宇宙戦艦ヤマト編その6


――デザリアム帝国と地球連邦の接触はイスカンダル救援が最初である。その闘いには今回はレイブンズ全員が参加し、更には前史ではそれ以後に関係を持った孝美も参戦していた。当時は孝美が覚醒して間もない時期であるが、黒江に忠誠を示すためもあり、参加した。扶桑軍にとっては艦隊防空のノウハウ取得の意味合いも込められており、孝美の参加が許可されたのは、海軍の存在感の確保のためである。今回は前回より戦の規模が拡大した事もあり、早期に戦訓が伝えられている。その過程で問題になったのは、当時の技術水準の電波兵器がいきなり旧式の烙印を押された事で、レーダー先進国であったはずのブリタニアの機材は愚か、カールスラントのウルツブルグも一夜で旧式とされ、その代わりの機材として、後世の3次元レーダーに一気に置き換えられた事による軍需工場の不満が溜まってしまったのは一種の軍部の誤算だろう。特に、扶桑軍はカールスラントとの軍事交流で、カールスラントにウルツブルグの有力な納入先と見なされていたが、日本がより優れた3次元レーダーを持ち込んだ事で協定の解除がなされた。メッサーシュミット事件の事実上の報復措置だった。カールスラントは一夜でそのプライドをズタズタにされたわけだ。既存の旧式機材のアップデート機材としても、より性能の良いブリタニア産のものが使われたため、カールスラントは二重の意味でショックに見舞われた。カールスラントはドイツによる強引な人材排除も重なり、衰退期を迎え始める。その逆に、扶桑は未来世界に早くからウィッチを派遣していた事、GウィッチとRウィッチの台頭で一気に政治的に台頭することとなった――






――イスカンダル救援はちょうど真501結成の数ヶ月前に起こったため、今回はレイブンズ全員とそれと会合を開いていた他のGウィッチの何人かが流れで従軍した。孝美もその内の一人であったし、今回は若本も従軍しているなどの違いがあった。ただし、前回ではいた北郷の代わりに赤松がいたり、最初からシャーリーがいたなどの細かい違いがあった。装備でも前史とかなり違いがあり、ヤマトに特別にテスト段階にあった量産型ゲッターロボGが何体かゲットマシン状態で摘まれていた。ガトランティス残党掃討作戦『雷王』の目玉と目される機体で、カラーリングは黒江たちの搭乗前提であるのか、オリジナル機の塗装パターンにされている。(オリジナル機の塗装は整備員が苦労するのか、実際の量産型は簡略化された)概ね、黒江たちに割り振られた機体は智子がポセイドン、黒江がライガー、圭子がドラゴンである。組み合わせが前史と変わらないが、ゲッターロボへの慣熟度もあり、圭子がドラゴンを使うのは固定である。さすがに、前史でゲッター3系ばかりに乗っていた智子が文句を言ったので、黒江がポセイドンを使うようにもなっている――


――雷王作戦開始前――

「今回は若本とお前がいるのか、雁渕」

「先輩、前史の事は…」

「今更ガタガタ言うつもりはねぇが、今回は妹を大事にしろよ」

「って、なんですか、その姿」

「今回の転生で拾ったガキの姿を借りてるんだよ。元の容姿だと、今は動きにくいしな」

黒江が公の場で調の容姿を使ったのは、これが最初という事になる。本当は本人が来るはずだったが、この頃はSONGから正式に離脱する事を表明したばかりであり、クリス&切歌&響の三者と揉めてしまい、話がややこしくなって来られなくなったため、黒江が容姿を使うことは承認している。当時は変身能力を手に入れて間もない時期で、若干の不安定さがあったものの、ものにしつつあった。黒江としても、『成り代わりで慣れた姿であるからで、他意はない』と、困ってる調の援護射撃を行っている。

「拾った?」

「うむ。話せば長いが、そいつを拾ったら、俺に弟子にしてくれとせがんでな。しかたがないから、そのまま拾った。今は故郷の世界に帰させてるが、陥っていた状況的にややこしい事になった」

「正確にゃ、姿が入れ替わってたよしみだ。そのガキとコイツの姿が入れ替わっててな。そのよしみで弟子にしたそうだ。今は故郷の世界からどうやって離れようとか考えてるそうだ、そいつ」

「加東先輩」

「その姿は件のガキのものだ。綾香は一年とちょっとくらい、そのガキの故郷にいる羽目になっていた。その姿でな。なんでも、いろいろ勘違いされて、大変だったとさ」

「ああ。おかげでえらい目にあったぜ。なのはより、ある意味じゃタチが悪いガキに絡まれるわ、この姿の元の持ち主が魂を乗っ取られたと思って、妙にとち狂うガキには襲われるわ…。まあ、コスプレ喫茶に潜り込んで隠れてたけど」

黒江がコスプレ喫茶に潜り込んでいた事は、黒江が当時の二課に加担するに至った段階で判明したが、翼が怒り、クリスには大いにツッコまれたのは言うまでもない。黒江に『シンフォギアをそのような事に使うとは……破廉恥な!』と言ったが、『私はここの住人でもなんでもねぇんだぞ?お前らのルールを押し付けるな』と返す一幕もあった。

「出来ないはずだからやるなってか?ちっちぇー事言うなよ」

「シンフォギアの使用はこちらでは法律で厳しく制限されている。それに、貴方はギアを常に展開していたようだが、いつから入れ替わっていたのだ」

「いっぺんに聞くなってんだろ。順序を追って説明してやる」

「あれ?よく見てみると、ギアの色が明るい?」

「そう言えば、最初見た時は黒主体だったな…。適合率が高いんだな、ばーちゃん」

調は本来、天羽奏以下の適合率だったのを無理に引き上げていたため、初陣当時のギアは出力の低いギアであった。しかし、黒江は適合率云々の次元でないため、本来は一定の適合率数が必要とされるはずの高出力のギアを常に展開していたことになる。しかも、翼やクリスであっても存在する、一定の身体への負担がなんら存在しない。人外の理に到達した者だからこその芸当であり、絶唱も負担なしに使用できることになる。

「私はそういう次元じゃねぇよ。神の域に到達して不老不死になった存在だ。それを制御することなんざ動作もない」

「なんだとッ!」

「そういきりたつな、青髪の。これをみれば分かるだろうよ」

「何っ!?」

右手にアヴァロンに収められしエクスカリバーを出現させる。シュルシャガナ姿で出現させたため、ギアがその高位の宝具のパワーに共鳴し、リミッターが悲鳴を挙げているかのように、電撃が走る。そして、その力に耐えきれず、強制解除される。着の身着で脱走したので、調がその直前に着ていた服になる。

「やはりアヴァロンごと召喚すると耐えきれないようだな。約束された勝利の剣は」

「約束された勝利の剣…?」

「アーサー王伝説の聖剣エクスカリバー。その霊格をここに出現させた。流れ込む力に耐えられずに強制解除されたのも無理はない」

「エクスカリバー…!?馬鹿な、あれはイギリスが血眼になっても、実在が確認されなかった!それに、デュランダルの起動に耐えられたはずのシンフォギアが、こうも簡単に解除されるとは…」

「神造の武器はそういうもんだ。大方、それは劣化コピーか何かじゃないのか」

「完全聖遺物はお互いにぶつかると対消滅するはずだ!!あたしもこの目で見たんだぞ!」

「宝具はそんな事で使えなくなるわきゃないぞ。おそらく、お前らの知るデュランダルはそれを模して先史文明が作ったコピーだろう」

事の真相はシュルシャガナとエクスカリバーは同じ剣の宝具であり、その力の奔流を制御できなくなった聖遺物のオーバーロードと感知し、自壊を防ぐためのフェイルセーフが働いたのである。つまりはギアの勘違いである。後に黒江が解析し、独自に改良した事で、それはなくなる。その前に、風鳴翼と立花響をエクスカリバーでそれぞれ退けたことがあるため、特にガングニールと当時は融合状態にあった響に『エネルギーを束ねる事もできなかった……なんで!?』と詰め寄られるなど、黒江は一目会っただけで、その危うさに気づいている。

「エクスカリバーは因果律兵器だ。ベクトル制御でどうにかなる力じゃねぇよ。伊達に約束された勝利の剣と呼ばれちゃいねぇよ」

アヴァロンに収められしエクスカリバーを杖のように地面に置く黒江。当時は後の変身と違い、調そのものの姿であったが、背丈が10センチも違っていたりする。


「――ってなわけだ。臨場感あったろ?」

「先輩、ストーリーテラーにでもなるんですか?」

「ミステリー・ゾーンじゃあるまいし」

黒江は回想をドラマか何かのストーリーテラー風に語ったらしい。案の定ツッコまれる。しかし、黒江が味わった苦労は並大抵の事ではなく、間もなく起こる調の出奔は響の無理強いが大きく関係している。また、黒江の機動兵器を乗りこなす才能が受け継がれ、調もこの頃には古代ベルカ時代に取得し、ミッドチルダで換金した財産で買ったバイクを秘匿していたりする。(運転免許は未来世界で取得)

「先輩、ゲッターロボGを量産させるのを早めさせました?」

「いや、これは隼人さんの、早乙女博士の遺志だ」

「早乙女博士の?」

「そうだ。世界によるが、ゲッターが何を人類にさせようとするのか、どうして平行世界からバグを駆る青年が百鬼に肩入れするのか、イルミダスが恐れたのか?その答えはエンペラーにある」

「ゲッター…エンペラー…」

「真ドラゴンが聖ドラゴンに進化し、更に真ゲッターロボと融合して生まれし究極のゲッターロボ。それの誕生をこの宇宙は望んでいる」

黒江がたどり着いた答え。前史で真ドラゴンが見せた未来のビジョンに由来する予知でもある。皇帝が生まれることを宇宙が存続のために願う事を。

「隼人さんはドラゴンを量産することで、増幅炉を偏在化し、ゲッターエネルギーを宇宙に拡散させる事で、宇宙を安定させようとしてるんだ。この宇宙は不安定になりだしてるからな」

ドラえもん達がいた、そしてその未来の世界は時空融合の歪みで宇宙が不安定になりだし、ビッグリップの兆候が表れていた。早乙女博士はゲッターロボGを進化させ続け、エンペラーにすることで安定させることを晩年の研究にしていた。隼人はその下拵えとして、ゲッター軍団の結成に踏み切ったのだ。異世界のゲッター真ドラゴンの到来は好機であり、隼人は巨大真ドラゴンを構成する一機のゲッタードラゴンを鹵獲し、それをベースに量産する道を選んだ。それがドラゴンを量産に踏み切った最大の目的だ。ただし、黒江達の機ともう一機は量産前段階の試作機であり、オリジナルと同等以上の性能がある。

「どうやって鹵獲したんです?」

「簡単さ、AIがどうにかオープンゲット機能を強引にドライブさせて、オープンゲットして、俺が合体途中のところに、ネイサーが試作したばかりの量産型ライガー号で割り込みかけたのよ。隼人さんの処女作に傷はつけさせたくなかったし」

ゲッターは合体途中に割り込みが起きると、機能不全を起こし、機能停止になる弱点が存在する。隼人曰く、『合体してるところに別なのが合体すると管制OSがエラーを起こしてエネルギーがショートする』とのこと。黒江はそれを実践し、AIから制御を奪い、鹵獲を成功させている。それ以後に改めて生産されたのが量産型ゲッターGである。黒江達の機ともう一機はその前段階の試作機であり、オリジナルの改良型に属する。

「隼人さんのネオゲッターがプラズマサンダー撃つと、中の構造も焼けちまうから、俺が説得したんだ。それに、俺は前史の晩年はゲッター乗りだったんでな」

「自慢ですか?」

「まーな。お前、せっかく聖闘士になれたんだし、乗れるんだぞ?」

「前史でご迷惑おかけしましたから、ご命令とあれば」

「お前、妹が主人公属性持ちだし、ライガーだな」

「どうしてですか」

「ドラゴンは乗りたがるやつ多いんだよ。菅野とか。若本もいるしなぁ。あと、ライガーは眼の効くヤツが良いンだ」

「あたしはゲッターの使者だから、ドラゴン固定だ。アフリカでダブルトマホーク使ったら、マルセイユの野郎が怯えやがってな」

圭子はダブルトマホークをダブルポールアックス形態で使ったらど迫力であり、覚醒前のマルセイユが『ひええええ…』と怯えたと愚痴る。

「菅野はポセイドンで得意のパンチを活かして貰うがな。新武装のバーストアタックをポセイドンにつけたらしいし、敷島博士」

「時間が有ればどれにでも乗れる様に特訓するンだけどなぁ……」

「ベンケイさんもゲッターのどの形態にも乗れるように特訓されてたしな」

「ゲットマシンはどこに積んだんですか?」

「雷撃艇を降ろして、二機分の六機を積んだ。ローテーションを組ませるが、特訓しておけ」

コスモタイガーやVFとは規格が違うので、容積に余裕がある雷撃艇用格納庫を宛てたとは、真田志郎の談。また、量産試作といいつつ、炉心は『ミニ炉心が合体時に一つの大炉心として機能するオリジナルと同等の贅沢な仕様になっている。ゲッターのパワーが形態で違うのは、主体になる機体のミニ炉心の特性が反映されるからである。ドラゴンは戦闘力と使いやすさのバランスが両立された機種でもあり、そのあたりはグレートマジンガーと同じ『制御され、洗練された力』を持つといえる。マジンガーZEROがグレートマジンガーやゲッターGを嫌う理由は『単体では完成されていない巨大な力こそがスーパーロボット』という身勝手なものである。つまり制御され、洗練されし力はスーパーロボットが持つべきものではないという身勝手な持論を通したいのがマジンガーZEROの意志であり、それがゴッド・マジンガーに否定されるエゴなのだ。

「マジンガーZEROのことは知ってるな?」

「はい」

「いずれ、ヤツと一戦を交える。それに備えるためにも、スーパーロボットの操縦技術は覚えておけ」

それは思ったより早く実現し、ゴッド・マジンガーとマジンエンペラーGの活躍で決着を見た。黒江が言ったのは、間接的に『それ以後の戦に備えろ』という意味合いも含む。容姿が元の大人びたものではなく、調のあどけないものであるため、その一言を言う姿はミステリアスな印象を与える。黒江はこの時、ロンド・ベル仕様の軍服を着込んでいるので、そのアンバランスさがミステリアスさを醸し出している。

「先輩、その姿でいうと、なんかミステリアスな感じが出てます」

「そうか、お、味方が来たぞ」

雷王作戦のために、ドレッドノート級後期型の『蝦夷』、『アイル・オブ・スカイ』、『アガメムノン』、『陸奥』が姿を見せるのが窓から見える。無人艦隊も完成し始めていたが、有人艦である。また、航空戦力確保のため、増産されたバトルキャリア『イラストリアス』が参陣している。ドレッドノートは基本的に作った工場のある地域の関連名がつけられるが、無国籍に近いアイル・オブ・スカイの例もある。基本的にヤマトを旗艦にしての特別編成艦隊で、元の艦隊から抽出された艦艇たちだ。

「ガイアは援軍出さないんですか?」

「向こうはガミラスにあらかた鉄屑にされたから、ヤマト以外はまともな艦艇がないそうだ。だから、新造を急いでるそうだが…」

「艦政本部長が『パクリだぁ!』と騒いでるぞ?」

「ソ連みたいな言い訳を向こうの芹沢中将がしてきてるんだよ、D級」

奇しくも、ガイアが元の次元に帰還した時、ガイアの地球連邦防衛軍はドレッドノート級前衛航宙艦という名称で既に基礎設計を終えていた。これは旧ソ連が超音速爆撃機を設計したのと同じような状況で、アースは当然抗議したが、ガイアにとっては全くの偶然であった。しかし、同じような姿の船が生まれたのもなにかの縁であり、ガイアは武装だけでも統一したいと言ってきている。また、ガイアの艦は主砲口径がアンドロメダでも40cmと小さく、模倣にしても変である。

『模倣か複写か、にしてもやる気の無さしか感じられんよ、あれは』

真田志郎は監察に赴いた際、設計を一瞥するなり、酷評している。アースは基本的に大口径砲を大艦巨砲主義的に好むため、主力戦艦で40cm、アンドロメダで51cmに達している。だが、ガイアの艦は模倣か複写か、技術の差によるものか、主砲口径がサイズダウンしている。

「都合の良い話だな、どうせある程度は盗んでいるのでしょう、こちらの技術を」

「アースでの君はハッキリとモノを言うのだな」

「私は科学省の長も兼務しているのですよ、芹沢閣下?」

アースの真田は科学省の長と軍人を兼ねているが、これは特例である。アンドロメダなどの主砲口径に差が出た理由は、アースが同級を『超ヤマトタイプ』を意図し、贅を尽くした艦隊/戦隊旗艦なのに対し、ガイアは量産性を考えたのが違いとも言える。ガイアは主砲の次世代型の開発でヤマトと同等以上の能力を得ているとしているが、アースのアンドロメダは51cm砲の大威力を売りにしていた。

「規格統一をそちらが望むのであれば、我が方は喜んで波動システムを提供致します。サレザー・イスカンダルとの条約を口約束と言い訳してまで波動砲を持たすのは先方が怒りましょう?」

「君は私を…侮辱しているのかね」

「いえ、私は取引を持ちかけているだけであります。貴方もサレザー・イスカンダルに愚か者と烙印を押され、ヤマトクルーには敵視される事は避けたいでしょう?」

アースの真田志郎は脅しも兼ねての交渉をし、完全に主導権を握った。ガイアの彼が学者肌で、実務型ではないのに対し、ガミラスの攻撃時に任官されたアースの真田志郎は万能である。技師ながら、軍人としての技能もすべてが高レベルであり、戦闘機操縦すらこなす。これはアースの真田は幼少期の遊園地の事故で姉と自分の四肢を失い、画家志望の少年が科学を屈伏させる敵と見なし、技師になり軍人になったという事情もある。そのため、交渉人としてももちろんプロ級であり、黒江がその万能選手ぶりに憧れているのも頷ける人物だ。(ガミラス帝国との交戦時の人材は逸材揃いであった。渾名は『ヤマトの水先案内人』、『真田さんがあと10人いれば、ガトランティスも怖くなかった』である)

雷王作戦の裏側で、真田志郎はプロ顔負けの見事な交渉術を駆使し、ガイアで要職にある芹沢虎徹を圧倒せしめる。その余裕を見せつつ、表情は崩さないポーカーフェイス。とても30代前半とは思えない重厚さを感じさせる。これは心理学のちょっとした応用であり、彼の万能選手ぶりがわかる。プロの外交官が裸足で逃げるほどの威力。シャイな黒江が素直に尊敬するように、好人物でもあり、まさに偉人であると言える。

「閣下のお気持ち次第では、そちらの次期戦闘機計画に我々の一式宇宙艦上戦闘爆撃機を推薦する事も検討しております。採用の暁には、閣下に相応の対価を…」

真田はコスモタイガーのライセンスをちらつかせる。アースで活躍中の戦闘機が得られれば、旧式のコスモファルコンを代替できる。それは魅力であった。また、コスモタイガーTはガイアでは別の競作機で、ガイア独自の機体である。その分難航し、頓挫しかけていた。そこに従来戦闘機の延長線上にあるコスモタイガーである。アースではプロトタイプを経て完成した集大成的な戦闘機だが、ガイアでは先にコスモタイガーTがあり、頓挫しかけていたのだ。

「…そちらのライセンス料は?」

「閣下、こちらの書類にサインを。それと、隣の部屋で軍需工場の方々がお待ちです」

「有意義な会合になりそうだ」

(現金なものだ)

内心、彼に呆れつつも軍需工場と軍需企業の担当者が待機している部屋につれていく真田。掌返しがわかりやすく、典型的官僚軍人である芹沢虎徹の心を完全に手中に収めた真田。地球連邦軍のネゴシエーターとも渾名される彼は、ガイアへの外交的主導権を握らんとするアースの外交力を示す逸材であった。これはアースの外務省が殆ど機能しておらず、リリーナ・ドーリアンが頑張っている以外は開店休業状態な窮状の表れである。それも戦乱が招いたアースの人手不足を示す事例であり、軍部出身のユング・フロイトが大統領にすぐなれるほど、軍部に政府が依存する状態である事でもあった。そもそも統一されていたはずであるので、内務省はあっても外務省は存在しておらず、一年戦争で復活したにすぎない部署であり、ノウハウ継承に失敗していたのだ。そのため、真田志郎がこうした外交を展開するのも珍しくはなく、統一もいいことばかりでない現実の表れと言えた。シビリアンコントロールの観点では好ましくはないが、外務省が機能しない状況ではしかたがない事であり、政治学者や歴史学者を動員して外務スタッフとして雇用する有様である以上の緊急措置として許可されていた。地球連邦軍は今や外務交渉すら行うため、人手不足が敵対勢力に揶揄されるが、実はジオンより圧倒的に多かったのである。太陽系にいる地球連邦国民が減ったとは言え、移民星と移民船団も含めれば、潜在人口は一年戦争前の地球人口を超える。ゼントラーディからの帰化なども含めれば、人口は何百億になる。減ったのは純粋な地球人の人口のみだ。地球連邦は再編を経て、一応の星間国家として成熟し、一端にガルマン・ガミラスとの惑星連邦体制すら模索するに至る。ガルマン・ガミラスも地球連邦の軍事力はボラー連邦との星間戦争の助けになるため、銀河連邦への加盟を検討する。ほぼ地球と同族のバード星は地球のシステムに組み込まれ始め、ガルマン・ガミラスもそれに加わろうと模索する。地球星間連邦はその次なるステージ『惑星連邦』への過渡期であるのだろうか。銀河連邦が次第に銀河系統一機関から、各地で台頭する星間国家の調整機関に変質し始める中、その権威保持に地球は貢献していくのだった。これも不思議界フーマとの大戦争の傷跡であり、銀河連邦は実質、地球連邦の力で組織が維持できた老組織なのだ。アースフリートが主力艦隊に抜擢されたのも、バード星の銀河連邦警察の衰えが原因であり、フーマの負の遺産がバード星を蝕んだのがわかる。コム長官の退官が迫るバード星はギャバンの高官への推挙が現実になりつつあり、この時期はギャバンにとっても大変な時期であった。また、コム長官後継レースが熾烈を極めるが、娘婿としてほぼ蚊帳の外にあり、その点でも、黒江の知り合いたちは意外に政治的争いに巻き込まれていた。



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