-さて、グレートマジンガーが介入したIS学園であるが、襲った百鬼メカは基本的に陸戦型は少数で、空戦型の方が多かったので、空戦型マジンガーであるグレートマジンガーの真価を存分に発揮できる環境は整っていた。

『百鬼メカは俺に任せてくれ!みんなは残りの無人ISや戦闘員を!』

「わかった!」

甲児はRX達にそう告げると、自身はグレートで空戦に入った。グレートブースターによってさらなる高速を得たグレートマジンガーのスピードは、最終時のマジンガーZを凌ぐマッハ5台の速力を発揮できる。このマッハ5という速度は大気圏でのマシーンが出せる一種の限界速度である。空中で細かい動きができる上でスピードが出せるという点ではマジンカイザーや真ゲッターロボなどの常識を超越したマシーンでもなければ、これ以上の速力は不可能である。戦闘機のVFやコスモタイガーでも大気圏内では摩擦熱の関係でマッハ5が限界速度である(無論、エンジンには余裕がある)ので、一種の目安と考えるべきであろう。

瞬く間に飛び上がり、グレートマジンガーはメカ要塞鬼を母艦にする、複数の百鬼メカ相手に敢然と挑んだ。相手は殆どが量産された無人仕様のメカらしく、無人機らしい挙動を見せる。

百鬼メカらはミサイルやレーザーなどの火器を用いてグレートマジンガーを攻撃するが、甲児は持ち前の天賦の才能とカンでそれを迎え撃った。
ミサイルをブースターのスラスターを噴射して最小限の動きで避けたり、口のスリットから暴風(グレートタイフーン)を出し、それを使ってミサイルを失速させて撃ち落とす。何故、グレートタイフーンを使ったかというと、グレートマジンガーにはZやカイザーと違い、武装に光子力ビームがないためだ。光子力ビームはマジンガーZやカイザーに備えられている両目に内蔵された砲塔から発射するビームで、威力は機体出力に依存するもの、総じて威力は高い。甲児はこれを時たまミサイル迎撃用手段として用いていて、便利にしているのだが、グレートはこの武装はついていない。サンダーブレイク関連装置を組み込んだ兼ね合いによるもので、甲児はこういうところでグレートがマジンガーZやカイザーとは使い勝手の異なる機体である事を改めて認識したのである。

「さすがに最初から飛ぶのが想定されてるからなぁ。動きが軽い」

グレートを操りながら甲児は科学者としての視点からグレートを評する。グレートは当初から空戦を想定して造られたスーパーロボットである。それ故に空戦性能はマジンガーシリーズ中で最強を誇る。それは当初から空戦機能を盛り込んだ上で、装甲を超合金Zより軽量化されたニューZにした事での恩恵によるもの。

『マジンガーブレード!!』

グレートマジンガーの腿の突起から西洋風の剣が飛び出す。これは実体剣であるが、超合金ニューZ製なので強度、威力共に折り紙つき。剣戟は経験の少ない甲児であるが、そこは持ち前のカンで補った。プロである鉄也とは違う素人の「ガムシャラ」剣法とも言うべきか。百鬼メカの懐に飛び込むと、ブレートで百鬼メカをすれ違い際に横薙ぎで斬り払う。西洋剣は日本刀などと違い、必ずしも斬ることが目的とはいえないが、超合金ニューZという強靭無比な素材で作られている刃がそれを可能とした。『スパーン』と小気味いい音と共に、百鬼メカの内、一機が血のように潤滑用のオイルをまき散らしながら真っ二つされる。胴体が上下泣き別れといったところか。

『へへっ、どんどん来やがれ!』

生来、江戸っ子気質である(ただし東海・伊豆地方在住であったが)故の小気味いい啖呵を切る甲児。熱血漢な性格と相なって現在的元祖スーパーロボット乗りとしてのパワーを見せる。機体は本来の愛機ではないが、その姿は正しくZ搭乗時と変わらぬものであった。ちなみに甲児の操縦を反映して、グレートの剣の使い方は西洋風の剣でありながら日本刀同様だ。それを目撃した鈴は思わずツッコむ。

「アイツなんで西洋の剣使ってるのに日本刀みたいな使い方するのよ!?なんか間違ってる気が……」

「いいのいいの。グレートは装甲も剣もそんじょそこらの安っぽい金属でできてないから」

「そんじょそこらって………んなんで納得できるかぁつーの〜!」

鈴の言う通り、西洋の剣は基本的に『斬る』事は主目的としてはいない作りで、突く目的に使われる方が多い。突撃用であった長剣もかなりの種類であった事は、鈴も中国軍(人民解放軍)でISの操縦訓練を受けていた時の軍の施設で講義を受けた時に習っており、熟知している。そのため、智子のこのお気楽とも取れる発言にツッコんだのだ。だが、実際にグレートマジンガーの装甲は百鬼メカのいかなる攻撃でも破損しないという驚異的堅牢さを見せ、その鉄の輝きはいささかも損なわれない。

「つーかあいつ……`グレートマジンガー`だっけ?どんな装甲使ってんのよ!?ミサイルを手のひらで跳ね返すなんて常識はずれよ!」

「本当ですわ!あれだけの攻撃で傷一つないなんてありえませんわ〜!!」

次いでセシリアもツッコむ。こうまでグレートマジンガーの圧倒的に堅牢な装甲を見せつけられては言いたくもなるのだろう。智子はグレートマジンガーは`超合金`でできていることをはぐらかして答える。`超合金ニューZ`という名は漫画的過ぎてとても現実味がないからである。(これはガンダリウム合金やガンダニュウム合金にも言える事である)
案の定、超合金というだけで二人は「はぁ!?」と返してきた。

「なんなのよその大昔のロボットアニメみたいなネーミングは!?そりゃ現実に似たような名前のはあるけどさ……」

「超合金というだけで納得できるはずができませんわ!!」

「あ、やっぱり?」

智子は超合金という単語の現実味の無さに頷く。実際、智子も実戦でその威力を目の当たりにするまでは半信半疑だったので、この反応は想定内だった。しかし実際に超合金でできてるのだから、そう言うしかない。智子は「やれやれ」といった表情でグレートマジンガーの戦いに視線を再び移す。圭子はさっきから織斑千冬らへのおおよその事情説明に追われている。見ていると説明にとても苦労しているのがわかる。智子は圭子に対しねぎらいでもかけてやりたくなったとか。










――超合金Z系統の超合金自体、『未来世界』特有の鉱物であるジャパニウムを精製してできる合金である。この合金は全次元世界を通しても稀な性質を持つ。それは金属物質の宿命たる『格子欠陥』が無い事だ。これでマジンガーは無敵とも言える防御力を誇ったわけだが、それでも絶対では無かった。ミケーネ帝国の戦闘獣は超合金Zをも容易く貫き、溶解せしめる攻撃力を持っていた為にマジンガーは破壊の憂き目にあってしまった。兜剣造博士(兜甲児の実父)はその最悪の結果を予見しており、長年の研究で超合金Zの性能を向上させるべくあらうる手段を用いた。
その結果生まれたのが超合金ニューZである。変異して生まれた超合金ニューZαを除けば人類が持ちいる現時点最強の合金である。
性能試験で超合金Zを四層式に貼って実現できた強度を一枚で実現できた事から、`四倍の強度`を持つ事が確認され、グレートマジンガーの装甲にされた。その上、ガンダリウム合金並に軽量な素材なのでグレートの予想以上の高性能化に貢献したという側面も持つ。そのため単純なジェネレーター出力は改装を重ねたZに及ばない(最終時のZは95万馬力、グレートは90万)が、戦闘時のパワーは余剰馬力などの差によりグレートマジンガーがZに絶対的優位にある。そのためグレートマジンガーはZの後継者足りえる。



『ブレストバーン!!』

甲児は敵に対する高度的優位と位置的優位を占位すると、グレートの胸部のV字型放熱板が赤く輝き、熱線を放つ。摂氏5万度を超える熱光線とも言えるそれは複数の百鬼メカを見る見るうちに溶解せしめ、溶鉱炉へ落下したかのような様相を呈しながら破壊する。既に百鬼メカは当初の4分の1程度は落としただろう。だが、油断は禁物である。このままうまくいった試しはないからだ。

『あしゅら男爵、てめえの事だ。隠し玉の1つくらいは持ってやがるんだろう?』

『察しがいいな、兜甲児。では見せてやろう。我が切り札を!!』

……と、意気揚々とあしゅら男爵は宣言する。その宣言は真とばかりにメカ要塞鬼から3機、いや4機の戦闘機が姿を現す。その戦闘機に甲児は驚愕した。

『な、何ぃっ!?こ、こいつは……こいつは……まさか!!』

『そう。そのまさかよ!フハハ!』


そう。甲児の目の前に現れたのは以前、なのはから聞いていたゲッターロボ號のゲットマシンだった。歴代のゲッターロボの中では小型に属するゲッターロボ號であるが、パワー面ではゲッターロボGとほぼ同等を誇る。そのスーパーロボットは更に追加装甲を纏ったスーパーゲッター號とも言うべき姿として現れたのである。

「さあ行け、スーパーゲッター號!!グレートマジンガーを打ち砕くのだ!!」

あしゅら男爵の命に従い、スーパーゲッター號は腕にエネルギーを集中させ、斧と剣が合体したような武器を精製する。名は「ソードトマホーク」。その風変わりな武器ぶりに甲児も、それを見ている智子たちすら当惑させる。

『なんじゃこりゃ?』


歴戦の勇士である甲児でこれであるので、他の面々はさらに当惑させた。

「何あれ……」

「斧の上に剣の刀身が……くっついてますわね???どういう構造なんでしょうか?」

どう見ても斧の上に剣をくっつけたとしか取れないソードトマホークの外見的珍妙さとは裏腹にスーパーゲッター號は俊敏な動きを見せ、グレートマジンガーに肉薄する。パワーは互いに90万馬力。(ゲッターロボGのドラゴンがおよそ90万馬力なのでそれと同等のパワーを持つので)陸戦型であるゲッター號に応え、グレートも陸戦に移る。そして両者は激突した。



『おおおおっ!!』

グレートマジンガーとスーパーゲッター號の剣がぶつかり合い、火花を散らす。甲児はゲッターロボの初代以来の法則である「パイロットが3人揃わないとパワーが出ない」というゲッターロボ特有の弱点を感じないことから、以前の初代ゲッターロボ同様に巴武蔵のクローン人間を用いているのか、それとも……。人間のような剣戟を見せる両機の激突を見つめる目があった。





「ふ〜む。あのスーパーロボットすごいぞー!これはこの束さんも予想外だったよ〜」

-篠ノ之箒の実姉の篠ノ之束である。箒と違い、おちゃらけた気楽な雰囲気を感じさせる人物だが、ISを開発し、この世界のバランスを変えてしまった張本人でもある。その思惑は家族でも掴めず、妹の箒をして「姉さんは何を考えてるのか……」と言わしめている。ただしこの世界での束は箒との関係は氷解しているため、幾分か読みやすくなったとの事。彼女が何故この場にいるのか。それは織斑一夏のデータ収集も兼ねての妹の捜索であった。赤椿を作って、妹とひとまず和解した矢先の妹の行方不明。これには飄々としている彼女も内心では取り乱し、全力で捜索したもの、徒労に終わった。そして魔神騒ぎと、今日のあのスーパーロボット。天才である束もこれには予想外であった。『雷を操り、天空を飛翔する、全てを粉砕する魔神』。子供の頃、ロボットアニメに夢中になっていた時分としては燃えるシチュエーションだが、アニメのようなロボットを作るには自分が進めた『世界の機械工学の時計』を加味してもまだまだ遠い。しかも合体ロボとなれば……。それが今、IS学園周辺で人間のような俊敏かつ滑らかな動きで剣戟を展開する。技術者としてこれほど興味を抱かせるものは無い。

「あのスーパーロボットのデータも取ってるけど……こりゃ凄いぞ〜〜」

と、この始末である。グレートマジンガーという未知のスーパーロボットは束の技術的探究心に火を点けるのには十分なようであった。だが、世の中には予想がつかない事はいくらでもある。まさか束も自分の発明品を短期間で理解できた恐るべき宇宙レベルの頭脳を持つ人物がいるなど予想だにもしていないだろう。そして自分が妹用に作った最高の一品をベースに、別の世界で軍民共用の研究が推し進められている事など、思いもよらないだろう。その声色は高町なのはに似通っていた。ただし聞き慣れれば、見分けるのは比較的簡単だと箒の談。なのはの声に箒が戸惑ったことがあるのは、そういう理由によるものだ。世界を超えて『似ている人間はいるものだ』

「この束さんに理解できない事はぬぁ〜い!さあ解析、解析ぃ〜!」

束はグレートマジンガーを自らの手で解析しようと試みる。さすがの束も23世紀のスーパーロボットを解析するのは一筋縄ではいかないだろう。そもそもマジンガーの根本の一端を担う装甲材は『この世界』には無い上、『23世紀』特有のオーバーテクノロジーも多く使われている機体なのだから。束は安全なところから観察しているが、グレートマジンガーの挙動に感動を覚えたという。彼女の目から見ても、搭乗型ロボが人間のように滑らかな動きを搭乗者への負担をかけずに行えるというのは、大きな衝撃であったからだ。

















「うっ……なにがいったいどうなって……!?」

「一夏、気がついた?」

「あ、ああ……。ん!?あのロボットはなんなんだ!?まるで……」

「一夏君、取り敢えず説明するわ」

「は、はい」

智子は取り敢えずこの突飛な状況を説明する。何せ、巨大ロボットがガチンコ勝負しているというおおよそあり得ない状況は説明に一苦労する。いくら目の前で実物を見させられても、だ。

(ちなみにこのグレートマジンガーの戦闘は長い間のようにも思えるが、グレートの巡航速度が高速であるため、実はほんの数分にすぎない)


状況を取り敢えず説明された一夏はいまいち納得できないところも多々あるが、実物がこうして暴れている以上、信じるを得ない。

「うぅ〜……あれじゃねぇ。まだ他のヤツのほうが説得力あるよねぇ……」

智子はグレートマジンガーがヒーローロボット然とした風体なのにため息をついた。Zガンダムやνガンダムのような`兵器らしい`外見のモビルスーツなどならもうちょっと説得力があるのだが、ヒーロー系のロボットそのままの風体のグレートマジンガーでは現実的では無いのだ。

「んじゃあなたたちの……その、世界じゃあんなロボットが普通に動いてるんですか?」

「まぁ、平たく言えばそうなるわね」

正確には智子はその世界の住民ではないが、この時期には滞在歴は長かったので、住民と言っても差し支え無かった。なので、そう答えたのだ。智子はこの時、「一夏にモビルスーツやVFを見せてやりたい」と思った。どんな顔をするのだろう。その横では圭子がRX(光太郎)の助けも借りて千冬らに説明している。どうやらうまくいったらしく、安堵の表情を浮かべている。

「ふう。なんとかうまくいったわ」

「ご苦労さん、圭子」

「若い先生にに飲み込ませるのはちょっち大変だったけど、まあ納得してくれたわ」

若い先生とは山田真耶の事だ。千冬は常識外の事にもすぐ適応してみせる順応性を持つので比較的簡単だったが、真耶に意外な苦戦をしたようである。最もRXのおかげで一気にうまくいったが。

「でもまだ半信半疑ね」
「まあしゃーないわね。行動で示すしか無いわね」
「そういう事だな」

3人は改めて戦闘態勢を取り直す。そしてまだダメージが軽く、セシリアからエネルギーを貰い、一応の戦闘能力を回復させていた鈴が一夏と共に加わると告げる。

「大丈夫なの、鈴」

「あたしを誰だと思ってんのよ?」

「その元気なら大丈夫ね。セシリアはやられたラウラとシャルの面倒を頼むわ」

「はい。不本意ですけど、鈴さんにお任せしますわ」
「さあ行くわよ!」

「ん?なんであんたが仕切ってんのよ!?」

「年の功よ、年の功。あたしこう見えても26だし」

「あたしは22……いや3かな」

「は、はぁ!?ちょっと待ちなさいよ!?その外見で20代ってありえない〜!!どう見ても年下にしか見えないじゃないの!!」

智子と圭子は顔を見合わせてほくそ笑んだ。実年齢と外見年齢に差がある事で、若く見られた事がよほど嬉しかったらしい。最もこの時代においては、二人の本当の生年月日からの計算を考慮に入れれば、「100歳に手の届く老人」で、曾孫がいると言っても差し支え無い年齢に達しているのだが、流石に今の時点では1945年時点での年齢だけを告げた。実際、住んでいる時代で言えばその年齢なので嘘ではない。膨れる鈴をよそに、RX達はいざ、更識楯無と簪姉妹の救援に向かう。




『サンダーブレイク!!』

『マグフォースサンダー!!』


ゲッターロボ號とグレートマジンガーの必殺技がぶつかり合い、雷が散り、辺りに放電をまき散らす。スーパーロボット同士の激突は天変地異すら招いていた。果たして、どちらに軍配が上がるのか。篠ノ之束の見守る中、死闘は続く。

『ニーインパルスキック!!』

『レッグブレード!』

グレートマジンガーとゲッターロボ號の足技がぶつかり合い、空気を震わす。グレートマジンガーのほうが素材的に優った。レッグブレードはニーインパルスキックに打ち砕かれ、破片を散らす。その様子に鈴はISに対して抱いてきた『最強の兵器』という認識を改めようと強く思ったと、後に甲児や箒に話したという。この場にいるIS学園関係者の誰もが少なからずそう考え、グレートマジンガーの戦闘に釘付けとなり、見守っていた。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.