――連邦のMS開発は民間の抵抗運動の産物でもあったV2ガンダムや、アナザーガンダムで頂点に達しつつあったため、それらを組み合わせての改良でしばらく凌いでいた。そして、それらの技術はストライカーやISなどの分野へスピンオフされており、ハルトマンが早期にジェットに鞍替えしたのは、それら装備を扱うためでもあった。ミッド動乱中からテストはされており、ハルトマンはそれらを従来のストライカーで扱ってみたが、ビーム兵器は扱えるが、ストライカーが反動を吸収しきれないので、自分でも工夫しないとならない、実弾兵器は『撃っただけで進路が変わる』ものもあり、結果、レシプロストライカーでは従来の延長線上の火器しか扱えないという結論に至ったのも、ジェットへの機種転換を決意する理由だった。



――隊舎

「最近、ミーナがなんかピリピリしててさ。息がつまるよ」

「そりゃまた、なんで?」

「ほら、連邦軍から続々と新兵器が貸与されてんじゃん?MSとかのスピンオフでさ。運用経費とかを考えてる内に、いらつくみたい。前はあんなんじゃ無かったんだけどな。少佐達の世代に対抗心もあるみたいだし。まぁ、坂本少佐ほどは思い詰めてないけど」

「今の古参にはよくあるんだが、私達世代に頼らないように考える傾向があるのよ。どんな感じだ?」

「実は――」

穏やかな人柄で知られるミーナも、状況の変化に対応しきれず、その人格に綻びを見せ始めていた。上層部が始めていた『リウィッチ作戦』への反感、連邦軍が次々と貸与する新兵器の運用経費(連邦軍持ちだったが、それでも自前で運用した場合を計算してしまう)、の高さなどの心労も重なり、以前より苛つきを見せる事も多くなり、ハルトマンは気を使い過ぎで、息がつまるような思いがした。そのため、ミッド動乱のある時期からは、64戦隊の隊舎に入り浸る様になり、圭子にその思いを告白していた。

「昔のトゥルーデよりは楽だよ?ミーナは性格的に穏やかだしね。だけどさ、坂本少佐のことになると、イライラするんだよね、特に」

「いや、それは恋だな。GLね、GL」

「うわぁ〜……本当?GLだったのか、ミーナ」

普通に、後世の同人界隈などで使われる用語を言い合う二人。ハルトマンも野比家に行き、20世紀終期〜21世紀初頭の暮らしを体験しているし、23世紀にも行った事があるので、通じるのだ。

「ほら、前にお前から聞いた、え〜と、クルト整備師の事がきっかけで、別方向に恋愛感情のベクトルが行ったんじゃないか?」

「うへぇ……。ああいう手合のって苦手でさ。纏める側に戻ったトゥルーデか、宮藤に投げた方が良さそうなんで、逃げてきたんだけどさ。宮藤はいないんだった……」

「だなぁ。それに、この戦の相手は、お前らにとっては同胞だろ?それも苛つきの原因じゃ?」

「あるなぁ。トゥルーデにしても、同じドイツ人の連中に銃を向けるのに葛藤あるみたいだし」

「東西冷戦の時代には、東西で銃を向けあった歴史がある連中と、連邦にとっては、そんなのどうという事ないだろ?だけど、お前達に取っては、同胞同士で殺し合いした経験は無きに等しい。そこが今回の戦の盲点なんだよな」

圭子が指摘した、最近、一部を除いたカールスラント側の士気がいまいちである原因。それは『カールスラント人同士で殺し合っていいのか?』という葛藤であった。ミッドチルダでの戦いで、カールスラント軍の戦果がいまいちであるのに疑問を抱いた、現場責任者でもあるガランドは圭子に、『第三者からの調査』を依頼した。エーリカの告白で、全てを悟った圭子。

「こりゃ、カールスラント軍は攻勢にはカウントできないな……」

「その方がいいよ。ミーナ、あたしが敵機の殲滅を具申したら、『その必要はないわ』って返されて、仕方なく帰ったことあるし、ガランドも困ってたよ」

ガランドに取って、バダンは義理の娘と孫の故郷を蹂躙した不倶戴天の敵であり、強い意志で以て、『生かして返すな!』と指令するほどに怒りを見せている。だが、ミーナは、ガランドの指令に全て服従はしない姿勢を見せ、ハルトマンに追撃を切り上げさせた事も見受けられるようになった。そのため、ガランドは自らの後継候補から彼女を外す事を考え始めていた。ハルトマンがフォローに回り、ガランドをなだめているが、ミーナはこの時の消極的とも取れる姿勢により、ガランドとの関係に不協和音が生じていく。そして、その代わりに、ガランドの中で、グンドゥラ・ラルが急速に後継候補に上がってゆく。ラルが次期空軍総監に指名されるのは、数年後、ガランドの退役の電撃発表の場においての事であるが、その場に居合わせたラル自身もみっともないほど狼狽え、『な、何故、自分なのですか!?』と、思わず聞いてしまったという。

「あの様子じゃ、相当お冠だよ。ガランドの家族の故郷だからね。ここは」

「エーリカ、あれあれ!」

「あれま……珍しいな。スバルと買い物に行くんだな、ガランド」

二人は、スバル・ナカジマ(ガランドに取っては、血の繋がりのない孫娘)にせがまれ、時空管理局の領域にある、第二の都市に買い物に行くガランドを目撃した。「おばあちゃん」と言われるのも悪くないらしく、『おばあちゃんが何でも買ってやるぞ〜』という声が聞こえた。

「意外に子煩悩なのね、閣下。いや、この場合は孫、か」

「ミーナ、今回のことで相当に腹に据えかねてるけど、あれを見せてやりたいよ。あれのどこが冷酷だっての」

ハルトマンはミッド動乱を期に、ミーナの暴発性に気づいたようで、見え隠れする深層心理に呆れている様子すら伺える。そのため、スリーレイブンズで言う、圭子のポジションになりつつあった。


「トゥルーデは妹バカ、ミーナは判断が甘いと来てる。少佐の苦労が分かったよ……ハンナを抱えてるし」

「よくぞ言った!!さ、私の部屋で飲もうぜ。話したい事あるし」

「分かってると思うけど、あたしは未成年だよ」

「コーラを用意してあるから。黒江ちゃんと邦佳がガボガボ飲むから、最近は箱買いしてるのよ……?ちょっと待て。そっちじゃ飲めるはずだぞ、マルセイユ、アフリカでバカみたいにガボガボ……」」

「そ〜なんだけどね。ノビタのママがうるさくてさ。ノビタがとばっちり受けた事あったんだ」

「あのオバさん、うるさいからな〜」

圭子も思わず苦笑した。のび太の母の玉子は、日本の物差しで外人相手にも接するため、のび助が買っておいたビールを、マルセイユやハルトマンが飲んだのを見て、のび太を叱った事がある。その場はドラミが諌めたことで収まったが、一時間もお説教され、『お酒は20からって…』と叱られるのび太に気まずい思いをしたと、マルセイユが話した事がある。ドラミが『ドイツでは、保護者同伴で飲めますよ。それにビールはドイツだと酒扱いじゃありませんから』と諌めてくれた事で収まった。玉子も一時間も怒った手前、引っ込みがつかなかったので、ドラミが二人に『日本に来たら、日本のルールを守ってくださいね』と注意してくれた。以後、マルセイユは野比家では酒を控えている。


「まぁ、でも、マルセイユも自制覚えてくれたし、イーブンだな」

「あ、圭子。それにエーリカ」

「どうしたの、智子」

「ドイツの新鋭戦艦がドックで目撃されたわ」

「フリードリヒ・デア・グロッセはあるし、グロースドイッチュラントもあるでしょ?」

「ヒンデンブルグだって」

「ヒンデンブルグぅ?随分と縁起悪い名前をつけたもんだ」

H42級戦艦の三番艦『ヒンデンブルグ』。正確には、その改良型の『H43』級に分類される大戦艦であり、砲威力、防御力共に大和型に優越している。これは三笠型以外の戦艦では単艦での対処が難しくなる意味でもあり、大和型の波動カートリッジ弾の増量などで急場をしのぐ一方、56cm砲搭載の自国産戦艦の建造を検討するに至る。この案は廃案になり、既存艦の速射砲化の徹底と、6番艦以降を第二世代型と位置づけ、51cm速射砲(連装)搭載設計で建艦を依頼する。そのテストのため、武蔵は航空戦艦への改装への前の段階として、51cm砲に換装され、砲が連装になっていた時期がある。そこで得られたデータをもとに、姿は同じだが、中身を更に根本的に見直した、俗に言う『超大和型』は、この時の危惧から実現するのだ。

「でも、こっちは大慌てよ。単艦で遭遇したら撃ち負けるし」

「超大和の生産が始まるのも時間の問題かも」

「井上さんがなんか言わない?」

「流石に、これだけ戦艦がポンポン出れば、あの人も文句は言わないでしょう。国民が黙ってないし」

「ガンダムファイトならぬ、ヤマトファイトだしね、海は」

「それに、今頃、エアランド・バトルやらや航空支配論の研究に明け暮れてるだろうから、今回は通るでしょう。ご機嫌取りに空母も造成するから」

「航空戦力はサーフェス(地上や海上)と連動しなければ単独では意味がない事を学んでる最中だって言うし、今回は邪魔しないでしょう。あの人は優れた学者であるけど、戦下手だし」

井上成美は、現場から『学者』と言われるほどの理論派であった。だが、軍人本来の能力には疑問符がつくので、現場よりも後方で働くほうが向いている提督であった。そのため、山本五十六も『井上には軍政で働いてもらった方がいい』と、この頃に発言しており、その通りに、1947年に山本五十六の要請で、空軍に移籍し、その組織作りに邁進するのだった。



――そのヒンデンブルグ号は初陣で、亡命リベリオン軍のアイオワ級戦艦を寄せ付けず、撤退に追い込み、同級のSHSにすら耐える重装甲を示した。艦容はグロースドイッチュラントの拡大強化型というべきもので、その写真を撮影したのが、後のリベリオン大統領である『ジョージ・H・W・ブッシュ』中尉(当時、21歳)である。

――後日 扶桑皇国 艦政本部

「ヒンデンブルグ号の脅威はモンタナ以上である。早急に超大和の量産を決議すべきである。ジョージ・H・W・ブッシュ中尉から送られてきたこの写真を見給え」

「おお……なんて大戦艦だ」

艦政本部では、三笠型を得た事で、計画がストップしていた『マル6軍備補完計画』の再開について議論されており、その中にあった『改大和型』の建造枠を『超大和型』に変更するかどうかが議論されていた。

「主砲は、連邦軍から提供された強制冷却ジャケットを使っての51cm砲を12門、艦容は概ね改大和型に準じつつ、電子機器の大容量化の実現、防御力の向上のため、複合装甲と致します。各々方のご意見は?」

「三笠型と同規格の56インチではダメなのか?」

「あれでは、どんなに小型化しても、400mなければ転覆してしまいますし、今度は入港できる港が思い切り限られてしまいます。なので、火砲はある程度の妥協をせざるを得ません」

「そうか。して、どこで建造を?」

「大神を拡張しております。そこで一番艦を、横須賀で二番、南洋で三番を建艦致します」

「空母建艦と同時にか?」

「しかし、両方を同時進行させるのは非現実的ですし、ましてや、万単位の動員など不可能です。そこで、改大和型の三番、つまり大和型5番艦が完成次第、それらを建艦。空母が優先されるので、完成は早くて、1949年の8月でしょう」

「この戦線には間に合わんね」

「仕方がありません。既存艦は強制冷却ジャケットの装着で急場をしのぐしかありません。波動カートリッジ弾の配備も進めましょう」

ミッド動乱の脅威で提案された新戦艦は『ミッド動乱』というよりは『太平洋戦争』で出現するとされる『改モンタナ級』への対策へシフトしていく。新戦艦の主砲のテスト艦には、修理中の武蔵が選定され、51cm砲に積み替えられる。同時に大和型の問題点を洗い出す『雷調査団』が組織され、以後の新戦艦に大きな影響を残すのであった。



――ミッド動乱で戦う64Fと343空。統合運用開始後は同じ隊舎となり、343空側が移動してくることになり、両者は完全に機動六課と同じ隊舎に移動した。そのため、なのは達との連携が円滑になり、機動六課が確保した格納庫に、機動兵器が増える事となった。


「なのは、良かったじゃない。予算増えて、Sガンを買ってもらって。免許はいつ?」

「昔のF-22と同じくらいの値段に値下がってのバーゲンなんですけどね。今度に合宿で。でも、その日がのび太君達が誘ってくれた、ドラえもん君の誕生日会にもろにかぶっちゃって……」

「ご愁傷様。まぁ、その次の年に参加しなさいな」

「うぅ、こんな事なら、次の回にすればよかったよぉ〜……あ〜ん、あたしのバカバカバカぁ〜!!」

と、やたらしょげるなのは。野比家の誕生日に参加してみたかったのが分かる。

「んじゃ、ZZはあたしも使わせてもらうわよ」

「ケイさん、ZZ動かせます?」

「あのなぁ。ドラゴン乗ってるんだぞ、ドラゴン!!それに比べりゃ、ZZなんぞお茶の子さいさいだ!」

スーパーロボットに慣れている場合、リアルロボットの操縦は相対的に簡単なぐらいの難度になる。圭子はスーパーロボットとリアルロボットを渡り歩くため、64F内では『両刀使い』と評される。

「そうでした。綾香さんはV2ガンダムを欲しがってましたよ?」

「Zプルトニウスとの二択だって、武子に言われて、相当に迷ってるわね。行く前、『光の翼は捨てがたいけど、15m級だしなぁ』って言ってた」

「V2はアサルトバスターのオプション込みだけど、重量が軽いから、質量を武器にしてる綾香さんにしてみれば、ネックなんでしょうね」

「どうするんでしょうね」

「さあ。あの子、ガチで格闘戦派だし、V2は諦めるかも」

この頃、黒江はV2ガンダムを機動性の側面から評価し、欲していたが、Zの新型『プルトニウス』が頑丈さを売りに出現し、カタログを片手に唸っていた。フェイトにくっついていく日も『あ〜〜、究極の選択だぁ〜!』と悩んでいた。結局、黒江は帰還後、ジュドーのツテでV2のパイロット『ウッソ・エヴィン』へ連絡を取り、V2について聞いてみた。すると、ウッソは『V2はパワーに比べて機体が軽いから、格闘には向かないんですよ、あまり。プルトニウスのほうが格闘戦が主な戦法のあなたに向いてますよ』と助言し、プルトニウスを選択、後日、搬入される事になる。




――当時、空軍設立が秒読み段階に入っていた扶桑では、武子や江藤などの大物達が撃墜王制度に賛成した事もあり、空軍設立の主体は飛行戦隊、その拡充という形になる事が確定し、その前段階の一環として、武子が提案していた、343空との統合運用が承認された。首脳陣は64F側の幹部が占める事になったが、これに現場から文句は無かった。双方の人事交流は既に盛んであり、同じ部隊という意識が既にあり、源田もそのように準備をしていたからだ。この混成航空団は『第一航空団』と呼ばれ、後の空軍64戦隊にそのまま引き継がれ、母体となる。

「直枝、なのはたちが体験した事が気になっているの?」

「おう。あいつらにあったんなら、この俺にもないわけじゃないしな、武子さん」

「それが起こったとして、あなたはどうせ喧嘩売ったりするんでしょう?芳佳がそう言ってたわよ、電話で」

「ぐ、ぐぬぬぬ!あいつめ!俺を何だと……」

菅野は、この時、バディとなっていた芳佳が不在の状態であった。トレヴァー・マロニーが一度、501を解散させ、芳佳は命令違反を咎められ、一度、予備役編入がなされた。それがガランドに取り消され、更に天皇陛下が功を労い、予備役編入に難色を示した事で、即座に撤回。書類上は現役だが、形式上、復帰が1945年春以降でないと受理されないため、扶桑で勉学に励んでいるのだ。菅野は一見して、この頃から芳佳のことを、バディと扱っているように見えるが、実のところは、芳佳の爆発力を認めている自分と、それまでのパートナーだった松田少尉への思いとの間で葛藤しており、『黒江や智子の言いつけで、芳佳を自分の編隊に入れただけ』とする考えをしていた。だが、芳佳の爆発力に感服しているために、芳佳をバディにしたいという気持ちがないわけでもないという、相反した心理に陥っており、想い悩んでいた。この葛藤はやがて、後に『竹刀事件』と呼ばれる騒動で決着がつくものの、しばらくの間、菅野を悩ますのである。

「まぁまぁ。いいことじゃない。新しいバディが見つかって」

「お、俺は……まだ、あいつをみ、認めたわけじゃないかんな!」

あまり否定しないのは、その心理が働いているからで、武子は「素直じゃないんだからw」と微笑ましく見ており、芳佳もそのように接している。

「背中を任せられる相手が一人しか居ないと苦労するわよww」

「け、ケイさんまで、くっそぉぉ〜!なんだってんだぁああああ!!」

と、赤面しながら執務室のドアを開けて、出ていこうとするが、あまりにも凄い勢いで開けたため、開けたドアが戻ってきてしまい、ガインとぶつかり、伸びてしまう。うわ言で『姉様〜……』と呟き、二人を爆笑させた。菅野は圭子が部屋に運んでいったが、夢うつつの菅野が『姉様〜、おにーちゃん〜』とうわ言を言うので、圭子も黒江の時同様に、『はいはい、ナオちゃんはねむねむしましょうね〜♪』と楽しんで寝かせる。菅野と黒江はその点で似た者同士と言える。菅野の場合は、厳格な両親に反発していた故に、兄弟姉妹に懐いたという微妙な違いがあり、黒江とそのあたりが違う。同族嫌悪にはならず、圭子に言わせれば、二人は添い寝同盟と言うべき関係であるという。そのため、圭子のあだ名の一つに、『保母おケイさん』というのが追加されたという。年齢もスリーレイブンズ最年長である(北郷と江藤の世代の直接の後輩にあたる、1919年生まれ)ため、ブライトやアムロからも『黒江や智子の保護者』と認識されていたりする。

「圭子、あなた。すっかり保母さんが板についたわねw」

「も〜、こっちは大変なんだから。あの子達ったら子供なんだから……」

「時代が時代なら、あなた、いい保母さんになれたわよww」

「冗談!こちとら、ジャーナリストしたいんだぞ!ライダー二号の一文字さんから、取材旅行誘われてるのにぃ!そのためにライカを新調したのに、この動乱だし!!」


圭子は軍に戻ったものの、副業としてジャーナリストを続けている。仕事柄、仮面ライダー2号こと一文字隼人と仲が良く、テクニックを教わったり、本についてアドバイスしてもらったりしていて、部屋の机は原稿だらけだ。その割には、流派東方不敗や空手、御庭番衆式小太刀二刀流などの武術も極めており、スリーレイブンズの武闘派と目されている。保母のような優しさと、戦闘面での狂戦士が同居する存在が彼女だった。


――尖った能力の者を嫌う軍隊で『戦果を示すことで、士気高揚になる』好例となった、第二次大戦世代最初のウィッチであるスリーレイブンズは、時空管理局でのなのは達の例により、プロパガンダ的意味合いで再び脚光を浴びる。これは、リウィッチへの抵抗を薄くさせるためのプロパガンダであった。また、『扶桑海事変の英雄再び』というのも、理にかなっており、かつて疎んじたのにも関わず、プロパガンダに利用するのに最適であるので、利用するという状況が起こっていく――


――ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケは、このミッド動乱で、上官のアドルフィーネ・ガランドと思想的に対立を見せ始める。

『我等と同根と思われてる悪は我等の手で叩かねばならん! 手加減なぞ無用だ!!』

と、義理の子や孫のためもあり、バダンを凶悪な狂信的テロリストと認識しており、殲滅あるのみと指令を出し、苛烈なまでの情け容赦ない攻撃をし、自ら出撃もしているガランド。

『同胞とも言えるなら、何故、改心の機会を与えないのですか!?」

相手を軍人とは言え、人間なら話が通じると思っているミーナ。ガランドの指令に背く事も増え、サボタージュと見られる事も厭わないミーナだが、ガランドに『貴官は犯罪者を庇おうと言うのか?』と冷たく言い放され、ミーナはその段階に至り、ようやく気がついた。バダンは国家正規軍の残党とはいえ、国家が滅亡した後の現在では『武装テロリスト』に等しい事を。自分の不明を必死に詫びたミーナだが、ガランドの信頼を損ねてしまった事の取り返しはつかず、結果として空軍総監の椅子を逃し、軍人生活の経歴に浅くない傷を刻んでしまう。若き日の上層部との暗闘が埋めつけた上層部への不信により、好意を好意と受け止められず、自分が苦しい立場に置かれていってしまう。ハルトマンの必死のフォローにより、面目は保たれるものの、ガランドと対立を演じてしまう失態により、軍内の立場を落としてしまうのだった――



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