宇宙戦艦ヤマト編その9


――スーパーロボットの強大さは逆説的に言えば、『通常兵器は引き立て役』と思っていた大多数のウィッチに恐怖を抱かせた。一言で言うなら、自分達の居場所と存在意義を奪い去るのでは?ということだ。しかし、Gウィッチの中でも初期に確認されたレイブンズはスーパーロボットの中でも強力かつ古豪のマジンガーとゲッターの力を『光子力とゲッター線の使者』として行使可能になっており、扶桑海事変で存分に本領を発揮している。そのからくりにドラえもんとのび太が絡んでいる事は彼らの安全のために特秘事項になっている。また、イスカンダル救援が始まる時期は続々と転生者が確認されつつあった時期でもあり、ウィッチ世界はGウィッチの強大さを一部の選ばれし者の特権として迫害するよりも、世界全体の利益として活用することを選んでいく。しかし、そのウィッチの範疇から逸脱した強さがカールスラントではダンケルク撤退戦時の若手、扶桑では扶桑海事変後の第一世代の反発を招き、遂には人事記録の極秘裏の書き換え作戦が実行されるに至る――







――扶桑では、分かりやすい見せしめを必要とした事もあり、レイブンズの上官であった江藤に責任の一端を負わせ、連帯責任で江藤の同期達に現役、退役を問わず一律で何かかしらの処分(退役者は年金の減額などが中心)を下すことで軍規の引き締めを図りつつ、時代の空気への適応を図った。海軍航空隊は事変後第一世代が反レイブンズ的風潮のもとで育ったこと、個人を称える文化が存在しなかったのを理由に、陸軍系の航空関係者が海軍の航空関係者を巻き込んで起こすエース制度創設に反対した。その過程でフーベルタ・フォン・ボニンが槍玉に挙げられ、マスコミ向けの事実上の前言撤回の声明を出す羽目に陥るなど、他国すら騒動に巻き込んでしまう。海軍からすれば、『天測航法も出来ねぇニワトリ共がうるせぇ事言うな!』だが、扶桑海事変世代は最終決戦が洋上であったため、全員が必要上、天測航法を取得済みであり、大半が未だ現役である。さらに、フーベルタも『自分は実力主義の観点から述べたのであって、スコア偏重ではない』との声明を出したため、日本側が主導し、海軍航空隊を空軍に飲み込もうととしたのは、その流れの沈静化を兼ねての航空一元化だった。しかし、航空幕僚長の切実な提言と、飛行訓練の頻発による訴訟問題を恐れた背広組の方針転換で組織存続に成功するが、人員の総入れ替えに等しい人事による育成期間の長期化、予備人員の安定供給の確立まで投入しない方針から、設立されたばかりの空軍が空母機動部隊の艦上機部隊の人員すら担う事になる。一方、一度でもケチがつけば、名誉回復の機会すら与えようとせず、社会的抹殺まがいの行為を平然と行う日本のマスメディアはその姿勢が批判され、扶桑の内紛を煽ったとの批判を浴びることになる――


一年後、山本五十六は国防大臣を辞任する際、『海軍が身を切り、陸軍も身を切る事で生まれるのが空軍だ、そしてこれからの軍は陸海空いがみ合っては戦いにならんのだ!陸海がともに身を切り生み出した空軍と三本の矢となって国防大臣のもと、国家という家族のために一丸となる組織が必要なのだ!!』と演説し、空軍の門出を祈る。そして、その象徴がGウィッチであった。自衛隊の対抗意識丸出しなのに運用上の齟齬少なくスムーズに連係する様子に感銘を受けた山本五十六は、視察の際に『嫌っても敵じゃない関係とは良い、嫌っても信頼出来るのは誠に素晴らしい』とし、自衛隊の組織を手本に海軍兵学校と陸軍士官学校の統合も押し進める。山本五十六は既存の仕組みへの爆弾発言が多く、暗殺の危険が大きかったが、艦娘によるガードがなされ、難を逃れる。史実で暗殺された運命から逃れた暗示でもあった。

『近代的海軍はブリタニアを真似て始まっとる。今、別世界の我等の後継者たる自衛隊から良いところを学びとる事に何を恥じる所が有ろうか?我々は模倣し、改良しながら身につける、軍は伝統に固執しても新しい装備や作戦が生まれたら合わせて変わらねば滅びるだけなのだ、そのために訓練と情報収集は怠ってはならんのだ』

山本五十六はそう言って、国防大臣を辞任するが、結果的に海軍大臣としての任期も含めた数年で躍進の原動力を築いたのだ。



――当時、501に一時派遣されていた北郷に代わる人員として、レイブンズが正式に送り込まれることは通達されていたが、当時のミーナは早合点と無知が重なり、(後で覚醒した後、怒り心頭の武子に使いっ走りにされたのは言うまでもない)上層部から送られた増員の書類にほとんど目を通さないという痛恨のミスをやらかす。ハルトマンが慌てて忠告したのに、だ。ルーデルがミーナの監視も兼ねて送り込まれたり、赤松が着任したりしたのはこの時の書類確認を怠ったミスが、結果的に日本の政治的圧力に屈する形で源田実と武子が考えていた部隊構想を連合軍が潰してしまった形になったことの事実上の代替プランであった。64に異常までにトップエースが各地から引き抜かれて配属される理由の一端でもある。ミーナが自身のG化でも、失点の汚名返上をしきれなかったのは、その前のやらかしが扶桑の内紛を煽ってしまったからである。しかし、幸いな事に、レイブンズとの人員の釣り合い取りにカールスラントのトップエースが増員される事も決定されていたため、実質、カールスラントと扶桑のトップエースのバーゲンセールの様相を呈することになる事に焦ったブリタニアがエリザベス・F・ビューリングを送り込む羽目になった(この決定は智子を喜ばせたが、リネット・ビショップの劣等感が再発し、ビショップ家の名を実質的に捨てる事に繋がる)。ブリタニアの上層部は同位国のイギリスの衰退ぶりに激しいショックを受けており、統合戦闘航空団の統廃合が進んだこと、日本の左派により、植民地支配を断ち切られることを恐れた(人類生存権の確保のため)ため、若いウィッチであるリネット・ビショップを送り込んでいたのを後悔した。当時、Gウィッチへの覚醒が起こって間もないとされたビューリングの派遣が決まったのはその流れであった。リーネは前史の自分の選択を悔いており、そこに大先輩のビューリングの派遣で負い目を感じ、それがリーネの中で覚醒した美遊・エーデルフェルトの記憶と自我に自分の全てを託す事に繋がる。なんとも言えないが、それがリネット・ビショップが『リネット・ビショップとして最後に下した』一世一代の決断であった――





――扶桑皇国海軍は結果的に紫電改が烈風を抑えて、甲戦闘機扱いで使用されることなどは全くの想定外であったが、烈風の機体設計は1942年以前の技術水準でのものであり、確かに誉よりも大馬力エンジンを積んでいたのに、紫電改より速度性能に劣るという点で、制空戦闘機向けではないとされたのは不本意な結末であった。また、ウィッチ運用装置を取り外し、純粋に空母として運用した場合、当時に竣工しつつあった雲龍型航空母艦は攻撃空母としては適さないと言わざるを得なかった。45年8月当時、艦政本部では、竣工しつつあった雲龍型航空母艦がジェット戦闘機の運用には小さすぎる事が通告され、コンパクトな空母を多数持つ事を志向した扶桑海軍の思惑は根底から覆ってしまった。かと言って、今更、二十隻も造ってしまったことは覆せない。不要な艦を解体するにも、間が空いていない。知識人の間では即座に解体し、もっと大きい空母に回せばいいという声があるが、雲龍型航空母艦はコストのかかる大鳳型より安価な次期主力空母として期待されていたため、ジェット化で大鳳以上の規模の空母が必要になったのは予想を超えた事態であった。(艦政本部はエセックスに数で対抗せんとしたが、日本は質で対抗させようとした。それが超大型空母だ)結果、数を揃えられなくなるのと引き換えに、空母一隻辺りの航空隊の質を最高にすることを課したため、艦上機の機種がインフレしたのだ。その結果、レシプロ機より育成期間がどうしても長期化してしまうことは避けられない上、空母機動部隊の極度の消耗を恐れる背広組が空自と義勇兵に制空権確保を背負わせようとしたのである。ダイ・アナザー・デイの前の時点で、その問題は議論されていたが、結局、現場があまりの多忙ぶりでカツカツにならないと、実情が官僚に認識されないのも日本的グダグダである。また、扶桑用とは言え、攻撃空母の新規建造に野党が反対したことで、烈風、紫電改、、流星、彩雲の組織的な運用ができる空母の不足が問題になり、急いでプロメテウス級が調達されたのである。しかし、それもより次世代のジェットに割り振られたので、雲龍型航空母艦をあるだけ動員する羽目に陥るのである。(そして、激戦でいくつも失われる)扶桑の混乱はこうした、軍事的なものに限らず、それまでの風習が否定される事での混乱も起こり、結局、扶桑は社会的変容も余儀なくされ、家制度も日本の後押しで廃止される。また、個人主義の浸透でウィッチになっても志願しない者も続出しだすのが懸念された(実際にそうなる)ため、日本にMATという受け皿を作らせ、軍との住み分けを進めさせた。軍ウィッチは内紛が起こった事で、Gウィッチの高い地位が逆に確定する(特権の授与)のである。人員の縁故での採用、一本釣りが日本の思惑と逆に増えていくのは、以前のような学校からのスカウトや、軍から派遣された教員がクラスごとスカウトし、そのまま軍役につけさせることが禁止されるからで、その点でも軍ウィッチ冬の時代とされる。その分を一騎当千のGウィッチで補うのは自然の流れであった。軍事的で大きい変容の一つは将校の待遇だ。元帥が階級に戻る事は自衛隊出身者から元帥を出すためや、生存する元帥位保有者の多くが無能と言われている事で、その価値を相対的に下げるため、戦後日本人は階級と思っている事への帳尻合わせも含まれる措置である。将校も官僚タイプ軍人が肩身の狭い思いをする時代になり、海軍の兵科将校が特務士官に頭が上がらなくなり、下士官以下の揉め事を解決する事が義務付けられようとしたら、士官が心労で倒れると嘆願が相次いだ。そのため、専門の法務士官をアドバイザーとして乗艦させる事で双方の折衷案を決定した。これは日本側は将校と下士官、兵との間の垣根を低くしようと目論んだが、実際は心労で倒れる将校が相次いだためで、同位軍の影に悩まされる扶桑軍の象徴であった。扶桑軍では特務士官は逆に優遇枠に入り、赤松の例を見ると、陸士卒のエリートである黒江が無条件で従い、海兵卒の坂本と竹井が恐れ、畏まるほどである。それが不文律だったのだ。その明文化を『海軍の気風である』と反対したら、内乱を理由に軍法そのものが改正され、ぐうの音も出なくなった。黒江と対立して隊を去った志賀は、言わば『時代の変化』から『海軍の気風』を守ろうとして空回りした挙句の果てに軍に居場所を無くし、傭兵(民間軍事会社の社長)へ転じたという時代の犠牲者である。このように、扶桑は改革でかなりの出血を強いられ、自らの教育による軍人の柔軟性の不足が原因で優秀な人材の流出を招いた事の反省からか、退役したGウィッチが民間軍事会社で儲けることを危惧したからか、Gウィッチに特権を与え、軍になんとしても繋ぎ止める(将来的に名誉元帥にし、現役扱いに留める)方向性となっていく。(軍人である事が判別可能な服装であれば、日々の過ごし方は自由。機材は優先的にその時々の新型を使用可能などの特権が授与された)そのため、Gウィッチは事実上、元帥以上の待遇がなされたといえる。また、空母機動部隊の温存が議論されていたこの当時において、作戦においては迎撃側であるので、航空戦力を空軍主体にするべきだとする意見が背広組では優勢であり、ブリタニアに存在する空母部隊が史実より遥かに少数であることが判明すると、マリアナ沖海戦の『悪夢』を思い出した彼らは顔面蒼白になり、狂ったように陸上航空戦力の充実に傾倒した。ブリタニアと合わせて空母の数はそれなりになっても、エセックスやミッドウェイの大型正規空母群の物量には及ばないと試算したからだが、実際には、敵側はウィッチ閥との対立と戦訓不足だった。つまり、史実では既に存在した早期警戒管制が通常部隊には根付ききっておらず、また、艦載機の全体的な質はいいが、概ねミッドウェイと一部のエセックスには次世代機のF8FとF2Gが配備されていたが、多くは現行機であるF4UとF6Fであったし、それ以前のF4Fすらも残置する陣容。つまるところ、連合軍と似たような質であった。陸上機のほうがまだ質がいいと言われるのがリベリオンの実情であり、そこに連合軍は勝機を見出していく。それを知っていた上で、地球連邦軍と交渉していたのび太達が百鬼帝国や邪魔大王国、ミケーネ帝国などの地下勢力の暗躍を提示し、スーパーロボットの投入をアース、ガイア双方の地球連邦に決断させる。それ故の連合体制が構築され始める。また、黒江達も動き、VFの供給態勢に万全を期すため、23世紀の二大メーカーと連邦軍工廠との交渉に入る。調はその過程でイスカンダル救援に参戦せよという指令を受けたが果たせず、ダイ・アナザー・デイで初陣となる。黒江が交渉に伴い、メーカー側への保証人として連れて行ったのが、岡田啓介や鈴木貫太郎という長老格の海軍大将かつ総理大臣経験者である。扶桑は大将かつ総理経験者がまだ、多数存命であったが、文句が出ない長老格かつ、史実で昭和天皇の信任篤い者という事で、二人に足労を願ったのだ。二大メーカーも扶桑の総理経験者の訪問ということで、CEO自らが応対する歓待をし、黒江達へのVFの供給の確実性を確約した。その結果、日本は知らず知らずの内に、ウィッチ世界の様相を様変わりさせ、黒江達に重責を担わせていたのである。日本が航空機の性能で有に数十年は追いつけないほどのアドバンテージを求めたので、扶桑の航空産業はラインの統一性が無く、従来型レシプロ機と新式ジェットのラインが入り混じる状態であった。また、数合わせの意味も込めて、雷電と五式戦が緊急生産され、外地展開の部隊の八割が欧州に集められた。この時に、日本側が扶桑生え抜き兵の飛行時間に愕然となり、元日本軍パイロットを急募し、黒江達に80年代以前からも集めさせ、パイロットの六割は義勇兵になる見込みである。だが、扶桑は英雄の存在を不快に思う海軍系ウィッチに手を焼いていた。ウィッチ世界は『みんなでできること』を重視する傾向にあり、突出した個人を叩く、戒める風潮があった(七勇士である武子も元来は個人戦果の突出を嫌った)ため、23世紀で言う歴代ガンダムパイロットのような『英雄』を求める21世紀世界の姿勢に疑問を呈したが、レイブンズを迫害した事実が確かに存在したのは事実だ。その風潮を作り、進行させた『個人戦果を重視し、表彰してきたカールスラント』が扶桑の反G派に激しく攻撃されるのも仕方ない事であった。カールスラントのスコアに21世紀世界から粉飾疑惑(撤退戦時のJG52が中心)が呈され、激しいショックを受けた現場の士気が急降下(最大で50も引かれた者もいたため)している時でもあり、扶桑陸海軍航空隊の事変後第一世代と事変世代の対立はウィッチ部隊を割る内乱になりかねない。そこで立案されたのが501へのレイブンズの『現役者』としての派遣であり、選抜した教官級に前線で戦功を立てさせる『東二号作戦』であった。しかし、前者はミーナの無知と早合点、後者は日本防衛省背広組の思い込み、逸る使命感で半ば失敗してしまうのである。前者は結局、ミーナのG化で有耶無耶(そもそもミーナ・ディートリンデ・ヴィルケとしての自我が薄れ、西住まほに自我の主体が移ったため、実質的に別人化した)になり、懲罰を兼ねた『留学』を尉官待遇でさせるという形で決着する(ただし、練りに練った構想を頓挫させられ、Gウィッチを一箇所で集中管理する方向性に持っていってしまった点で武子の怒りを買ったのは事実であり、Gウィッチとしての序列は当面、かなりの下位に甘んじることになる)。後者はダイ・アナザー・デイに悪影響を及ぼし、黒江も人材のやりくりに腐心し、調を呼び寄せ、自分達、レイブンズの娘世代(正確に言えば孫の代だが、レイブンズの子供世代には後継が出なかったのだ)をも動員したのである。政治的には懸念されていた内乱の勃発を決定的にし、軍ウィッチ冬の時代の到来を招いたとされ、結果的に日本がGウィッチのに矢継ぎ早に与えられし特権的地位に口出し(日本にも、キャリア組とノンキャリア組という形で人員の差別化は存在しているし、転生者という特異なアイデンティティを考えれば、コミュニティの成立はごく自然の成り行きである。また、通常ではあり得ないほどの強さが加齢による劣化無しに奮えるというのも、特権を授与する根拠でもあるし、軍で希少化したウィッチに独立した兵科を戦争中だけでも与え続けるには、一種の特異性も必要だったからだ)できなくなるきっかけにもなった。ウィッチは二代目レイブンズの時代になる21世紀の頃には、『竹井元・海軍少将の死と共に、ウィッチ兵科はその歴史的役割を終えた』と記録されており、兵科そのものは航空科と機甲科にそれぞれ統合された。その代替に創設されたのが『ウィッチ技能章』であり、兵科の消滅に伴い、特殊技能に分類されたのである。ただし、大戦以前からの在籍者に限っては、以前の兵科章の着用が名誉的に認められている(ある時代からはGウィッチに限られるが)。二代目の空軍の軍服や戦闘服にはそれが確認できる。逆に言えば、一部の特権を有する者たちを除くと、軍内で少数派かつ、苦しい立場だった時代を経た後は、45年時のウィッチが少なからず有していた特権意識は消え失せているのである。(坂本は前史やアニメのキメ台詞が『ウィッチに不可能はない!!』だったので、今回は反省により、『人間に不可能なことはない』という風に変えている)――



――もっとも、その意識の変化は黒江が去った後のシンフォギア世界でも同様で、シンフォギア基本世界と違い、フロンティア事変と魔法少女事変がシンフォギアをも超える次元の力で終結した事は、シンフォギアの存在意義を揺るがしてしまった。旧日本海軍の忘れ形見であるラ號とグレートマジンカイザーの強大さ、また、オリンポス十二神の実在が明らかになったためだ。しかし、聖遺物に頼られないオーバーテクノロジーの産物が先史文明の遺物を圧倒的な力でねじ伏せる(ラ號、Gマジンカイザー)光景はシンフォギアの存在意義を揺るがしてしまうには充分であった。また、黄金神聖衣と神のぶつかり合いにシンフォギアが介入不可能であった事は後で事を知らされた響に強いショックを与えたのも事実だ。自分達の力が及ばぬ次元の力が奮われ、銀河も粉砕するエネルギーがぶつかり合う。それは惑星破壊程度の爆発を制御したシンフォギアの更に上を行く次元のぶつかり合いを意味し、響とガングニール、マリアとアガートラームの力でもそこまで膨大なエネルギーは介入すらできずにギアのほうが自壊する危険がある。響は基本的にシンフォギアの力で奇跡を起こしてきたので、天秤座の童虎にも『お主はその力に依存しておる。いくら自分の生きる目的を与えたとは言え、あまりにも危険じゃ』と言われたという。無論、聖闘士の古豪である童虎には敵うはずもなかったので、シンフォギアが用無しとされてしまうことに怯え、童虎に暴走状態で襲いかかったが、廬山昇龍覇で一撃ノックアウトされている。元々、聖闘士の指導的地位にいた童虎からすれば、暴走状態の響などは躾のされていない動物も同然であった。これが響がダイ・アナザー・デイでガイちゃんの乖離剣を見ても、蛮勇のごとく戦いをやめなかった理由である自分にとっては無限の可能性を与えてくれたシンフォギアを『宝具の欠片を使った人間共のチャチな玩具』と侮辱した邪神エリスは許せない敵だが、その邪神は黒江と智子が自分の知らぬ内にその肉体を討ってしまった事(取り憑かれていたキャロルの魂は救出したが、肉体は滅んだ。自分なら邪神を引き剥がせたと主張したが、オリンポス十二神でもそれは不可能であった)での不満、調の出奔を直後は『本物の調を懐柔して切歌から切り離した』と解釈し、作戦日時を知らせてきた圭子に食ってかかって叱責されているなど、失態を犯してもいる。つまり、黒江と童虎にまともに相手にされていない事、ガングニールをグングニルのマガイモノと呼ばれた事への反発などのフラストレーションが溜まっていたが、キャロルを乗っ取っていた邪神エリスは黒江と智子が討伐したし、そもそも本気の黄金聖闘士相手では、セブンセンシズにも到達していない者はお呼びでない。聖闘士の長老であり、先代の天秤座の黄金聖闘士である童虎にさえ反発した関係か、ひ孫弟子になった調との折り合いが悪く、調は転移前の響への『偽善者』という罵りは撤回したが、黒江に自分の代わりをさせた点では、折り合いが悪いままである。ダイ・アナザー・デイの前の時点では、調がGウィッチに覚醒し、黒江達の『同類』になり、以前とは別の存在に新生した事を上手く理解できず、なぜ、家族同然に過ごしていたはずの切歌よりものび太という少年を選び、彼のもとへ出奔したのか?その謎を抱えていたのである。乖離剣エアはもはや世界そのものを切り裂ける宝具の中でもトップクラスであり、黒江の言葉通りなら、『世界を斬るS級宝具』である。黒江の神としての力で更に強化されており、アヴァロン(魔術的)か、超合金ニューZα(物理的)製の装甲以外に防ぐ手段はない。それを示され、『欠片と概念上同じ物たる神授宝具その物で勝負に成ると思うか?』と言われても、響は半ばヒステリックになって譲らず、それを黒江から聞いたガイちゃんがミラクルドリルランスでエアを使うのだ。ガイちゃんはスーパーロボットの力を持つ上、デュランダルとエアを行使できる。そのガイちゃんがなのはに加担し、エアを見せるが、最終的に調のプラズマパイルを撃ち込まれるまで主張を通そうとするなど、意固地であったりする。これはなのはのエグすぎるやり口も批判されるが、響に非がないとも言い切れず、なまじっか世界滅亡級の聖遺物が入り混じる場にいたのが災いし、ガングニールに過信があったのだ。どんな状況も切り開けるという。また、黒江達の有した宝具は最低でもAAA級の対軍・対界宝具であるので、グングニルより格上である。また、シンフォギア世界では成立している『神の子を刺した槍はグングニルである』という神話は根本的に別の世界では成立し得ない。それが立花響が根本的に他の世界ではフルポテンシャルが出せない必然であり、悲劇と言える。







――地球連邦軍はメタ情報でデザリアムが復讐を兼ね、地球に攻め寄せる事を知り、政権交代期に差し掛かりつつあった時期ながら、懸命に準備を行い始め、有事の際の外郭独立部隊に高度な行動権を与え始める。それらはデザリアムの地球占領対策であった。スーパーロボットの量産計画も始まるなど、少しづつ進められる。元からゲッターロボは一定の量産は視野に入れられていたため、ゲッターにとっての真の目的もあり、ゲッターロボ、ゲッターロボGが量産されていく。また、正式な量産型はゲッターロボGの場合、ドラゴン号のみが増幅炉を積んでおり、試作型よりパワーは落ち、機体塗装も簡略化されている。その試作型はヤマトの出港前、レイブンズによるテストが繰り返されていた。

『チェ――ンジ!ドラゴンッ!スイッチ・オン!!』

圭子は普段は黒江と智子に比べ、目立たないが、ゲッターロボ操縦時はリーダーシップを取る。乗機はゲッタードラゴンである。この時は智子がライガーに搭乗し、黒江がポセイドンである。量産検討用の試作型は政府へのデモンストレーションも兼ねているので、オリジナル版ゲッターロボGと同様のカラーリングであり、同等以上の性能を誇る。そのため、正式な量産型のボディにオリジナル版のカラーリングが施されるのと外観は同じである。

『さて、模擬戦闘訓練を開始する。今回はドラえもんが趣向を凝らしてくれたぞ』

『なんすか?』

『もしかして、メカゴジラですか?』

『それじゃないぞ。モゲラでもないからな。正確に言えば、ドラえもんがほんもの図鑑で出してみたものだ。ノックアウトすればいい』

『あ、エ○ァ零号機改のTV版仕様か。パイロット付きで?』

『そうでないと動かんだろ。ほんもの図鑑から出したモノだから、自爆装置はないので、追い詰めても自爆される心配はない。IFで内部に動力が積まれた仕様だそうだが、ゲッターの攻撃力なら、フィールドはあってないようなものと言っていたぞ』

神隼人曰く、ドラえもんがほんもの図鑑『アニメロボット篇(リアルロボット篇)』から出してみたというそれは、ゲッタードラゴンと互角の体躯と猫背気味。90年代半ばほどに社会現象になった某アニメが出典の『アレ』であった。ドラえもんがほんもの図鑑から出したので、試しに使ってみたそうである。


『ほんじゃ、一発〜』

圭子は試しにパンチをしてみる。すると、『それ』はフィールドを展開するが、ドラゴンのパンチはそれをすり抜けるようにして直撃した。キレイにフックが決まった。隼人の言葉通りらしい。それに気をよくした圭子は器用に操縦桿とフットペダルを操作し、コブラツイストをかける。敵を地面に叩きつけてからかける上、ゲッタードラゴンはゲッター1よりパワーがあるため、意外にパワーファイターであり、絵面としてはプロレスが適当だろう。敵は悲鳴を挙げているように見える構図のポーズである。圭子はそこから更に相手を起き上がらせてから、相撲のサバ折りをかける。なんとも意外な事に、圭子は前史で次兄が晩年に格闘技の試合観戦に傾倒していたため、その方面で得た知識をメカで実践したのだ。

『おい、ケイ。お前、いつサバ折りなんて覚えたんだよ?』

『前史で二番目の兄貴(加東澪の祖父)が晩年に格闘技の観戦に傾倒しててよ。付き合わされた事多かったんだ。それで覚えた。』

『中のやつ、どういう表情してるのかね?」

『そう言えば、アニメの設定だと、シンクロしてる関係で痛みは伝わるんだったな。多分、痛みを必死に堪えてるんだろう。感覚はあっても、自分の体じゃないのは知っているだろうし』

『よーし、今度は俺にやらせろ、チェーンジ!ポセイドン、スイッチ・オン!』

ポセイドンに変形し、黒江はフィンガーネットを使い、相手を絡め取り、自分と互角の体躯を持つ相手を漁師のように網に閉じ込め、振り回す。ゲッターG中最大のパワーのポセイドンのパワーは真ゲッター3には劣るが、それでもグレートマジンガーより高トルクを誇る。網を持ちジャイアントスイングをした後にそこから、闘技の応用で流星拳を決める。おそらく、敵の特徴でもある外部の管制なしに戦った場合、暴走しようが、拘束はできる。手持ち武装はドラえもん曰く、外されている状態らしいからだ。黒江はポセイドンであろうと、ライガー並の動きをさせられるため、隼人も驚嘆しており、『さ…流石だな……」と声を震わせ気味である。


『さーて、ゲッターサイクロンでおねんねしてもらうぜ!』

グレートタイフーンとほぼ同レベルの突風で吹き飛ばし、ゲッターエレキで念入りに追い打ちをかけておく。

『うーん。ドラゴンだと関節の自由度の関係で卍固めはできねぇし、こんくらいでいいだろ』

『ドラえもんー、今のうちに回収しとけ。あれは暴走しやすいかんな』

「はいはい」

ほんもの図鑑を上から被せ、機体を回収するドラえもん。ほんもの図鑑の中身は修復に別途、道具が必要であるため、ある一定のところで回収する必要があるのだ。また、使用したのが零号機なのは、このシリーズでは比較的暴走しない(起動実験では暴走したことがあるが、戦闘では暴走することがまずない)機体だからだ。

『あれのパイロット、どうなってたんだろう』

『こちらでモニタリングしていたが、武装も無しで闘い、お前らに殆ど一瞬で組み伏せられたのを信じられない顔をしていた。アニメでの設定的に考えると、初号機は使えん。後は弐号機だろう』

『まー、あれはヤバイですからね。つか、ほんもの図鑑、割に万能ですね』

『ドラえもんもすべては把握していないそうだ。ガンバスター、本物は銀河のどこかを彷徨ってて、サルベージが計画されているが…も含まれているらしいし』

『そりゃすげえ』

『実物ミニチュア大百科で並行して実験もしているそうだ。ミニチュアサイズでなら比較的安全だからな』

『意外に几帳面だな、あいつ』

『ガンバスターは実物サイズだと200mだ。地上での運用には困難を伴う。しかし、ミニサイズであれば問題はない。データ収集も兼ねて、ユング次期大統領に動かしてもらっている』

『あれ、まだ選挙前ですよね』

『彼女が大統領になることはほぼ確実視されてるよ。ガトランティスの残した影響で、あまりハト派過ぎても、対応が後手後手になったから、最近は軍部出身が好まれる。民衆ってのは現金なものさ』

隼人は平和主義的風潮がガトランティスの圧倒的なまでの苛烈な攻撃で払拭され、一気に『侵略者には死あるのみ』な思考ができた事を皮肉交じりに言う。元々、学生時代はクールでニヒルな皮肉屋かつ、学生運動家であったためか、その名残りが成人しても顔を覗かせる。

『で、ミニサイズって?』

『元々が宇宙怪獣駆逐用のバスターマシンだから、MSサイズと人サイズの二個をドラえもんに用意させている。元の大きさでは地上では完全にオーバースペックだ』

ユング・フロイトはこの時期には地球連邦(アース)の次期大統領選挙に立候補するため、近々、大佐で退役予定である。グレートガンバスターのロールアウト後は神隼人に協力しており、ガンバスターのダウンサイジングプランが持ち上がったため、そのデータを集めるのが軍での最後の仕事であった。なお、何故、人程度のサイズのマイクロサイズが用意されたかというと、ガンバスターの運動性はサイズを小さくした場合、どのくらいであるか、の確認と2010年代の学園都市への投入が考えられているからである。学園都市がある時から衰退した理由は上条当麻が第一要因だが、デューク東郷も絡んでいただろうことは推測されており、指導層を失えば、学園都市もすぐに既存の仕組みに飲み込まれる。23世紀でウィッチの素養を持つ者が多く発見されだしたのも、この時期だ。元・学園都市地域の能力者の末裔達が先祖が有した能力を自然に得、魔力を得たからであり、男性ウィッチも存在した。そのため、地球連邦は扶桑にこれらを通達し、扶桑への義勇兵として参戦させる事を伝える。これが扶桑の内乱の一因であったのも否めない。レイブンズがゲッターロボの操縦技能までも有している事、素で戦士として人間が普通に鍛錬しただけでは、たどり着けぬ境地に達してしまった(聖闘士は修行でなれるが、果てしない努力も必要とする)こともそうだが、デューク東郷の存在が恐れられたのもある。彼は言わば、レイブンズでも倒せない『異能生存体』とも言うべき特性を持つ。元は初代のものだが、メモリークローン達もばっちり受け継いでいる。その彼が人間として最高峰の能力値で裏世界に君臨する事、素でその彼と渡り合える青年(のび太)がいることは反G派や日和見主義的な多数派ウィッチに恐怖を抱かせたのだ。



――Gウィッチが軍内では上層部の重宝とは裏腹に、ウィッチ内部では少数派であることもあり、これから激しい軍内部の派閥抗争に巻き込まれていく。ダイ・アナザー・デイの前の時点では、権力の中枢にはその一人のアドルフィーネ・ガランドがついていた。彼女の後継レースの有力候補であったエディタ・ノイマンがウィッチ世界からすれば、理不尽な理由で後継レースから脱落させられ、問題児とされたグンドュラ・ラルが後継者に選ばれた事には大いに議論を呼び、容認したガランドを非難する声がかなり出ている。また、扶桑国内でも『事変当時は合法であった』若手のスコア申告の調整が10年近く経ってから問題視された事への反発、過去の人間と認識されていたレイブンズを現役者と見なして前線に戻した施策は事変後第一世代の反発を誘発した。しかし、レイブンズは過去の事変に従軍していた者には神様扱いされるほどに崇められているし、欧米諸国からは『扶桑の伝説』とされている。(スオムスは智子が往時の力を取り戻した際の闘いの映像を扶桑から援助を引き出す取引材料としようとしたが、日本連邦に『東洋人への人種差別か』と、いらん子中隊の功績と戦績を秘匿した事をそれとなく抗議され、逆に自分達の外交を優位にする道具にされてしまう。『日本連邦への服従か、滅亡必至な戦争か』と、事を悲観的に考えた結果、服従を選んでいる。)そのことがレイブンズの後輩達にその圧倒的な力で以て示されるのは、ダイ・アナザー・デイを待たねばならなかった。マンネルヘイムは後に、日本連邦からの抗議をこう述懐している。『サムライの国を怒らせたらペンペン草も生えないほど叩き潰されてしまうという伝説に私は怯えたし、同位国での自分の評判をあまり下げたくはなかった。何よりも、差別主義者のレッテルが貼られるのは屈辱だし、今やブリタニア以上の大国に飛躍しつつある日本連邦の支持を失い、援助を打ち切られたくなかった。ましてや、圧倒的な軍事力を得た日本連邦との戦争で国家を破滅させるなど、あってはならないのだ』と。マンネルヘイムは既にこの時、レイブンズがゲッターロボGのパイロットになった事を掴んでいた。ゲッタードラゴンを扶桑の強大さのシンボルと捉えていた彼は卑屈と言われようが、日本連邦を怒らせるなというポリシーのもと、外交を展開する。智子への詫びも兼ねての選択であり、圭子とも関係がある故の事で、圭子の女傑伝説が後世に誇張される原因になったという。



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