宇宙戦艦ヤマト編その11『Gウィッチの台頭1』


――ウィッチ世界で問題になりつつある同位国によるあからさまな人材の選別は問題になり、扶桑では人材の空洞化を招来し、Gウィッチ頼りの時代に突入するわけだ。反戦的風潮の広がりで人数が余計に確保できなくなったので義勇兵頼りでもあり、Gウィッチの台頭は当然の流れであった。その中で考えられた『ある可能性』。それを探るため、仮面ライダーディケイドに連絡を試みる黒江達。ダイ・アナザー・デイ中にそれは実現し、中島錦の前世はその時に確定する。それは黒江達にとっては、ある意味では楽であり、錦にとっては、今までのキャラをかなぐり捨てる羽目になったものの、劣等感さえあったレイブンズと轡を真の意味で並べられたため、前世をあっさりと受け入れるに至る。それを知ったシャーリーと芳佳が錦を巻き込み、同好会と称しての集まりを作ったとか。また、ティターンズの攻撃から立ち直りきっていない呉で怪異を用いたテロ行為もこの時期に起こり、タイムふろしきなどを活用したウルトラCな作戦で被害額は少なく済み、日本の急進的反戦勢力の衰退が始まるが、彼らはある置き土産を遺す。MATが絶頂期を迎える要因となる風潮を。その厄介な風潮に少なからず扶桑は振り回されることを知るレイブンズは『後輩にもっと、パンチのあるガキが欲しい』と漏らしており、覚醒した錦はそれにうってつけだったのだ。それを知ったシャーリーと芳佳も同じような事をし、なんだかんだで楽しんでおり、意外に変身ヒロイン願望があったので、そこは黒江と同じ思考回路であった――










イスカンダル救援前の時期にガンダムF91からクロスボーンガンダムX1にシーブック・アノー改め、キンケドゥ・ナウが愛機を乗り換えており、ガンダムF91の量産機もそれを受けての増産が決定している。MSとしては高コストではあるが、ゲッタードラゴンが量産される時勢なので、高コストという感覚はない。ダイ・アナザー・デイ投入予定戦力に数えられる量産型ガンダムF91。地球連邦の新たなハイエンド機の一つであり、30世紀の技術が加味された第二期バージョンとなる。それを見学していた孝美は息を呑む。

「これは…」

「量産型のF91だ。エース用にそのまま試作機を増産したようなもので、君の世界で活躍したF91のバージョンアップにあたる」

「これがあの…」

ガンダムF91は歴代でも機動力が売りであったため、今回の歴史においても、その機動力を存分に発揮し、大型怪異を仕留めている。そのことがウィッチの居場所を脅かすと危険視されるが、その上位互換の魔導師が存在する上に、F91の劇的な戦果が一面記事で報じられたため、ウィッチ間の抗争が激しくなったのも事実だ。それらと肩を並べて戦えるのがGウィッチであるため、優遇は当然の成り行きである。F91は小型MSでは成功作であり、後継機のクロスボーンガンダムが接近戦にパラメータを割り切った設計であり、設計にムラがあるとアナハイム・エレクトロニクス社からは些か酷評気味であるので、F90のブラッシュアップかつ発展型であるF91の評価は高い。オーソドックスかつ、小型機のスタンダードを定めたからだろう。そのために簡易量産機が開発されても、F91が増産されるのである。

「元々はフォーミュラ計画の第二世代機として開発されたのが始まりで、シーブック・アノー君が君の世界で使用したのは、試作機と同等の仕様に改造している量産機だが、オリジナルと同等だ」

「ガンダムはどうしてそのまま量産しないのですか、真田さん」

「基本的に、その時々の最高技術を詰め込む実験材料に近いからだ。プロトタイプレースカーのようなものさ。ガンダムの多くは量産は考えられていない。量産に当たっては、一から再設計する必要も出るくらいだ」

Z系などもそうだが、量産型のMSは高性能機の機能削減とダウングレードという認識が強い。特に地球連邦では、RX-78とRGM系統の階層が確立されて以降はGラインのような高性能機種は滅多に作られず、基本は既存機の派生で対処するのが地球連邦のMS系機動兵器の開発方針で、30世紀のマン・マシーン(MSの後身)に至るまで不変である。

「ウルスラさんが憤慨していましたよ?」

「仕方ない、彼女の知る常識と、MSの技術開発は違うからな。この内の一体を君に与えるつもりのようだよ、綾ちゃんは」

「まだ訓練中ですよ!?私!」

「オーソドックスなガンダム系はむしろ乗りやすい。Zがピーキーなだけだ」

ガンダム系でも、F91はオーソドックスな操作特性なためにむしろ扱い易い類に入る。Zガンダム系が扱いにくいのはウェーブライダーの操作や足にジェネレータがある故か、操作特性が玄人向けのスーパーカーに近いとされるほどにじゃじゃ馬だからだ。

「先輩はよく乗れますね…」

「綾ちゃんは戦闘機操縦資格も持つからな。あの子のように、戦闘機乗りとしての能力とMS乗りとしての能力を兼ね備えるのが、所謂、Z乗りなんだ」

「Z乗り?」

「ゼータ系は機体バランスが根本的に変わるから、ティターンズ系のTMAより乗りにくい事に定評があってな。戦闘機に乗っていた者を乗せると、上手く機能することから、ステータスになったんだ」

戦闘機乗りはZ系TMS乗りも兼任する場合が多いという。黒江がまさにそれだが、黒江は遂にはゲッターGにまで手を広げている。戦闘機乗りであり、MS乗りとしての資格も同時に持てることから、TMSは可変戦闘機とは別の需要もあり、一定数が配備されているのだが、そのパイロット達を『Z乗り』と羨望するのが地球連邦での人気だ。また、可変戦闘機の基礎課程を終えた後、MSに乗ることになったパイロットはリゼルを好む傾向がある。

「でも、ウェーブライダーって大気圏突入用の形態で空戦は考えられてませんよね」

「突入後にオプション装備に換装すれば、それなりに使えるようにはなるさ」

ウェーブライダーはZプラスでもそうだが、移動用形態と考えられている。それを解消しようとしたのがZプラスD型であり、ウェーブシュータータイプのバインダーである。ウェーブシューターの試験結果でZプラスD型が造られたので、Zガンダムのウェーブライダーの空戦能力面はそれを用いるならば向上する。コスモタイガーのノウハウも入ったので、ウイングの換装が推奨されるが、F-111レベルの運動性能は持つ様になった。

「一応、素でもF-111レベルには飛べるようになったが、戦闘機との空戦には向いていない。ウイングの換装は小回りを効かせるためでもある」

ウェーブライダーは素では空戦能力は皆無に近いため、ウェーブシューター形態での投入が大気圏では望ましいとされる。ジュドーやカミーユなど、一撃離脱で対応するニュータイプもいたが、通常はウェーブシューターが大気圏では必須だ。

「素じゃ爆撃機じゃないですか」

「カモられないくらいには動ける爆撃機だよ。君達のところで言うなら、高速の陸攻みたいなものだ」

「一式陸攻ですか?」

「銀河か飛龍に近いな。フェーベ航空決戦ではその目的で使われた機体も多い」

フェーベでの戦はほぼ完勝であったが、空戦がないわけではなかった。人類史上最大規模の空中戦のタイトルホルダーである。航空戦力が主役として働いた戦では、ガミラス帝国含めても例がないほどの数である。

「フェーベ航空決戦、ですか」

「敵味方が数千以上入り交じり、こちらが空母の甲板攻撃と艦砲射撃でジリジリ減らす根気のいる戦だったがね」

「でも、ボトルザー艦隊との戦が最大と聞きましたよ?」

「味方がほとんどいないので、戦略局が戦に数えられんと屁理屈こねているんだよ」

「戦国時代より戦力差ありますしね」

「蛮族がレギオンを有するローマを制圧するより難しい難行だったよ」

フェーベ航空決戦は一応、戦力比がまともな戦では最大規模になるが、実際はボトルザー艦隊との戦が最大規模にあたる。これについてだが、ガミラスはいずれの場合も強力な空母機動部隊をすぐに用意できるため、地球連邦の万能艦傾向には苦言を呈している。ガミラス帝国はどちらもアンドロイドで人員不足を補っているが、ガルマン・ガミラスでは豊富な人的資源を手に入れた影響か、アンドロイドは減ったという。

「こちらも人的資源は限られているから、アンドロメダのような自動制御は仕方ないとは思ってはいたが、あれは行き過ぎだよ」

「ああ、あの」

「あれではただの戦闘マシーンであって、戦艦では無かった。土方提督ほどの大物がむざむざあのようなマシーンの犠牲になるとは…」

アンドロメダはアースでは、『ハードはヤマト以上だが、力に頼るものは力によって滅ぼされる』という結果に終わった悲運の戦艦である。真田は土方竜ほどの逸材をむざむざ死なせた点でも、アンドロメダのモビルドールに近いとさえ言われし自動制御に不満をぶちまけた。しかし、ハードの活用さえできていれば、ガイアが模倣したほどの設計であるのは確かである。また、アースのアンドロメダは51cm砲と大艦巨砲主義なので、ガイアのアンドロメダがなぜ小口径なのかが議論されている。アンドロメダの設計目的が違うのも関係しているが、主砲の整備性を重視したとも、防御力に割り切った分、アースのような大口径砲を切り捨てたとも。アースは基本的に大艦巨砲主義を地で行くため、アンドロメダ級は51cmショックカノンである。ガイアはドレッドノート共々、防御力と速射性を上げるため、アース側のような大口径砲は切り捨てている。

「真田さんはアンドロメダが嫌いで?」

「美しい艦ではあるが、血が通っていないメカニズムの感じがしてな。ガイアはそこまでにはしていないようだが…」

「ヤマトと同じ技術なんですよね」

「どちらもね。アースでは超ヤマトを目指したから、51cm砲にした。今ではアドバンテージをヤマトが帳消しにしたが」

「超ヤマト?」

「アースではアメリカ系の設計陣が関わっていてね。それでアンドロメダという名にしたそうだ。縁起が悪いと私は反対したがね」

「あれ、アメリカ産なんですか?」

「大まかにはね。しゅんらんという名が考えられていたから、中国系アメリカ人がいたと思う」

アンドロメダは当初はしゅんらんと名付けられる予定だったが、参謀長のゴリ押しでアンドロメダになったという。案の定な最期を遂げ、名を受け継ぐ者たちもこれから不幸に見舞われていくのもあり、いつしか止め名になってしまう。そのしゅんらんの名を受け継いだ二番艦かつ『改アンドロメダ級』は活躍しているので、アンドロメダは基本的に縁起が悪い名となり、青函連絡船の不幸な船たちにも例えられるとされていく。もっとも、アンドロメダは一説によれば、神話でエチオピア王女であったので、そこから取ったという。大きな戦功と大きな悲劇とを引き寄せる名前とされた事、一般的にはギリシア神話の悲劇を連想させた不幸で、やがて止め名にされた。しかし、人名であったのが女神の名と解釈され、戦後完成の准同型艦は多くが女神の名となった。ただし、パーツ取りに戦後、使用されたアンドロメダの予備艦はカシオペアであり、規則性は薄かったのである。(後付で理由付けはされたが、当初は星座名が意図されていた)ガイアでは、その逸話を知った故か、Aで始まる名前という事にしている。イスカンダル(サンザー・イスカンダル)救援時には、ガイアではアンドロメダが50パーセント、その他が30パーセントの工事率である。サレザー・イスカンダルから帰還の途上というガイア・ヤマトのクルーはこの技術解決の取引を批判するものもいた。しかし、波動砲が途中でアースの技術のものに差し替えられることや、アースとの規格統一を大義名分にして彼らは反論できなくなる。ガイアの得た次元波動エンジンとタキオン波動エンジンは似て非なるものだからだ。タキオン波動エンジンは基本的に、波動コアを必要とせず、必要なエネルギーさえ賄えるのなら、スターターは補助エンジンでいい。(ただし、大都市十個分のエネルギーがスタートにいるが)次元波動エンジンはコアが必要であるなど、スペックはともかくも量産の点で難がある。その点もあり、タキオン波動エンジンは魅力的な技術だ。(アンドロメダ世代からは必要エネルギー量が少ないようになってはいるし、スーパーチャージャーの研究が進んでいる)タキオン波動エンジンの難点は起動用電力の膨大さであり、アースでは旧式のマゼランやサラミス用の融合炉を軍港に用意し、エネルギー供給源にしている。これは後にヤマトに最初に積まれた旧型波動エンジンとそのコピーが稼働状態でパワーユニットとして使用されていく。





――Gウィッチは基本的に人から神や英霊に登り詰めた者達であるが故に、妬みや敵対意識を持たれ、上層部の思惑と裏腹に、激しい抗争に巻き込まれていた。特に扶桑のレイブンズは智子の引退式典までしたはずが、往年の神通力の健在が示されてしまったのだから、さあ大変。当時の人事部や記録部と上官に責任を被せる作業は性急なまでに行われた。江藤には当初、すべての責任を彼女に被せるつもりであったが、俊英とされる源田実が庇っていたから、天皇陛下も納得し、更に本人のG化でどうにか厳罰を免れた。レイブンズが准将に特進し、皇室の覚えめでたいのは、事変での活躍ぶりに起因するが、その活躍を知らぬ代が主力世代になっていた不幸が抗争を招いた。また、『自分達より弱いやつにマウント取ってる』などの詭弁に近い反発も受けており、その反発の原因は扶桑のプロパガンダのミスとモントゴメリーにあるため、モンティはアフリカ失陥の責任を取る形という事で降格処分に遭い、ウィッチの理解者と知られた東條の軍からの事実上の追放をなされる。東條は敵対者にはサドの権化、集団発狂組合事務総長と揶揄されるほど苛烈(それが後世では諸悪の権化と取られた)な面がある一方で、ウィッチには慈父の面を見せていた。意外に多くに慕われており、東條お抱えのウィッチの多くは軍を去ったり、東條に付き従い、銀河連邦警察に転職していった。同時期に反戦運動の活発化、徴兵の是非などの問題が噴出したため、黒江達に特権を与えて、勤務態度などを問わない代わりに『一騎当千してこい』となったのだ。実際、黒江達も後輩から『自分を安心させるために、マウントを取って優越感を得るために、のび太とつるんでいる』などの誹謗中傷が激しく、黒江も流石に落ち込むほどだった。圭子が猫かぶりをやめたのも、この誹謗中傷に激怒したからだ。黒江は経緯の関係上、誹謗中傷には意外に弱く、青年のび太が慰め役に回るのもしばしばであった。圭子は中でも、『友人・家族ごっこの様な関係ではないのか?あんな取るに足らん小僧とつるむなど、精神安定剤に利用しているだけだろ』という中傷に激怒し、ソードカトラスを構えて、本土のウィッチ部隊に片っ端から殴り込みを敢行した。その時の激怒ぶりはそれを目撃した若手ウィッチが『部隊の古参がガタガタ震えて必死に命乞いしてた』と証言するほどであった。ある古参は顔から出るもの全てを出し、『ごめんなさい』を壊れたおもちゃのように連呼する有様であり、それを止めに入るのが青年のび太であり、ショックガンを最大パワーで撃って止めるのがお約束の展開だった。小園大佐はその部隊に『馬鹿者が!扶桑陸軍の狂気と謳われた加東の堪忍袋の緒を誰が切れさせた!』と叱責を加えたという。黒江の精神状態が歪なことは圭子が一番知っており、それもあって殴り込んだのである。この行動が軍に『扶桑陸軍の狂気は健在』と圭子の素がガンクレイジーと認識されるのには充分な効果であった。その抑止力として期待されたのが青年のび太なのだ。青年と言っても、28歳前後であるが、その頃がのび太の絶頂期に当たる。のび太は青年期に能力を努力で引き上げたので、老齢になってくると身体の老いによる衰えが表れやすい。のび太の最大の武器は優しさであり、それを惜しむ運命の神は元から身体能力が絶頂期ののび太に匹敵する子孫にのび太を転生させるようにしたのだろう――





――西暦2010年代――

2010年代、青年期を迎えたのび太は御坂美琴が常盤台中学の二年になるタイミングで接触した。グンドュラ・ラルとの感応の名残りでG化した可能性があるからである。折しも当時は上条当麻が一方通行をノックアウトしてから間もない頃にあたり、時期的にG化が起こったと推測されたからだ。


「久しぶりですね、美琴さん」

「なんか転生ってのは妙な感じよ、のび太君。あたしの目の前にいるあなたは大人でしょ?」

「カミさん捕まえて、倅もいますよ」

「嘘ぉ!?」

「だって、今は2010年代でしょ。昭和の終わりに生まれた僕は成人してますし、大学も出てますよ」

「なんでスーツ姿なの」

「こう見えても『環境省自然環境局総務課調査員』なんですよ。名目上でも、ね」」

「ラルの記憶もあるし、なんだか変な感じ。覚醒がもっと早く起こってほしかったけど、悔やんでもしゃーないか」

「一方通行がちょうど、ツンデレにクラスチェンジした頃ですしね」

「ラストオーダーでしょ?あいつ、意外にロリコンだったのね。あいつから恨まれても仕方がないけど、そもそも小さい頃に善意で提供したモノの悪用で恨まれても理不尽って感じ」

「ラルさんに似てきましたね」

「あの子の記憶がある分、口が回るようになってね。麦野沈利相手にハッタリかまして逃げたこともあるわ」

ラルのハスキーボイスが出せるようになり、自然とラルの軍人然とした態度も取れるため、麦野沈利との交戦をそれで乗り切ったと明言する美琴。ラルは煽るような口ぶりを多用して上層部と折衝するのだが、その記憶を応用して、麦野の自滅を誘ったという。

「大変ですね」

「声がシャーリーだから、吹き出しちゃって大変だったわよ。あいつには『ナニ笑ってんだテメェ!!』って切れられた。まー、こっちも『高校生くらいにしては、こんな中坊に煽られるとはな』って返してやった。見せたかったくらいに決まって…」

「どうしたんです?」

「いや、ね。大人相手に君付けはまずいかなって思って。ウチの学校、校則厳しいし…」

「昔のよしみですし、それに某芸能事務所の先輩後輩関係みたいなもんですって。いざとなれば僕が寮監を言いくるめますから。それに、昔からの敬称って事で誤魔化せば大丈夫、僕が学生だった頃からの知り合いって事で通りますよ」

「あ、ありがとう」

「お安い御用ですって」

「いつもなら、この辺で黒子が出てくるはずなんだけど…」

「ああ、黒子さんは僕が面倒を見てる子が説明に当たってます。常盤台中学に潜り込ませてあります」

「ああ、メールにあったあの子」

「ええ。僕を慕って、別の世界からわざわざ来た子でして。本人の希望もあって、家政婦やらせてます」

調は外見が14歳前後と幼いのもあり、のび太の命で常盤台中学に潜り込んでいた。表向きはレベル4程度の電気系能力者として。

「よく出来たわね?」

「美琴さんのパパさんに推薦状を書いてもらいました」

「え、ウチのパパに!?つか、知り合い!?」

「仕事の関係で、メル友でして」

「嘘ぉ!?世界ってせまいわー…」

「いいじゃないですか。上条さんの辿る可能性に立ち会える可能性が増えて」

「あいつを遠く感じた事多かったから、転生には感謝してるわ」

「ああ、言っときますけど、その子、宝具持ちなんで、神の右席と戦えますよ」

「十字教が聞いたら泡吹くわよ」

魔術関連の知識はのび太とラルから授かったため、普通に神の右席という単語の意味を知る御坂美琴。

「聖剣持ちの子なんで、多分、下手したら十字教のあそこ以外は逃げ出すかも」

「ああ、イスカリオテ」

「あの連中が来たら、それこそ、ここが血で血を洗う闘争の場になって、アレイスター・クロウリーが部屋の隅でガタガタ震えかねないですよ」

イスカリオテ。十字教最後の切り札であり、異端殲滅のエキスパート、もといキ○ガイしかいない最強の戦力である。その威力は聖人すら戦慄するほどで、アンデルセン神父に至っては自己再生能力、明らかにオカシイ身体能力など、ネジが外れている。修羅場を見慣れたのび太がそう形容するあたり、その凄さがわかる。

「あの連中、ネジ外れてるのばっかじゃない。学園都市の暗部が幼稚園に見えるくらいの異端殲滅キ○ガイの巣窟」

「アンデルセン神父一人で、多分、ヘタなレベル5は事足りるでしょうね。あの最強のアンデッドのライバルですよ?」

「おまけに地下じゃ、今でも、ナチスの敗残兵達が牙を研いでると来てる。オカルト雑誌が好みそうな題材ね」

「まったくですよ。マルティン・ボルマンを囮にして、ジュドは殆どを地下に潜らせている。その中でも一番狂った集団の首魁がこいつです」

「写真の日付は44年頃ね。武装SSの若い太っちょメガネの少佐?」

「一説には、本名、モンティナ・マックス。1910年代末か20年代始めの生まれで、ヒトラーに信頼されていたSSの青年将校です」

ナチスの敗残兵の中でも、特に行動原理が不明であるその集団。その首魁となる親衛隊の元・少佐の写真を見せるのび太。美琴も何気ない動作が軍人のそれになっており、ラルの影響が出ているのがわかる。『少佐』と呼ばれる彼を初めて知る美琴。太っちょのこのSS少佐がナチスで一、二番に『狂っている』ことなど、この時はまだ知る由もない。しかし、学園都市の喫茶店の外席で話すには過激な内容であった。



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