艦むす奮戦記
第六話


――大和が合流した我が地方隊は上からの指令で広報活動に勤しんでいた。というのもマスコミに報じられてから各地から取材が殺到しただけでなく。様々なイベントに呼ばれることとなったからだ。このことに大和本人は自分の人気ぶりに驚きながらもこなしていくのだった。

――執務室

「……」

「おい、何をムスッとしてんだよ長門」

「提督か……当然だろう?私だって120年前は国民の人気者だったんだぞ〜〜!なぜ大和の奴がぁ〜!」

ソファーに寝転がり、(艤装は外している)駄々っ子のように足をジタバタさせる長門。実に大人気ないが、戦前日本のシンボルであった身としては、どうしてもアイドル扱いされる大和に対抗心があるらしい。


「しょうがないだろ〜宇宙戦艦ヤ○トのおかげでアイツは大人気なんだから。今じゃ戦前日本の軍艦=大和だぜ」

「ぐぬぬ……くっそぉ〜!!」

「お前、軍艦の割に子供好きだもんな〜」

「連合艦隊旗艦の名誉だけでなく、子どもたちの人気まで奴に盗られたというのか〜〜!!ウワァァァン!」

拗ねてジタバタする長門。こうなると完全に子供である。私はこういう時の切り札を用意している。それは……。


「まぁまぁ。間宮、あれを頼む」

「はぁ〜い」

私は最近、食堂に着任した元・給糧艦の艦娘に連絡を取り、長門の大好物を用意してやる。長門は所々で妙に子供っぽい面があるため、ごきげんを治す事はむしろ金剛より楽だったりする。


――因みに元・給糧艦とは、艦娘として転生していた給糧艦間宮の事だ。旧連合艦隊で二艦しか存在しなかった給糧艦の一角を占めたことで著名。なんと彼女、艦娘ではあるが、転生後に海軍に戻る前は喫茶店やレストランでアルバイトをしていたという経歴を持つ。奇しくも前世同様に士気を高揚させる役目を担う事になったというわけだ。













――その時の様子を見てみよう。

銀座のちょっと大正ロマン風な雰囲気を持つ古風な店構えの喫茶店で彼女は働いていた。エプロン姿が似あう美女で、おまけに見かけ通りに料理が上手いので、その喫茶店店主はは『いいバイト見つけたぁ!』と喜んだとか。

「間宮さん、オムライス二個くれ〜」

「は〜い」

「こっちはカレーライス〜」

忙しいくらいのてんてこ舞いである。間宮はそれを難なくこなす。彼女は艦時代に菓子職人などが乗艦していた影響か、菓子職人としても一流の腕を持って転生し、パティシエとして生計を立てられるレベルの腕前を持つ。

「はい。カレーライスです」

「おお、ありがとう」

「デザートは食後ですね?」

「頼みます」


彼女の作る食事目当てで来る客も多く、アルバイトながら店の看板娘として評判だった彼女が軍隊に志願する際には、別れを惜しむ声が多数寄せられたという。しかし軍隊とおおよそ縁が薄そうな彼女が何故、軍に入隊したのか?その理由が彼女の名前と前世に由来しているなど、店の客達が気が付くのは、後々の軍部の広報誌に彼女が載った時であったとか。




――そんなこんなで、間宮は入隊時に自身が艦娘であること、また、非戦闘用艦艇の転生である事実を説明。給糧艦として横須賀に配属され、前世の味に磨きをかけて海に還ってきたと言える。





















――長門は確かに拗ねたとおりに、戦前日本の象徴として、大正九年からの20年間において日本海軍の旗艦として陸奥とともに君臨した。その間は子供が小学校の写生の授業で書くのは決まって長門か陸奥であった。『国の誇り』、『世界三大海軍の強者』などと持て囃されたが、日本が敗戦した後は左派的思想が伸長し、長門の名は一種の『タブー』とされ、戦後海軍の艦艇には受け継がれていない。対照的に大和は武蔵や信濃共々、国民に知られぬままに悲劇的最期を遂げた事やカタログスペックでは『世界最大最強』を誇っていた事実が明らかになり、更に1970年代に『宇宙戦艦ヤ○ト』が大ヒットしたなどの理由で、戦中の箱入り娘から一変して『日本海軍悲劇のシンボル』、『用兵側が使いこなせなかった最後の大戦艦』などなどの評を持つようになり、戦前の長門を遥かに超える人気者となった。が、左派から目の敵にされるのも事実であり、『軍国主義の象徴』とのレッテルを貼られてもいるために大和も苦労しているのは言うまでもない。



















――話は戻って、地方隊

「長門、間宮さんがお前用にアイスを食堂に用意してあるそうだ。行ってこい」

「いいのか!?いやっほーい!」

と、長門は一目散に食堂へ駆けていった。私はホッと一息を入れ、金剛が比叡を伴って休暇中なために代理で秘書艦を空母機動部隊と兼任している加賀が報告に入ってくるのと、長門が去っていくのが同時に起こった。

「なんですか提督、今のは」

「長門だよ、長門。拗ねたから間宮さんにアイスを作ってもらったんだよ」

「そ、そうですか……。工廠から『大和用のフェイズドアレイレーダーの開発が完了した』と連絡が入りました。大和の艤装に取り付け作業に入るそうです」

「そうか、ご苦労。飛龍達のウェルドック改装はどうだ?」

「60%の進捗状況です。主力戦車20両、陸軍中隊+トラック60台分の輸送能力を確保できる模様です。また、航空運用機能も短距離離陸垂直着陸機用に残すようです」


「そうか。上はあいつらでアメリカ級強襲揚陸艦のようなことしたいんだな」

――アメリカ級強襲揚陸艦とは、今世紀前半に8隻が就役したアメリカ海軍の強襲揚陸艦である。航空運用機能がそれなりにあるという利点により、傑作艦となった。この時代では強襲揚陸艦の範になっているので、私はそれに例えたのだ。



――国防海軍も3年ほど前から、空母の不足を補うのと、輸送能力増強の目的で同級を範にした強襲揚陸艦を数隻建造している。固定翼機を積む意味での航空運用機能の維持をどうしても望んだ蒼龍と飛龍の要望になんとしても答えんと奮闘した海軍工廠と三井造船が知恵を絞り、その末に積まれたのは、そもそもは2030年代中盤から、海軍が将来的に強襲揚陸艦に載せるために開発していたが、その間の問題点や欠陥の是正、設計見直しなどの理由で完成が遅れに遅れたV/STOL戦闘爆撃機。これは殆ど瓢箪から駒の要領で、とある技術者のアイデアが採用されて搭載が実現した。艤装の飛行甲板を伸長し、ヘリ用スペースを確保するなどの工事が行われ、ウェルドック増設なども行われている。


「強襲揚陸艦、ですか?詰め込みすぎで器用貧乏とも思えますが……」

「あのアメリカ海軍でさえ、維持費その他の高騰でマリアナ沖海戦やレイテ沖海戦のようなのような大規模空母機動部隊の編成は不可能になって久しい時勢だ。機能特化型艦艇の数を揃えられない、空母が高くて買えないとか、国によってそれぞれの理由がある。そこでアメリカ級のように航空運用能力もそこそこある器用な艦が持て囃されてるのさ」

「私達が船だった頃からはずいぶん変わったものですね」

「21世紀にもなれば、否応なく変化は起きるさ。第一、巡洋艦って艦種も半分死語になりかけてたんだし、戦艦なんてのは亡霊と同義だぜ?軍事的には」


そう。国防海軍も艦娘の登場まで水上戦闘艦の最大区分は時代相応に『駆逐艦』であった。だが、艦娘の登場で連合艦隊時代の区分が復活を遂げ、『戦艦』、『重巡洋艦』、『軽巡洋艦』が追加された。書類上はそれぞれ前世の船としての自分が存在した都合上、区別をつけるために船時代の自分たちの艦級の後継艦として扱われている。

「相手がいないというのも嫌なものです。特に戦艦の子達はそうでしょう」

「アイオワ級がいればよかったが……ナチの残党でもない限り戦艦はありえんしなぁ」

「大和の46cm砲なんて空母に撃つのにもオーバーキルですよ。元々は米戦艦の重防御に対向するためのものだったんですから」

「アメリカ海軍の大艦巨砲主義が触発されてモンタナ級を復活させてくれるのを祈るか、退役してる戦艦達は躯も同然だから万が一の僥倖を期待しろと言っとけ。長門なんて殴りあう夢を見て、寝ぼけて俺のナニを蹴ったんだぞ……」

「そ、それはご愁傷様です……」

「アイツに言っとけ。今日のアイスは味わって食えと」

長門は戦艦としての本望である戦艦同士の殴り合いを所望し、寝ぼけて夢に見るほどだ。おかげで私の大切なあそこがしばらく立たなくなったぁ!その日は腹いせにおやつのアイスクリームを没収してやったけど……。加賀も船時代に艦内で金的蹴りが制裁の一環で行われたのを覚えているため、気持ちがわかるようで冷や汗タラタラで私に気を使う。(加賀は後日、妹として長門の寝ぼけ癖に釘を差したとか。その時の反応は以下のとおり)

『何ぃ、加賀、お前……ご、後生だぁ〜!』

『提督が泣いてましたよ姉さん。間宮さんには言っておきましたので、今日から一週間はアイス抜きです』

『そ、そんなぁ〜〜!』

加賀にズバッと言われ、この世の終わりのような顔でへたり込んで涙目になる長門。加賀が長門を姉さんというのは、元々は流れをくむ戦艦として生を受けるはずだった事の名残り。長門も加賀を『転職した妹』扱いしているのがその証だ。榛名と霧島はその光景を面白そうにビデオカメラで記録したとか。
























――大和は広報活動に駆り出され、まるでアイドル扱いであった。マスコミのインタビューに謙虚に答え、性格・容貌共に、清楚な古き良き大和撫子的な事による相乗効果も大きく、マスコミの一面記事を賑わしていた。同時に大和の帰還は『戦艦大和は軍国主義の象徴』と捉える左派政治家から『大和の軍籍復帰は軍国主義の復活に繋がる』というトンチンカンな批判も当然ながら生じたし、活動家からの誹謗中傷も起こった。そして、戦時中にも関わらず、それらの声を無視するわけにも行かなくなった左派野党が事もあろうに国会で証人喚問を行い、大和を呼び出す事態ともなった。その時の大和の答弁は実に明瞭であった。






『私は確かに大日本帝国海軍の期待を一心に受けて生を受けました。ですが、当時の私は極秘艦として作られ、栗田健男提督や山本五十六連合艦隊司令長官レベルの将官でさえもスペックを知らされないほどのA級軍規でした。あなた方は私や武蔵を軍国主義の象徴といいますが、それは大きな間違いです。国民の大半が名前は知っていても、詳細までは知らず、全容を高級軍人でさえ知らなかった軍艦のどこが象徴と言えるのでしょうか?それに当時の日本は確かに軍閥が蔓延ったのも事実ですが、ナチ党のような完全な独裁体制でもありません!当時の内閣が軍部大臣現役武官制が復活したおかげで、軍部の反対さえあればすぐに瓦解してしまうし、組閣さえで不可能となる脆弱なモノであったのはご存知のはずです!』




大和はここぞとばかりに前世での無念を伝える。今や自分たち艦娘しかいなくなった大日本帝国時代の記憶を持つ者としての言葉を。大和は1945年4月までの記憶しかないが、東條内閣の倒閣運動は提督レベルらの話に出ていたし、日中戦争時に復活した内閣軍部大臣現役武官制の存在があったがために、1936年の宇垣一成の組閣が阻止され、米内内閣が崩壊したことを提督の誰かが嘆いていた事を覚えている。だからこそ自分が船として生きた時代を全否定されたくはなかったのだろう。ただ彼女も軍閥が蔓延ったせいで国民に不自由を強いたのは認めたあたりは、東條内閣の時の国民の締め付けと、戦時下の状況に迎合して民間で起こった敵性語運動を嫌っていた故かも知れなかった。


『敵性語とか言って英語を排除しようとしたのはあなたがかつて属していた軍部じゃないんですか!?軍国主義を養護するんですか!』

……と、この時期に野党で数度当選しているある女性議員からヤジが飛ぶ。戦後しばらく経った後は当時の事情への無知から、こうした批判は日常茶飯事である。だが、大和はスバリと言った。

『敵性語とか言って排除しようとしたのは民間人の方です。この時代で言えばナショナリズムとでもいうのでしょうか?……が過激になった挙句の結果にすぎませんし、さすがの東條英機大将も排斥運動を退けてます。第一、カルピスやコーラ、シャツとかの単語は普通に使ってましたし、増して軍隊で英語できないなんてお話にもなりませんよ。おまけに諜報活動すらままならないほど悪化させたのはマスメディアが煽ったためですよ!』


――大和の言葉は彼女の後に答弁した国防大臣の説明で更に補足された。当時の報告書類や軍需品の催促電を見ても普通に英単語が使われていた事、また軍部は時勢に乗っかっただけである事も補足された。女性議員はTV中継されていた中で赤っ恥をかいてキャリアに傷を負うこととなった。大和の筋が通った言葉は超弩級戦艦に相応しいと、ワイドショーでも取り上げられていき、結果として大和擁護の世論が出来上がり、軍部の要求どおりの予算がすんなり可決される一助となった。

























――ホワイトハウス

「やっと日本も戦争する気になったようだね」

「はい。大統領閣下。マッカーサー元帥が機転を利かせて軍部を存続させたのが今になって吉とでましたな」

「例の彼女たちとの共同作戦プランは出来上がったかね、統合参謀本部議長」

「はい。ただいま誠意、製作中であります。我々もあのような娘っ子がほしいものです」

「国防長官はどうだね?」

「同感であります」



この時期、アメリカ合衆国大統領と官僚達は21世紀序盤以降に隙間風が吹いていた最大の同盟国である日本との関係修復を図り、ひいては自らの中興につなげようとする者たち、俗にいう知日派であった。これはすっかり再建された日本の軍事力をアメリカ軍が手懐けていることをアピールすることで、影響力が低下している現状を打破しようとの目論みもあってのことだが、基本的にアニメ好きなどの若き日からの親日家である者が多かったため、艦娘を軍事力としようとする日本に嫌悪感を持たないがために、普通にこのようなジョークも飛び交っていた。

「日本にヤマトが蘇った以上、こちらも名前負けしない空母を用意しなければなるまい。ビックEの出港準備はどうか」

「あと3時間ほどで完了致します」

「よし、第7艦隊は日本海軍との共同作戦準備だ。現在の最強海軍は我々だということをあの娘さんたちに教育してやれ!日本の総理大臣と国防大臣には私と国防長官が話をつける」

「イエッサー!」

第7艦隊に大統領からの指令が出されたのはまもなくであった。フォード級空母三番艦『エンタープライズ』が出港(演習後、第7艦隊艦艇の主要なものは真珠湾で待機状態であった)する。目的は日本海軍の援助。WWU以降の最強海軍の威容を帝国海軍の転生体である艦娘達に思い知らせんと意気込む、久方ぶりの実戦に臨まんとするアメリカ海軍の姿があった。























――艦むす達も実戦準備に勤しんでいた。改装中の者達に代わり、即応で動ける重巡娘達が駆逐艦達を率いて、日本海にいた。

「うふふ〜パトロールって言っても交戦は許可されてるのよね〜」

「愛宕!もうちょっとまじめにしなさいよ!」

高雄型重巡洋艦の上の姉妹二人である。妹達がラフなセーラー服なのに対し、彼女たちは制服姿である。これは上の姉妹達が船時代に改装されていたのを反映していると思われる。ちなみに高雄と愛宕はどちらが姉というと、曖昧な感じである(これは愛宕が先に竣工したという事が由来だと思われる)。因みに容姿は高雄が黒のボブヘアーと赤眼だが、愛宕はどういうわけか金髪碧眼のロングヘアー。船時代の彼女たちの設計者の藤本喜久雄造船少将が見たら、泡吹いて脳溢血を起こしそうである。性格は高雄が真面目なのに対し、愛宕はどことなくマイペースである。

「でも私達なら今の駆逐艦の攻撃にも耐えられるし、殴り合いしても勝てるわよぉ♪」

「そりゃ甲巡だから当然でしょ?」

愛宕は楽天的である。甲巡である以上、ミサイルさえ凌げば楽なものである。彼女たちは重巡洋艦の中では比較的軽防御と揶揄されるが、この時代の『いざ被弾したら大損害』な装甲板もない駆逐艦やフリゲート艦と比べれば生存性は高い。おまけに艦娘である故、三次元的運動も可能である。おまけに火器の20.3インチ砲は新造され、自動装填装置付き、対空砲弾は近接信管である。

「ミサイルさえ凌げばあとは大丈夫、よし、行くわよ愛宕!」

「ええ!」

二人は配下の駆逐艦らの盾になるように進撃する。そして、威力偵察のフリゲート艦艦隊と交戦を開始した。敵は韓国軍のものらしい。高雄達からみれば、かつては日本の一部であった地域の軍隊など『取るに足らない三下』である。最新科学で強化された艤装のテストと言わんばかりに最大船速で突っ込む。

「ターゲットロック……いっけえ!」

高雄と愛宕の艤装は腰部の8インチ砲、胸部正面の魚雷、艦橋を模したパーツで構成されている。そこを国防軍は魚雷発射管をいくつか撤去し、ミサイルに置き換えた。韓国海軍側は仁川級フリゲートで構成された艦隊である。2010年代から量産が進められたものの、国内財政の問題で予定定数に達していないという有様である。初期建造艦は既に老朽化も進んでおり、韓国海軍上層部はこうした捨て駒的運用も辞さない。新造艦のための肥やしにするのだろう。


――高雄と愛宕が放った対艦ミサイルは、仁川級フリゲートのCIWSと迎撃ミサイルなどで何発かは落とされたが、それでも高い命中率を発揮。何隻かが落伍する。

「愛宕、敵の陣容は分かったの?」

「データを確認したら、仁川級フリゲートみたい。でも、これ沿岸警備用の船よ?日本海で運用するのは無理あるはずじゃ?」

「提督の話だと、韓国海軍は沿岸海軍から外洋海軍に無理に脱皮しようとしてる軍隊らしいのよ。造ればいいってもんでもないんだけど、まあ、バカめって言って差し上げますわ!」

日本海の荒海にフリゲート艦で乗り出した勇気は認めるが、近接格闘戦になれば甲巡である自分たちが負ける道理はない。32ノットで敵艦隊に肉薄し、愛宕は一気にそのうちの一艦である京畿を持ち上げてみせる。133000hpのパワーを誇る愛宕に取って、3000トン級の物体を持ち上げることなどかる〜いジャブのようなものだ。お手玉のように遊んでみせる。当然、フリゲートに乗っている軍人たちは銃で応戦するなど必死に、半分はパニック状態だが、ダメージを与えんと撃ちまくる。だが、8インチ砲に耐えられる装甲(艦時代の装甲は船体は8インチ砲、即ち20cm砲に耐えられる装甲を有していた)を持つ愛宕に取って、蚊が刺す程度だ。下手から放り投げる。(武装は持ち上げる際にレーダー共々破壊した)投げられた京畿は全乗員が全身打撲&死亡&艦の沈没という顛末となった。他の艦も殆どが護衛の駆逐艦らに沈められていった。確かにカタログスペックでは現在艦な仁川級も、接近戦では駆逐艦以下の存在でしかない。しかも韓国製兵器の通弊はこの時代でも生きており、ある艦の5インチ砲は発砲しようとしたら砲身が裂けるわ、ミサイルはあらぬ方向に飛んで行くわの痛恨ぶりを露呈した。

「韓国の兵器ってああなのかよ?拍子抜けだな〜」

高雄達の護衛についていた深雪はご機嫌斜めだった。彼女は艦むすで唯一無比、第二次世界大戦へ参戦していない艦の転生体だ。戦前期に事故で沈んだからで、つまり艦時代含めても、これが始めての実戦である。しかし相手が戦艦や巡洋艦ではなく、小物のフリゲート艦なのは気に入らないようだ。

「司令官曰く、韓国軍は共食い整備を平気でする上に、無断コピーしまくったのに劣化品も作れない軍隊だそうだよ、深雪ちゃん」

「なんだよそれぇ〜!」

「まっ、ドラ○エのスライムとかみたいな経験値の肥やしと思えばいいよ」

吹雪型駆逐艦の長女である吹雪は至って冷静だ。世界三大海軍の栄光を持つ日本海軍にとって、韓国海軍など三下的存在である。中国海軍ももっぱら『弾除け』と扱っているとの噂。主砲を使うまでもないとばかりに、最大速度で肉薄、徒手空拳で破壊する。手法は吹雪がビンタ、深雪が回し蹴りである。7隻前後の韓国軍艦隊は4隻を喪失し、旗艦とその護衛艦は僚艦が容易く無力化させられた事に戦意喪失、応戦しつつの『戦略的撤退』で去っていった。
















――愛宕から報告を受けた私はホッと一息ついたが、摩耶に手を焼いていた。自分が呼ばれなかったことにぶーたれてるからだ。

「なんで、なんで姉貴達が行けて!アタシが行けねーんだ提督ぅ〜!」

「そりゃお前、鳥海が風邪引いてるからだ」

「妙高型の姐さん達と組ませて出せばいいだろー」

「上からなるべく姉妹艦で組ませろって通達来てんの!」

「なんでだよ〜!これでもマレーとかで妙高型と組んでたんだぞ!」

「俺に言われてもなぁ。上に言ってくれ、上に」


そう。摩耶は妙高型と艦隊を組んだことがあるのだ。そこを差して私に意見具申してくる。上は連携を重視しているらしく、姉妹艦がいる者は姉妹同士で組ませよと私に通達してきた。摩耶はショートボブの髪形の容姿で、勝ち気な性格なため、私に食って掛かるが、上からの命令と伝えるとシュンとする。

「んじゃ今度の観艦式で御召艦とかやらせてくれよ」

「御召艦はもう決まってるぞ」

「え〜!また比叡姐さん!?」

「違う違う。空母だよ。もちろん通常艦」

「な、なんだ……」

「先導艦と供奉艦なら開いてるから立候補するか?」

「するするする!!」

観艦式の御召艦と言うと、比叡を思い浮かべるのは、戦前の観艦式の最後の三回の御召艦が比叡であったからだ。それで摩耶もたまには名誉ある仕事をやりたいらしい。と、言うわけで私は上への意見具申のための書類を渡す。摩耶は意気揚々と書類を書き始める。観艦式での名誉を得たいのは通常部隊でも同じこと。摩耶はライバル達と競い合う事になる。



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