――さて、グレンダイザーとグレートマジンガーの対決がヒートアップする中、兜甲児は敵母艦の破壊工作に打って出ていた。

「テメーら邪魔だ、どきやがれ!」

奪ったレーザー光線銃を撃ちまくり、兵士をなぎ倒しながらとにかく動力源のあるところに向かう。やがてエンジンルームにたどり着き、 兵士をなぎ倒した後に機械の配線をメチャクチャに破壊する。そしてようやく見つけた通信機器と映像機器で外の様子を確認する事に成功する。

「クソぉ、グレートマジンガーをよくも!」

「甲児君、無事だったのか!」

「甲児!ば、馬鹿者!ぶ、無事なら無事と……」

「迷惑かけてすまない!とにかくグレートマジンガーの翼には展開する時のタイムラグが数秒間ある!その間にショックを与えてくれ!」

グレートマジンガーの弱点はスクランブルダッシュに集約される。グレートマジンガーの機能制御回路に通じる動力伝達装置が組み込まれており、ショックを与えるとそれが機能停止に陥るという設計上のミスがあり、予備回路こそ組み込まれたが、再起動に再ドッキングを必要とするという情けない行程を挟む必要がある。そしてスクランブルダッシュの展開速度は数秒間であるが、攻撃できない程の早さではない。甲児が指摘したのはこれである。

「スクリュークラッシャーパンチ!」

グレンダイザーがパンチを撃ってグレートをひるませる。箒がその間に背中に回りこんで、穿千を叩き込んだ。出力は最大だ。超合金ニューZには傷はつかない。だが、グレートマジンガーの機能を停止せしめるのに十分なショックを与えるのには成功した。

「お、おお!?」

グレートが瞳の輝きを不意に失い、糸の切れた操り人形のように倒れこむ。バレンドスは必死にブレーンコンドルの操縦桿を動かすが、機能停止に陥ったグレートは彼の操縦を寄せ付けなかった。驚いた彼はブレーンコンドルで脱出すると、ブレーンコンドルを放置して円盤に戻る。その逃げ足は鮮やかだった。これには箒も呆れ顔である。甲児は内部撹乱に成功したあと、バレンドスと入れ違いで地上に舞い戻った。

「円盤を内部撹乱してきた。エネルギー回路に細工してきたからもう飛べないはずだ」

「それでどうするんだ甲児くん」

「へへ、決まってんだろ大介さん。奴らにグレートマジンガーを悪の使者にしてくれたお礼参りをしてやるのさ!」

甲児は往時同様の颯爽とした動作でブレーンコンドルに登場する。シートは自動で調整されるのでペダルの位置は問題ない。操縦桿の感触や武器のボタンの位置を確かめると、離陸する。

『鉄也さん、グレートを借りるぜ!ファイヤーオン!!』

再起動で機能を取り戻すグレート。本来の正義のヒーローとしての姿に立ち戻ったグレートだが、弱点を知られた以上、スクランブルダッシュでの戦闘は無謀である。そこで甲児は父の兜剣造に連絡を取り、グレートブースターとドッキングすると告げる。

『甲児、グレートブースターはマッハ5以上の速度で飛ぶマシーンだ。ジェットスクランダー以上に難しい難度だが、やれるな?』

『はい、任せて下さい』

甲児はすぐに脚部についているバーニア(本来はグレートブースターとのドッキング作業訓練用に設けられたのだが、鉄也はスクランブルダッシュで飛行し、そこからブースターとドッキングする荒業を可能としているために、半ば無用の長物となっていた)をジャンプと同時に吹かし、跳躍の一助とする。そして、数秒で飛来したグレートブースターとドッキングする。

『ブースターオン!』

グレートブースターは過去のミケーネ帝国との戦闘の際に一号機が失われているので、二号機が再建造され、使用されている。性能面は加速性能などに改良が施され、以前よりも総合性能はアップしている。ただ、これでも日々日進月歩をする兵器には将来的な性能不足を予見している兜剣造は根本的な対策を急いでいるというのが現状である。

『さあて、たっぷりとお返しをさせてもらうぜ!!サンダーブレイク!!』

グレートマジンガーの本領発揮である。パワーこそグレンダイザーに水を挙げられているが、機動性や機敏さで優っている。これはグレンダイザーの関節部動作速度が、地球では普及したマグネットコーティングが施された兵器に比べると遅いという機械的限界に由来する。これがグレンダイザーに対するグレートマジンガーの優位性であった。怒りに燃える甲児はさっそく、大型円盤へサンダーブレイクで攻撃を加える。サンダーブレイクの威力は通常時で300万ボルト程度、マジンパワー使用時でその倍となる。デビルマジンガー相手にはパワー不足を露呈したこの武器も、円盤獣や母艦相手なら必要十分な威力を誇る。紫電一閃、母艦に大ダメージを与え、誘爆を引き起こさせる。

『トドメだ!マジンガーブレード!!』

マジンガーブレードを取り出し、とどめをさそうとするが、円盤から円盤獣とは明らかに異なる風体の兵器が出現した。それはベガ星連合軍が敵国から鹵獲した生体兵器とも言える怪獣であった。その怪獣は四足歩行のいかにもという風体の宇宙怪獣で、バレンドスが隠し持っていた最後の切り札であった。

『フハハ!俺はまもなく死ぬが、デューク・フリード、兜甲児!貴様に置き土産を残してやるわ!!地獄で会おうぞ!!』

艦内の誘爆に巻き込まれながら辞世の句を声高らかに宣言し、事切れるバレンドス。それを尻目に、円盤獣を共食いし、貪る怪獣はすぐにグレンダイザーに飛びかかった。

「スクリュークラッシャーパンチ!」

スクリュークラッシャーパンチを牽制代わりに放つデューク・フリードであるが、判断ミスと言わざるを得なかった。怪獣はグレンダイザーのスクリュークラッシャーを舌で絡めとり、なんとうまそうに食い始めたのだ。これには一同は目が点になる。鋼鉄の五千倍もの硬度を誇るはずの宇宙合金グレンをいとも簡単に噛み砕くというのは、ほぼ同等の硬度の超合金ニューZをも噛み砕ける証れでもあったからだ。

『馬鹿な、宇宙合金グレンをこうもいとも簡単に噛み砕くだと!?おわっ!!』

グレンダイザーは更に唾液を吹きかけられ、なんと脚部を溶かされてしまい、行動不能に陥った。箒が穿千のクロスボウタイプで攻撃を加えるが、怪獣の目から発しられる怪光線にビームを押し返され、穿千を喪失する。

「つぅっ!?」

箒はこの爆発でダメージを受ける。腕部装甲の一部が損壊し、胸のISスーツが爆発で胸のあたりが千切れて裸体が一部露わになるが、ISの動作には支障はない。シールドエネルギーが大きく減るが、すぐに絢爛舞踏で回復させる。

「く、クソぉ!よくもやってくれたな!」

『箒ちゃん、撤退するぞ!』

「バケモノを目の前にして退けというのですか大介さん!?」

『グレンダイザーをこうも簡単にやれるつてことは、甲児くんのグレートも同じ目にあうぞ!退くんだ!』

『クソぉ!ブレストバーン!!』

グレートのブレストバーンも怪獣の甲殻には通じない。摂氏5万度に達する熱線を食らって平然とする様はまさに『ありえない』。万事休すであった。デューク・フリードの言う通り、甲児は撃破を諦め、グレートマジンガーでグレンダイザーを回収し、引き上げた。この戦闘は翌日にニュースとして報じられた。

『ベガ星連合軍が苦し紛れに送り出した宇宙怪獣はグレンダイザーとグレートマジンガーの共同戦線をも退け、付近の金属という金属を貪りながら次第に成長しつつあります!!だ、だれかこの怪物を止められるのはいないのでしょうか!』

このTVニュースは科学要塞研究所や宇宙科学研究所などの各研究所を揺るがした。グレートマジンガーやグレンダイザーの装甲をも噛み砕く怪獣に対抗可能なスーパーロボットという条件に当てはまるのは少数であり、更に真ゲッターが封印されている都合上、選択肢は狭まるのだ。

――ゴッドの砦

「弓教授、コンバトラーVやボルテスVの復元はどのくらい進行していたのですか?」

「それぞれ70%に進んでいますが、もし、完成しても装甲強度が低いのがネックです」

「ゴッドマジンガーの調整は?」

「外装取り付け作業が完了していません。現状で40%が完了しているだけです。とても投入は無理ですよ」

「グレートマジンガーの対溶解液対策を進めているが、焼け石に水の感は否めません」

「現状で投入の選択肢は狭まるな……カイザーの強化は?」

「超合金ニューZαの完成度を高め、スクランダーの再調整がまもなく完了いたします」

博士達が会議を行う。スーパーロボットの超金属をも食える宇宙怪獣というのは完全に想定外の敵であり、言葉の端々からはかなりの焦りを感じさせる。その会議の様子をモニターで確認する各スーパーロボットのパイロットたち。

「信じられんな。超合金を食える宇宙怪獣など」

「宇宙は広い。金属を食う宇宙怪獣なんていくらでもいそうじゃねーか。一兆度の火球吐く宇宙怪獣もいそうだよな」

「號……お前というやつは」

「小学生かよ」

「翔、剴!お前ら、こっちは必死に考えてんだぞ!」

「宇宙の広大さを考えると、それもあながちありえないわけじゃないぞ。現に無敵と思われた超合金すら食うのが現れたんだからな」

「亮、博士たちは何してやがるんだ?」

「現有の戦力で宇宙怪獣に対抗できないか模索中との事だ。スーパーロボットはジオンやザンスカール帝国のテロで再建造を余儀なくされた機体だってあるからな」

「でもさ。現有の戦力でったって言っても、メカトピア戦争以前の状態に戻りきってない状態でどうするのさ?」

「どうだろうね」


獣戦機隊、新ゲッターチーム、剣鉄也などが話し合うその光景はこの時点でのスーパーロボット軍団の現状を示していた。ダンガイオーチームが再加入し、グレンダイザーが新たに加わったとは言え、ボルテスチームやコンバトラーチームの長期離脱状態状態が継続しているのには変わりないからだ。しかもこの日にはダンガイオーチームは衛星軌道上でジオン残党と交戦中であった。一同は大いに悩む。本当なら旧ゲッターチームが参加することが望ましかったが、旧チームは弁慶が事実上、死亡認定の行方不明状態なので不可能である。竜馬もゲッターを降りると発言し、家の空手道場を継いで、隠居状態であるのもスーパーロボット軍団の間ではショッキングなニュースであった。







――医務室では、箒がまたも戦力外通告されたに等しい事実を宣告された事に悔し涙を流していた。今回はグレートマジンガーやグレンダイザーでさえ倒せない宇宙怪獣が相手なのだ。如何に絶対防衛で死亡の確率は低いとは言え、スーパーロボットの装甲を破壊できる相手ではISはお呼びではないという事実以上に、覆せない戦力差というのをまざまざと見せつけられたという衝撃が彼女を打ちのめしていた。

「くそぉ!!なんという……なんというザマだ私は……また何の役にも立てなかった……」

包帯を体に巻き、医務室のベットで嘆く。専用機を得た状態で戦力外通告がなされたというのは、初めての事だったからだ。もっとも、相手が相手だけに今回は仕方がないのだが。彼女は強さを渇望しているため、今回の事が如何にショックであるのかがうかがい知る事が出来る。彼女は『誰かの背中を守りたい』一心で赤椿をこしらえてもらい、そしてその一途さが礼の心を目覚めさせ、雷光斬を習得するに至ったが、それでもなお戦力外通告されるという現実は受け入れられないのだ。箒はこの日、医務室のベットの毛布を涙で濡らしたという……。












――宇宙怪獣はロボット博物館周辺に散らばる円盤の残骸から回収された書類の切れ端より、名が「ギルギルガン」と呼ばれる機械と生命を融合させた生命体である事が判明。そのために金属を食らう性質がある事が正式に確認された。連邦政府は軍による足止めを行ってはいるが、ギルギルガンの性質上、餌を与えるだけであった。出現から48時間後には伊豆から金属が豊富にある名古屋市中心部に移動。そこで最初の成長を遂げた。

「ひ、人型の上半身が生えたぞ!」

足止めを行う陸軍部隊は悲鳴を上げる。既に攻撃力の差でMS師団の半数は食われ、撤退を行う準備の最中、彼らはギルギルガンの変態と言おうか、進化を目撃した。宇宙怪獣の背中に人型の上半身が生えたというべき変化はその場にいる者の全てを恐怖に陥れた。しかし攻撃力に微塵の衰えはなく、MS師団を70%撃滅し、撤退させる強大な宇宙怪獣「ギルギルガン」。この映像に政府首脳は対応に追われたが、何ら対応策も見いだせなかった。そんな状況にカイザーの封印を解く事を決心した兜甲児は弓教授や父の剣造にその旨を伝える。

「父さん、弓先生。奴に対抗するにはカイザーの封印を解く必要があります」

「マジンカイザーは確かにZモードでの出力上限をアップさせる改良は済ませているが、カイザーの機動はお前の体に負担を強いる。神モードに今のお前の肉体が耐えられる保証はないぞ」

「ええ。確かに俺の体は竜馬達旧ゲッターチームに比べれば『凡人』ですし、マジンカイザーの最大ポテンシャルを発揮させる神モードに長時間耐えられるかは未知数です。だけどマジンカイザーがやらなかったら誰がアイツを止められるんですか、父さん!」

甲児はまくし立てる。彼にしては珍しい光景だ。マジンカイザーは現状では唯一無二の『真ゲッターと同等の力を持つ』スーパーロボットである。グレートマジンガーの装甲をいとも簡単に破砕出来る相手に対抗するにはカイザーのポテンシャルが必要だと説く。剣造と弓教授は甲児の言葉に悩む。カイザーは確かに最大ポテンシャルで言えば『神』であるが、真ゲッターと同等のスピードや機動を実現させるにはマジンカイザーのリミッター解除&マジンパワー発動状態の『神モード』が必要である。搭乗者に多大な負担をかけ、最悪は廃人になりかねない。3つのモードを備えるカイザーは概ね、自立モードの『魔モード』、通常時のZモード、マジンパワー発動時の『神モード』を有する。Zモードでたいていは事足りるため、これまで神モードを繰り出した例は数回程度しかない。マジンカイザーの搭乗者への過剰なほどの高負担は問題視され、弓教授がゴッドの具現化を急いだ最大の要因となった。しかしその事が逆にゴッドの完成の遅延を招いたのは皮肉であるとしか言いようがなかった。

「確かにマジンカイザーのパワーは凄まじい。だが、兜博士の言う通り、そのパワーは君の体に負担を強いる。神モードの負担は最悪、廃人に追い込みかねないんだぞ」

「それは竜馬達旧ゲッターチームの真ゲッターも同じじゃないんですか?ゲッタードラゴンから真ゲッターに乗り換えた時、同じような事を言われたそうです。でも竜馬達は真ゲッターを使いこなした。あいつらにできて、この俺にできない道理はありません!」

「う、ううむ………」

二人は甲児の真剣な眼差しに悩みぬいた末にカイザーの投入を決意。未だ組立中のゴッドを尻目に、マジンカイザーは再び表舞台に立つ。最強のマジンガーとして。このように、魔神皇帝は未だ降臨できぬ鉄の神の代理を度々務めた事から、後世での知名度は圧倒的にマジンカイザーが上になったとの事。




――その報は兜甲児の自他共に認める親友のボスにも届いていた。剣鉄也が気を利かせて知らせたからだ。この時期にもボスとその子分のムケとムチャは科学要塞研究所近くの廃ドックにたむろしており、ミケーネ帝国が退いた後はメカトピア戦争には表立っては参加せずに科学要塞研究所の防衛を担っていた。



「久しぶりだなボス」

「鉄也、俺様達になんの用だわさ」

「お前もあの宇宙怪獣の噂は聞いているだろう?」

「例の超合金も食える宇宙怪獣だろ?」

「そうだ。そこでボロットに栄えある任務を言い渡す。お前達は宇宙怪獣を無人島まで誘導するんだ。あとは俺や甲児君達でどうにかする」

「お任せあれ。お前たちの頼みとあらば、このボス、必ず成功させよう。ところで鉄也、甲児は元気にやってるか?」

「お前によろしくと言ってたぜ。あ、それとお前に差し入れだそうだ。がっつくなよ」

「さすが甲児。俺様の好みを分かってる」

ボスはそもそもは甲児の最終的な出身高校の番長であった男である。当初は甲児に対抗心を燃やしていたが、甲児の弟のシローの面倒を見たりする内に打ち解け、苦楽を共にした事から、自他ともに認める甲児の大親友となった。鉄也の心のケアにも務める快男児で、意外にもそういう側面から慕われるらしく、友人は多いらしい。口調は時々オネエ言葉が入る。ムケとムチャはその頃からの取り巻き兼幼馴染みである。それで光子力研究所の博士たちを脅して建造させたのがボスボロットである。当初は『ボスロボット』と呼ぶつもりだったらしいが、いつしかボスボロットというほうが敵味方ともに定着した。意外にも性能はパワー面ではマジンガーZクラスと侮れず、作業用や後方支援で活躍した。今回もその側面からスポットライトが当たったのだ。


「それじゃ所長にお前が引き受けた事を伝えておくから準備を始めてくれ。俺もグレートマジンガーの改修の後の実働テストをしておく」

「わかった。甲児によろしくな」

――こうして、手はずは整えられ、ギルギルガン撃滅作戦は開始されようとしていた。バレンドスの最後の悪足掻きは地球に思わぬ波紋を呼び、魔神皇帝を表舞台に呼び戻すきっかけを産んだのであった。



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