‐甲児は敵母艦から脱出すべく、牢屋をトイレにいく名目で抜け出していた。(トイレが牢屋に無いという構造であった)

(さて、頃合いかな?グレートマジンガーの事はデタラメ喋ったと思うんだけど、いまいち自信ねえんだよな……)

咄嗟に監視兵をなぎ倒すと、兵士が落とした銃でフロア内の兵士を全員撃ち殺す。そしてお返しとばかりに母艦の破壊工作に打って出た。

「おい、今銃声が聞こえたが?」
「いやなんでもねえよ。皿が落ちたんだろうよ」

甲児は歴戦で鍛えた演技力で声マネをしてドアの前に来た兵士を油断させて追い払うと、すぐに兵士の死体からレーザーガンの弾薬を盗み、
防護服のポケットに入れる。そしてしたいから艦内の地図を奪う。

「通信室は……一番奥の部屋で、ここから二層上か。そこまで行ければ大介さんや箒ちゃんに連絡が取れる。
あとはエンジンの燃料タンクを爆破してやるぜ。このままじゃ兜甲児様の名が廃るってもんだぜ」

甲児は捕虜となった鬱憤を晴らすべく、生身での破壊工作に打って出る。このまま醜態をさらしていては元祖スーパーロボット乗りの名が廃るとばかりに。

―甲児の戦いも今、始まる。スーパーロボットに乗ってではなく、生身での戦いは危険と隣り合わせであるが、引き下がるような甲児ではなかった。
こうなれば遮二無二に戦うだけだとばかりに、銃を片手に、母艦内を散策&破壊工作を徹底的に行った。

母艦の外ではグレートマジンガーとグレンダイザーが白熱の死闘を繰り広げているなどつゆ知らぬに……。

 

 

 

−豊富な武装と空中での機動性を持つグレートマジンガーの波状攻撃に防戦一方のグレンダイザーであるが、グレートマジンガー攻略の糸口は存在した。
バレンドスはグレートマジンガーの背中の紅の翼「スクランブルダッシュ」を展開したまま陸上戦闘を行なっている。
迅速に空中戦を行うためであろうが、鉄也が翼を折りたたんだ上で陸戦を行なっていたという事実を思い出すと、箒はすぐにデュークフリードにそれを伝える。

「大介さん、グレートマジンガーの弱点は翼です!」
『何、翼だって!』
「ええ。以前、鉄也さんが話してくれたんですが、グレートはスクランブルダッシュの付け根に攻撃が加えられると全機能が一瞬停止するはずです!
鉄也さんはそれをカバーするために折りたたんで戦闘してました。活路はそこです!」
『よし分かった!』

防戦一方のグレンダイザーであるが、この一言により活路を見出す。グレートマジンガー奪還作戦が始まった。

「スペイザークロス!!」

デュークフリードはジャンプグレンダイザーをジャンプさせ、スペイザーと再度ドッキングさせる。
隙を見せないようにしながら。スペイザーとのドッキングにはシート移動処理にかかる時間込みで、6秒かかる。そこを突かれてはさしものグレンダイザーも
危ない。空戦では小回りは効かないが、スピードとパワーはグレンダイザーが完全にグレートを上回る。
その点からグレートマジンガーの弱点を狙うのだ。箒と共にデューク・フリードは起死回生をグレートマジンガーの弱点にかけ、
スペイザーのスピードを生かした一撃離脱戦法に切り替えた。

箒が懸命にグレートマジンガーを引きつけ、グレンダイザーがその隙に攻撃を敢行する。

小さく、小回りが効くインフィニット・ストラトスならグレートマジンガーを初めて動かすバレンドスが安々と補足できるわけはないので、
その点をデューク・フリードは突いたのだ。
グレートマジンガーの弱点たる「スクランブルダッシュの付け根」を狙うために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

−この年には平和を取り戻したかに見えた地球圏。……だが、鉄人兵団地球侵攻軍の一部は徹底抗戦の意志で固められており、依然として交戦状態は続いていた。
そして宇宙戦艦ヤマトが暗黒星団帝国なる敵と交戦した事で、新たなる戦乱の火種が蒔かれてしまった。
政府上層部の左派にはこの事実により、ヤマト艦長代理の古代進罷免論が吹き出たもの、英雄たるヤマトの乗員を下手に処分すれば国民が反発し、
政府官僚の首が何人分飛びかねないような事態になることにより、暗黒星団帝国との戦闘状態突入という行為は軍部・政府が公式に黙認する運びとなった。
そんな中、地球連邦軍太陽系連合艦隊(2201年を機に、宇宙軍編成が見直され、政府中枢が電撃的に占領されるような有事を想定した部隊指揮系統の構築が図られた。
本土防衛のいくつかの艦隊を統合し、本土防衛に当たる連合艦隊を太陽系本土の宇宙軍内の上位軍編成として常設する体制になった)に衣替えした、
地球連邦軍本星防衛艦隊は組織改編に追われていた。23世紀に相応しい新体制として、政権が打ち出した国防施策の実行は、現場の人間には苦労が多かった。
この人もその一人。かつての宇宙戦艦ヤマト初代艦長であった「沖田十三」、
アンドロメダの最初で最後の艦長にして、本星防衛艦隊体制下では唯一、任期中に`戦死した`司令長官となった
「土方竜」の士官学校時代の後輩で、太陽系連合艦隊初代司令長官に抜擢された「山南修」大将。

 

「ふう……これで書類は一段落かね」
「はい。提督」

彼は前線任務に就いた土方の後任として士官学校の教育者の任についていたが、
若き日以来の「塩気ある将校」としての経歴や、
沖田十三らにも劣らない司令官としての裁量や戦略がレビル将軍と藤堂平九郎軍令部総長の目に止まり、
大統領への推薦を受けて沖田十三らの同期世代を始めとする何人もの先輩をぶっ飛し、少将からの抜擢という異例の形で拝命した。
艦隊旗艦は平行世界への援助で成果を上げた「しゅんらん」となり、彼はそれに座乗していた。

「まさかこの私が司令長官の任を拝命するとは思わなんだ」
「藤堂軍令部総長とレビル将軍はあなたを高く評価していますよ」
「偉大な先輩たちには及ばんよ」

山南は士官学校時代には、先輩の沖田や土方らによく絡まれた事を思い出す。
山南は彼等を輩出した世代とは近い年期なので、花形であった彼等の世代と自分らの世代は当時の軍上層部によく比較された事を思い出す。
彼等世代も沖田らに劣らない素養を十分に持っていたが、沖田世代の華々しい活躍に隠れがちで、彼等に比べると昇進速度も鈍かった。

だが、彼等の先輩の多くはガミラスとの戦争で戦死し、山南の兄貴分であった沖田と土方も黄泉国へ旅立っていった。
そしてとうとう自分たちの世代が艦隊司令長官レベルの要職に就くようになった。思えばこれも世代の移り変わりを示しているのだろう。

「提督、1945年から新しいウィッチが着任の挨拶に来ております」
「通せ」
「はっ」

警備兵に連れて来られる形で山南に挨拶に来たのは扶桑本国からは加藤武子、504の一員で、負傷による療養(何歳かの若返りも兼ねている)と、
対ジェット戦闘機訓練も兼ねて、
隊から一時的に離れる事になったドミニカ・S・ジェンタイル、そのおまけのジェーン・T・ゴッドフリー、
また、502からは菅野とニパのことが気になったのか、下原定子が来ていた。

「加藤武子大尉であります」
「ドミニカ・S・ジェンタイル大尉です」
「お、同じくジェーン・T・ゴッドフリー大尉でありますっ!」
「下原定子少尉です」
「ウム、ご苦労だった。君たちにはこれからこの世界で訓練を受けてもらう事になる。まずはゆっくりし給え。まずは加藤中尉。
君には黒江少佐から手紙を預っている。渡しておこう」
「えっ?」

山南は黒江から預っていた手紙を武子に渡す。その内容を要約すると、
『悪いなフジ、穴拭の僚機は私がやらせてもらってるんだ。
それと給料を釣り道具一式に使い込んじまったから、お前にもバイト手伝ってもらうぜ〜嫌とは言わさない』との事で、
武子は翌日、ドック入りしたしゅんらんを降りるとすぐに『あ、綾香ぁぁぁぁぁ〜〜!!』と叫んだ後に
私物として持ち込んでいた九七式側車付自動二輪車(陸王の軍用モデル)で黒江のもとに向かったとか。
それから、黒江がどうなったかは言及は避けたい。

「あ、あの、長官。菅野さんとニパさんは今どこにいるんですか?」
「ああ。あの二人は今、外宇宙で戦闘中だ。宇宙戦艦ヤマトに乗艦して、同艦の任務に同行している」
「が、外宇宙〜〜!?そんなぁ……せっかく来たのにぃ……」

定子はがっくりと肩を落とす。502は激戦区担当なので、中々休暇が取れない。菅野はあらかじめ上に許可を取った上で行っている。
定子はネウロイの活動が鈍る厳冬を狙って、菅野とニパの後を追う形で来たのだが、
それが2人の宇宙戦艦ヤマト乗艦という情報までは伝わっていなかったようだ。

「まあ、そう気を落とすな少尉。ヤマトが任務を果たせば、2人は帰って来る。それまで観光を楽しみたまえ」
「はいっ!」

「さて、ジェンタイル大尉にゴッドフリー大尉。君たちの事は聞いている。中々の戦績だそうだね」
「ええ。私たちのペアは無敵ですから」
「た、大将〜!」
「事実だろう?ジェーン」
「それはそうですけどぉ……」

ズバリというジェンタイルに赤面するゴッドフリー。

「この書類によればネウロイとの交戦で負傷しての療養と、今後に備えての訓練だそうだが?」
「はい。新型ネウロイにしてやられまして……」
「それにウチの部隊は敵のジェット機に苦戦してまして。何か良い対策がないかと」
「それならいい方法がある」
「……と、言いますと?」
「艦がドック入りしたらすぐ基地に出向きたまえ。ジェット機の訓練カリキュラムが受けられる。
乗ってみる事で何かが掴めよう。手続きの書類を後で兵に渡させる」

こうしてジェンタイルとゴッドフリーは療養も兼ねての未来での生活を始める。
ジェンタイルはカリキュラムを受け始めてからすぐに、さっそく新コスモタイガーを乗り回したとか……。

 

 

 

 

 

−その頃の黒江は……

「フフフ〜ン♪いいルアーだぜ……無理して買って良かったぁ」
「黒江、バイト応募したのか?」
「ええ。隊長の分もやってありますよ」
「……ち、ちょっと待て!私もやるのか、おい!?」
「ああ。次の給料まで食い繋げないと」
「だからってマグロ漁船のマグロ釣りの手伝いか!?マ◯ドナルドとかケン◯ッキーの店員の方が……」
「ゼータク言わないでくださいよ。箒に今月の分の仕送り送ったら光熱費ギリギリ払える金額しか残らないんですよ。
それにですね、私達に常にスマイルで`いらっしゃいませ〜`とか、理不尽なクレームの矢面に立たされるレジ担当とかができると思います?
あれ結構大変なんだって話だし」
「やけに詳しいな」
「47F(飛行第47戦隊)にいた時の先輩がココに来てその手のバイトやったって聞いたんですよ。
それで電話で色々愚痴こぼされたんで、それで趣味が生かせるバイトにしたってわけです」
「お前ってやつは……加藤が聞いたら殺されるぞ?」

江藤は黒江の釣りキチに呆れ果て、ため息をついている。元上官である自分や戦友たちを巻き込んでマグロ釣りをやろうというのだから。
そこまで行くとさすがの江藤も何も言えなくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

‐太陽系防衛体制の再編は地球連邦の国そのものの領域が今や銀河中心部(ただし宇宙怪獣の根城をブラックホール爆弾で吹き飛ばした分、
星の数は減った)にまで広がった故に、本拠が銀河の辺境にあるという星間国家としての珍しい出自に目を付けられ、
他国から侵略を受けるケースが多くなることを見越してのものであった。
そして複雑化していた本土防衛の指揮系統を連合艦隊を置く事で一本化し、
有事の際に例え本国が電撃的に占領されるような事態になっても大統領の指令、
もしくは国防大臣などの指令(政治家が駄目なら軍司令官達)があれば事態への対処がすぐに行えるようにする狙いがあった。

「大統領閣下、各行政地域との会議のお時間です」
「分かった」

彼は2199年の選挙で元・空軍軍人であったという出自が評価され、
戦時で優柔不断な面が見られた戦争指導に難があった前任者から交代する形で大統領に就任した。
平時になっても、政策への決断力の速さから国民からは高い支持を受けている。
そしてブラックホール爆弾に使用され、手空きになった旧・木星軌道は、
今やヱルトリウム級戦艦に使用される外郭の技術を応用して建造された宇宙都市が回ることで、どうにか事が収まった。
火星がテラフォーミング化されて久しいので、地球連邦政府が抱える星々の総人口は太陽系外の惑星系含め、膨大な数に達する。
それ故、行政地域もラグランジュポイントのコロニー、月面都市、火星、旧・木星、エデンを始めとする移民星、航行中の各船団に改めて大別され、
各自で地方自治が行われている。そのため、本星との間で連絡会議が行われており、今回は23世紀に入ってからは初の会議だ。

行われた会議は白色彗星帝国の生き残りについてで、銀河連邦正式加盟直後なせいか、ゲリラ的な攻撃を強めていると報告された。

『彼等は本拠と超巨大戦艦の威力によって支えられてきた。それが失われた故、各地の残存部隊は国が自壊していくのに耐えられないのだろうな』

白色彗星帝国は国家中枢こそ壊滅したもの、各地の艦隊は未だ健在であった。
だが、ズォーダーの死後、国家としての体を維持できなくなり、徐々にその勢力は衰えていた。
だが、親白色彗星帝国的な国家やボラー連邦の援助により軍隊は各国家の傭兵化する形で維持されていた。
それがこの時期から地球連邦と友好関係にあるバード星にゲリラ攻撃を行なっていることが問題とされた。
各地域の行政府からは駐留軍の増強とVF-25やVF-171EX(VF-171そのものは生産中止であるが、
]それなりの数が配備されているがための延命措置)などの新鋭機の情報開示が望まれた。

『大統領、白色彗星帝国残党のゲリラ攻撃には移民星配備の既存機体では対応が難しく、
駐留軍の戦力は損耗が激しいのです。早急に新鋭機配備の許可を!!』

移民星には比較的旧型の機体も多く残っていた。これは地球本星がしょっちゅう敵に襲われ、
新鋭機への機種転換がタイミングよく行われているのとは対照的であり、
地域によるが、旧型のヌーベルジムVやブラックタイガー、VF−4及びVF−11がまだまだ現役を張っているというところも多く、
白色彗星帝国の生き残りのゲリラ攻撃に苦戦するケースが増えていた。
それ故、行政府の代表達は強力な新鋭機の配備を望んでいるのだ。

『分かった。コスモタイガーU(新コスモタイガー)、ジャベリンなどの情報を軍に開示させよう』
『あ、ありがとうございます!!』

これまでの大統領は移民星の本国への反乱を恐れるあまり、移民星に提供される兵器の情報は本国のものと比べて一世代古いものが与えられていた。
そのため、余程の特例でなければ新鋭機の配備が認められないほどであった。
だが、軍出身である故か、彼は「戦力の新兵器への転換は全面的に行い、ムラがある戦力を一定の水準で平均化する事で全体の戦力を向上させる」
……という持論を持っていた。
それ故、移民星への本国新鋭機の配備の申請を全面的に許可したのだ。
これは白色彗星帝国残党のゲリラ攻撃に悩む移民星のニーズに合致し、移民星の中央政府への求心力を向上させる効果を上げ、彼の人気の維持に一役買った。

『白色彗星帝国残党への対応を早急に行わせる。敵の我が領海への兵站基地を見つけ次第、これを叩く』
『残党の主力は空母機動部隊であります。フェーベ航空決戦で主力部隊は撃滅したとのことですので、それ以外の艦隊であると思われます』
『ううむ。アレ以外にまだいたのか……』

大統領は白色彗星帝国戦役の際には空軍の防空部隊を率いていたので、フェーベ航空決戦で敵艦載機戦力を撃沈したというのは知っていた。
それにも関わらず、残党が空母機動部隊を有していることに驚きを露わにした。

『我が情報部の調査によれば、アンドロメダ星雲に治安維持、もしくは他国への存在感誇示の為に配置されていた部隊との事です。
練度はフェーベの時のそれを超えるものと推定しております』

そう。地球連邦軍との戦闘で投入されたのはバルゼー率いる「プロキオン」と「シリウス」方面に配備されていた帝国の主力部隊であるが、
アンドロメダ方面で温存されている別艦隊がまだいたのである。それを基幹に残党が立て直した空母機動部隊だと推測されていた。
それらが連邦の各移民星に神出鬼没でゲリラ攻撃を仕掛けてきていた。外征可能な空母機動部隊の規模を拡充し続ける連邦軍であるが、
波動エンジン艦は戦闘空母主体なため、正規空母に比べて艦載機搭載数にどうしても劣る。
連邦軍はそれを艦の大型化で補った。
その内に竣工したのが戦闘空母のベースを主力戦艦級ではなく、アンドロメダ級の船体をベースにした実験艦「ミッドウェイ」であった。
これは北米にて建造途中で放棄されていたアンドロメダ級三番艦の船体を再利用し、戦闘空母としたもので、
ヤマト級3番艦「信濃」及び計画中の次期戦闘空母への布石も兼ねていた。

『フム……実験艦のテストにはちょうど良かろう。連合艦隊に出動体制を整えさせよう』
『ありがとうございます、大統領』

大統領の鶴の一声で白色彗星帝国残党の掃討は決定された。これは全会一致で採択され、宇宙軍の派遣が行われる運びとなった。

白色彗星帝国残党はこの時期にはさすがに太陽系からは一掃されていたもの、
グルームブリッジ星系やシャーマ星系などの連邦政府領海に侵入してのテロ行為を繰り返していた。
それは彼等の誇りがそうさせていた。アンドロメダ星雲に覇を唱えた国家としての……

 

−シャーマ星系付近 旧・白色彗星帝国軍第七機動艦隊

「まさか我々がボラー連邦などという新興国家にアゴで使われるとはな」

ボロボロになった軍服を着る彼は白色彗星帝国第七機動艦隊司令長官であった「ズプルーアンス」という名の元・中将。
彼はかつて、第一遊動機動艦隊司令長官時代の「バルゼー」の参謀として勤務した経験もあり、バルゼーとは対照的な冷静沈着さで知られた。
先の大戦には参加しておらず、それが幸いして白色彗星帝国軍のアンドロメダ方面軍の温存が叶った。
亡国の艦隊と化した彼等白色彗星帝国軍はそれぞれゲリラ化して、地球への復讐を誓った。
その内にボラー連邦という新興国家(古くは帝政であったらしい)に拾われ、彼等の傭兵のような形で生きながらえていた。

「仕方がないですよ、提督。我々はもはや亡国の艦隊。こうしてしか生きられないのですから」
「それはわかっている」

白色彗星帝国が銀河系区域に残した工廠は今やボラー連邦のものである。そのためボラー連邦はその工廠を再稼働させて補給を行う見返りに、
彼等白色彗星帝国軍の血の献身を求めた。それを受けるしかもはや彼等には生き残る術は無く、ボラー連邦の傭兵としての屈辱的な扱いにも耐えていた。

「今日の仕事はどこだね」
「はっ、この星系の第三惑星の`ボルカン`であります。地球の移民星の一つです」
「面白い。駐留軍を蹴散らし、都市に爆撃を加える」

白色彗星帝国残党は迎撃に出てきた連邦軍のグァンタナモ級宇宙空母をすぐに大戦艦の衝撃砲で撃沈する。
主力戦艦級であっても当たり所によっては一撃轟沈が可能な衝撃砲にグァンタナモ級宇宙空母が耐えられるはずは無く、
一瞬で飛行甲板がひしゃげたと思えば音波のように衝撃波が広がり、バラバラになった。
だが、それでも艦載機は一部が発進できたようだ。

それはVF−11とブラックタイガー、コスモタイガー(ガミラス戦末期に現在の`U`が生産される前段階として先行生産された機体。
基本構造はUと同じだが、形状や武装はUと違う点がある。機銃もUが30ミリパルスレーザーなのに対し、Tは20ミリ)
の編隊であった。機数はそれぞれ合せて20機ほどか。

「ガトランティスのクソッタレめ!!よくもやりやがったな!!」
「残党とは言え、大戦艦は強力だ。気をつけろよ」
「これが本星仕様の新コスモタイガーならまとめて撃沈してやんだが……如何せんポンコツのブラックタイガーや試作機扱いだったTではな」
「俺達はVF−11Bだしなぁ」

そう。彼等の装備は本国部隊と比べると旧式そのもの。軍全体への新鋭機の配備が予算の都合や政治的判断で遅らせられ、
相対的に旧式化した機体を使わざるをえない艦も多く、その中では彼等は比較的恵まれていた。
(VF−11やブラックタイガーなどが使われている分)しかし、コスモタイガーUを始めとする新鋭機を欲する声は大きく、
ブラックタイガー以前の機体の限界もそのぶん露呈していた。
ブラックタイガーは後継機のコスモタイガー`U`と比べると翼部ペイロードの数は少数で、内部弾倉の敢行弾数も決して多くは無い。
(それら弱点は発展型となるはずのコスモファルコンで是正されたが)ガミラス艦にはそれで通用したが、より強固な装甲を持つ白色彗星帝国艦には些か不安が残る。

「だが、やりようによっては白色彗星帝国艦でもやれるはずだ」

コスモタイガーと比べると性能的に劣るブラックタイガーでもやり方はある。彼等はそう意気込み、白色彗星帝国の大型空母へ突撃した。

 

回転速射砲塔のガトリング砲の如き弾幕をくぐり抜け、レティクルに大戦艦を捉える。
HUDに敵艦がミサイルの射程に入った事、ロックオン完了を知らせる電子音が響く。

「ターゲットロック、ミサイルスタンバイOK!発射!!」

彼のこの一言がブラックタイガー隊の攻撃開始の合図となり、全機が一発ずつ対艦ミサイルを発射する。
横腹に20発がぶち込まれる様は、大昔の航空魚雷を叩きこむ雷撃機を想起させる。ミサイルは違わず、全弾が吸い込まれる。
ミサイルそのものは新コスモタイガーと共通規格のものなので大戦艦はミサイルの爆炎に包まれ、艦隊から落伍する。

「よっしゃあ!!」
「馬鹿、喜んどる場合か!敵機だ!」
「あいよ!!」

白色彗星帝国側航空隊は本来の制空戦闘機であるイーターUの数は少なく、本来は爆撃機のはずのデスバテーターが大半である。
別の国家の技術で改造が加えられたようで、エンジンノズルの形状などに差異がある。機動性は以前よりは向上したようだが、
運動性はコスモタイガーより軽快なブラックタイガーの敵ではない。機体を知り尽くした彼等の技能勝ちでもある。
パルスレーザーを避け、巧みな操縦で敵の射線を上手く機体から逸らし、シザーズと呼ばれる空中戦闘機動を仕掛け、
ブラックタイガーの小回りの良さを生かし、相手の旋回半径より内側に入り込み、撃破する。

「へっ、運動性はコスモタイガーUより上なんだよ!」

彼はそう勝ち誇る。通常より鋭いシャークマウスを描くこの機体のパイロットは旧米海軍系部隊の一員。ブラックタイガーは制式塗装が
昔の軍隊で割りとよく見られたシャークマウスに近いコックピット両脇に描かれた眼のマーキングで、
彼等の部隊はそれを更に推し進めて完全にシャークマウスにした。ステルス性と低視認性が重視されていた時代は
描かれることは少なくなっていたが、近頃は第二次大戦時のようにエースパイロットとその部隊の存在を誇示するため、
味方の士気高揚のために、一年戦争中、「お固い」とジオン軍などから揶揄された地球連邦軍においてもノーズアートが公認された。
その為、アムロ・レイなどのエースパイロットの機体の塗装などは「ド派手」である。
この部隊のブラックタイガーの塗装は通常の塗装より鮮やか。紺色系で翼部分が一部黄色に塗られており、
「後継機」のコスモファルコンの試作機にも取り入れられて、試作2号機がこのカラーリングとなっている。
ただしこの部隊にいる部隊の全てがブラックタイガーというわけではなく、隊長機とその列機は指揮能力などからの
観点から上位機のコスモタイガー`T`だ。
TはUと比べると翼などの形状に違いがあり、武装もまだブラックタイガーに毛が生えた程度だが、機銃の配置自体は
Uの各モデルの基本となった機体なので、同じだ。ただしUより重量が軽い、Tは局地戦闘機的性格が強いなどの要因でエンジン推力に余裕があり、
高機動バーニアの数も多いため、機動性は通常のコスモタイガーUより良い。これを艦上機として洗い直し、新兵でも扱えるように
改良した上で機体性能を上げたのがUであり、それを更に改善したのが新コスモタイガー(U後期生産型)である。
デスバテーター程度では改良を加えた程度で地球連邦軍の軽快な運動性を持つ戦闘機には勝てないのは明確であった。
だが、地球連邦軍にも強敵はいた。イーターUだ。改良が加えられたモデルのようで、ブラックタイガーと互角に渡り合う。

−隊長機の蒼い機体がブラックタイガーを3機まとめてたたき落としていく。彼等、地球連邦軍航空隊はそのイーターUへ
全力で立ち向かった。

 

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