――西暦2202年時点で地球連邦軍最強の船はは宇宙戦艦ヤマトである。だが、パルチザンは、蘇った沖田十三の口から知る。ヤマトの妹であり、極秘扱いであった、ある軍艦を。



――移動司令部 沖田十三の私室

「提督、それは本当なのですか?」

「うむ……これは本来ならば、一級軍機に属する事項だ。だが、今こそ語るべき時だ。かの軍機の存在を」

加藤武子、高町なのは、アムロ・レイ他のパルチザン幹部らに沖田十三は語る。その艦に纏わる話を。『大和は國のまほろば』という、日本書紀の景行天皇の望郷歌に由来する名を持つヤマトの影武者の存在を。

「事の起こりは第二次大戦の後期に遡る。当時の大日本帝国海軍の大艦巨砲主義派閥は、極秘に建造を継続していた大和型四番艦の111号艦を改良して、超大和型戦艦計画を実現しようと目論んだ。始めは非公式なものだったが、戦局がいよいよ以て傾いた『マリアナ沖海戦』の直後に公式に認可され、111号艦を改良しつつ建造した。完成は皮肉な事に、それが原因で、予定されたレイテ沖海戦には間に合わず、坊ノ岬沖海戦の数ヶ月前にずれ込んだ。追い詰められていた帝国海軍は、その艦に従来の慣例であり、規則だった旧国名を与える事をやめ、例外として、和歌に由来する艦名を与えた。それがまほろば型戦艦だ。俗に言う、超大和型戦艦がそれだ」

「しかし、沖田艦長。当時は既に大和型の砲塔運搬船だった樫野は戦没していますし、そのような砲塔を運搬出来る船はもう……」

「呉の地下で作ったのだよ。それならば樫野が無くとも可能だ。戦前に呉の地下に作った秘密工廠で、111号艦は改めて造られ、最終的にまほろばとして生を受けたのだ。米軍が持ち帰った砲身は、その時の余り物だそうだ」

「なるほど……。その『まほろば』は最終的にどんな艦容で完成したんですか」

「『ヤマト計画』発動時に発掘された工廠の記録によれば、当初に破棄されたとされた最大案よりも大きな艦容で完成を見たとある。一発逆転のために、個艦性能を重視した代わりに運用性を半ば放棄したのだろう。当時はもう、連合艦隊など形骸化していたからな」

――その戦艦はまほろばと言った。戦局挽回の切り札として期待されつつも、初実戦が坊ノ岬沖海戦にまでずれ込み、坊ノ岬沖海戦の後は『存在していない』扱いとされた。だが、1990年代頃に『大和によく似た幽霊船』としての目撃情報があり、ヤマト計画発動時に、ある女性を通して、連邦軍に提供され、ヤマト計画の護衛艦(ヤマトは当初、移民船として建造されていたため)として改装され、以後は地球連邦軍に属しつつ、ヤマトの影武者として行動していたのであると、沖田は告げる。

「まほろばはヤマトのテストケースとして完成を見た。素体が超大和型戦艦なので、完成時のスペックはヤマトよりも強力だ。ヤマトが完成後はヤマトの影武者として行動し、ヤマトを助けていた。白色彗星帝国の際は参陣が遅れたがために、ヤマトの力にはなれんかったが……私は地球占領時には、まほろばで療養していたために、運良く逃れることができたのだ」

沖田十三が語る、『ヤマトに寄り添い、ヤマトを守護する者』の存在。ヤマト計画の全容がここで明らかになったのだ。そのテストケースで改造された超大和型戦艦こそ、ヤマト型戦艦の第四号艦(2201年以後)『まほろば』なのだ……。




――そのまほろばは遂に、パルチザンの前に姿を現した。東京港に入港してきた、超弩級戦艦こそはまほろばである。ヤマトよりも、原型の大和型の面影を残す檣楼を持ち、独特な波動砲口のデザインな船は、ヤマトのテスト艦を思わせる。藤堂と沖田以下の首脳陣がまほろばに乗艦し、事の詳細を説明しに行く。なのはは、ヤマトの更なる姉妹艦の存在はともかく、地球の守護者が余りにも多いことに疑問を抱いた。


――なのはの自室

「ねぇ、ドラえもん君。あたし、凄く疑問に思うんだ。なんで、地球を守るヒーローとかがこんなに多いわけ!?多すぎて、もう何がなんだかわかんない〜〜!こんなにいるんなら、アメリカンコミックのヒーローとかいても驚かないよ〜!」

「確かに、キャプテン・アメ○カとか、スパイ○ーマンとか居ても不思議じゃないさ。こんなのが第二次大戦中に生まれたそうだから」

「……!?キ○イダー?」

「これはアカレンジャーさん曰く、超人機メタルダーっていう、帝国陸軍の最終兵器だそうだよ」

「この世界の日本軍はいったいどうなってんの!?つかどうして負けたんだ〜!」

「物量差はどうにもできなかったんだろうね。どんな超技術を持ってても、それを使うタイミングの決断とかが問題だよ。日本軍はタイミングを誤った。マリアナ沖海戦やレイテ沖海戦が終わった後じゃ、どんな超兵器でも日本軍を逆転勝利させるのは無理だよ」

「……確かに」

ドラえもんのいうことは確かだ。例え超人機メタルダーや海底軍艦轟○号、鉄○28号を作ろうとも、それ一機では太平洋戦争を逆転勝利に導くのは無理難題である。なのはは納得する。どんな超兵器でも、バックアックが無ければ尻切れトンボになるだけだからだ。

「僕達も最初に鉄人兵団と戦った時に、しずかちゃんとリルルがどうにかしてくれなきゃ死んでたし、用意は万端にしといたほうがいいよ。バウワンコ王国の時なんか、ジャイアンのおかげでワニに食われそうになるわ、原住民に追い出されるわ……」

「大変だったんだね、あの冒険」

「ああ。あの時はしずかちゃんがスーパー手袋で大暴れしてね、見せたいくらいさ」

「そういえば、コーヤコーヤ星の冒険は、最後どうなったの?」

「どういうことだい?」

「いやさ、あたしが昔に見たアニメだと、ロップル君が共同でギラーミンにとどめを刺してたんだ。漫画だと違ってたけど」

「こっちはのび太くんが一騎打ちで倒したよ。あれはもうカッコ良かったよ」

「へぇ〜」

「僕たちは少し不思議な冒険を繰り返したけど、君たちの体験だって、『気ままに夢みる機』のカセットにしてもいいくらいのものじゃないさ」

「あたし達のもすごいけど、前に教導隊の新人の研修で映像見せたら、『現実離れしてる』って言われたんだ。あたしとしては、なんとも言えない気持ちになったよ」

「そりゃ仕方ない。なのはちゃんは子供の頃には、並の魔導師よりすごいマニューバーできてたんだし、闇の書相手に物凄い戦いをしてたんでしょ?」

「うぅ〜それ言われると立つ瀬ないなぁ」

なのはの魔導師としての才覚は誰もが認めるものだが、教える立場になると、勝手が違う。その自覚は、ミッドチルダ動乱中の出来事で再認識した。平行時空の自分と会った事で、自分は『教える立場に必ずしも向いていない』と再認識したのだ。元来は前線で指揮を取るか、ブイブイいわす質である故だ。ドラえもんのツッコミが的確なので、思わずしょぼんとしてしまう。

「ドラえもん〜」

「ん?のび太くんか。なんだい?」

「今、タイタン基地から入電があって、月のスカルムーン基地の交信が激しいから、解読したら、奴らの本星が崩壊したらしいんだ」

「何だって!それで原因は?」

「ベガトロンエネルギー工廠が大爆発を起こして、連鎖反応で衛星ごとぶっ飛んで、その破片が降り注いで、放射能汚染されたらしい。残存軍はすべて月に向かってきてるって」

これには一同、まさかの事態だった。ベガ星連合軍の最前線であるスカルムーン基地はもはや死に体も同然で、今次大戦が無ければ、今頃にはUFOロボグレンダイザーを基幹としての一大作戦が予定されていたのだ。しかし、本星が死の星と化した以上、その総力を太陽系に集結させるのは必至だからだ。

「それで、大介さん達はなんて?」

「北海道で円盤獣を倒して、今はこっちに向かってるって。いくらグレンダイザーでも単独では無理だからね」

グレンダイザーの能力は高いが、いくらグレンダイザーと云えど、単独でのゲリラ攻撃には限度があるため、パルチザンへの合流を選んだと、のび太の口から語られた。ベガ星連合軍が総力を地球に注ぎこんでくるのを睨んでの選択だと言える。

「予想外だね……ベガ星の連中、地球を奪うつもりなんて」

「彼らにはもう帰る土地がないんだ。暗黒星団帝国と潰し合ってくれるのを祈るしかないよ。こっちはまだ戦力が整ってないんだし」

「うん。こっちは精々、一個旅団くらいの人数しか居ないしね」


この時代はかなりオートメーション化が進められたため、宇宙戦艦の要員はかなり少なく済む。そのため、艦載機要員や整備要員を除いた戦闘要員はヱルトリウムなどの特殊な軍艦でもない限りは3桁台が多い。そのため、パルチザンの戦闘要員の歩兵戦闘要員の数は小規模の旅団規模でしかないのも、大規模攻勢を控えているのが現状なのだ。機動兵器だけで戦闘はできないのだ。

「他の連邦軍と連絡は?」

「硫黄島の第45戦闘航空隊、ハワイの第58空間騎兵隊がこっちに向かってくれるそうだよ」

「空間騎兵隊?」

「昔の海兵隊の後身みたいな部署なんだってさ」

「なんで海兵隊って名乗らないの?」

「ジオン軍の海兵隊が『汚れ仕事』専門のダーティな部署だったから、マイナスイメージが強まったんだ。そこで従来の海兵隊を解体した上で再編したのが空間騎兵隊なんだって。白色彗星帝国との戦いの戦功が有名だってさ」

「空間騎兵隊、かぁ……」

――空間騎兵隊は、かつてで言う所の海兵隊である。有名な部隊は、斎藤一率いる中隊で、22世紀の化石と揶揄されるほどのバンカラ男らが集っていた。斎藤一の事を資料で知っているなのはは、空間騎兵隊の気質をどことなく悟っていた。粗野ながらも義理堅い男たちの集い。昔の帝国海軍陸戦隊や日本国防軍海兵隊の気質と米海兵隊の気質を足して二で割ったような感じだと。地球連邦軍の母体が、旧・日本国防軍である故の結果である。そこのところに、統合戦争の結果を垣間見たなのはは、つくづく、この世界は『日本が世界の覇権を握った世界』だと認識した。

(確かに、超人機メタルダーなんて化け物を大戦中に作れるんだ。ひみつ道具を作っても、不思議じゃないよね。逆に言うと、それを使うタイミングを誤ったのが敗因なのかなあ?)

この世界の日本が何故、太平洋戦争で負けたのか?超人機メタルダーを作れる技術がありながら、それを使うタイミングを誤ったのか?気になる所である。







――ここで、超人機メタルダーについて解説しよう。超人機メタルダーは、太平洋戦争末期に帝国陸軍が起死回生の最終兵器『超人機』として、制式採用していたロボット兵器である。計画がマリアナ沖海戦後だったために、戦争には間に合わなかったが、その40年後に起動され、当時に暗躍していた悪の組織『ネロス帝国』と死闘を繰り広げた後、姿を消したとされるヒーローである。計画では『死なない兵士』として、量産が予定されていたというが、完成したのは試作機のみだった。彼の姿を見た旧軍関係者(メタルダーが活躍した当時はまだ、旧軍の佐官や将官が生き残っていた)は一目見て『超人機』と分かり、涙を流したという。(旧軍関係者は本土決戦に備えていた者も多かったため)彼のその後の行方は誰も知らない。どこかで復活の時を待ち続けているのか、それとも……?








――パルチザンの前に姿を現した戦艦まほろば。ヤマトに酷似しているが、現在の姿で使われている技術は地球連邦軍の技術レベルを凌駕しており、パルサーカノンという砲を砲塔に使用していた。このパルサーカノン、この時代の技術では複製も不可能な高度さを誇り、まほろばを誰が更に改造したのか、またパルサーカノンを誰が提供したのか?謎は多かった。同時に、とある戦艦が暗黒星団帝国の間で噂になっていた。




「カザン司令。ここ最近、ドクロのレリーフを持つ戦艦が目撃され、我軍を脅かしております」

「何、ドクロだと?」

「ハッ。その戦艦は地球製と思われますが、波動エンジンのエネルギー反応がヤマトよりも遥かに強大なのです」

「何?」

「これがその戦艦の映像です」

暗黒星団帝国地球占領軍司令官のカザンは部下から、ある戦艦について報告されていた。その戦艦はゲリラ攻撃で軍の兵站を脅かしているということだが、明らかに軍隊のそれとは思えぬデザインだった。宇宙海賊のそれとしか思えぬほどに華美な後部を持っていた。

「この戦艦がどうかしたのか?」

「ハッ。実は本星から配備された『デリアデス』がその戦艦に撃沈されまして…・・・」

「バカな!プレデアス級の装甲はショックカノンを弾き返せるほどに堅牢なのだぞ!?」

驚きを顕にするカザン。彼らの最大最強の戦艦「プレデアス」級はショックカノンをも弾き返す堅牢な装甲を売りにしている。だが、映像の戦艦はそれを一撃で真っ向から貫いて、苦もなく撃沈しているからだ。

「この戦艦は地球の秘密兵器と思われますが、神出鬼没なもので、補足できません」

「なんとしても捕まえよ!ヤマトのみでも苦労して探しているというのに、ええいもう!」

憤慨し、ヒステリックにバンバン机を叩きまくるカザン。サイボーグ化されたのにも関わらず、プルプルと手を震わせ、額に青筋立ててがなり立てる(顔は生身だが)姿はかなりみっともない。



――彼らは知る由もないが、その戦艦は遥かな未来からやって来た超兵器。宇宙戦艦ヤマトを守護するために来訪した、その戦艦の名は「アルカディア号」。その性能はこの時点では正に『比類なき』超高性能を誇り、時間跳躍すら可能である。アルカディア号は、今まさに、23世紀の地球圏にその勇姿を現していた。暗黒星団帝国の野望を打ち砕き、先祖の遺訓を守り、盟友である『大山トチロー』との約束を果たすべく、キャプテン・ハーロックは23世紀の地球に、その海賊旗を掲げる。彼は、小惑星イカルスから宇宙戦艦ヤマトが発進するのを確認すると、笑みを浮かべる。その笑みは、彼らの時代では『遥かな過去の英雄』と讃えられる、初代宇宙戦艦ヤマトを目にした事への喜びなのか?それは分からない。

「よし、前方の暗黒星団帝国艦隊を中央突破する。1000年近く前の骨董品だが、手加減する必要はないぞ!」

人知れず、アルカディア号は咆哮を挙げる。遥かな未来の超兵器群を駆使し、暗黒星団帝国の艦隊を撃滅していく。それは往時のヤマト(ガミラス戦時)を思わせる圧倒的な光景であった。パルサーカノン砲塔が三方を指向し、咆哮する。パルサーカノンは暗黒星団帝国の如何な艦艇をも一撃で屠り、その威力を見せつける。

「速度、31宇宙ノットに上げろ!艦隊旗艦を拿捕するぞ!」

アルカディア号はフォルムこそ第二次大戦までの超弩級戦艦を引き継いでいるが、前近代で絶えた衝角戦法も使える。そして、乗り込んで拿捕する戦法が海賊らしさを際立たせている。その様子はヤマトからも確認され、古代たちから見れば『正体不明の海賊船が暗黒星団帝国を圧倒している』ようにしか見えないが、真田志郎はすぐにそれが地球製であることを見抜いた。

「あの戦艦は地球製だ」

「ええ!?」

「見てみろ、あの檣楼と海賊旗……どう見ても地球のものだ」

「ほ、本当だ」

「しかし、ショックカノンでも波動カートリッジ弾を用いなくては、貫徹不可能なあの装甲をいとも容易く……。いったい何者なのだ?」

真田は映像パネル越しに見える、アルカディア号に唸る。ヤマトを遥かに超える戦闘能力を持つ海賊船は何者なのか?その謎が気になる真田だった。ヤマトの戦闘能力は確かにこの時期には高まったが、さすがにあそこまでの戦闘は展開できない。硬化テクタイト版の装甲板が持たないからだ。アンドロメダでも持たないと言わんばかりの集中砲火を物ともせずに突き進み、衝角を展開するその姿に、何かのひらめきが生まれた顔をする真田だった。これぞ、正にコロンブスの卵であった。



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