――連邦軍のジム系MSは、ジェガンの現役期間が長期に渡ったため、デザリウム戦役の際のゲリラ行動の際も多数が使用された。パルチザンは正規の補給の手段が乏しい『ゲリラ』部隊であったので、外装の損傷が激しいジェガンをそのまま修復する事は難しく、ガンイージなどの外装やパワーユニットを使用して再生させる選択を取った。


――戦闘中の空母

「ジェガンを改装ですか?」

「そうだ。正規のパーツは少ないから、数が多い他の機種のパーツを使って改装してるのさ。パーツを作って直す時間も無いしな」

整備兵らは、艦隊の艦載機を手っ取り早く修復するため、ニコイチなどの手法を用いた。その内に生まれたのが、ガンイージ系の頭部をジェガンの胴体部にくっつけ、腕部にビームシールド発生装置をつけ、パワーユニットをガンイージ系に換装したものだ。

「口金と圧力規格さえ合ってれば、部品はメーカー気にしなくて良いよ。どうせ汎用規格パーツ使ってんだから。あ、RXナンバーの機体も古いヤツは同規格の汎用品使った方が純正パーツよりパワー出るよ、装甲だけは専用が品質高いけどね(笑)」

「接続が合ってればなんだって良い、チェックマシンかけて定格出れば良いんだよ!」という技師やメカニックマンのやり取りで具現化したそれは、ジェガンR型とガンイージ/ガンブラスターのニコイチとも言えるそれは、意外な高性能を発揮。作業機械としての効率も小型機より良かったため、彼らの設計図は地球上のパルチザンにも送られ、沖田と藤堂も即刻採用を決めた。ジェガンの近代化プランという形で、ジェガンの損傷機の修理ついでの改修が採択された。それはコードネームで『F』とされ、戦いの中で個体数を徐々に増やした。後に自由な発想で生み出された機体という事で、『フリーダム』という正式名が与えられた。このデザリウム戦の後に、ハイローミックスのローの役目を長らく担ってきたジェガンの枠を担う改修機として、『RGM-196』の形式番号を与えられ、状態がいいジェガンからの改修が本格化していき、2210年代にはジェイブスの補助機という枠で主力を担っていくのだった。



――突撃を敢行するヤマト。神通が操艦しているため、昔年の第二水雷戦隊さながらの敵中突破であり、百戦錬磨のヤマトクルーも血が騒ぐ程であった。

「鳥海さん、舷側ミサイルを!」

「はいっ!」

砲術指揮席で、鳥海がミサイルの発射動作を迅速に行う。艦娘であるので、砲塔との同時操作も難なくこなせる。元々、直観的操作向けになっていた事もあるが、それを差し引いても鳥海の操作は迅速で、結果としてヤマトは臨時メンバーにも関わらず、ベストメンバーがいる際と同等の戦闘能力を発揮した。神通の恐るべき敵中突破の操艦は、暗黒星団帝国側からも驚かれていた。

「て、提督!ヤマトが突っ込んできます!過去のデータ以上に中央突破をしてきます!」

「何ぃ!?ヤマトめ!狂ったか!?全艦、ヤマトを狙え!護衛艦や艦載機は後回しにしろ!味方を巻き添えにしても構わん!ヤマトだ!奴さえ落とせば、後は烏合の衆となる!」

暗黒星団帝国軍は味方の損害を二の次にしても、ヤマトを集中打した。ヤマトの波動砲は彼ら最大の脅威であり、そこと波動エンジンのノズルを損傷させる事に全力を注いだ。それを見ぬいた古代は、艦載機隊を率い、ヤマトを援護する。

「アルファ編隊は俺に続け、艦首下方の敵の掃討だ。ブラボーは艦尾側、チャーリーは遊撃に回れ!」

「了解!」

この時、古代が直接率いるアルファ編隊には、護衛機として、山本玲、加藤四郎の両名が配属されていた。かつての幹部級搭乗員の縁戚なので、ヤマトに配属されて日が浅い新参の隊員からは反発も多かった。だが、二人が栄光のヤマト艦載機隊を支えた両雄の血を受け継ぐ事もあり、意外にも坂本茂が率いていた当時から在籍する者や、白色彗星帝国戦の生き残りなどの古参からは歓迎された。因みに、その内のチャーリー編隊にはドラえもんとのび太らとウィッチ達が配されていた。(IS組はチャーリー編隊に回された)

「のび太、お前、どうやって5機もいっぺんに落とせるんだよ?」

菅野がのび太に聞く。菅野はコスモストライカーを履いて飛んでいるので、ウィッチにはお馴染みのスタイルだ。

「なあに、密集したところで真ん中の奴を落とせば、弾薬とかの誘爆で落ちますよ」

「なんだよそれぇ〜!長く実戦でやってるけど、マルセイユ中佐だってしてないぞ、それ!?」

ウィッチ達も普段の空戦で、多数を相手にする時はあるが、一機づつ落としていくのを心がけている。のび太は冒険の経験と、小学生(当時)であるため、シューティングゲームの発想を持ち込むなどし、空戦のドグマに囚われない奇抜な発想で戦うため、早くもエースパイロットの要項を満たしていた。一方のドラえもんは対艦戦で才能を発揮。さながら、史実真珠湾攻撃の時の雷撃隊隊長『村田重治』少佐の如き度胸を見せていた。

「お、おい!ドラえもん、それ以上近づくと、は爆発に巻き込まれるぞ!早くミサイルを撃て!」

「僕の腕だと遠距離からだと当たらないんで、近づくしかないんですよ」

「だからって、これ以上は危険だ!」

ドラえもんは元々が子守り用なので、個人戦闘においては『そこそこ』、可もなく不可もなしな戦績であった。射撃はのび太に劣り、ジャイアンよりはマシな、スネ夫に多少劣る程度なので、対戦闘機よりも対艦に才能を発揮した。黒江も思わず、無電で焦るほどの近距離に近づいて撃つので、気が気じゃないのだ。

「今だ!」

ドラえもん機(コスモタイガーに今回は乗っている)がミサイルを発射し、離脱する。黒江はロングライフルで対空パルスレーザーを潰し、ドラえもん機の逃げ道を作ってやる。

「ったく……ヒヤヒヤさせやがって。でも、あれ、まるでウチの海軍の『ブーツ』さんみたいだなぁ」

黒江が口にした『ブーツ』とは、ウィッチの世界では希少と言える雷撃専門ウィッチで、『雷撃の神様』、『扶桑皇国海軍の至宝』とされる村田重子中佐の事である。太平洋戦争では、ストライカー『流星』が試作段階で中止になり、ジェットストライカーに機種転換してからは水平爆撃もこなすようになり、1946年〜1947年前後では、海軍の爆雷撃ウィッチでは、F-4Eをいち早く乗りこなしている。黒江も欧州にいた中尉時代、その手腕を目にしていたため、口に出したのだ。

「おっと、私も仕事しないとな。唸れ、聖剣!カリバーン!!」

自身も宿したばかりの聖剣『カリバーン』で、敵艦を両断する。この戦争でカリバーンを使う事で、聖剣の成長を促す黒江。それは仮面ライダー三号に為す術もなく重傷を負わされたことへの雪辱を望む復讐心と、彼にやられた事で再発してしまった自身のトラウマを超えたいという、切なる願いの発露の両方でもあった。




――周囲には明るく振る舞う彼女だが、内心では、仮面ライダー三号によって再発させられたトラウマのフラッシュバックに悩んでいた。それを完全に克服するのは、ある時に追い詰められた際に、彼女の心の拠り所となった仮面ライダー達が、『どんなことがあろうとも人々の光であり続けようとする』事を思い出すまでで、ここより少し先の事である。このように、彼女の聖剣が新たな『覚醒』を迎えるまでには、まだ多くの時間と経験を必要とするのだった。フェイトの肉体を動かす、かつての黄金聖闘士『獅子座のアイオリア』からも、『お前の聖剣はまだ未熟だ。それ故に伸びしろは大きい。聖剣がどのように成長するかは、お前しだいだ』と評されており、黒江の心に巣食う恐怖を見ぬいていた。それ故、自身でも『仲間を失う事』への恐怖心があるのを感じつつも、勝利への渇望があるという気持ちも強く、彼女はそれに悩んでいたのだ。

(思い出すんだ、光太郎さんが言ってたじゃねーか……『友情を切り裂く悪の使者は、この俺が許さん!!』って……私があの人達の何に憧れて、背中を追いかけたのかを…!)

黒江は激戦の最中ながらも、歴代仮面ライダー達の言葉を思い出す。本郷猛、一文字隼人、風見志郎、結城丈二、神敬介、アマゾン(山本大介)、城茂の栄光の7人ライダー……。

『イエース、仮面ライダーだ!貴様らのような歪んだ文明を打ち砕く大自然の使者だ!』

『たとえ何があろうと子供達の夢を守り、希望の光を照らし続ける。それが俺達の努めさ』

『命ってのは賭け時がある……今がその時だ!』

歴代ライダー達の言葉が脳裏に浮かぶ。そして、どんな悪にも屈しない心の強さに憧れたと気付く。そして……。

『俺は自分の記憶も、痛みも、哀しみも忘れた事がある。だが、最初に思い出したものがある……それは怒りだ』

『俺たちが来たからには、もう一人も死なせはせん!』

最後に浮かんだ、本郷猛=一号ライダーの言葉と、クライシス帝国の軍団を前にして立ちふさがる勇姿。そう。RXもそうだが、仮面ライダーは大自然の力を加護に持つ戦士なのだ。彼らを象徴するのは『風』――。そう黒江が思い立った瞬間、宇宙空間にも関わらず、右腕に『風』の力が集まるような感覚を覚えた。右腕に集まったその力こそ、彼女の『勝利を渇望する意志』と『歴代仮面ライダー達への憧れ』が、彼女の聖剣の真の姿の片鱗を出現させたのだ。その風を開放する事で、宇宙空間にも関わらず、暴風を吹き荒れさせ、敵艦隊を吹き飛ばす。

「う、おおおおおおおっ!」

無我夢中で聖剣を放つ。その時の輝きはカリバーンとしての淡い光でなく、エクスカリバーとしての眩しいばかりの緑色の輝きだった。これをヤマトの艦内から目撃したアイオリア(inフェイト)はこう呟いた。

「あれは山羊座の闘技たる『エクスカリバー』……シュラのそれとは属性が違うな。あの子独自に覚醒させたものか。紫龍が見たら、どんな顔するか?」

と、微笑う。それは既に死したはずの彼が、自分らの次代の聖闘士の覚醒を垣間見れたことへの嬉しさと、図らずしもシュラの後継となった少女へ伝えたい何かがあるのだろうか。

『勝利を約定せし聖剣!!エクスカリバ―――ッ!!』

黒江自身にこの時の記憶はない。だが、口を突いて出たのだ。エクスカリバーと。それは高ぶった小宇宙が、彼女が担う守護星座の先代らの記憶を呼び覚ましたからであろうか?それは分からない。

「シュラよ……お前が生きた証は、紫龍と、あの子に受け継がれたようだな」

アイオリアはそう言うと、その場を後にする。黒江がエクスカリバーを初めて使ったのに、小宇宙が共鳴したのか、フェイトの体から溢れんばかりのオーラを迸らせていた……。




――戦闘はヤマト艦隊の奮戦もあり、次第に連邦軍が逆転し始める。第7艦隊では、でっち上げたニコイチ機が発進し始める。

「てきとーにでっち上げたが、性能は確かだ!行ってこい!」

ガンイージの頭部をジェガンの体に乗せ、腕部にビームシールド発生装置を無理矢理にくっつけた急造の修理機が発進する。コードネームはF。そのため、艦隊司令部は出来を心配するが、意外な高性能を見せた。ビームシールド完備なため、艦砲をある程度防げる上に、20m級なので、小型機の難点である『実弾兵器への耐性と物理的強度』も問題にならない。また、大型なので、火器も小型機が携行できないハイメガランチャーなどを持てるという利点が生じた。

「この機体、ジェガンの体にジャベリンとガンイージ系のパーツ入れただけなのに、ジェイブス並のパワーが有る。流石だ!」

乗った兵士らは口々に、ジェガンの素直さと、新鋭機のパワーを併せ持っていると絶賛した。スラスターそのものはジェガンR型から弄ってないが、推進剤を最新鋭機用のものに入れ替えたため、使用効率が3割アップし、以前より効果的に機動力を発揮できるようになったのも大きかった。

「落ちろ!」

ハイメガランチャーを放ち、暗黒星団帝国巡洋艦を轟沈させる。火器は機体によってまちまちであったが、それでも20m級機であるので、質量も武器に出来る強みがあり、体当たりで戦闘機を潰すものも出てくる。

「各機、あんまり手荒に扱うなよ。パッチワークのでっち上げだ。何があるかわからん」

「了解」

その機体は彼らによって『フォクシー』というペットネームがつけられた。以後は火器の統一が図られ、工場を持つ艦艇で改修されるようになる。後にこのフォクシーは、『RGM-196Aフォクシー』という名で制式採用されるが、改修機故に多少の性能のばらつきが生じた。そこで新規に製造する事が決定し、ジェイブスの設計を取り入れた上での変更点が生じたので、『RGM-196Cフリーダム』という名に改められた上で製造され、2210年代以後の連邦軍を担う次世代機として君臨していく。元は改修機である機体が、結果として主力の一翼を担う存在となるのは連邦軍の歴史では珍しくは無いが、今回は現場主導であるのが大きな違いで、後の時代に『RGM系の異端児』と呼ばれる機体となるのだった。


「ん?何あれ」

「ガンイージの頭だけど、ジェガンの体だ。すげえ継ぎ接ぎ。急いで直したんだな」

と、シャーリーとハルトマンが感想を漏らす。フォクシーはパッチワーク感ありありで、現地改造機、あるいは急造機というのがまるわかりであった。だが、動きは本物であり、意外な働きを見せる。

「ヤマト艦隊の艦載機部隊へ。こちら、第七艦隊所属空母『レンジャー』の部隊だ。現地急造だが、なんとか上がってこれた。こいつで戦線に加わる。機体識別名はさしずめ、『フォクシー』としておいてくれ」

「了解。データベースに登録する」

――こうして、フォクシーはパルチザンの識別コードと形式照合データベースに登録された。ジェガンの体とガンイージ/ジャベリンの血肉を持つフォクシーの初陣が始まるのだ。第7艦隊はヤマトを助けるべく、機体の修理を急いだ。そういう特殊な状況下で生み出された機体であったが、メカニックマンと技師も想定外の高性能を秘めていた。後にフォクシー/フリーダムを語る上では外せない、現場のアイデアは、ジェガンを代替する機体の不在に悩んでいた連邦軍に『第二の福音』をもたらしたと、高く評価されるのだった。



――パルチザンが生み出したこの機体は、再編後の連邦軍の救世主となる『RGM系の異端児』となり、ジェイブスとともに2210年代以降の連邦軍の第一線を担うとは、誰が想像出来ただろう。私も想像だにしなかった結果であるが、なんだか、自分の子供が出来た気分だった。私はフリーダムの開発プロジェクトに加わり、サナリィやアナハイムの技師を前にして、フォクシーを語ったのだ。自分がどうやってこの機体を産んだのかを――

空母「レンジャー」でフォクシーを生み出し、後にサナリィに出向して、フリーダムの開発プロジェクトを主導する技術士官の回想録より抜粋。彼と仲間が生み出した機体が、やがて『RGM-196』として日の目を見、軍の一翼を担った事は、連邦軍内でも伝説として語り継がれてゆくのだった。



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