――加東圭子は1999年にきてからは時代の空気に慣れるべく、積極的に図書館や映画館などがある繁華街の方に足を運んでいた。どのようこの国が変わり、発展したのか?自分の生まれ年から考えれば、“生きているかもわからない時代”にいる。その事へのうれしさもある。だが20世紀前半の人間としては、物質的な豊かさを手に入れた引換に人々の優しさが消えているのでは無いかと思う時もある。――扶桑皇国は史実の大日本帝国よりすべての点で遙かに恵まれているが、心の豊かさという点では同じである――だが、この街は昭和30年代までの面影を良い意味で残しており、高校生や中学生の荒くれ者共が腕自慢を競って小学生にまで喧嘩を売ってくる場面も見た。

「それにしても、中学生とかが小学生にまで喧嘩を挑むなんてね」

もちろん、多数で嬲るような卑劣な輩は軽くのしてやった。喧嘩をするのは大いに結構だが、相手をよく見ろといいたい。

「今日の夕ごはんはなんなのかしら……昨日は魚だったから……洋食かな」

ちょうどスーパーマーケットの前を通りかかったところで腹の虫が鳴る。なんとタイミングのいいなり方だ。

「あら圭子さん」

「玉子さん」

「ちょうど買い物に来たところなの。あなたも手伝ってもらえるかしら」

「ええ、お安い御用ですよ」

こうして圭子は野比玉子に付き合う形で食料を買うことになった。セルフ方式のスーパーマーケットは圭子の時代にはまだ米国――リベリオンで行われているに過ぎない方式なのである――彼女としては文字通りに初めてである。その事に悪戦苦闘しつつも鶏肉などを見分け、買い物かごに入れていく。

――西沢飛曹長がいれば鮮度とか細かく見分けられるんだけど、まあ贅沢は言ってられないわね。

――当然ながらスーパーマーケットが無い時代に生きる圭子には何もかもが目新しかった。アルミカンやペットボトルなどの戦後の新技術でできたもの、20世紀末時点の技術が成熟された冷凍食品……いずれにせよ自分の時代に帰れば普通は食する事は出来ないであろう食品である。未来に来たという事をより一層実感させられる。何しろ、1940年代はまだ和服と洋服が入り交じる風景が当たり前であったので、幼若男女に至るまで洋服に統一されている光景は新鮮であった。玉子に付き合って買い物を済ませ、帰路につく。

「圭子さん」

「なんですか?」

「あの子――のび太やドラちゃん――達とはどうやって知り合ったの?あの子たちとは何の接点も無さそうだけど」

玉子は気になっているのだ。息子たちがどのようにして、圭子を初めとする年頃の娘達と出会い、親交を結んだのかを。

「“去年”、ひょんな事から知り合ったんですよ。ちょうど私はアフリカから帰ってきたばかりだったんですが……」


圭子はのび太から予め「ママにもし、僕達が会った理由を聞かれたら、もっともらしい理由をでっち上げて答えてください。少佐が旧軍の、海軍ならまだしも、陸軍軍人なんて言えませんから」と頼まれていた。それは1990年代の陸軍悪玉論がまだ息づいていた頃の時勢を鑑みたのび太の提案であった。日本陸軍は戦後の日本人から嫌われ者となっているから、圭子の身分は明かせないということだった。圭子も陸軍悪玉論は2000年代以降でなければ衰退の様相は見せないことは知っていたので、これを了承した。そしてその時がやってきた、という訳だ。これには圭子も考えるのに一晩費やしたとの事。頭の中で考えた事を反復しながら玉子からの質問に答える圭子だが、頭の中は何気にフル稼働状態であった。





――野比家

「シャーリーさんはどーです?調子は」

「ああ。なんとかな。ルッキーニと一緒にアフリカで戦ってるけど、激戦地だからてんやわんやだよ。ストライカーの整備がおっつかない時はゲッターGや可変戦闘機で出撃する事も多いんだ」

「ゲッタードラゴンで?技名、叫んでます?」

「たりめーだろ。アレ叫ばないと様にならないんだから」

シャーリーは圭子が自分の権限で地球連邦軍からもらってきたゲッターGのパイロットの一人としても戦っている。シャーリーはその特性上、ゲッターライガーで半分固定されており、圭子に“たまにはドラゴンに乗せてくれ〜!”とボヤいている。ドラえもんにそう話す。すると、一階からフェイトが物凄い勢いでやってくる音が響く。ジュースを買いに行った帰りの割にはえらく慌てているようだ。


「ど、ど、ど、ど、ドラえもん〜〜大変だよぉ〜〜〜!!」

「フェイトちゃん、どーした!?顔が青ざめてるぜ、何があったの?」

「じ、じ、ジャ……ジャイアンが明後日にリサイタルするって!?」

「な……ん…だ……とっ……!?」

「おぉぉい、マジかよ!?」

ドラえもんとシャーリーは一気に凍りついたかのように固まる。ジャイアンリサイタルの恐怖はこの時既にシャーリーもフェイトも知っていた。なので一同の顔にはハッキリと恐怖が見て取れる。

「お前、それどこから聞いたんだ?」

「ルッキーニが本人から直接聞いたらしくて、
大慌てで今、しずかのところに駆け込んで知らせてるところです」

「こりゃ大変だぞ……ドラえもん、何か手はないのかよ?」

「ジャイアンがリサイタルやるっていう時はジャイアンのかーちゃん以外には止められる人間はいないんです。もし、かーちゃんが旅行かなんかでいなくなってたら……ジ・エンドです」

「……」

一同は沈黙した。まさかのジャイアンリサイタルの不意打ち。それを阻止できる手段はジャイアンの母がジャイアンを怒鳴りつける事という、実にあやふやなもの。ジャイアンの歌声はもはやプロトデビルンやバジュラだろうが裸足で逃げ出すほどの威力。人類史上最悪の音波兵器と言っても過言ではない。歌が響き渡ると、普段は常人より遙かに屈強なフェイトやシャーリーと言えども昏倒しかねない。

「確かあいつの歌って21世紀に入ってしばらくした時のテレビでネタにされたって話だよな?その時はどーなったんだ?」

「ドラえもん、その辺はわからないの?」

「うぅん。それは僕も話に聞いただけだからなぁ。なんとも言えない」

「今回ばかりは歴代の仮面ライダーの皆さんに頼るわけにもいからぁ……アイツのかーちゃんがいる事を祈るしかねーな」

シャーリーが言う。確かにこれもある意味では“街の平和を乱す”行為であるであるが、仮面ライダーらの助けを借りるほどの事態とは言えない。なので彼らに頼る訳にもいかない。彼ら曰く、「この時期はショッカーを始めとした各歴代組織の残党と戦っていた」のだから。


「ルッキーニちゃん達が帰ってきたら早速、対策を考えましょう。もうそれしかない!」


ドラえもんはそう締めくくる。一同はそれに同意し、ジャイアンリサイタル対策協議を行うことで意見の一致を見た。そしてフェイトの言通り、のび太・西沢・ルッキーニの三名は町内の子どもたちへジャイアンリサイタル開催を伝えていた。














――町内 出木杉英才の自宅前

「タケシ君のリサイタルか……遂に来たか」

出木杉は半分諦めたような表情を見せる。過去幾度と無くジャイアンリサイタルの恐怖を味わった者として、もはや防ぐ望みは如何な未来の道具でも不可能であるのを悟っていたからだ。

「出木杉君、どーにかできないの?」

「そりゃ無理だよ、野比くん。台風や竜巻でさえもタケシ君のあの歌への執着は止められない。ましてやディナーショーになれば……」

「そうだったね……!」

のび太の顔から更に血の気が引く。ディナーショーがついたジャイアンリサイタルはもはや災害。そして料理は……。


「料理がつくだけでなんでそんなにまずいの、ノビタ」

ルッキーニのこの疑問にのび太はホラーチックなオーラを迸せながら答える。もはやエクソシストも顔負けなほど、で。

「ジャイアンの料理はもう……悪魔が食べるようなゲテモノなのさ……セミの抜け殻や、10年単位で賞味期限切れのタクワン、塩辛、煮干……その他をテキトーにぶち込んだシチューとか……」

「うっぷっ…ノビタ、ストーップ!」

話に聞いただけで猛烈な吐き気が湧いて、お腹と口を抑えるルッキーニ。胃腸が弱い西沢に至っては気絶してしまった。味にはこだわらない彼女も、これには耐えられ無かった。鮮度が論外なためだろう。

「と、いうわけさ。造った当人さえひっくり返るような料理がセットになったらもう集団食中毒モンだよ」

「ああ。前の時は当人がひっくり返ったからなんとか僕たちは難を逃れたんだが……今回はどーだろうね……」

普段冷静な出木杉がそういうというのは、彼もまたジャイアンリサイタルに恐怖しているのがよく分かる。こうしてジャイアンディナーショーなのか、ただのリサイタルなのかの謎に包まれたジャイアンの大いなる野望は静かに動き始めていた。

――剛田家

「お兄ちゃ……うっぷ!何してんの?」

「おお、ジャイ子か。料理してんだよ」

「お兄ちゃんが料理?へ、へぇ……」

妹のジャイ子でさえ冷や汗をタラタラとかくほど引いているのが言葉の調子から分かるが、当のジャイアン当人は気づいていない。むしろご機嫌だ。前回、自分で食べてひっくり返った事からの教訓か、味見はしていない。しかしいつにも増してもはや人間の食べる料理ではない凄まじい匂いが漂っている。

「そ、それじゃあたし漫画の風景に使うスケッチとってくるから」

「おう」

ジャイ子は自分が漫画家志望である事を上手く利用してこの家から逃れた。愛犬のムクと共に。その足取りはまるで病人のようだったという。こうしてジャイアンリサイタルどころかディナーショーであるという情報が街の子どもたちへ伝わった。


「おおぉい!ジャイアンがディナーショーやるって!」

「マジかよ!俺、居留守使うぜ」

「俺は今から親戚の家に逃げる。お前らも来いよ」

――と、いうような会話があちらこちらで見られたとか。ジャイアンがディナーショーをやるというのは、この街の子供達にとっては“核攻撃”級の衝撃であった。大人たちの世界とは別に、子供の世界ではジャイアンの趣味は第三次世界大戦勃発と同義であった。そのため、この日に限って街中から子供達の姿が消えるという珍現象が起こったとか

















――1944年の10月頃

未来でシャーリーらがジャイアンリサイタルの恐怖に怯えていた頃、彼女らの故郷の世界の各国では新型兵器の配備を望む傾向が強まり、急速に技術開発が進められていた。


――ノイエ・カールスラント メッサーシャルフ社

「Me262の高速化計画はどうだ」

「ハッ。来年中には第3段階へ移行可能と開発チームから回答を得ています」

カールスラント空軍戦闘機隊総監のアドルフィーネ・ガランド少将はメッサーシャルフ社を初めとする各軍需産業を皇帝の勅命を受けて視察に訪れていた。彼女はこの頃、身元不明の子供を一名、養子に引き取って邸宅で育てている日々を送っており、その都合で半年ほど前線からは離れていた。そのため皇帝の寵愛を受けていた彼女は軍務は特別に休暇扱いとされたのだが、新しいもの好きのフリードリヒ四世の勅命により各軍需産業の視察という任務を賜ったというわけだ。彼女が只今視察しているのは世界初のジェット動力戦闘機―戦闘脚―であるメッサーシャルフMe262の次世代型であった。


「ユニットの方は航続距離の改善とエンジン欠陥を是正し、固定武装に55mm“R4M ロケット弾”を翼のラックに搭載したE-2型を、戦闘機の方はHG3のプロトタイプが完成しております。ご覧になります?」

「頼む」

メッサーシャルフ社は未来世界からもたらされた技術開発情報を独自にアレンジ。ストライカーや戦闘機にそれを応用した次世代型の試作に成功していた。その成果をガランドに“ご開帳”した。


「こ、これは……!」

ガランドは驚きのあまり言葉が続かなかった。空軍通常部隊に卸す予定のメッサーシャルフMe262“HG3”の姿は未来世界で1960年代から21世紀前半にかけての長きに渡って現役戦闘機として使用された“F-4”に類似する外見を持っていたからだ。

「高速化計画の現時点の到達点ですよ、これは。速度は1200キロを凌駕し、機動性もあちらでの第二世代相当を誇ります」

それはメッサーシャルフがフラックウルフ社に先鞭をつけようと、技術開発情報をフル活用して造り上げた高性能機であった。生産性を意識して、Me262の胴体を流用しているもの、他の主要部品は全て新造品である。後退翼も相なって、後世の機体と共通するフォルムを持つ機体に仕上がっている。ただし弱点が翼の付け根にエンジンがある点だ。その点をガランドは突いた。

「実験機としては良い性能だが……実戦に使えるのか、あれは。被弾した時に大丈夫か?」

「は、はぁ。理論上は」

ガランドは後世のジェット戦闘機は胴体にエンジンを内蔵するタイプが主流となっている点を差して、同機の翼部基部にエンジンを配した設計をそう評した。確かに戦後第一世代ジェット機に比肩しうる、カールスラント独自の高性能機と言えば聞こえはいいが……独自の理論が果たして的を得ているのか。それへの不安も大きい。実戦部隊に今でも身を置いているから尚更であった。

「まぁ、独自の理論は時としてすごいの生み出すからな。期待はしておこう。」

ガランドはこうして褒めちぎる事も忘れない。彼女はこうして軍部の将官にまで昇進したのだから。次いでストライカーの方に視線を移す。


「フム。後退翼の角度を更に急にしたのか?」

「はい。高速化を狙っての措置です。武装も固定武装を追加してあります」

「何故だ?」

ストライカーユニット“メッサーシャルフMe262・E-2”はそれまでのユニットと異なり、翼部にウェポンラックが設けられていた。R4M ロケット弾を敢行するためだ。ネウロイの急激な進化などによって、それまでウィッチの標準武装であったMG34機関銃、MG131機関砲といった小口径〜中口径の機銃が無力化しつつある事、ネウロイに超重爆タイプが出現しつつある現状への対応策の一環だとの説明を受けるガランド。簡便な手段であるが、的を得てはいるからか、関心は高いようだ。

「我社はこれをすぐに軍部に採用を呼び掛けますが、採用の暁には少将閣下もよしなに」

「ウム。皇帝陛下にも伝えておく」

ガランドは事務的な返答を返した。この日の予定としては、他にも視察をするからだ。フラックウルフ社にも出向くからだ。図らずしも家庭を持ってしまった―養子の育成をしている――ので、あまり時間は掛けたくはないのが彼女の本音であった。


このように、カールスラントの軍需産業は次世代機の開発に躍起になっているが、実際のところはこのストライカーユニットが原因であった。


―― 同時刻 リベリオン合衆国 ノースリベリオン社

「これが我が国の戦局挽回の切り札か!」

「ハイ。XP-86です。これなら憎っくきティターンズの奴らに一泡吹かせられます」

リベリオン陸軍航空軍のヘンリー・アーノルド大将はここのところ各地域でティターンズに苦杯を舐めさせられている軍部の戦局挽回の切り札となりうる、後退翼装備のジェットストライカーユニットを視察し、歓喜していた。彼は海軍で極秘扱いされている不祥事である、モンタナ級戦艦の拿捕・鹵獲事件を独自の手段で調べ、知っていた。そしてティターンズが持ちいるジェット機の威力に驚嘆していた。なので、地球連邦からもたらされた技術開発情報を基に彼が一枚噛んで、急ピッチで試作させたのがこのユニットである。これが後に第一世代ジェットストライカーユニット一の傑作と名を馳せる、“F-86セイバー”である。

「これを数百機も用意できれば戦線は一気に立て直せる。量産型の開発製造を急ぎ給え」

「ハッ、わかっております」


しかし、アーノルド大将のこの願いとは裏腹に、ジェットへの懐疑心を持つベテランウィッチの声が大きかった事、補充を兼ねての既存ユニットの製造の優先の決定が成された事で、1945年夏ごろになってもセイバーの生産は遅々として進まず、本国部隊の試験部隊やシャーリーのような優秀なエースに配備されているだけであった。が、サンフランシスコとサンディエゴへの核攻撃を阻止できなかった事で脚光を浴びるという、なんともアーノルド大将としては不本意な結果となるのであった。




――しかし、その後、リベリオンの創りだしたこの機体は航空技術開発先進国とされたノイエ・カールスラントに扶桑皇国、ブリタリア連邦をも驚愕させ、各国がこぞって空軍主力に採用するという、リベリオン機としては初の快挙を成し遂げるのであった……。これがノイエ・カールスラントの軍需産業を焦らせた原因であった。












――話は戻って、野比家

帰ってきた面々を加えての作戦会議がのび太の部屋で緊急で行われ、物々しい雰囲気に包まれていた。

「そうか……ディナーショーか……」

「ドラえもん、何か良い道具は無いの?」

「お医者さんカバンに……成田山のお守りに耳栓……」

「安産祈願のお守りなんて出してどーすんだよ〜〜!!もうダメだぁぁ〜〜〜!!」

シャーリーが絶望した顔で叫ぶ。ドラえもんのおっちょこちょいは知っているが、関連性が全くないお守り出してどうするのだ。楽天的なところがあるシャーリーをして、ここまで絶望させるジャイアンの歌が凄いのである。

「うろたえるな!みんな、もう避けられないんならいっそのこと、覚悟を決めようじゃないか」

「そ、そうだな……こうなればもうやけくそだ〜!」

「うん!」

「おう!」

ドラえもんのこの一喝で全員の意見が一致を見た。ドラえもんは全員が腹を壊した時に備えてお医者さんカバンで薬を精製する作業に入る。おおげさなようだが、これは本気である。ジャイアンの歌に料理がつくというのはもはや化学兵器を口に入れるのと同じ意味を持つからだ。そしてその途中、午後4時頃にそのジャイアン本人がドラえもんの道具を使って、歌のステージの演出を行うためにやって来た。ドラえもんとのび太はその作業に駆り出されたため、他の面々は体をほぐしたりと思い思いの方法で覚悟を決める。

「なんかジャイアンが歌うだけでこの悪寒……初めてだよ」

フェイトはこれまでの如何な戦いでも経験した事のない圧倒的な何かに身震いがしてくるのをルッキーニに漏らす。ルッキーニも同じ気持ちなようで、

「あれはもう歌じゃないよ。ただの公害だよ……サーニャとかミーナ隊長のが歌で、あればもう超音波だよぉ〜!」

ルッキーニとしてはカンツォーネがあるロマーニャで生まれ育ち、その気になれば歌で一生食べていけそうな実力派が身近にいたために、ジャイアンの歌は歌と認められないようで、酷評している。それにフェイトも同意する。ランカ・リー、シェリル・ノームといった歌姫を間近で見てきた為にその思いは大きいようだ。

「ジャイアンの歌ってどんなレパートリーがあるんです、西沢さん」

「ドラえもんの話だと顔に合わず、歌謡曲調のが多いらしいぜ。アイツ、意外なことにロックは嫌いらしいんだけど、例外的にレッ◯・ツェッペリンを尊敬してるとか……のび太達も読めねえとか言ってたぞ」

西沢が言う。ジャイアンはロックを好まないが、例外的にレッ◯・ツェッペリンを尊敬しているという意外な一面を持つ事を。ジャイアンの歌の趣味はのび太やスネ夫をして、「僕らでも読みきれない」と。フェイト、ルッキーニ、圭子は頷いた。









――空き地


「よし、ドラえもん。舞台を映写してみろ」

「うん」

ドラえもんは万能舞台装置でリサイタルのステージを試写する。演歌歌手が使いそうな暑苦しいステージ、戦前の流行歌手が使うようなきちんとしたオーケストラステージ、ロックバンド、ポップ歌手用、アイドルに至るまでの多種多様なステージが映写される。

「おぉ……いいな。こんないいステージならバックダンサーも欲しいな」

「はいはい」

色々な注文を細かくつけるジャイアン。それに律儀に答えるドラえもん。のび太はスネ夫にジャイアンのステージ衣装のデザインを依頼していた。

「ジャイアンのステージ衣装ぉ!?」

「断るわけにも行かないだろ、何しろ相手はあのジャイアンだしなぁ」

「ヌゥ……」

スネ夫も相手がジャイアンでは断れない事をよく認識していた。そのため渋々ながらもデザインを引き受ける。ジャイアンはそんな親友らの心を知ってか知らずか、意気揚々と発声練習を始め、ドラえもんを息も絶え絶えにさせる。その2日後の午後六時。その運命の時はやってきた。



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