-宇宙戦艦ヤマトがイスカンダルで戦っている頃、バルクホルンはシャーリーからの電報にソワソワしていた。
何せ妹同然に思っている芳佳が、果てしない深宇宙で戦いに身を投じているのだ。
心配しないはずが無かった。

「だ、だああああ――っ!!リベリアンめ、宮藤を怪我でもさせたら……」

「ああ〜こりゃひどい、重症だ」

「何を!?ハルトマン!!」

「ミヤフジが宇宙にいるくらいでガタつかないでよ……あたし達これからミッドチルダに行くんだよ?」

「それはわかっている!!だが……」

バルクホルンには普段の模範的軍人として振舞おうとする姿はもはや無い。ここにいるのは単なる姉バカな少女である。彼女らはミッドチルダ派遣が言い渡され、第44戦闘団として友邦の危機を救うために赴くのだが、その主要装備は2201年で実用段階に達した「Ta183」のU5タイプ(エンジンなどの強化によりペイロードを強化した型)である。史実ではMe262で失敗を犯したバルクホルンであるが、未来世界でのVFなどの研究により欠点は改善されたので、安全ではある。

「だが……」

「だが?」

「まさか同胞に銃を向けるとはな……嫌な事になったものだ」


「しょうがないよ、アイツらはカールスラントじゃなくって、`ドイツ`だもの。割り切るしかないよ」

「割り切れるものか、遺伝子学的には同じ民族であるのには変わりないんだぞ……っ」

バルクホルンには遺伝子学には同胞であるといえるナチス残党らと戦うことに躊躇いを感じていることを吐露する。ハルトマンはドイツとカールスラントは別の国であると割りきって戦うつもりだが、バルクホルン同様に心にどこかつっかえがあるのには変わらない。しかしこうしている間にもミッドチルダでも戦いは激化していた。








―ミッドチルダ 


「撃てっ!」

ナチス残党のカイザー級戦艦「プリンツレゲント・ルイトポルト」は換装・強化した主砲たる、ビスマルク同様のSK C/34 38cm(52口径)砲を轟かせる。標的は扶桑の「伊勢型戦艦」。その2番艦「日向」だ。互いに護衛艦を少数引き連れての偵察行動中の出くわしであるが、機先はナチス残党側が制した。主砲の36520mの最大射程は伊勢型戦艦の射程を上回っており、ドイツ一流の光学技術(WWU当時)の効果も相まって、日向はまさかのアウトレンジ攻撃を食らっていた。

「ちぃっ、元は一時大戦中の弩級戦艦のくせに……」

日向艦長の「野村留吉」大佐はカイザー級の出自は第二帝政時の弩級戦艦であることを指して、こう詰った。だが、より後に建造されたはずの超弩級戦艦たる「日向」が逆に翻弄されるという事実がここにある。既に水柱が何本も立ち、将兵の心胆を寒からしめている。ビスマルク級の主砲を積んだのなら、その破壊力は確実に日向の防御力を超えるからだ。斉射を乙字航行で耐えきると、ようやく日向の主砲の有効射程に到達し、彼は撃ち方初めを下令する。そしてその主砲が吠える。元々、弩級戦艦であるカイザー級では超弩級戦艦の砲撃にはそうは耐えられないことは計算済みだ。如何にドイツ一流の防御力でも一時大戦型では限界があるのを彼は知っていた。


「撃て!ドイツに我が海軍の心意気を見せてやれ!!」

日向は35cm砲を唸らせ、応戦した。第一次世界大戦を想起させる砲撃戦が繰り広げられる。だが、百戦錬磨であるナチス残党は日向を翻弄し、痛めつけていった。次第に互いの建造年次の違いは、様々な世界から得られたドイツの科学力の前に覆されていった。


轟音と共に日向の船体が大きく揺れ、後部に大火災を起こす。野村大佐は被害報告を急がせるが、その報告は自艦が押されているのを妙実に示す事実だった。

「か、艦長!第6、第6主砲塔が……ぶっ飛びました!」

「一撃で、一撃で破壊されただと!?これがドイツ一流の科学力というのか!?こちらに命中弾は!?」

「ありません!!」

「ええい、情けない!!火薬庫の注水急げ!!」

「ハッ!」

38cm砲弾の一発が305mmの伊勢型の主砲前盾に飛び込み、防御を貫き、見事粉砕したのだ。そのために主砲塔があった場所には無残な大穴が開いている。そして更に護衛艦らの集中砲撃でマストも倒壊するという見るも無残な醜態を晒していた。中〜後部に損害を受けた日向は機関が健在なうちに戦線離脱を決意するが、敵護衛空母「エウロパ」から発進した急降下爆撃機隊の追撃を受けてしまう。

「電探室より`敵編隊、接近`との報告が!!」

「いかん!!手負いの我が艦では太刀打ち出来ん、僚艦に本艦を護衛させろ!!」

野村大佐は損害を受けた日向では対空戦闘が覚束ない事を懸念し、僚艦(秋月型駆逐艦)に護衛させる。だが、ナチス残党航空隊は旧型のJu87を艦載用に手直しした急ごしらえの部隊であったもの、練度は東部戦線などで鳴らした猛者が多かったため、ピカ一であり、護衛艦には目もくれずに日向に狙いを絞った。






「な、なんだこの音は」
「あれを見ろ!!、ジ、ジェリコのラッパだ!!」

日向の対空戦闘担当兵などを畏れさせるこの音こそ戦史にその存在を刻み、ドイツ電撃戦の立役者とも言われたある爆撃機の発する金切り音。彼等はこの音がもたらすものが何かを知っていた。だからこそ恐れた。
が写っていた。機関砲は不思議と当たらない。
まるで弾が避けているかのように。「ワルキューレ」が宿ったかのように突入してくる爆撃機に彼らは恐怖した。










――歴史に名を刻んだ名機の叫びが轟き、蘇ったハーケンクロイツが日に映える。

「Intrusion Winkel, gut, Drop-Vorbereitung, Fertigstellung(侵入角度、良好、投下準備、完了)」

「Obwohl ich die Macht der Stuka zu realisieren ……meine erste japanische Schlachtschiff, Tropfen! !」
(日本戦艦め......我がスツーカの威力を思い知るがいい、投下!!)

スーツカは急降下で爆弾を日向に投下しまくる。爆弾は熟練者達の妙技もあって、命中率は70%を数えた。(この数字は黄金期の大日本帝国海軍航空隊の熟練者達の命中率に近い)日向は旧型の伊勢型であった都合上、対空火器は旧型の九六式二十五粍高角機銃のまま(扶桑皇国は制式対空火器をボフォース相当の`ボヨールド`40mm機関砲に更新中)のままなど、この戦艦の価値の低さを表していた。Ju87は旧型とはいえ、防弾装備は初期よりは増強されている急降下爆撃機としての最終型であった事、九六式二十五粍高角機銃の威力不足(銃弾そのものは貫通したが)により、
撃墜には至らず、日向は5番主砲塔にも損害を受け、ますますの大損害を受けてしまった。

「ドイツが急降下爆撃狂なのが功を奏したか……」

ドイツ軍は急降下爆撃機大好きで、雷撃機を有していない。それが日向には幸いした。
「船は爆撃には耐えられる場合が多い(史実のティルピッツのように巨大爆弾を食らわない限りは)が、雷撃では絶対に沈む」という不文律がある。それは大和型でさえも例外でない。

「煙幕を炊け!少しは役に立つ、なんとか帰還するんだ!」

野村大佐は機関が無事なので、なんとか帰還させようと操艦する。
奇跡的に前塔楼含む前部は無事であったが、前部だけで全砲塔が無事なカイザー級相手に渡り合えるほど、世の中甘くはない。それを彼はよく認識していた。
そして、ナチス第二攻撃隊が飛来し、更に爆弾を落としていく。

至近に落下した爆弾の爆発で日向は船体を傾かせる。一時は連合艦隊旗艦の栄光を担った艦は哀れな姿を晒す。だが、この一戦が日向の運命を大きく変えることとなるのは言うまでもなく。そして、そんな日向を救うべく、一人の魔法少女(戸籍上の年齢的に微妙だが)が空を駆けぬける。

「お願い、間に合って……っ!」

なのはだった。この時にはバリアジャケットを更に変更しており、第一印象としてはフェイトやスバルのものに近い、動きやすさを重視したデザインにしていた。(スバルらのBJの構成が元々はなのは達のものを参考にしている事を考えると、痛快である)これはスバルが子供なのはに与えてしまった影響、智子や黒江達の影響も入っていた。相棒のレイジングハート・エクセリオンは健在であるが、デフォルト形態がが剣であるのが、“昔”との最大の違いであった。更に`改変前の歴史と違い、なのはには最盛期の魔力が健在であるので、その点を考えると対応能力は改変前を若干ながら上回っている。そしてバリアジャケット展開状態の髪形を普段同様のポニーテールにしているのが外見上の見分けやすい違いであった。(これはルーデルが「20歳超えだとツインテールは痛いぞ……」と以前に指摘していた為)

ここから管理局のカノーネンフォーゲル(大砲鳥)の伝説が今、始まる。そしてその無事の帰還を祈るスバルの姿があった。


「なのはさん……連合艦隊は頼みます。陸戦はあたしとライダーの皆さんでどうにかしますから。本当はあたし達が変えたなのはさんの戦いぶりを見たかったけど」

「スバル、遅れんなよ。行くぞ!」

「はいっ!」





スバルは改変前の歴史から変わったなのはの戦いぶりを一度活目してみたいという気持ちを滲ませた。そして彼女も仮面ライダーストロンガー率いる数人の歴代仮面ライダーと共に歩兵部隊の十字砲火に突撃を敢行していった……。ミッドチルダを守るために



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.