で威力を発揮するようにしたもの。第三世代波動エンジンによってチャージ時間はアンドロメダよりも更に短縮され、今後の波動砲戦力の主力となることが期待されている。





――地球連邦宇宙軍 呉軍港

旧帝国海軍→海上自衛隊→国防海軍の日本時代から軍港として機能するここは地球連邦海軍から宇宙軍へ管理者が移った後は宇宙軍の拠点として機能していた。ここに停泊しているアンドロメダU級戦艦『しゅんらん』艦内では、新たに竣工した三番艦を編入する先の戦隊を何処にするかで議論が行われていた。

「三番艦は何処に編入するのです?」

「うむ。通常は第一戦隊の旗艦にすべきだが、第二戦隊に編入しておこう。第二戦隊が新型艦欲しがっているしな」

地球連邦軍の太陽系連合艦隊編成は大日本帝国海軍の取っていた編成を思わせるものであるが、一部は異なる。第一艦隊が司令部直属兼、戦艦部隊なのは似通うが、第二艦隊が高速打撃艦隊、第三艦隊が空母機動部隊という点が異なる。空母機動部隊は主に内惑星巡航空母部隊、外惑星巡航空母部隊、第一、第二、第三機動艦隊で構成されている。それら戦力は数少ないツインヱクセリヲン級を基幹にしており、一個機動艦隊戦力だけでかつての地球軌道艦隊(かつての旧体制下での地球防衛艦隊の主力編成)総軍全体を凌ぐ保有機動兵器数を誇る。これは機動兵器工廠が一年戦争比数倍の数に増えている事、兵器の量と質が両立して向上したために生じたこと。そのために、過去の戦役で残った各国軍最大勢力であるジオン系残党軍でさえも、この太陽系連合艦隊・第三艦隊とぶつかり合うのを恐れているのだ。







「第二艦隊の戦艦が古ぼけて来てますからな」

「うむ。そろそろ新型と入れ替える必要があるからな。何せ初期段階建造の艦ばかりだから古くなって不具合が出てきていると聞く」

第二艦隊はドレッドノート級(主力戦艦級の正式名称)が戦力の中心だが、前期型の更に初期建造分で戦艦隊編成を行っているため、そろそろ近代化改修が必要となる艦ばかりだ。副官もそれは認識しているようだ。後期生産型は『海軍』(宇宙軍が現在の海軍的位置づけなための俗称)と各工廠で建造されているが、数が足りない。多数の熟練兵や士官を白色彗星帝国戦役で失い、メカトピア戦争で多少は持ち直したものの、平均練度は未だに白色彗星帝国戦開戦当時に比べて60%程度までしか回復していない。ロンド・ベルやヤマトのように、『一部隊で惑星系を滅ぼせる』と謳われる、突出して優秀な部隊は一握り。それも指で数えられる程度の。それらに最新機及び最新艦が優先配備されるので、全体の軍備更新は遅れがちである。花形の第三艦隊や第一艦隊でさえも旧式化したジェガンやブラックタイガーが残置している有り様であるからだ。割合は七対三(コスモタイガー及び小型MSが多数派で、ジェガンやブラックタイガーが少数派)であるだけマシだが。

「来週を以って、第二艦隊のドレッドノート級は後期生産型の乙型へ更新させます。乙型があれば水雷戦隊としてレベルアップが図れるでしょう」

「頼む。ところで、拡大波動砲とは如何な波動砲なのか?」


「それは私も聞かされておりません。ただ技術屋の話では『第二世代増幅装置でこれまでの波動砲よりも威力が高められたモノ』だそうで。眉唾ものですが」

「拡散波動砲の時も似たような事を技術屋共は言いよったからな。土方先輩はよくやったが……いかんせんな」

彼、山南修は白色彗星帝国戦の際に参謀級の高官たちが期待した拡散波動砲が対艦隊戦には効果を発揮したが、要塞戦における力不足を露呈し、アンドロメダの撃沈に繋がった事から拡散波動砲へ不信感を抱いていた。なので戦後に収束型波動砲艦の増大をレビル将軍へ具申したほどである。なので新型波動砲への技術屋の言い分を半分信用していないのだ。



「ふむ。ところで例のアンドロメダ級改造空母だが、不具合とはどういうことかね?」

「水上着水時の安定性が目も当てられないほど悪く、荒天時に転覆しかけたのです。名前の通りですな」

「ミッドウェイか。州知事(旧米国大統領)のわがままで予定艦名を変えてしまい、さらに空母の命名規則まで変えてしまったからな。まったく厄介事をしていったものだ」

「ええ。北米は復権狙っております故、厄介事をするのはいつもの事ですが、困りますな」

山南は北米州知事がわがままでアンドロメダ級船体改造空母の名前を本来の予定艦名(アンドロメダ級はしゅんらんを除き、女神の名を冠するという規則があった。ミッドウェイやコーラル・シーは本来、『アルテミス』と『アテナ』という艦名が軍令部で予定されていた。が、現・北米州知事が『旧・アメリカ海軍オタク』であったがために、かってにかつての米海軍空母艦名を命名してしまった。掟破りもいいところであるが、しょうがないので承認せざるを得なかった)から強引に変更させた事件にため息をついていた。しかも同級には設計ミスがあり、艦首部などの重量バランスを戦艦時のままにし、更に練り込みの浅いままの飛行甲板を取り付けたために重量バランスが変になり、用兵側にとって『扱いづらい空母』になってしまったのだから、尚更だ。(これは一番艦建造元のニューポート・ニューズ造船所が波動エンジン型改造空母に慣れていなかったのも一因)最近の地球連邦政府内では『北米地域は政府の問題児』という認識が当たり前となっているとか。



「その北米地域が次期旗艦候補の新造艦を作っているのは知ってるな?」

「ええ。アリゾナ級ですね。あれ、アテになるのでしょうか」

「初代アンドロメダとヤマト型の特性を併せた艦という触れ込みですが、アンドロメダの一件がありますから、鵜呑みにすると痛い目見ますよ」

彼ら地球連邦宇宙軍の白色彗星帝国戦の記憶を持つ者らにとって拡散波動砲とアンドロメダ達の悲劇は半分、トラウマ化しているフシがあった。アンドロメダは旧・アメリカ合衆国出身者達が『夢よもう一度』とばかりに『超ヤマト型戦艦』としてアイデアの粋を尽くして生み出した。基本設計は元ヤマト設計チームの技師からも『優秀である』と評価されたものの、艦の制御にフェイルセーフ機構を重視せずに全面的に自動制御にした事が悲劇のもととなった。アンドロメダの装甲は計画当時の技術での51cmショックカノン砲に耐える厚さの硬化テクタイト板と超合金(超合金Zではない)の複合装甲であり、カタログスペック上の計測では『ヤマトを一撃で沈める敵の攻撃にも耐えられる』とされ、竣工後もさしたる改善がないまま白色彗星帝国戦役を迎えた。だが、結果は『ヤマトの二倍のエネルギーがあるから拡散しても大丈夫だろう』された拡散波動砲は強力無比な防御を誇った都市彗星の前にはバリアを取り払うのが精一杯であった。しかも当時の本星防衛艦隊の残存波動砲艦の総力を結集して放たれたそれはエネルギー総量的にはヤマトの収束型波動砲(当時の時点)の数十倍相当であるのにも関わらず、だ。しかも超巨大戦艦が出現し、ドレッドノート級戦艦を『対空砲』で轟沈せしめ、ヤマトをもを一瞬でズタボロにせしめる光景は地球連邦軍に強烈なトラウマを埋めつけたのだ。

「うむ……あの後の反省でアンドロメダ級の初期仕様での建造はキャンセルされ、ドックに残っていた船体を数隻分繋ぎあわせ、内装をヤマト仕様にしたメネシス、そして新造パーツの割合を増やして本艦が造船されたが、彼らにしてみれば屈辱だそうだ」

「『日本の手が入った製品はアメリカ製品ではない』ってアレですか?今は宇宙時代ですよ、白人至上主義なんてカビが生えた時代錯誤の考えを……」

「信じられんが、南部にはまだ残っているそうだ。特に彼の国には未だに1950年代の栄光を忘れられん者達が多い。今の州知事からそうだろう?」

「ですな」


彼等は現・北米州知事を『時代錯誤な奴』と侮蔑していた。彼個人が北米が『世界で一番栄えていた』時代を郷愁するのは一向に構わないが、軍政にまで私情を持ち込むのを嫌っているのだ。これが『公私の区別がつかない』と州知事の軍での評判を下げているのだが、当人は気づいていない。

「では、とりあえずガイアは第二艦隊の旗艦として試験運用してみましょう。不安要素もありますからな」

「うむ。第二艦隊の将兵には悪いが、実験材料になってもらおう」

「では、私は通達をしてきます」



参謀の一人が佐世保に配置されている第二艦隊旗艦「ネルソン」内司令部に直接、辞令を手渡すために佐世保へ向かう。第二艦隊は嬉しがるだろうが、拡大波動砲には不安要素もあると彼を見送った後、執務室のいうスで溜息をつく山南。拡散波動砲が埋め付けたトラウマの大きさがうかがい知れた。

































――地球連邦宇宙軍 厚木基地

厚木基地で教習を受けているのは扶桑陸軍飛行戦隊の撃墜王の一人、加藤武子であった。彼女はいつの間にかマグロ釣りバイトへの連行を決めていた黒江を見つけてのした(腹へのパンチで気絶させたとの事)後、圭子の誘いで厚木基地に呼ばれてジェット時代の空戦の講義を受講していた。

「あの、ジェット推進はレシプロに比べて小回りが効かないのは本当なのでしょうか」

「良い質問だが、その認識は過去のもので、現在の戦闘機には当てはまらないとも言える。確かに黎明期のジェット機……例えばメッサーシュミットme262だが……旋回性能は劣悪そのもので、当時のレシプロ戦闘機との空戦は考慮外の運用法がされていた。が、それも1950年代に登場した戦後第一世代ジェット戦闘機の登場が変えた。F-86とMIG-15だ」

武子は空戦技術研究への熱意が『同期で一番ある』と智子に言わしめるほどに熱心であった。それは元の時代においては『編隊空戦を重視し、個人単位の戦果を誇らない』と評判が立っていたほどだ。ジェットを扱うようになるウィッチ向けに地球連邦軍は大学のように講義を開講しているが、連日満員御礼。特に名を成した撃墜王達が国籍や年齢問わず受講に訪れるケースが多く、連邦側も驚いた程だ。武子はその中でも一番熱心な生徒の一人であった。大学ノートにびっしり講義内容を書き込み、更に既にジェットで飛んでいる友人から聞いたことをメモるなど、帝大生(現・東大生)並であった。




この日の内容は史上初のジェット同士の空戦となった朝鮮戦争での両雄の激突とジェット時代の本格的始まり。MIG-15とF-86の先進性(就役当時)、それまでの機体との違い、欠点なども引っ括め、タイムテレビでの実際の空戦の確認映像も交えて、通常の大学同様に一時間半で終了した。講堂の外で待っていた圭子は仮眠を取っていたようで、アイマスクを外して起きる。

「ご苦労さん。ふぁああ……その様子だと収穫あったようね」

「ええ、とても勉強になったわ。あなた達って大変なことしてたのね」

「慣れりゃレシプロとそれほど変わりないわよ〜。特にこの時代のは耐G能力が高いし、パイロットスーツの技術もいいから高機動バーニア併用すれば維持旋回率もマスタングよりいいし」

それはブラックタイガーやコスモタイガーの事を指している。可変戦闘機は人型になれるので、旋回性能は総合的意味合いで決まる。戦闘機としての昔ながらの条件が当てはまるのは地球連邦軍では今現在はコスモタイガーやブラックタイガーしか無いからだ(コア・ファイターは別枠)。

「あなた、動かしたことあるの?」

「アフリカやこの世界で乗る機会があってね。これでも昔とった杵柄、若い時に飛行機の操縦習っといたのが役に立ったし、歴史変えたから、ほら」

「確かに。あの時のあなた達の謎がやっと解けた感じがするわ」


「この時代で得た事が少なからず状況を改善させたから良かったけど、皇室が軍の指揮権を握ってるのがこっちの知識層からの批判の対象になってるけどね。『文民統制されていない近代軍隊なんて野蛮人の集団である』とか」

「第二次世界大戦に至る歴史への日本人のトラウマってやつでしょ?あれ、政府は迷惑がってたわよ」

「しょうがないんだけど、向こうは陸海軍の馬鹿がおっ始めた戦争で全てを失った記憶を忘れられないのよ。統合戦争で勝ったけど、やはり一度、国が滅亡した記憶は消えないのよ」



明治の元老が作り上げた、天皇が統治する大日本帝国が滅亡し、アメリカの事実上の属国と言えた日本国へ取って代わられた記憶は日本人にとって少なからず傷を残した。国内での軍事に対する反発は21世紀にならなければ解消されず、再軍備にも100年近くを要したほどの軍事へのトラウマが解消されるきっかけでさえ、2010年代の第三次世界大戦を待たなければならなかった。正式な再軍備には更なる年月の経過を必要とした。その一連の記憶は日本人にとって絶大なトラウマとなっている。それが大日本帝国と同じような仕組みを持つ扶桑皇国への連邦政府中枢にいる日本人らの老婆心を煽るのだろう。







「まぁ気持ちはわかるけどねぇ。これからどうするの圭子」

「外にうまい弁当売ってるファ○マがあるからそこで飯を買ってくわよ」

「コンビニってやつでしょ?ずいぶんリベリオン……じゃなくってアメリカナイズされたわね」

「これから慣れなさい。未来のお店は大手チェーン店でなくもセルフ式が一般的なんだから」

「そうね……頑張ってみるわ」





この時期、二人はミッドチルダ動乱がひとまず落ち着いて、いったん未来世界へ帰還していた。そこに至って武子は友人達の謎の真相にたどりつき、友人らの真意を知った。本当の意味で『扶桑海事変』以来の再会を果たしたと言えるその姿は二人を扶桑海事変後期時の姿に近い関係に立ち戻した。基地を出て、自宅へ帰る途中、付近のコンビニエンスストアに立ち寄る。

圭子は既に慣れたようだが、武子はまだセルフ方式の店舗に戸惑いがあるらしく、キョロキョロと挙動不審な様子を見せる。

「武子、落ち着きなさいよ。コンビニエンスストアくらいでブルってちゃ、総合スーパーにはとても行けないわよ」

「だ、だって……」


圭子はコンビニエンスストア程度の規模の店舗で挙動不審になる武子をからかいつつ、まとめて勘定を済ませる。買い物を手っ取り早く済ませるとジープに乗り、宇宙軍の軍港である横須賀の自宅に向かう。自宅と言っても、新三羽烏が共同で住んでいるのだが、そこに江藤敏子が越してきて、更に武子も来たので、キャパシティは満杯状態。改築も視野に入れ始めたのだが、軍人が高級取りと言ってもそう簡単に資金は貯まらない。数年後を目処に計画を立てているとの事だ。

「本当にここ、あの田舎の大和なの?信じられないわ」




道中の風景が自分の時代の同地とは根本的に異なる事に改めて驚きを隠せない武子。武子の時代でのこの地は田舎もいいところの農業地帯。厚木基地がある以外はひたすら野っ原の広がる田園地帯がわずか数百年でそれなりの都市へ変貌しているのだから驚きらしい。

「そんなこと言ったらあなた、町田なんか商業都市よ」

「うっそぉ〜!」

これまた驚く武子。時代が違うと田園地帯も都市となるし、交通の便が良ければ田舎町も商業都市になる。それを実感し、流れるように消えていく風景を目に焼き付けていった。



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