短編『魔法少女達の奇妙な物語』
(ドラえもん×多重クロス)



――さて、模擬戦を開始するなのはAだったが、その相手はスバルBであった。

「何、お前か?スバル」

「はい。部隊長から指名されまして」

「狙ったなはやてちゃん……」

模擬戦の相手がスバルBであることに驚きを見せるなのはA。だが、その顔はすぐに獲物を追い求める獣のそれへ変わる。幼いころにゲッター線に当てられた影響か、好戦的な側面が青年期になって顕著に表れてきた証拠である。バリアジャケットは全体的に動きやすいデザインで、ヒラヒラとしたスカートは廃止したようで、ミニ・スカートのみである。このモードは近接格闘に最適化されたもので、日向救援の際に着ていたのと同じものである。


「あれ?そのバリアジャケット、私のに似てますね」

「別のお前のを参考にさせてもらったよ。動きやすかったんでな。さて……行くぞ」

「!!」

なのはAは持ち前の高い身体能力でスバルBに肉薄し、左フックをそのまま振るう。スバルBは防御で防ぐが、与えられたダメージが思ったよりも大きいことに驚きの表情を見せる。

(あ、あれぇ〜〜!なのはさん……このパンチ力っ……強い!?)





「フッ!!」

なのはAは更に連撃を加える。具体的には正拳突き→足払い→踵落としである。そのスピードや破壊力は完全に常人のそれを超越しており、スバルBも足払いで態勢を崩された直後に強烈な踵落としを食らわされ、思い切り頭を押さえる。

「あだーーーっ!いきなり強烈ぅ……」

「へぇ……よく耐えたじゃないか」

「反則に凄い威力ですよぉ〜!頭がピヨピヨしますぅ〜〜!」

「効くだろう?これでも修行積んだんでね」


……と、冷静そうに振る舞いつつも、戦いを楽しんでいるなのはA。その様子を涙目で見つめるなのはB。


(ふぇぇ〜!?ど、ど、ど、どうなってるの!?いったい何がどうして!?)

彼女としては自分の拳を振るって喧嘩をした事は少なくとも小学一年の一回以外は覚えがない。小学二年生の頃には既に今に近い考えに至っていたからだ。スバルたちのように格闘技の訓練は仕事での必要上、多少は嗜んではいる。その成果で見切りの技能は一流を自負するが、実際に自分で拳を振るい、攻撃するのは苦手な部位に入る。しかし別の自分はスバルをむしろ圧倒する勢いで格闘術を披露している。途中までは同じような人生を歩んだはずだが、こうも違うところを見せつけられると言葉も無いようである。

「でぃぃぃやっ!!」

その間にもなのはAの怒涛の攻撃は続く。『攻撃は最大の防御なり』とばかりに早技を繰り出し、スバルに反撃の隙を与えない。デバイスを使わずとも高い戦闘力を持つ事を示すかのように。これは実のところ、歴代仮面ライダーやスーパー戦隊などのヒーロー達の影響が大きい。特に年齢(仮面ライダー達の“年齢”は改造時の肉体年齢)が近いストロンガー=城茂やスカイライダー=筑波洋やBLACKRX=南光太郎に強く影響を受けており、素手での格闘時のスタイルは彼等のそれに赤心少林拳のそれを加えたものである。スバルがほぼ素手で戦うのを考慮に入れたので、デバイスを使う気は無いらしい。



「くっ!」

スバルは一旦、距離を取る。ここまでなのはAが強いのは予想外だったようだ。砲撃専門に等しいなのはBと異なり、なのはAは『どのような状況下でも高い戦闘力を持つ』事がここで示されたわけである。しかもいくつか自分の拳を受けたはずだが、全くダメージがないように見受けられる。

(こんなになのはさんが強いなんて予想外だよぉ〜〜!手が出ないっ!)

戦闘機人として生まれたスバルは、肉体的には並の人間であれば圧倒するに値するポテンシャルはある。が、立ち塞がるのはもはや超人の域に達しつつあるなのはAである。普通の常識は通じない。殊更、反応速度に関してはスバルBのそれを完全に凌駕していた。


(それにあたしより攻撃への反応が余計に速い……普通の攻撃は通じないと考えるべきかな?)

スバルBは乾坤一擲の大技でしかなのはAの身体能力に対抗する術がない事を察した。しかしそれを当てられる自信はないが、やるしかない。

「おおおっ!」

スバルBはなのはAに果敢に挑む。ここでなのはAは遂に赤心少林拳の技を使った。師事していた人物の一人の沖一也=仮面ライダースーパー1が赤心少林拳の流派の一つ『玄海流』の使い手であった都合上、なのはの戦法もそれに準じたものとなっていた。その一端がこれ。

『赤心少林拳“梅花の形”』

赤心少林拳の中で仮面ライダースーパー1こと、沖一也が得意とし、なのはに伝授された防御がこれ。これは打撃を受け流してゆく技で、スーパー1の他に、習得に優れるZXが使える。どのような強力な打撃であろうと受け流していけば威力を発揮することはない。その極意の通りにスバルの打撃を全て受け流す。が、スバルBもただでは終わらない。

『これでどうだぁっ!一撃必倒!ディバインバスターぁ!』

なんと自己流ディバインバスターをほぼ密着状態で放った。ゼロ距離で放つ故に自分もダメージを受けるのを覚悟で放ったそれは確実になのはAに大ダメージを与えた……はずであった。爆炎が晴れると、確かにバリアジャケットにかなりのダメージを受けたなのはAの姿があった。だが、その表情は不思議と笑っていた。

「こうでないと楽しめない。いい攻撃だけど、あたしを倒すにはまだ『足りない』ぞ!」

「なんかゾクゾクしますよ。なのはさんとガチンコで拳を交えることができるなんて!」

この後も二人は更に拳を交えあった。なのはAは歴代仮面ライダーやドモン・カッシュ譲りの剛拳と柔拳を駆使し、スバルBと渡り合う。

「秘伝!急降下パーンチ!!」

高空から電気エネルギーを纏った拳を急降下とともにスバルBの肩に見舞う。これはストロンガーの『超電急降下パンチ』をなのはが再現できる限りの範囲で再現したもの。当然ながら威力は改造魔人をノックアウトするストロンガーのそれには到底及ばないが、改造魔人以外の相手には有効打になり得る。地面にスバルを肩まで埋めたと思えば更に追い打ちをかける。

「さぁて……とどめだ!秘伝その二!ジェット投げ!」

これまたストロンガーから伝授された必殺技である。要するにジャイアントスイングであるが、そのスピードはもはや常人では視認不可能な速さ。超人の域に足を踏み入れつつあるからこそ可能な芸当である。これを見ているなのはBは涙目もいいところで、先程から『や〜め〜て〜!私の柄じゃないよぉ〜!』と悲鳴に近い叫びを上げまくっている。そして投げ飛ばされたスバルはウイングロードで態勢を立て直す間もなく模擬戦場の仮想ビルの外壁をぶち破って中まで吹き飛ぶ。

「マスター、やりすぎでは?」

「なあに、スバルはこの程度でのびるタマじゃないさ。『あれ』も使いたいしね」

「ではバリアジャケットを解除しないといけませんよ」

「よし……!」

そう。魔力を使っている状態で気を操るのは至難の業である。漫画では『同時に扱うのは不可能』とされる場合があるが、なのはAも安全を期してバリアジャケットを解除し、道着姿に戻った上で精神を統一し、気を高める。そのため、バトル漫画よろしく、オーラが発現し、周りの地面が破壊され、地鳴りが起こるという魔法少女の領域からはみ出た超常現象が巻き起こる。

「お……あれを使うつもりだな……やり過ぎるなよ……」

「ふ、ふ、フェイトちゃん。どーいうことあれ!?」

「あー、説明すると長いんだが……」

フェイトAがお目覚めしてすぐに説明する。そのため、『天羽々斬』モードのバリアジャケット姿のままだ。だんだんとなのはBが半泣き状態になっていく。別の自分がもはや超人といえる領域にいるなどとは泣きたくなる状態らしい。フェイなのはBをなだめるが、半泣き状態のBをなだめるのは楽ではないらしい。

「ほ、ほら、泣くんじゃないって。気持ちはわかるけどな……」


「だ、だってぇ〜!あれじゃまるでド○ゴンボールじゃない〜!」

「うん、それは同意する……」

そう。今のなのはAはもはや超常バトル漫画の主人公と言っても過言ではない程の戦闘力を持ち、その気になればガンダムファイターに立候補できる身体能力がある。それを知るフェイトAは半分諦め状態である。そしてスバルBが再度の突撃を敢行すると同時になのはAの拳は『炎を纏った』。

「『あたしのこの手が真赤に燃える!勝利をつかめと轟き叫ぶぅ!!』」





ドモン・カッシュとの修行で結果的に習得した形となった『爆熱ゴッドフィンガー』。元来はゴッドガンダムの必殺技なのだが、ドモン・カッシュはそれを生身で放つことが更なる修行で可能となっており、それを石破天驚拳と組み合わせて放つ『石破天驚ゴッドフィンガー』を食らった影響で、なのはAは気と魔力の双方で炎を攻撃に使用可能になった。彼女自身はあまり使わないが、接近戦の際の決め技の一つとしてカウントしているとの事。

『ばぁぁぁぁぁく熱!ゴォォォド!フィンガーァァァァッ!!』」

ゴッドガンダムのそれと違い、エネルギーロスが多少なりとも発生はするが、威力は十分。拳に爆熱なほどの気力による熱エネルギーを纏って突貫する。


「えぇっ!?」

スバルは驚愕する。なのはの拳が真っ赤に燃え滾り、全てを粉砕せんと立ちふさがるものを破砕していっているからだ。マッハキャリバーもこの未知の攻撃に戸惑う。

「相棒、この攻撃は危険です!退避を!」

「あたしは逃げないよマッハキャリバー。ここで逃げたらシューティングアーツの使い手として名折れだし、それにこういうのには全力で応えるのが礼儀ってもんだよ!」

マッハキャリバーはなのはの左の拳に(左利きなので)たぎる炎に得体の知れなさを感じたのか、スバルに退避を要請するが、シューティングアーツの使い手(ミッドチルダにはこの他にストライクアーツ、カイザーアーツなどの流派が有るとの事)として、逃げるわけにはいかないと、尚も突進を止めない。そしてスバルの一撃よりも早く、ゴッドフィンガーをカウンターで当てたなのはAはそのまま突進し、その態勢のままでスバルBを斜め上に持ち上げていく。

「ヒィィィトォ!エンドッ!」

ゴッドフィンガーのエネルギーを一点に集中させ、爆破してとどめを刺すのがゴッドフィンガーの流れである。その破壊力は本家大元のドモンのそれには及ばずとも、スバルの胸部フレームを何本か折るには十分な威力を発揮。爆発が収まると、スバルBをお姫様抱っこして運ぶなのはAの姿があったが、フェイトAとスバルAは『あちゃー』と頭を抱える。


「どうする、スバル……あれじゃ向こうのお前、当分入院確実だぞ」

「なのはさん、悪い意味でも手加減なしですからねぇ……。部隊長、作戦にはあたしが参加しますよ。ゴッドフィンガー食らったら数ヶ月の修理と療養が必要ですから」

「わ、わかった。でもゴッドフィンガーって確かゴッドガンダムの技やろ?なんで撃てるんや?」

「フィンガー系の技はあたしが行った世界だと、ネオジャパンが作った歴代のガンダムの何体かが備えてた機構として知られてるんですが、流派東方不敗の技にもちゃんとあるんですよ。それでドモン・カッシュさんがデビルガンダム事件の後に生身でも撃てるようになって、それが結果的になのはさんに伝授されたんですよ」

「……つまり歴代のガンダムの内のアナザーガンダムのうち、少なくともGはいるんかい、その世界?」

「Wもいます。ただしXはいないですけど」

「なんでや!普通、GとWと来たらXやろ!そりゃ打ち切りやけど〜!」

「うーん……そんなこと言われてもねぇ」

はやてBは変なところにぶーたれる。スバルAもはやてが持つ『アニメオタク』的な側面にはは元の世界でも閉口していたが、この世界でもそれには変わりないらしい事を理解した。しかし未来世界の軍隊生活で揉まれたのがいい方向に作用したらしく、はやてをどうにかあしらう。



――この二通りの模擬戦でなのはA達の力を理解した(もう一つはなのはA達の戦闘力を目の当たりにしたことで、エリオやキャロなどが模擬戦を挑んだら負傷確実で、これ以上負傷者を出さないようにするためでもある)としたはやてはスバルBを『入院』させ、その代わりになのはA達に作戦へ本格的に関与するように『要請』した。負い目が有るなのはA達は了承。その日の午後から作戦会議が行われ、なのはA達は『遊撃手』として各方面を支援し、場合によれば突撃部隊を援護する任務を負った。ただし表向き、彼女らは『いない』ので、戦果は全てこの世界の自分自身のものとして記録される。
























――決戦までは間はない。それぞれが決戦の準備に勤しむ中、ついに南光太郎らがこの次元に到達した。最初に出発した日からすでに1ヶ月が経過し、南光太郎は憔悴しきっていた。郊外にライドロンを隠しつつ、一般人に化け、(黒江も違和感がないようにわざわざ現在風の洋服を着込んでいる)ゆっくりとなのは達の捜索を開始した。この時の黒江が持ち込んだISのスペックは以下の通り。











――試製2201年式インフィニット・ストラトス改三『旋風』(これは将来的にウィッチ世界に売り込む目的と国民へのプロパガンダも入っている愛称で、第三改修時に存在が明らかにされた) 最高速度M3.5、瞬発力と格闘戦能力に重点が置かれ、一部性能は赤椿を完全に上回る。系統的には赤椿の独自発展形に属するもの、展開装甲が地球連邦の技術力では模倣出来なかった都合上、展開装甲機構はオミットされている。ただしバード星の技術で改修された際に各部機構が飛躍的に小型化・改良されたため、元来のインフィニット・ストラトスの概念からは離れた姿となっている。(展開時の姿がよりスーツらしく収まり、人間サイズになっている、脚部での歩行機能がついたので、外観的にはどちらかと言うと、ISらしさを残したコンバットスーツの形態を取るようになった。武装は他プロジェクトのものと共用可)。篠ノ之束が見たら泡吹くか、怒り狂ってテロ起こしかねない独自発展である。テストには黒江の他に、オリジナルに当たる赤椿の装着者である箒も関わっており、感触としては良好との事。


「どします光太郎さん。これで30個めのミッドチルダですよ?」

「ダメで元々だ。とにかく探そう」

二人は次元世界から並行世界のミッドチルダ巡りというべき、ある意味とんでもない捜索方をしていた。次元世界をただ探すだけでは手がかりが得られなかったためだが、その中には闇の書事件が起こらなかった歴史や、なのはの相棒がフェイトではなく、アリシアだった、なのは達が嘱託魔導師のままだった、という『歴史の方向性が違う世界』もあったという。なので用心のため、どこかの公的施設にある端末から情報を得ておく事になった。

――ミッドチルダ郊外のとある公立施設


「うーん。だいたいはスバルの奴が前の戦争の時に言ってた歴史と一致してる……と言うことは歴史の差異があまりない世界っー事だな、ここは」

黒江は元のミッドチルダに何度か訪れているために、ミッドチルダの機械の扱いも熟知している。だいたいの情報は検索で得られるので無問題だ。(機密級の情報についてはロボライダーの能力である『ハイパーリンク』を使えば良い。その場合は如何なプロテクトも無効である)




「望み出てきた、かな?こりゃ」

一般人に化けているので、珍しく戦闘服も軍服も着ておらず、なのは達が見れば驚くであろう服装だ。しかも道中で買ったのか、釣り竿(ミッドチルダ式のお高いもの。フェイトの口座にツケた)をバックに入れて担いでいる。

「どうだい?」

「今回は望みありです。歴史もだいたい変わりないっす」

「良し、スカリエッティが動き出す前に見つけ出そう。戦闘は俺が変身すればいいが、それだとこの世界の管理局に捕まるし、その前に捕まえたい」

「OKです」

二人は行動を開始した。一般人に紛れつつも情報収集をしながらなのは達に近づかんと捜索を行う。そして捜索開始から一日と8時間が経過した時だった。

「光太郎さん、あれを!」

「あれはスカリエッティの……『ガジェットU型』とか言う奴!管理局の部隊との戦闘に向かう途中だな……」

「どします?」

「見過ごすわけにはいかない!ここは俺に任せるんだ!変身ッ!」




光太郎はロボライダーに変身し、腕にボルテックシューターを召喚する。遠距離からの狙撃で全て落とすつもりらしい。黒江には引き続き捜索をさせつつ、ロボライダーはボルテックシューターを片手に迎撃を敢行する。連射速度は凄まじく、瞬く間に100機単位で回避の間無く落とす。敵機の攻撃など意にも介さない。ロボライダーの防御力は例え4000度の火炎であろうと焦げ目すらつかないのだから。このロボライダーの戦闘に気がついた者がいた。スカリエッティ側の戦闘機人のクアットロである。

「なんか面白いのがかかったわねぇ。セッテ、行ってくれる?」

「……はい」



これが彼女らにとって運命の歯車を狂わす選択であった。相手が通常の魔導師相手であれば優位なのだが、元・ゴルゴムの世紀王にして『太陽の子』に新生した南光太郎が相手ではもれなく死亡、もしくは完膚なきまでに叩きのめされ、再起不能になるかのいずれかである。女であろうとも、敵と判断すれば情け容赦ないRXと相対した時点で、もはやその道が確定したのであった……。











――別れた黒江には不思議と光太郎が負けるという気持ちは沸かなかった。光太郎がRXだからと言えばそれまでだが、それとは別に不思議と心強さを感じさせる力が光太郎にはあった。光太郎なら孤軍奮闘であろうと必ず勝ってくる。そう信じられるから。

(待ってろ、必ずお前たちを見つけ出して一発ぶん殴ってやるかんな!)

そう思いを新たにしつつ、黒江は駆け出す。弟子の消息を掴むために。腕に待機状態のISを身にまといつつ。光太郎の言葉に応えるために。



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