短編『ブルートレインはのび太の家』
(ドラえもん×多重クロス)



――服装を着替えたしずかが廊下を歩いて行く。ジャイアンが運転したら、スピードの出しすぎの事故は確実であるので、しずかが運転するのも頷ける。そのジャイアンは、屋上で、暇つぶしに歌い、周囲の民家や、山の動物達を大混乱に陥れていたが、知らぬは本人ばかりであった。30分もドミニカが回想している間に、智子は眠くなり、すっかり寝てしまい、聞く相手は黒江に入れ替わっていた。



――リラックスしようと、屋上に出て、風に当たろうとした菅野と下原は、ジャイアンの歌をワンフレーズ聞いただけで息も絶え絶えになってしまい、なんとか気力で食堂車に入るなり、力尽きて倒れてしまった。

「も、もうだめだ……」

「おーい、しっかりしろ!傷は浅いぞ!」

菅野をペチペチと叩く黒江。菅野の顔は青ざめ、今にも意識が飛びそうだ。

「ど、ドミニカさん……え、エチケット袋を……」

「ち、ちょっとまってろ!ジェーン、ジェーン!下原少尉が吐きそうだ、エチケット袋持って来い!大至急だ!!」

「は、はい!」

ジャイアンの歌に耐性がなければ、ウィッチと言えど、このような事になる。ジャイアンの歌は、強烈な不愉快音波であり、耐性があるのび太達でさえ『脳がムズムズする』のだ。それを耐性がない者が聞いたら、命に関わる。その結果がこれである。

「お、おい。菅野、おい、おいったら!……だめだ、のびてる」

「こっちは凄く吐きまくってるぞ……」

下原が、胃から胃液を含めて、全てを出している。その様子は、普段はズボラですらある、ドミニカが介抱しているあたり、事の重大さが分かる。

「おい、のび太!ドラえもんからお医者さんカバン借りてこい!ジャイアンのクソ音痴な歌で重病人が出た!」

「は、はい!只今!」

黒江が携帯で、別室にて休憩中ののび太に知らせる。すると、三分ほどでお医者さんカバンを持ったのび太が駆けつける。

「どうだ!?」

「待ってください、今、診察結果が出ます……」

『強烈な胃の痙攣による吐き気。超強力な吐き気止めと、鎮静剤が必要』

と、下原に対しての診察結果が出る。下原は毒でも盛られたかのように、顔色が青ざめており、もはやこの世の人とは思えない。

「話は聞いた、ストレッチャーを持ってきたぞ!」

シャーリーがストレッチャーを運んでくる。のび太が強烈な吐き気により、虚ろな目をする下原に薬を投与し、シャーリーが運んでいく。菅野は下原の後ろにいたため、程度が軽く、強壮剤と吐き気止めを投与され、気がつく。

「の、のび太……お、オレ、どうなったんだ?記憶が……」

「忘れたほうが幸せですよ、大尉」

「し、下原は?」

「シャーリーさんが運んでいきました。」

「そ、そっか。なんか、すげー恐ろしい目に遭ったような……」

「おもいださないほーがいいぞ、菅野」

黒江が言う。ここから菅野は、ジャイアンの歌に、強烈な拒否反応を示すようになり、いかなる時でも、ジャイアンが歌おうとすると、正拳突きで気絶させようとする行動を無意識で行うようになり、後に、黒江は『ジャイアンの歌症候群』と、この心理状態を名付けたという。





――運転室になっている、のび太の部屋

「ご苦労さん、シャーリー」

「ジャイアンのヤツ、めんどい事起こしやがって……」

「まあ、いく前のあたしほどじゃないよ。行く前の日、やけに少佐から絡まれてさ……」

「そりゃ当然だろ?剣を振るってるから、立ち姿が前と変わってるし、纏う空気も変わってるんだぜ、お前」

シャーリーが言う。坂本ほどの者なら、ハルトマンの姿勢の変化に気がつかないはずはない。

「うへー……参ったな。坂本少佐、暗いうちから特訓しだすんだもん。やだなー」

「そのうち、お前のトレーニングを抜き打ちで視察しに来るぞ?お前が軍刀を帯刀しだしたのを怪訝そうにしてたしな」

そう。ハルトマンは軍刀の帯刀の習慣が無いカールスラント軍人だ。それがいきなり、扶桑皇国の将校よろしく、普段から帯刀していれば、坂本の目に留まるのは当たり前だ。

「まー、その気になれば、坂本少佐くらいは返り討ちにできるけどさ」

「おー、強気だな」

「そりゃそうさ。講道館剣術くらいで、飛天御剣流に敵うもんか。ワンパンで倒せると思うよ」

そう。坂本の剣術は、あくまで教本通りの動きの剣術であり、対人には向かない。若本とも随分と刃を交えていないので、自惚れも強くなっていると思われる。その点を指して、『ワンパン』と評したのだ。無論、坂本も扶桑海事変の黒江と智子に憧れ、特訓は積んでいたが、どうしても、対人という点では劣る。それが、飛羽高之=バルイーグル、赤間健一=ゴーグルレッド、レッドファルコン=天宮勇介と言った、剣術に定評のあるヒーローに仕込まれ、更には黒江達共々、倉山鉄山将軍の教えも受けているハルトマンに勝てる道理はない。

「坂本少佐が聞いたら、ムキになりそうな発言だぞ?あの人、リバウ三羽烏だって、誇ってるしな」

「まーね。坂本少佐だって『三羽烏』の後継者だって誇りがあるのはわかってるさ。だけど、今の少佐は半分、ヤケになってるからね。平常心の少佐とならやりたいけど、今の少佐はパス」

ハルトマンは見ぬいていたのだ。寿命が終わろうとしているウィッチである坂本の気持ちを。それ故、坂本が文字通りに平常心を保っている状態でなければ、仕合は受けないと明言した。

「色々と厄介そうだしな。自分達の代が『スリークロウ』止まりで、戦局を左右するまでの存在にはなれなかった事を、本国に帰ってた時期に後輩に指摘されて、それを気にしてるって話だし」

「先達が偉大すぎたんだよ。マジンガーZに対するグレートマジンガーみたいに、皆は先達の代わりになる事を求めるからね。ましてや、スリーレイブンズは戦争を勝利に導いた英傑なんだ。リバウ戦線が負けて終わった分、後輩から低評価されがちだしね」

最近の坂本が、戦功を焦る要因には、自分たちは勝ち戦を続けていたが、軍がリバウ戦線を維持できず、撤退した事、坂本自身はリバウ戦線の崩壊前に転出していた故に、『負け戦を知らない老害』との陰口を叩かれたのを気にした事もあった。もちろんそれは濡衣に近い。その頃には、全員が他方面に転出していた事、その直前に若本がいた事を拡大解釈した事が、坂本と竹井への濡れ衣になっていた。スリークロウ、またはクロウズと呼ばれた時期、確かに坂本を筆頭とする三人は無敵だった。一時は先代の三羽烏『スリーレイブンズ』を超える撃墜ペースを稼ぎ、先代を超えるやもしれぬと謳われ、坂本自身もそれを意識した時期があった。それ故に、坂本は初の統合戦闘航空団に招聘されたのだが……。

「確かに、リバウ戦線は負けはしたけど、スリーレイブンズの時代より強力な怪異を倒してきたって自負もあったはずだぜ?」

「問題なのは、その自負が変な方向に行かないか、だよ。若手の陰口を変に意識しちゃないか……」

「なんか、大変そうですね」

「ああ、ウチ部隊、隊のの父親同然の上官のことだよ、シズカ。ノビタにも言ってるんだけどさ〜」

「話は聞いてます。なんか衰えたスポーツ選手みたいな話ですね」

「スポーツ選手なら、まだいいよ。あきらめ付くし。私達はドンパチが仕事だからね。それしか知らないのが、いきなり普通の暮らしできると思う?」

「無理ですね。ベトナム戦争でも、帰還兵が問題になったりしてますし」

「でしょ?坂本美緒少佐っていうんだけど、その人。絶頂期に名を馳せてる分、あきらめつかなくてさ……」

「スポーツ選手は潔ぎよいけど、軍人となると、そうはいかないんですか?」

「うん。あたし達はシズカ達の年頃には、軍隊に入ってるんだ。だから、つぶしが効かないウィッチって多いんだ。特に叩き上げの職業軍人ともなると、転職なんて無理だし、家に帰って、婿さんもらうなんて嫌だし」


――軍人。それも職業軍人となると、つぶしが効かない。それ以外を知らないからだ。ベトナム戦争のベトナム帰還兵、日本では、解体後の日本軍の職業軍人達もそうだが、社会が荒れる原因となる。地球連邦の時も、リリーナ・ピースクラフトが軍再編の思惑の第一段階として、『連邦軍の解体』を打ち出したのは、後の世から見れば失態だったと評される。施策に反発した軍人らがネオ・ジオンに転じたりしたためで、政権転覆の一因となったからだ。軍人というのは、扱いに気をつけなくてはならない人種であると、連邦政府が再認識したのもこの時期だ。同様に、職業軍人ウィッチは、幼少から軍人として生きる事を仕込まれて育った。それ故、上がりを迎えてなおも軍人であり続ける事が多数派だった。それを嫌悪した高級軍人がトレヴァー・マロニーであったのだが――

「それじゃ、定年で退役するまで、職業軍人で?」

「だね。うちの家業は医者なんだけど、それも当分はできそうにないしさ」

「なるつもりはあるんですね」

「そりゃ、誰かが継ぐ必要があるからね。双子の妹は科学者だし、家を長女のあたしが継ぐしかなくてね。まっ、軍人でいる間は、軍人としての本分を尽くすつもりさ」

ウルスラのことを話題に出すハルトマン。家の家業を将来的に継ぐが、職業軍人であるうちは、職業軍人としての本分を尽くすと、しずかに明言した。

「医者の勉強はしてるけど、あいにく、ウチには治癒魔法で一級の奴がいるから、披露できなくてね」

「残念ですね」

「いいさ。半端な知識よりも、効果抜群の治癒魔法の方が優れてるから。ノビタからM29をもらったよ」

「オーバースペック過ぎますよ。護身用にはガバメントで充分なのに、のび太さんったら、ダーティハリーでも気取ってるのかしら?」

「つーか、日本の普通の小学生がガバメントわかる時点で、普通じゃあないって。ねぇ、シャーリー」

「おう。あたしみたいに、アメリカ人っていうならまだわかるぜ?でも、しずか。お前は平和な日本の一小学生だろ?なんで分かるんだよ」

「のび太さんに付き合って、ダーティハリーとか、ウエスタンもの見てれば、ねぇ」

「女子誘って見る映画じゃねーだろ……そこはオードリー・ヘッ○バーンとか、マリ○ン・モンローとかのロマンティック・コメディだろ?」

「のび太さん、普段が普段だから、強いモノに憧れるみたい。腕っ節だけが強さって思ってるのかしら、男って。」

しずかは多分に、ジャイアンの普段の横暴さ、暴力による行為を嫌悪している節があり、腕っ節だけを誇る男へ呆れと嫌悪が入っていた。また、おしとやかさを母親から求められ、そのような教育を受けているため、シャーリー達から見ても、完璧に近い形の女性語を使いこなしている。(もっとも現在人としてのおてんばな面も多く、以前のアフリカの冒険の際には、スーパー手袋で兵士らをボコボコに叩きのめした)

「まぁまぁ、そういうなって。のび太だって男だ。ああいうのに憧れるもんだって。特にのび太は普段が『女より貧弱な男子』の筆頭みたいなもんだし」

シャーリーの言う通り、のび太は草食系男子のはしりのようなもので、のび太の特徴でもあるが、人並みに『カッコいい男』に憧れる心理は持ちあわせており、イーストウッド演ずる、ハリー・ギャラハン刑事や、同じく、彼演ずる、マカロニウエスタンの『名無しの男』や、意外なところでは『刑事コロンボ』のコロンボなどに憧れていたりする。

「そうなんですか。」

「ああ。ウチの親戚のいとこもそうだけど、カッコいいもんに憧れるもんだ。特に普段がダメだと。しかし、お前。いかにもって習い事してんだな」

「ママの影響ですよ。私はバイオリン好きなんだけど、ママがピアノやらせるんです」

「そ、そうか(お前、ピアノの才能あんのに、それに気づかないでバイオリンしてるのに気がつけよな!)」

そう。しずかはバイオリンのほうが、ピアノよりも大好きであり、母親と対立する事が多い。最近になり、バイオリンのレッスンはやめさせられた(才能が絶望的にない)らしい。その才能の無さは、のび太をして、ジャイアンの歌と同じと酷評されるものだ。

「それはそうと、もうじき本州の最北端の駅につきますよ。そうしたら、線路を変更します」

「一本でいけねーの?」

「北海道新幹線の開通は、私達が30歳近くなった時代ですからね。この時期はまだ一本でいけないんですよ」

「いや、待てよ?たしか、今は2000年だろ?盛岡の先に新幹線の線路無くね?東北本線に早く切り替えたほうが」

「分かりました」

この時代、盛岡駅までで新幹線の線路は終わる。シャーリーが気が付き、進路変更を指示する。ここが、ひみつ道具の利点であった。


――夜の内にしか行動不能な道具の特性の都合により、迅速に東北の最北端に達しつつある、野比家ブルートレイン。その内部の仕様は如何なものか。ここでご覧に入れよう。

――運転室は、のび太の部屋が変形したもので、机にマスコンが置かれている。客車は、応接室と居間などの各部屋が変形・再構築されたもので、間取りは意外に広い。TVとゲームもここに設置されている。この時間には、黒田と智子がバイオハ○ード3をプレイしていて、ボス戦の真っ最中だったりする。

「えーと、ロケラン、ロケラン!」

「アホ!外したらどーすんのよ!」

という会話が飛び交い、イザベルを大いに笑わせていたりする。そこにどこでもドアが現れ、旧506戦闘隊長のハインリーケ、同じく同部隊のB部隊のカーラ・J・ルクシック、ジーナ・プレディがやってくるのだが、黒田と智子はそれどころではない。

「ぬ、ぬぬぬ!!休暇が取れたので、折角、久しぶりに黒田中尉の顔を見てやろうとしたのに、何をしとるのじゃ!?」

「おー、黒田。早速、ゲームかよ」

「カーラさん、少佐、お久しぶり!だけど、今は話しかけないで〜!重要な場面なんです〜!」

のび太のPS2(のび太が大人になった時代で買った最終型)でバイオハ○ード3をプレイする智子と黒田。

「えーと、何々、『バイオハザード3 LAST ESCAPE』……サバイバルホラーゲーム?黒田中尉の趣味だな、これは」

ジーナがゲームのケースのパッケージを一瞥し、言う。同僚のマリアンが留守番になったため、動ける旧506メンバーでは、マリアン・E・カールのみが欠席となった。そのため、506メンバーの8割が集まった事になる。(ロザリーの護衛に、アドリアーナ・ヴィスコンティがついているため、彼女は除外)

「しかし、話に聞いていた通りの家だの」

「そりゃそうだよ、姫様。これが20世紀後半の扶桑の平凡な家なんだって」

「見れば分かるが……」

そう。野比家の居間は、ハインリーケの家の一室の半分あればいい方である。狭さにびっくりしたところもあった。と、ハインリーケの口に放り込まれたものがあった。冷凍みかんだ。

「ふ、ふぉぉ!?な、なんじゃこれは!?」

ハインリーケにとって、未知の味である冷凍みかんが口に放り込まれたので、思わずパニックを起こしそうになる。それをニヤニヤして見つめるイザベル。

「姫様。まぁ、落ち着いて。ジーナ中佐達もさあさあ」

イザベルが場を上手くまとめる。TVゲームに夢中になる二人を尻目に、新たに加わった506のメンバーだが、色々と遭ったらしい。

「どうしたの?」

「実は、途中まではストライカーで追っていたのじゃが、途中で妙な唸り声が聞こえたと思ったら、全員のストライカーが不調に……」

(じ、ジャイアンの歌だ!!うそぉ、ストライカーのエンジンまで妨害できるの!?)「そ、それで?」

「仕方ないから、途中で回収してもらったのじゃ。こんな事は初めてじゃ。唸り声で魔導針まで掻き消えるなど……」

なんと、ジャイアンの歌は、なんと魔法にさえ悪影響を与えるのである。これは諸説あり、ジャイアンの歌で、魔導エンジンの内部部品が緩んだ、あまりの悪声が魔力行使に悪影響を与えたなど。もっとも有力なのは『歌が脳に直接刺激が与え、思考能力が低下、魔法の制御が出来なくなる』というもので、実際、ハインリーケは、固有魔法すら行使不可になったので、その線が最有力だった。その原因が歌と聞いたハインリーケは大いに憤慨し、『あの唸り声が歌じゃと!?音楽を愛する者たちを冒涜するような、醜悪なる唸り声が!』と怒ったという。もちろん、ハインリーケはその後、それを聞いて怒り狂うジャイアンのセッションを聞かされ、これまた、ジャイアンの歌恐怖症を発症するのだった。


「終わった―!ふぅー!!いえ〜い!!」

ゲームをクリアし、ガッツポーズを決める黒田と智子。ここだけ見ると、完全に20世紀後半のありふれた光景である。TVゲームというのに馴染みがない他の面々だが、テーブルに置いてあったDVDに興味を示す。

「何々?トップガン、ファイナル・カウントダウン、愛と青春の旅だち、炎のランナー、ベン・ハー?」

「あ、のび太くんのコレクションですよ。黒江先輩があれこれ理由つけて、買ってきた映画のDVDで……」

「ハリウッド映画なのか?」

「ええ。炎のランナーはブリタニア映画ですけど。ヒッチコックのサスペンスもありますけど?鳥に、トパーズ、裏窓、ダイヤルMを廻せ!……」

「それはお前の趣味だろ!もっとこう、ドバーッとスカッとだな」

「コマンドーとか、トゥルーライズ、イレイザーとか、ダイハードとかどうです?スカッとしますよ」

カーラのいうことも確かなので、アクションを差し出す。ダイハードに触手が伸びたらしく、カーラはダイハードを再生してもらう。自動的に他のメンバーも見ることになり……。

『イピカイエー、クソッタレ!!』

と、いう台詞と共に、テロリスト相手に戦闘を繰り広げるジョン・マク○ーン刑事の勇姿に、リベリオン組は大はしゃぎ。カーラは『うおおおおおおお!!』と歓声を上げ、普段は冷静なジーナでさえ、頬が緩んでいた。ド派手な銃撃戦、テロリストを煽る。彼はスーパーヒーローではなく、負傷する場面も多いが、とにかくド派手の一言であった。そして、不仲になりつつある妻との束の間の愛など。リベリオン人が喜ぶ要素満載であるため、カーラは興奮しっぱなし、ジーナも身を乗り出す程に見入っていた。

「うおおおおおおお!お、面白え!!おい!続きはないのかよ、続きは!」

「2、3、4.0、ラスト・デイが」

その中には、この時代には影も形もない続編も含まれている。が、カーラは乗り気なようだ。大興奮のカーラを制し、ジーナがDVDを差し出してくる。トップガンだ。F-14に興味が湧いたようで、ちょっと気恥ずかしそうだ。

「ち、中尉。悪いんだが……こ、これを……」

「いいですよ、中佐」

「す、すまんな」

ジーナが赤面するのはレアイベントであるため、周囲は驚く。だが、年齢相応ではある。そして、アバンタイトルを経て、OPと共に、カタパルトからのF-14の射出と共に始まるOPテーマ。これに一同は釘付けになった。

「トムキャットねぇ。乗りたいんなら、帰ったら乗せてあげるけど?」

おもむろに智子が言う。501には『F-14++』を練習機&予備機材として搬入してあるからだ。

「バルキリーだって、VF-1の練習機がライセンス再販されたの入れるんでしょ?ついでに乗せてあげたら?」

「それもそうねぇ。よし。帰ったら、乗せてあげるから、こっちの要請に答えてよね?」

「り、了解だ!」

トイレで通りかかったのび太の一声で、智子は皆に約束する。ジーナがいの一番に発言するのは前代未聞であり、ハインリーケすら、開いた口が塞がらない。こうして、トップガンのおかげで、506隊員の心をわしづかみした。これにより、智子は奇しくも、後の山本五十六の策略を成功に導く一助を成したのだった。




――新生501基地では。

「な、な、何よこれぇえええええ!?」

「どうしたんだ、ミーナ。お前らしくもない」

主要メンバーの多くが休暇で不在な501基地。ミーナは、新星インダストリー/L.A.Iから納入されたVFの仕様書を再確認していた。確認してみると、どれもスペックが『ぶっ飛んでいる』高級・高性能機ばかり。しかも今回の納入機は、連邦軍最新最強の可変戦闘機『YF-29』なのだ。

「み、美緒。これ見て」

「なんだ、YF-29じゃないか。YF-27でも届いたかと思ったぞ」

「これって、試作機よね?」

「向こうの試作機には、2つの意味合いがあってな。この場合は実戦テスト機を意味する。黒江のヤツ、随分高い機を頼みおって。高純度フォールドクォーツたんまりのオートクチュールみたいな機体なんだな、これが……うお、どうした!?しっかりしろ、魂を出すんじゃない!」

ミーナと坂本がこのような漫才を繰り広げている裏では、たまたま、ジェットストライカーのデータ回収のために来ていたウルスラ・ハルトマンが、このYF-29が整備を受けている格納庫に偶然、足を踏み入れ……。

「え……?」

流線型の機体、完全な前進翼、ジェットノズルなど。ウルスラには衝撃的だった。これがウルスラがVFを初めて目撃した瞬間だった。

「こ、これは……?」

「来てたんですか、ウルスラ中尉」

「さ、サーニャ中尉、これは……?」

「黒江少佐が、未来から取り寄せた、最新型の可変戦闘機だそうです」

「そ、それじゃ。これが23世紀の」

「最新最強の可変戦闘機。愛称は『デュランダル』だそうです」

「デュランダル……」

「連邦軍には、形式ナンバーが9の機体に剣の名前をつける風習があって、その三代目にあたる『YF-29』はデュランダルと名付けられたそうです」

「スペックは?」

「大気圏内でマッハ5.5出せるとかなんとか。熱核エンジンだから、触媒の反応物質入れておけば、数ヶ月は飛べるそうです」

「マッハ5.5……あ、アハハ……こちらの努力は何なんでしょうね……」

「あ!しっかりして下さい、傷は浅いですよ!」

サーニャもこれには焦る。ウルスラにはショックが大きすぎたのだ。超音速どころか、亜音速〜遷音速あたりが限界速度なジェットストライカーと『桁が違う』速度だからだ。基礎推力からして桁違いなので、そもそも比較の対象にすら成り得ない。ショックで、魂が抜けかかるウルスラだが、なんとか整備員に手伝ってもらい、コックピットの計器を見せてもらう。

「うわぁ〜……すごく未来的ですね」

「23世紀の最新ですから」

「これは?」

「熱核タービンエンジン。原理的にはこの時代から20年後くらいに現れるはずのターボファンエンジンと同じです」

整備員の言葉に聞き入るウルスラとサーニャ。サーニャも、この時、決戦に備えて、昼間戦闘に駆り出されるための訓練に入っており、生活習慣を切り替え初めていた。そのため、普段は起きていない時間に起きていた。エイラも流石に、決戦が近いことは自覚しており、このことに口は挟んでいない。ここで得た知見は、後の地球連邦の次なる戦『デザリウム戦役』で試作されるコスモストライカーの開発に役立つ事になる。魔導アフターバーナーとでも言うべき装置を開発し、更に次世代魔導ジェットと言える、魔導ターボファンエンジンの実用化が予定より10年単位で早まる事になるのであった。また、サーニャが解説役というのも珍しい事であり、レアイベントを見逃したエイラは、血の涙を流して悔しがったという。

「サーニャ?なにしてんのー?」

「サーニャさんにジェットの解説してもらってました!! 凄いですねー未来の技術は!」

「サーニャ、しゃべってたの?!惜しいことしたなー。あ、これケイさんから、エンジン音気にならなくなるよ。サーニャに渡してくれ」

「分かりました!」

という顛末だったとか。


――ミーナの執務室

「一点物の機体って事?」

「いや、マスペースで生産されてる機体なんだが、大量生産が不可能な機体だから、Yナンバーのままなんだ。製造に超高純度フォールドクォーツが必要だしな。それ以外は、普通の可変戦闘機と同じだ。パーツ規格はVF-25、ひいてはYF-24と共通だしな。言うなれば、高級なスーパーカーみたいなものだ」

YF-29は超高純度フォールドクォーツが生産に必要なため、月辺りの生産数は多くない。性能に比例して、製造費がかかるからだ。そのため、配備申請ができる者は大隊長以上の立場、或いは名うてのエースパイロットなどに限られる。

「フォールドクォーツ、か。確か、あなたが昔に拾った石がそうだって?」

「ああ。扶桑海の戦いの時、天城の艦内に置いてあったのを戦後にもらったんだが、まさかフォールドクォーツとは思わなんだ。小さいものだが、純度が高いらしくてな。決戦の時には、お守りとして持っていてくれんか?」

「……いいの?」

「ああ。聞く話では、連邦はこれで、戦場に歌を届けたらしい。歌姫の歌を。これは武士である私よりも、お前が持つのが相応しいだろう」

坂本は黒江からフロンティア船団の顛末を聞いており、少女期に拾ったフォールドクォーツをミーナに託した。これが最終決戦の鍵の一つとなり、ミーナに歌の力を再認識させるきっかけとなるのだった。そして、このフォールドクォーツが、フロンティア船団にいる歌姫らとのつながりをもたらすのだった。

「黒江は強大なウィッチとしての力を持っている。勝利をもたらす『八咫烏』と言っていい。だが、あいつもあいつで、あがりを一度迎えている。その時にウィッチの力の及ばない何かを悟っている。だから、未来の機械の翼を欲したんだろう。それは恥じることでは無い。私も近いうちに……」

「やめて!それ以上……」

「どうした?お前らしくもない」

「お願い、美緒。私を一人にしないで……」

「何を言っている。私は死にはせんさ。向こうの世界であった、神風特別攻撃隊じゃあるまいし」

ミーナの気持ちに呼応するかのように、フォールドクォーツが歌を届ける。シェリル・ノームの『ダイアモンドクレバス』だ。ミーナの気持ちに呼応したのだろう。ミーナは、神風特別攻撃隊の映像で垣間見た『扶桑人の死生観』を嫌悪するような素振りを見せた。無論、民族の違いや、扶桑人が侍の末裔である事は理解しているが、自己を犠牲に、他を生かす選択を嫌っているのだ。過去の出来事もあり、部隊を家族とみなし、皆で帰ってくる事を至上にする彼女にとって、突如としてやって来た黒江、智子、圭子は『他所者』であった。そのこともあり、三人を受け入れられず、彼女かしらぬ冷遇をしていたのだろう。

「私は、あの三人が怖かった。あなたが三人を頼りにしているのを見て、嫉妬すら感じた。あなたを501から引き離してしまうんじゃないかって……」

「お前らしくもない。あの三人は、私やお前の先輩だぞ?それに、私や醇子の恩人でもあるんだ。頼るのは当たり前だ」

ミーナは、歌の効果もあり、隠していた感情が一部、表に出た。坂本はそれを悟り、子供に言い聞かすように語りかける。その面では、坂本の『大人になった』側面が役に立った。

「あの三人、軍の報告書にある『スリーレイブンズ』は、私達の目標だった。私や醇子とて、クロウズと例えられた『三羽烏の後継者』だ。できれば、私らの後に続いてくれる者が出てくれればいいが……後に続く者が……」

――三羽烏は黒江達を初代とカウントした場合、二代目はリバウ三羽烏である坂本達になる。三代目となるべき者たちは育っておらず、自分達も通常なら引退する年頃だ。初代三羽烏を引き戻してしまった自分達の不甲斐なさを恥じる坂本。フォールドクォーツが遠く離れたフロンティア船団のそれと共鳴し、歌姫の歌を届ける。坂本がフォールドクォーツをミーナに託したのは、自分には相応しくないものであり、もし、戦争がなければ、歌姫になれていたであろうミーナにこそ渡すべきだという考えからであった。坂本の憂い。それは自分達に続く者の不在と、ウィッチとしての自分の寿命との相剋だったのだ――









――話は戻って、のび太の家

「そういえば、真田さんから聞いたんだけど、アケーリアス超文明ってなんだ?」

「アケーリアスってのは、プロトカルチャーの先代にあたる文明だそうだよ。地球人に取ってのプロトカルチャーの立場にあった、おとめ座銀河団最初の恒星間文明。おとめ座銀河団を開拓した種族らしいんだ」

ハルトマンが、23世紀の『宇宙大図鑑』を手に、シャーリーに言う。アケーリアス超文明。それはプロトカルチャーを含めて、イスカンダル、ガミラス(後継のガルマン・ガミラス)、ガトランティス、地球人類の共通の祖に当たると判明した、超先史文明。プロトカルチャーはその滅亡後に再興した一派にすぎないのだ。

「超文明?」

「うん。各遺跡の発掘で、アケーリアスは、プロトカルチャーの絶頂期もお呼びじゃないくらい高度な文明を以て、おとめ座銀河団を開拓、支配していた事が分かったんだって」

「プロトカルチャーがお呼びじゃない?あれだって、銀河系全体が版図だったんだろ?それがお呼びじゃないって」

「おとめ座銀河団全体だよ?フォールドじゃ追っつかない広さなんだよ。波動エネルギーか、その発展形みたいなエネルギーを主動力にした文明じゃないかって言われてる。今の地球じゃ、銀河を跨ったタイムラグ無しの通信はヤマトとかのタキオン通信くらいなもんだし、それの完成形みたいな通信網を張り巡らせてたんじゃないか?」

――文明の発達で重要なのは『通信』だ。フォールド通信は、あまりにも距離が離れすぎると、タイムラグが生じてしまう事が判明している。かつてのローマ帝国などの大版図文明が崩壊の決め手になった一因も、末端地域までに本国の統治が行き届かなくなったためだ。ガトランティスも、アンドロメダ銀河全体をタイムラグ無しで統治していたので、何らかのネットワークがあったと推測されているが、地球はその途上にあった――

「通信ねぇ。ローマ帝国も、元もそうだけど、末端地域に統治が行き渡らなくなると、反発したりするからなぁ。連邦も星間文明になりつつあるから、命題だろうけど」

連邦は、フォールド通信と超空間通信で、需要は賄えているが、かつてのインターネット回線と同じで、より高速な回線が求められている。タキオン通信はその一つだ。他には、フォールド通信不可能な断層に対応できる通信を連邦軍が欲しているという軍事的理由もあった。

「現有の通信で需要は賄えてるけど、欠点もある。それで、第三の方法を確立させるのを望んでるんだよね、連邦。軍事的にも、フォールド通信不可能な断層で悩んでるし」

「へぇ。そんな文明がなんで崩壊したんだ?」

「例によって、内輪揉めからの最終戦争らしいんだ。惑星破壊プロトンミサイル、知ってる?」

「ああ、連邦が21世紀ごろの大陸弾道ミサイル的位置づけで開発構想中の新兵器だろ?まさか!」

「そう。そのまさか」

「まさかそれを銀玉鉄砲感覚で撃ったとかじゃねーよな?」

「惑星破壊ミサイルの恒星版って話が有力らしい。言わば『恒星破壊ミサイル』だね。それを銀玉鉄砲感覚で撃って、マゼラン雲に近い位置にあったそこそこの銀河を崩壊させて、文明が滅んだそうな。その説だと、2つのマゼラン雲はその銀河の生き残りがまとまった再構築銀河ってことになるけどね」

だが、後にその説も有力でなくなり、代わりに『波動砲乱打設』が有力になる。波動砲、もしくは波動砲に類する超兵器が乱用され、銀河崩壊につながったという説だ。マゼラン雲周辺の空域に、波動砲がその昔に乱用された証のような、タキオン粒子が異常濃度である区域があるからだった。

「波動砲を撃ちあったんじゃ?って説もあるけど、銀河を崩壊させる波動砲なんて、今の文明レベルじゃ作れないし、想像がつかない。まだまだ検証しないといけない、トンデモ説さ」

「波動砲か、ウチのルーズベルトが作っちまったとかいうリトルボーイもその位置づけか?」

「そうだね。だけど、原爆は環境汚染が凄いことになる。ティターンズはそこをプロパガンダしてるし、トルーマンがファットマンの将来的な投下にサインしてたのをやり玉に上げて」

「ややこしい話だな。計画したのルーズベルトで、トルーマンじゃないだろ?」

「副大統領だったってところで十分なんだよ、大衆にとって」

「そっちでも、トルーマンは受難ですね」

「ここみたいに、戦争終わらせるのと同義の選択じゃない分、余計に怒りがあるんだろなぁ。特に使う大義名分もない。今頃、特高警察、ゲシュタポまがいの拷問受けてるかもな」

「因果応報なんですかね?こっちでの広島と長崎の」

「分からねえ。ただ、こっちで起こらない出来事で一方的に裁くのも、ある意味では独善的だからな。どっちもどっちさ」

そのトルーマンは、首都ワシントンの某所で拷問を受けていた。その一幕は。

「強力な爆弾としか聞いてない、それに怪異相手になに使ったって殲滅するのが先だろう?汚染?ネウロイに支配された時点で瘴気に汚染されてるのに今更…」

「黙れ!!貴様の安易な判断が広島と長崎を地獄に変えた!その罪を償え!!」

「そ、それはそちらの私がした事で、この私は関係ないだろう!」

「メガネザルの分際で!!言い訳を!」

ティターンズの憲兵に激しく殴打されるトルーマン。囚人への尋問よりも露骨に罵倒され、問答無用で殴られる理不尽さ。この罵倒と殴打はこの時期に激しく行われ、トルーマンの生涯のトラウマとなる。それは大統領復帰が無理とされるほどのものであったという。拷問はティターンズの正統性をアピールする一環で行われたが、トルーマンの心に深い傷を残し、彼が大統領へ復帰することが無かった理由となるのだった。シャーリーの読みはその後に的中したのだった。


「お前は簡単に考えるだろうがこれだけの結果をのこしたんだ。許可しただけ?それはお前がやれと命じた事でこれが結果だ過去の如何な英雄にもまねできない壮挙だよ、女子供から老人まで綺麗に焼き払い、大都市を幾つも壊滅させたんだから」


と、広島、長崎の原爆炸裂直後の映像を見させられ、こう褒められる形で責められる。その結果、彼は戦争や軍へ恐怖を抱くようになり、リベリオン亡命軍を叩く大義名分を与えてしまう。結果として、ティターンズ政権を手助けしてしまったトルーマンは、晩年にこの事を懺悔したという――――


「シャーリー」

「なんだ、ハルトマン」

「この戦争はどうなると思う?」

「さーな。奴らのせいで、あたしの祖国は引き裂かれた。その報いは受けてもらう。たとえ、この手が血に染まっても、何十万の人たちを消しやがった野郎に味わってもらうぜ。極上のバイオレンスを!!」

シャーリーは普段は見せない激情を見せる。それなりに愛国心はあるようで、ティターンズに強い殺意を見せた。シャーリーがここまでの激情を見せたのを、ハルトマンは記憶に無い。明るいシャーリーが激情を見せた理由。それは後でわかるが、学生時代の親友が水爆で遺骨すら残さずに逝ってしまったり、自分にメカを教え込み、幼少から大好きだった親戚のおじさんが爆心地にいた事が家族から知らされたためだ。シャーリーは家族からのその内容の電話で茫然自失となり、ルッキーニが心配するほどに憔悴した。が、その憔悴はすぐに怒りに転化し、この時期からはそのせいで生じた、苛烈な側面を見せるようになった。この台詞は、その影響だ。

「シャーリー、荒れてるね?」

「あたしの大好きだったおじさんをこの世から消しやがったんだぞ!まだまだ聞きたい事や、話したい事あったのに!!学生時代の親友もだぞ!!いつか会おうって約束してたんだぞ!?」

荒れるシャーリー。アーノ○ド・シュワルツネッガー映画の登場人物張りに荒れている。

「落ち着きなよ、子どもの前だよ……?」

ハルトマンは、シャーリーを落ち着かせるため、目で圧力をかける。目が完全に殺気に溢れるそれであるので、シャーリーも押し黙る。

「す、すまねぇ。あたしとした事が……」

「いいさ。あの街は少なくとも数百万の人がいただろうしね」

気まずそうなシャーリー。シャーリーにも、許せない事はあるのだ。

「今は、あたし達だけが世界を守ってるわけじゃないさ。あれはもう起こしちゃいけない。だから、今は『あの人達』を信じようよ、シャーリー」

「ハルトマン……」

シャーリーは半泣きだ。今はウィッチだけが地球を守っているわけではないのだ。それを示すかのように、三羽烏やハルトマン不在の501の援軍に駆けつけたのは、超獣戦隊ライブマンと光戦隊マスクマンの超メカだった。

「あなた達、どうして!?」

「キミたちを守ると、ケイちゃん達に約束した。ここは任せろ!」

『合体!!ファイブクロス!!』

『合体!!ライブディメンション!!』

レッドマスクとレッドファルコンの声が響き、グレートファイブとライブロボが颯爽登場する。巨大ロボまで持ちだしての援護に、珍しく、前線に出ていたミーナは驚く。

「で、でも、怪異の瘴気が!」

『その心配はない。行くぞ、ライブマン!』

『おう!!』

『光電子ライザー!!』

『超獣剣!!』

ライブロボが両腕から発生させたエネルギーを胸のライオンあたりで集束させ、剣を生成する。グレートファイブも盾となっているジャイロから『光電子ライザー』を取り出し、同時にオーラパワーを漲らせる。

『ファイナルオーラバースト!』

『ストロングクラッシュダウン!!」

哀れ、怪異は二大ロボの必殺技を同時に受け、Xと十文字に斬られて消滅する。

「す、すごい、一撃で外殻ごと……」

「これでは、私の雲耀を使う機会がないな。ハッハッハ」

「あなた方は、どうしてここまでしてくれるのです?」

『俺達は友を見捨てたり、仲間を見殺しにするのは性にあわないのさ。キミたちかから見ればバカげてるようだけど、助けを呼ぶ声がれば、それが未来でも過去でも、たとえ異世界でも駆けつける。それがヒーローがすべきことだろ?』

大原丈=イエローライオンが言う。若さ溢れる、熱い台詞だ。

『そうそう。そもそも俺達もヒーローになりたいって言って、ヒーローになったわけじゃないし。俺達マスクマンは、みちる……もとい、姿長官に集められただけだし、ライブマンは友達を止めるために戦隊を結成したんだぜ?今更だよ」

ブルーマスク=アキラも言う。

『そうだ。俺達スーパー戦隊や仮面ライダーは、『ヒーローになるべくして生まれた』方が少ないのさ。その質問は今更だな。言うなれば、『義によって、助太刀いたす』かな?坂本少佐は分かるね」

「はい!剣士の基本です!」

レッドマスク=タケルに、坂本がいつになく、張り切った声で答える。今回も額を抑えるミーナだが、助かったのは事実だった。勝利の凱歌を挙げる二大超ロボ。扶桑(日本)の武士道についていけないミーナだった。

(本当、扶桑はどこもこうなのかしら……)

実際、黒江達も武士道(フェイトも獅子座の黄金聖闘士なので、『義』を重んじるが)が行動規範の多くを占めている。むしろ、現場を統括する幹部の半数が扶桑人となった新生501は、武士道の影響が強まっていく。帰還後、自身の秘書の任にあったフェイトに『扶桑人についていけなーい!』と愚痴ったそうな。



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