――パルチザンの戦力は陸海空共に、ごちゃごちゃであったが、可変戦闘機については、幸いにも第一級のモノを保有していた。地球本国であったのが幸いし、VF-19AやVF-22Sなどの高性能機を多数入手したのである。

「可変戦闘機は幸いにも、第一級のものが手に入った。僥倖と言うべきか」

「しかし、問題はパイロットです。あれらは一級の機体ですが、マシンポテンシャルを引き出せる者は数えられる程度しかおりません」

「エイジス・フォッカー大佐やイサム・ダイソン少佐がいれば良かったんだがな……」

地球連邦軍の中でも指折りの可変戦闘機乗りである彼らは、地球本国からは離れた空域におり、連絡を取って呼び寄せたい人材である。だが、現状ではそれは無理難題である。彼らは、地球連邦軍の誇る可変戦闘機『VF-19』系列を手足のごとく扱えるエースパイロットであり、藤堂平九郎も軍令部総長として、宛にしていたほどの逸材であった。だが、彼らのように、『じゃじゃ馬』と評のあるVF-19系列を使える人材はパルチザンには数えられる程度。大半は、操縦カリキュラムが緩和されていた時期の士官学校卒の若手だったり、VF-11導入時には退役していた老兵である。そのため、折角の高性能機も『宝の持ち腐れ』の感が否めなかった。

「いかがなされます、閣下」

「当面はこれでいくしかあるまい。厚木基地の奪還作戦までに、少なくとも三個飛行隊分の人数は確保しなくてはな」

パルチザンは航空戦力が決定的に不足していた。空母三隻分の戦闘機や爆撃機こそあるが、パイロットのほうが足りず、空母一隻分を満たすのが精一杯。しかもMSとも喰い合うため、可変戦闘機のパイロットは更に少なかった。そのため、ウィッチなどからも兼任できるものは、兼任するように、通達が出されていた。





――戦闘機が普通に、第一線兵器として使われている光景は、IS世界にいた楯無(刀奈)やシャルにはむしろ新鮮に移った。白騎士事件で既存兵器の多くが相対的陳腐化で、一線で使われなくなって久しい故であり、年代的に、IS以前の戦場など、父母以前の時代の光景としてしか記憶に無い。確かに、ISは旧来兵器より圧倒的に優れるが、それはあくまで、21世紀当時の技術水準での話。この23世紀では、OTMやイスカンダルの存在で、一気に技術水準が向上。機動性に関していえば、『人間が耐えられる限界点』に達して久しい。速力は熱核バーストタービンエンジンの普及により、大気圏内でM.5レベルに達した。そのレベルになってしまうと、IS中で最高速度の赤椿ですら追従不能である。しかも、無人戦闘機『ゴースト』の常軌を逸した機動力はシミュレータで猛威を奮った。箒は愚か、代表候補生のシャルでさえもゴーストの動きを追うこと叶わず、一瞬で撃墜判定を貰ってしまった。今、シミュレータで訓練を受けているのは楯無だが、彼女を以ても、初見でゴースト戦闘機の超絶的マニューバーを見切るのは困難だった。


「は、速すぎる!?これが23世紀の無人戦闘機の速度だっていうの!?」

ハイパーセンサーの反応速度を更に凌駕する、軌跡しか外部の記録モニターに残らないほどの速さを見せるゴースト。楯無もその超絶機動には追従不能であった。23世紀の有人可変戦闘機最高レベルの性能を誇るYF-21と、イサム・ダイソンと対等の腕であったガルド・ゴア・ボーマンの組み合わせすら、特攻に持ち込むのが精一杯だったゴースト戦闘機はシミュレータ上でとは言え、猛威を奮う。ゴーストには一切の躊躇はないのも、楯無を追い込んでいた。

「『刀奈』さんでも、初見ではやはり無理か……。恐ろしいなゴーストは」

「でも、なんとか動きを見切っては来たみたいだ。問題はミサイルだよ」

箒とシャルは、シミュレータの外部機器を通して出る楯無の戦いを確認する。シミュレータで使用されたゴーストのデータは、イサム・ダイソンとガルド・ゴア・ボーマンが対峙した際のもので、ユダシステムは発動済みの状態だ。ゴーストのハイマニューバミサイルはVF-25系にも通じる、最高級品。その速度はハイパーセンサーなどによる補助込みとは言え、楯無も全てを回避することは不可能だった。蒼流旋で撃墜したりするが、破壊力が21世紀の戦闘機に搭載されていたモデルとは根本的に異なる(恒星間航行艦を撃沈するための威力を有する)ため、爆風や破片が瞬く間にシールドエネルギーを消費させる。

「たった二発当たっただけで、この消費量……さすがに数百年先に加えて、オーバーテクノロジー込みのミサイルなだけはあるわね……『沈む床』の使用は見送るしかないか」

彼女は自らのISの単一仕様能力の使用を考えたが、被弾に伴うシールドエネルギーの消費量から見送った。それならばゴーストでも、拘束できる見込みがあったからだ。だが、効果は絶大である代わりにエネルギー消費量が多いため、今回は見送った。その代わりに、少々無謀だが、ゴーストに取りつき、ゼロ距離で蒼流旋を突き立てるという、荒っぽい戦闘法を使った。

「どんなに早くても、取りつきさえすればっ!貫けぇええええ!」

轟音とともに、蒼流旋をゴーストの中枢部へ突き立てる楯無。だが、ゴーストもエネルギー転換装甲を全開にする。こうなると、エネルギー転換装甲の物理強度と、蒼流旋の貫通力の限界点の勝負であった。ドリルが岩に当たるような音とともに、ランスが猛回転でゴーストの装甲を突き破らんとする。シミュレータの様子を見に来たアムロも、これには関心を寄せた。

「やあ。やってるね」

「アムロ少佐」

「あの子が今度、派遣されたという?」

「ええ。更識……刀奈さん。私達の学園の生徒会長で、ロシアの代表です」

「ふむ……。中々、ガッツがあるじゃないか。取り付いて撃破するとは」

「少佐もご興味が?」

「ゴーストはやたらめったら速いからな。あれと真っ向からドックファイトをするには、イサム少佐やガムリン木崎大尉レベルの腕がないと無理だ。速度スペックでは、現有最高レベルだからね。こういう戦い方はありだよ」

アムロは楯無の戦い方を賞賛した。ISの速度では、どうあがいても追いつけない。それならば、あらゆる手段で相手に取り付いて、中枢部を破壊する方法を取る。ISでの選択肢としては悪くはない選択肢である。シミュレータを終え、汗だくで楯無を、箒とシャルが出迎える。(鈴は千冬や本国への状況報告のため、まだパルチザンには帰還しておらず、不在である)

「ご苦労さまです、刀奈さん」

「まさか無人戦闘機だからって、あそこまで速いなんてね。おねーさん、苦労しちゃったわ」

「あれはしこたま速いですから。紹介します。こちら、アムロ・レイ少佐。私の上官です」

「アムロ・レイだ。よろしく」

「更識……刀奈です。よろしくお願いします、アムロ少佐」

一瞬、癖で『楯無』と言いそうになったのが窺える一コマである。彼女は本名で通すと決めたものの、当主を継いでからは長らく、『楯無』という、一族の長としての通り名を使うようにしてきたので、久しく名乗っていない本名での活動はいささか勝手が違うようだ。

「君の戦い方は見せてもらったが、中々良いセンスをしている」

「ありがとうございます」

「だが、何故、強引に取り付こうとしたんだい?」

「シールドエネルギーを消耗し、単一仕様能力を使用可能な容量が残ってなかったからです。私の機体の能力は空間拘束系ですが、膨大なエネルギーを使うので」

「なるほど。危険性が高いのには変わりはないが、君たちの機体では追いつけないからな……微妙なところだな」

「ええ。私達の機体はせいぜいマッハ2から3。とてもゴーストには及びません。それをどうするのかが課題です」

「あれが異常なスペックなだけさ。無人機は人体を考えないでいいぶん、マシンマキシマム的思想で機体スペックを選定出来る。だが、それは非人道的とも取れ、この世界では無人兵器の類は厳しく規制されている」

「どうしてですか?」

「過去の戦争で、MSを無人化した軍隊があったが、戦争は自らの血を流して行うべきだという意見が主流になり、それらは排斥された。BC兵器や核兵器と同様の扱いでね。無人兵器は嫌われるのさ。特にこの時代では、『戦争は人の手でするものだ』という意見が指導層や科学者を中心に起こってね。無人兵器は厳しく規制されているのさ。過去の無人戦闘機の暴走事件も影響しているが」

「暴走事件?」

「ああ、何年か前に起こった『シャロン・アップル』という人工知能アイドルが暴走して、軍部の中枢ネットワークをハッキングして、掌握した事件だよ。それでマクロスシティの初代マクロスが浮上したんだが、イサム・ダイソン少佐、当時は中尉だったな……が単機で強固な防空網をぶちぬいて、これを破壊した。戦闘機乗り達の間じゃ、伝説になってる事件だよ」

――シャロン・アップルに纏わる事件は地球連邦軍内の無人機導入推進派閥を失墜させる要因の一つとなり、パイロット達の育成が再度促進される結果を産んだ。連邦軍の戦闘機乗りの中で、イサム・ダイソンの名を知らないものはいない。戦闘機乗りの誇りを政治屋に見せつけ、パイロットの存在意義を守った存在であると。楯無は、自分たちの世界ですっかり鳴りを潜めた空軍や海軍航空隊の連中が聞いたら泣いて喜ぶ事例だろうと考え、歴史の流れで否定される流れというのを実感し、戦闘機械がどんなに進歩しても、最後は人間がモノを言うという、戦争で起こった揺るぎない事実を噛みしめるのであった。





――可変戦闘機はこの頃、再び機体スペックの上昇が志向されるようになり、限界性能がこの時代としては低い『VF-171』から『VF-19』に再度の転換が進められた。確かにVF-171は『平時の戦闘機』としては必要十分な性能を持つが、戦時では力不足であり、メカトピア戦争とバジュラ戦役を前後して、急速に退役が進んだ。最終的な各地域での稼働率は生産数の30%ほどと、戦時故に消耗されたかがわかる。そして、YF-24系列に比する相対的旧式化で減少傾向に転じていたAVF系列が前線の需要増加で増加に転じ、このパルチザンもF型やP型を中心に複数保有していた。近代化改修も地味に行われており、平均スペックはVF-25系列に見劣りしない。問題は数とパイロットであるのがパルチザンの悩みの種であった。



「今いるパイロットの平均的な腕じゃ、ブレイザーバルキリーを扱うのだって、ヒーヒーいうんだが、今の時勢は性能重視だから、慣れろっつー他ぁねぇな」

「あれ?セイヤさんっすか? どうしてここに?」

「あー、いや……新しい恋を求めてだな」

「もしかして、また奥さんと……」

「その通りだよ、まあ、あんなババアいつでも絶縁してやるがな」

「美人の奥さんなのに、大事にしてやりゃいいじゃないっすか」

「バーカ、美人つっても、10年も一緒にいりゃいい加減飽きるっての。それに、俺の事を尻にしきやがんだぜ……おちおち、羽根も伸ばせやしねぇ」

「またまた……そんなこと言ってどうせ元鞘のくせにぃ」

「なかなかいい女が掴まんねぇんだよ。あやちーが付き合ってくれるなら別だが」

旗から見ると、眼鏡の男があやちーと呼ばれた女性に流し目を送る、どこかでよく見る光景。最初は笑っていた彼女も、表情を固め……どこから出したのか、日本刀を抜刀出来る体制を整えていた。



「アホな事ばかり言ってると……切るぜ?」

「つっ!?相変わらずおっかねぇな。刀しまってくれ」

「だったら馬鹿な事言わないでくれよ」

「わーったよ」


格納庫で可変戦闘機を整備している、30代前半のこの男こそ、ウリバタケ・セイヤ。機動戦艦ナデシコの整備班長であった男性だ。いつの間にかいたようで、たまたま、物資として積まれており、結果的に難を逃れた愛機のVF-19Aの整備をしようと、格納庫にやって来た黒江に見つかったのである。顔に引っかき傷があり、奥さんと喧嘩をやらかした後なのがわかる。


「で、その傷は奥さんに?」

「うっせ!」

「しかし機嫌が悪いのはそのせいだったのか。心配して損した」

「まぁそれもないとはいないが……。あれがな……」



格納庫に駐機されている、件の可変戦闘機―VF-19F――を指さしながらウリバタケは言う。

「パイロットの腕と機体が釣り合ってないんだよ。ブレイザーバルキリーにしても、スペックがVF-171より数段高いんだ。言うならば、ちょっと運転に慣れはじめた小僧が、親戚からいきなり高級なスポーツカーをプレゼントしてもらったようなもんだ。そんな連中がいきなり乗りこなせるか?はっきり言って無理だぜ」

「確かに。今の若手はゴーストにある程度任せる前提で、カリキュラムが緩和されていた時代に教育された世代ですからねぇ。今はバジュラ戦役とかでカリキュラムが元に戻されたけど、効果出るのはあと5年後くらいといわれてますからね」

「VF-19が嫌われたのは、じゃじゃ馬ぶりが量産型でも残ってたからだが、結局はそれが戦時には持て囃されたってのは皮肉だぜ?平時はいらない子扱いで、殆ど『特務部隊』用になってたんだし」

「まぁ、戦時に性能重視になるのなんて、よくあることっすよ」

「お前の時代は特に、航空技術が発達した時代だからな。戦間期の700馬力行けばいい性能が、終戦時はジェットエンジンがレシプロ機関を駆逐し始めようかという時勢になっていた。その帳尻合わせにティターンズの残党は『呼ばれた』んじゃないか?」

「帳尻合わせ?」

「そうだ。大抵の場合は、日本は太平洋戦争で膨大な血を流した結果、しばらくは『戦争恐怖症』になり、有事体制の構築すら21世紀に入っても半ばタブー視されていたほどだ。それに第二次大戦全体で見れば、更に膨大な血がナチス・ドイツによって流されたから、その怨念っていうか、なんていうか……そんな意志が、お前の世界に帳尻合わせを強いたのかもしれん」


――ウリバタケの例えは的を射ていた。ウィッチ世界では人同士の戦争など、ナポレオン戦争以来、(ナポレオン三世時代)殆ど鳴りを潜めている。有事といえば、対ネウロイ戦争を指すようになったのは、1905年の事変以降の話だ。だが、昨今のウィッチ達には『流血の惨事』は重すぎ、良心的兵役拒否者も出始めている。大抵の場合の平行世界で、一億近い死者を出した第二次大戦の『帳尻合わせ』目的のために、ティターンズが選ばれたのは、あながち納得出来ない話ではない。結果的に加速度的に科学力は進捗し、瞬く間に技術レベルは1950年代のそれに達しつつある。科学力の飛躍的な進歩と引き換えの流血は、ウィッチという大量確保が難しい人材の獲得率を低下させ、円滑な『世代交代』を阻害するという悪循環を産んでいく。黒江はそれをこの時に悟り、後(1960年代)に出版する回想録にこう綴った。

『この時に、セイヤさんが話した、帳尻合わせという言葉の意味を私は悟った。確かに母国の科学力は飛躍的に進歩し、ミサイル駆逐艦などが大戦中に実用化された。だが、その間に流された膨大な血は、ウィッチ達に決定的に恐怖心を埋めつけ、世代交代が上手くいかなくなる要因となった。私ら大戦世代が一線から退ける日はいつになるのやら……』

……と。最終的に黒江達が戦線の一線から退いたのは、大戦世代からの交代がようやく終わる1970年代初期頃であったという。結局、50代を迎えて、将官になったことでデスクワークに落ち着けられるようになった年代まで働き通しであったのだ。しかも、その後も定年を迎えて退役するまで、ちょくちょく飛ぶ事があったため、扶桑空軍の21世紀頃に纏められた記録によれば、退役までの飛行時間は大戦世代の誰もが物凄い事になっていたと纏められていた。黒江が現役時に数十年も奔走し、そうまでして守りたかった気持ちはやがて、2000年代に生まれた大姪(黒江の三兄の、遅くに生まれた孫娘)に受け継がれ、2010年代中盤以後に『空軍三羽烏の再来』と謳われる腕っこきウィッチとなる。かつてのエースの血縁者が有能とは限らないが、姪っ子は、髪型以外は、概ね大叔母とそっくりの容貌を持ち、2016年の扶桑海事変の再映画化の際には、大叔母の役で出演したという。



――話は戻って。

「で、お前のVF-19Aだが、アビオニクスのパネルとか取っ替えておくぞ。オーバーホールの時期に来てるし」

「お願いします。イサムさんなんて、独自にVF-25用のスーパーパックで魔改造したって、今さっきメールが来ましたよ」

「何ぃ、あいつ、どうやってやった?」

「なんでも、ヤン・ノイマン博士と仲いいそうで、YF-29の予備機という名目で作っちゃったそうです。写真も添付してあって、これです」

「どれどれ?」

ウリバタケが黒江の携帯(かつての携帯電話とは違う通信方式で通信することで、この時期から復興しはじめたもの)を受け取り、イサム・ダイソンから送られてきたメールに添付してある写真を開く。そこには、VF-19Aをベースに、色々と改造してシルエットが多少変わった機体の姿があった。そのコックピットでガッツポーズを決めている、イサム・ダイソンと共に。

「色々と貼っつけてんな……ん!?25用のスーパーパックのブースターをつけてやがる……無茶苦茶だなこりゃぁ」

「VF-19を魔改造しすぎじゃ?」

「んなの、イサムだから出来る芸当だ!こんな機体、並のパイロットじゃ制御できねーだろうからな。ノイマン博士もすごいプラン作ったもんだぜ。ったく」

――根本的に、VF-19は旧式化も多少進んでいる。延命策という名目で立ち上げたプランはいささか物凄い方法である。VF-25用のスーパーパックを構成するブースターを流用し、さらに機体もアップデートを施すもので、空戦用プログラムはかつてのYF-19のそれを流用し、アップデートしたものを使うなど、イサム・ダイソン専用機の体裁が強い。言うならば『イサム・ダイソン専用VF-19A改』である。正式な計画名はVF-19『ADVANCE』計画という。名目は19の延命策の模索。その試作機という事で完成した同機は、性能水準はVF-19系列最高峰であり、イサム・ダイソンの腕と相なって『強い』。ウリバタケはイサム・ダイソンの腕に依存している嫌いのある、このプランに飽きれつつも感心する。より高性能なVF-25用のスーパーパックのブースターで性能の底上げを図るというのは『ありそうでなかった』のだ。ちなみにウリバタケはナデシコに乗る前からイサム・ダイソンと面識があり、付き合いがある故、イサムを名で呼んでいるのだ。

「ヒーロー達が撹乱してくれているが、こっちもきっかけを掴まないとジリ貧だぜ?厚木基地を奪還するには、距離があるしな、どうにかしねーと」

――厚木基地を奪還する作戦を反抗第一陣と位置づけるパルチザンだが、横須賀と厚木基地がある旧・大和市と綾瀬市(厚木基地は第二次大戦時に日本海軍が本土防空基地として、建設したのが始まりである)には数十キロの遠さがある。それ故、何かのきっかけを必要としていた。パルチザンの誰もが思っている事である。そこにスピーカーで艦内放送が入る。格納庫に艦内放送が入るのは、敵襲か、援軍到着かのどちらかなので、サイレンがなっていないから、後者だった。

『ハッチ開け!援軍が着艦する。受け入れ準備急げ!』

「援軍?どこの部隊だ?」

と、ハッチを開けてみると、ウリバタケも見たことがある、スターウ○ーズのXウイングそのままの戦闘機が着艦態勢に入っていた。パーソナルマークがどら焼きであるので、ドラえもんの機体であるのが容易に分かった。

「なんじゃありゃ!?Xウイングにどら焼きのマークが書いてあるぞ!?」

「もしかして、完成したのか、あいつらの機体。セイヤさん。あれ、たぶんドラえもん達っすよ」

「何ぃ!?どこがどうして、スターウ○ーズのXウイングなんだよ!あいつらと全然、繋がりがないぞ!?」

「多分、スネ夫の奴がSFマニアだからじゃ?」

「ああ〜なるほどな。着艦受け入れ態勢を整えたか?着艦OKサインだ!」

ウリバタケの指示で、着艦許可が降りたドラえもんの機体が着艦する。あの外見に似合わず、模範的な着艦を見せる。ドラえもんの服装は銀河漂流船団の一件時に着ていたそれだ。

「お待たせしました。ドラえもん、ただいま到着〜!」

「意外に上手いなお前。見なおしたぞ」

「これでも実際に冒険で経験済みですから。のび太くん達もすぐに来ますよ」

「お、本当だ」

外を見ると、のび太達の機体が続いて着艦していく。残りの4人の内、意外に上手なのがしずかであった。機体をファンシーな色に塗っているが、実績はスネ夫と並んで、過去にピリカ星のピシアが繰り出した無人戦闘艇と渡り合い、ドックファイトに勝利した実績があるので、ドックファイトに関していえば、高い。

「お前ら、よく来た。あとで軍令部総長に挨拶しとけよ〜」

「はいっ!」

ドラえもん達が戦闘機を完成させ、パルチザンに加わった。ドラえもんのひみつ道具による意外性を加味した戦力に期待するパルチザン上層部であるが、ドラえもんの持ってきた戦闘機が戦闘機なだけに、じっくりと調査を受けた後に、パルチザンと協力関係にある新星インダストリー社の手でリバースエンジニアリングがなされ、それを元に新造機が造られ、コスモタイガーや可変戦闘機の穴埋めとして、複数機が生産され、貴重な航空戦力として使用されていくのであった。



※あとがき

再度の修正に伴い、黒い鳩さんにウリバタケ・セイヤの口調を監修してもらいました。どうもありがとうございました。 909



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