ドラえもん のび太とスーパーロボット軍団 第二部


――デザリアム戦役の『やり直し』は如何なものであったか。研究所に予め、地下で繋がる通路を建設させ、更に、ビックファルコンと南原コネクションに戦闘母艦『マグネバード』を建造させ始める。これは黒江と智子がスーパーロボット用の母艦を欲したためで、基地でも有るビックファルコンに代わる正式な母艦、ガイアのダイモスなどとも共同戦線を張れる母艦という事で建造される『マグネバード』。ダイ・アナザー・デイ作戦の最中に設計案を提出し、真田志郎の権限で建造されていた。また、アンドロメダ級戦略指揮戦艦の正式な二番艦であったが、旧式化でパーツ取りにされていた『カシオペア』をしゅんらんと同規格に改造し、秘匿しておくなどの事前の準備も行い、デザリアム戦役を迎えた。




――今回のやり直し時は、政府中枢を制圧されると同時にゲリラ作戦に移行、宇宙艦隊含めてのパルチザンの組織だっての結成に成功し、事前に主要メンバーを集めていたため、すぐに反抗作戦に移行できた。今回は黒江の指令で、シンフォギア装者の代表という形で、調が事前に呼び寄せられており、そのままパルチザンに加わり、反抗作戦に加わっていた。今回はデザリアムを撹乱すると称し、黒江は容姿を頻繁に変えており、フェイトがアイオリアに憑依された状態で、宇宙艦隊の増援に向かう事が決定された日には箒の容姿を取っていた。


――その日――

「お前達の代わりに、IS学園に行って報告しに言ってくる。お前らに離れられても困るからな」

「だ、大丈夫ですか?織斑先生と渡り合う自信は?」

「一輝を見ろ、箒。あいつ、声と雰囲気だけで渡り合ったぞ?実年齢はミドルティーンだってのに」

一輝は声と雰囲気が思いっきり、10代のそれでは無いため、実年齢を知らせたら驚かれた例に当たる。一夏も『お、俺より年下ぁ!?あの貫禄で!?』と腰を抜かしている。それを踏まえ、実年齢が箒の生きていた時代では、100歳代に到達している事、口が回るのと、演技力に自信があるため、肉体を完璧にコピーしている以上、身内でもなければ違和感を持たれる心配もないと、黒江は大笑し、そのままゲートを使い、箒の姿でIS学園に向かった。(今回は、シンフォギアも用いる都合、整備要員として呼び寄せたエルフナインにシンフォギアの整備を依頼したため、代わりに箒からアガートラームを借り受け、持ち込んだ)





――黒江の演技はここでも完璧さを発揮したが、ただ一人、織斑千冬のみは身のこなしや気配の違い、仕草の違いから『立ち方が違う、何者だ?』と呼び出して、問いただした。黒江は『扶桑皇国空軍大佐、黒江綾香。箒の師をやらせてもらっています』と挨拶し、事情を改めて報告した。千冬はドイツ軍に中佐相当の身分で出向していた過去があるため、『先に申し出んか!バカ者!!』と怒ってみせた後、ドイツ軍出向時代は中佐相当だったためか、黒江に敬語を使って接した。

「篠ノ之の外見を使って、参られた理由は何なのです?大佐」

と、呼び出して、一応の出席簿スマッシュをかました後、一転して敬語で接する。ドイツ軍出向時は中佐だったため、既に大佐である黒江は『上官』にあたるためで、軍隊時代の癖でもあった。

「宇宙人とドンパチし始めたのはいいんだが、政治中枢が制圧されてな。軍はパルチザンとなって抵抗運動に打って出た。その事を伝えるのが目的だ。箒、鈴、シャルは貴重な戦力なので、そちらに戻すわけにもいかん。それで、私が箒の姿で来たわけだ。で、止めろ。気持ち悪い、任務外だからタメ口でも偉そうでも構わんぞ?」

「軍にいたもので、気が引けます。それに篠ノ之から貴方の実年齢は聞き及んでおります。それを考えると」

黒江に言われても、実年齢は孫以上に開きがある。1945年次で23歳であるのなら、この時代では100歳代の老人。既に遠い昔となった大正時代には生まれているため、どうにも気が引けるためか、敬語はやめない。そういうところは軍隊生活の名残りらしい。

「それで、篠ノ之は束をどう手懐けたのです?これまでが嘘のような」

「アトミックサンダーボルトとギャラクシアンエクスプロージョンを連撃で食らわせて、第5世代か第6世代ISをふっ飛ばして、ステゴロで倒したそうだ。あいつ、ああ見えてサジタリアス、そしてジェミニの座を継いだからな」

「フム……流石の束も、神を守護する闘士の前では膝をつかざるを得なかった。不思議なものです。アイツは、自分の親であっても見下しているような人格の持ち主ですから……」

「それで、初めて対等にみたのがお前だと?」

「そうです。アイツは『気に入った人間以外には冷酷非情』という極端なまでの二面性を持ちます。この世界を変えたのも、自分の思うがままに世界を変えたかった、神でも気取っているのか……と。それに私は加担してしまった。友人として」

束の行いに一役買ってしまったという自覚はあるらしく、弟をISの世界に巻き込んでしまった事に後ろめたい気持ちは多少なりとも持ち合わせているらしい千冬。それは両親に捨てられ、女手一つで一夏を育てた過去がある故、弟は巻き込みたくはなかったが、巻き込んでしまったことへの後悔があると。

「弟の非礼を改めてお詫びさせて頂きます。彼らにはよろしくお伝え下さい」

「RXさんや甲児の事か。お前の弟、やんちゃ坊主らしいな?」

「はい、私の教育が至らず、申し訳ありません」

一夏は『ヒーロー』という存在に疑念を抱いており、南光太郎や兜甲児の救援で命が助かったと言うのに、事後、彼らへ『後からやってきて、偉い顔するんじゃねぇ!』と吠え、千冬のみならず、居合わせた圭子に叩きのめされている。圭子は鉄拳オーラギャラクシーをぶち込んでおり、半ギレ状態だったと、智子から聞いている。千冬もこれには頭を抱えており、改めて黒江に詫びたというわけだ。『ヒーローなんて、泣きも笑いもしない、人間じゃない存在だろう!?』と言ってしまい、それが圭子の琴線に触れてしまい、制裁を受けたとの事である。


「弟をそちらへ送らなかったのは、その時の懲罰の意味も含まれているとお考えください。あいつが嫌った『英雄』も、それが実際に存在している世界では、ご法度な発言をしてしまうでしょうから…」

「そりゃ逆効果だ、現実見せなきゃ、考えを変えるようなヤツじゃ無かろう、その物言いならな。一段落したらこっちよこせ、迎え出すから。キッチリ鍛えてやんよ」

箒の姿ながら、黒江は地を初めて見せる。地は『現在っ子』なため、言葉遣いは21世紀人と言っても違和感がないほどのものだ。

「とても100歳とは思えませんな、その言葉遣い」

「23歳だぞ?一応。終戦の年での事だけど」

千冬に微笑って見せる。箒から補助要請が来ていたらしく、ラウラも協力してくれたために生活はあまり困りはしないが、セシリアが突っかかってきたため、それの処理も意外な苦労だった。セシリアは、箒がその前の報告の際にアガートラームを使う場に居合わせており、実力に差が生じた事に危機感を感じていた。セシリアの求めに応じ、箒のふりをしつつ、アガートラームを起動させ、纏って見せる。赤椿はまだ解析が終わらない上、未来世界にあるからだ。(黒江は黄金聖闘士であるので、聖遺物が何であろうと起動が容易である。シンフォギア世界ではマリアしか確認されていない『二つの聖遺物と適合した』人間と言えるが、存在の位で言うなら、当然である)



――アリーナ――

「これでいいか、セシリア」

「そう!その銀の右腕ですわ!それと戦いたかったのです!」

「ふむ。まるで、どこぞのライバルキャラのような物言いだな?セシリア」

わざと『箒らしい』口調で言ってみせる。アガートラームのギアは銀色の輝きを放っており、接近戦向けの特性を持つため、黒江本来の戦闘法向けであると言えよう。セシリアは『その前』の戦いの際、アガートラームを咄嗟に纏った箒に助けられ、箒がアームドギアの短剣を蛇腹状に変化させての多角的な斬撃『EMPRESS†REBELLION』を披露し、すっかり見せ場を奪われ、本国からせっつかれたせいもあり、セシリアは焦っていた。ある意味では冷静さを欠いていると言える。ブルーティアーズを纏うセシリアの焦りは明白で、徹底的に叩きのめすと決めた黒江は、セシリアの攻撃に対応してみせる。

「今ですわ!」

レーザーライフルを放つが、黒江は避ける必要すらないため、掌をかざすだけで、高出力レーザーを弾く。セシリアは動揺し、一瞬であるが、動きを止めてしまう。その隙を見逃す黒江ではない。ギアにブースターを生成し、跳躍し、アームドギアを長剣として召喚する。その時の構えは黒江本来のモノ(示現流)であるため、監督役の千冬、残留する代表候補生では唯一(今回)、事の次第を知るラウラは思わず、額を抑えた。癖というモノはこういうところで出るのだと。幸いにも、剣術に疎いセシリアが相手だったために気づかれずに済んだが、これが楯無やシャルなら、即座にバレていただろう。セシリアはブースターを吹かし、さらにブルーティアーズを使い、ビームの『壁』を作って対抗しつつ、いくつかを黒江(外見は箒)に向かわせ、ビームを放とうとする。

「フ……笑止!」

黒江はそのままの勢いでブルーティアーズを『足場』にし、軌道を変えてみせ、アームドギアを『壁』の隙間から突き立てようとする。セシリアはブルーティアーズの内の二機からミサイルを放って対応するが、場当たり的対応の感は否めず、弾幕射撃を得意とする雪音クリスとの交戦経験がある黒江にとっては容易に回避できるものでしかない。それを確認したセシリアは自己のすべてを賭ける覚悟でブルーティアーズのレーザービットをすべて攻撃に使い、ビームを偏向させ、命中させるという離れ業を見せた。これがセシリアの全力攻撃だった。

「これが私のすべてですわ……!」

「なるほど。ビームを偏向させて、ぶち当てるか。その意気や良し!気に入った!」

黒江は爆発でふっ飛ばされたが、腕のアーマーにアームドギアを接続させ、ブースター推力を全開にし、再度の突撃を敢行した。その速度は白式や赤椿をも上回り、セシリアの反応が追いつかない(ハイパーセンサー込みでも)もので、セシリアが最終手段で召喚した『インターセプター』(ショートブレード)とかちあい、これを粉砕。互いのすれ違い様に一閃する。

「はぁっ!!」

――技の名は『SERE†NADE』。マリア・カデンツァヴナ・イヴに敬意を払った一撃だった。そのため、この技を極める一瞬の間に奏でていた歌は、マリアと同じ『銀碗・アガートラーム』である。一撃でシールドエネルギーを0にされ、更に接近戦向けのショートブレード『インターセプター』を、手に取る一瞬のうちに粉砕されるという光景を見せつけられたセシリアはしばし茫然自失とし、目は虚ろになっていた――

(あかん、ちょっと本気出しちまったか?)

残心を終え、セシリアを見上げると、目が虚ろになり、何やら心が折れてしまったらしき様相を呈した事に気づき、観戦していたラウラに『どうしよう〜』という視線を向けた。ラウラは『あいつは安全に心が折れておりますよ、大佐』と、アイコンタクトで意思を伝え、嘆息の黒江。すると。

「ズルいですわ、ズルいですわ〜!その防御力、格闘能力!そのスーツはなんなのです!?」

「『アガートラーム』。ケルト神話の神であるヌアザの別名で、『銀の腕』と呼ばれた。神剣クラウ・ソラスを携えていたという。これはその『銀の腕』の残骸を媒介にしたものだ」

「!?」

「別の世界から持ってきた物だから、可笑しくはあるまい?」

「そ、それは……まぁ……」

黒江は、箒を見事に演じてみせる。身近にいたセシリアが違和感を感じないほどの自然さだが、千冬やラウラなどであれば分かる事がある。立ち姿が軍人のそれなのだ。それと剣の構えが箒元来のものでは無いため、一夏でも、見れば分かるだろう。実家が剣術道場であるため、その剣術を使えるため、赤椿取得後は二刀流で戦っているが、黒江はどちらかと言えば、一刀流である。

「オールレンジ攻撃を変則的に繰り出したのは、中々の『アイデア』だったぞ?未来世界でも見ないからな。」

「そ、そうなんですの?」

「νガンダムやキュベレイのファンネルでも、撃ち出されたビームやレーザーの途中での偏向はできていないからな」

ブルーティアーズでのレーザーの偏向は、未来世界のサイコミュ兵器でもできない芸当なので、そこは高く評価したらしい。(最も、特殊だが、ガンバスターのホーミングレーザー、アプサラスの武装などがあるが、現物を見ていない)『セシリアも送られてくる映像で、キュベレイ対Zガンダム、ZZ、サザビー対νの対決の映像は見たためか、曇っていた表情が明るくなる。

「だからと言って、懐に入り込まれた時のことは考えておけよ。あのミサイルは弾速が遅すぎる。私のように動体視力が良い奴なら、鼻歌交じりで避けられるぞ?」

「あの近距離を避けられると!?」

「私や『綾香さん』などのような黄金聖闘士はもちろんだが、青銅でもできるぞ」

ぬけぬけと言う。黒江の演技力の高さが伺える。癖や細かい言葉遣いを除けば、箒そのものである。セシリアは気づいていないが、箒にある堅さがなく、鈴やシャルに近い気さくさが言葉の端々から感じ取れる。

「聖闘士なら、1m先からのバドミントンのスマッシュのシャトルを摘まみ取れるから、目で追えるミサイルなら楽勝だな」

「反則ですわ、反則ですわぁ〜!」

ブルーティアーズを展開したまま、その場にへたり込むセシリア。

「いや、そんな事言われてもな……」

と、困った表情の黒江。観戦しているラウラも同意の表情だった。戻る日、セシリアが本国から『有意なデータの提供をせっつかれて』窮地に陥ったため、黒江が千冬に『救済措置』として連れていくと告げ、千冬も同意した。当然、正体をカミングアウトしたわけだが、これは一夏の怒りを買った。

「てめぇ、よくも箒の姿を……!?」

「ふむ。普通の人間に、機体で斬りかかるアホが何処にいる?ガキンチョ」

黒江は箒の姿を取っていたが、白式の雪片弐型を右腕のエクスカリバーで受け止める。白式の力をまともに受けて、白式を押し返すあたり、黒江の能力は聖衣がなくとも、相応のものであるのが分かる。白式のスラスターが虚しく噴射炎を挙げ、腕のアクチュエータに負荷がかかり、腕が震えている。黒江は表情一つ変えず、振り払う。ISの推力を上回るパワーで。

「ムウン!」

「うわぁ!?」

その瞬間、一夏の動揺が見て取れた。接近戦向けのISである白式のスラスター込みの突進を生身で受け止め、それを眉一つ動かさないで振り払って見せる黒江に動揺している。実年齢は下の一輝に『小僧』呼ばわりされるのもわかるように、青臭さが目立つ。一夏は幼馴染の箒の姿を別人が使っていた事に腹を立てたのだろうが、黒江としては相応の事情がある。それを聞かないで、いきなり斬りかかられる言われはない、振り払ってすぐに、『リストリクション』を放ち、一夏を空中で『拘束』してみせる。

「な、なんだ……白式が動か……!?」

「お前の身体の自由をサイコキネシスで封じてもらった。事情を聞かないで、斬りかかるようないたずらボウズには、お仕置が必要だ。身体そのものの動きを封じたんだ、機体を動かせるかよ」

機体ごと拘束される一夏。念のため、機体ごと指一つ動かせないように、技を機体ごとかけている。そのためか、機体の防衛本能が発動しようとする微かな駆動音が聞こえるが、機体の駆動そのものを封じているため、装甲の各部がアクチュエータなどの作用での変化ができず、各部機構に動力が伝達されても、それが動かないため、装甲が軋んでいる。やがてコアが自己防衛機能でも発動させたか、光が走り、無理矢理に拘束を破ると、コアが以前に組み込まれていた、原初のIS『白騎士』と同様の形状を取り、暴走し始める。黒江はユニコーンの暴走を見た事があるため、一夏の声色がバナージ・リンクスに酷似しているのに引っ掛け、『マシンに呑まれやがったか!』と発言し、アガートラームで応戦した。空中元素固定能力で、ユニコーンガンダムデストロイモードのビームトンファーを生成するというオマケ付きで。黒江は一夏がバナージと似ている事に気づいたため、ユニコーンガンダムの武装を武器にして応戦してみせた。その空戦機動もデストロイモード時のユニコーンガンダムを連想させるものなあたり、『狙っている』黒江。

「ガキンチョ!マシンに呑まれるんじゃねー!どこぞの『可能性の獣』みてーに、マシンの呪縛を振り払え!!」

機体に支配され、機械的動作で黒江を狙う暴走した白式。『白騎士』そのものの姿と能力を見せるが、ユニコーンガンダムデストロイモードよろしく、驚異的な機動を可能にした黒江に翻弄される。『瞬間加速』。セシリアやラウラが瞠目するほどの速度で。瞬間移動と形容される速度。熟練のニュータイプでようやく対応できるほどの速さである。白騎士は機械であり、ハイパーセンサーを持つと言っても、機体動作に僅かなタイムラグがある。アガートラームのシンフォギアのポテンシャルを引き出した上、黄金聖闘士の黒江は白式の反応速度を超えていた。

「ハァッ!!!」

両腕に生成したビームトンファーを振り下ろし、白騎士状態の装甲をシールドエネルギーごと叩き斬ってゆく。バイザーが割れ、一夏の素顔が現れる。暴走した白式は荷電粒子砲の砲口を向けるが、それは瞬時に両断する。


「これが人の可能性の『光』だぁっ!」

装甲を蹴り→エクスカリバー→突きからの『ソフトチェストタッチ』を決めて、装甲を破壊し、機体を再構築する。これは覚醒するであろうユニコーンガンダムが行ってみせた最終攻撃を模したものだ。アガートラームを媒介に伝えた『想い』は、白式の外装を『白騎士の呪縛』から解き放つ。擬似的にユニコーンガンダムのソフトチェストタッチを起こしたと言っていい『その光』は白式の暴走状態の装甲を浄化するように崩壊させ、白式は箒の赤椿と対になるような『聖衣風』の外見に再構築されていく。

「坊主はこれを望んでいたのか、心の何処かで……。フッ、なるほどな」

一夏が箒を守れる力を欲していた事を、転生を挟んで知った黒江。白式の装甲が再構築されるにつれ、進化した赤椿と対になるような外見になってゆく理由を『それとなく』察した。気絶した一夏に肩を貸しつつ、皆のもとに戻る。

「千冬、坊主と機体を解析に回してくれ。ラウラは引き続き留守を頼む。全員をいっぺんに連れ出すわけにもいかないしな」

「了解しました、大佐殿」

ラウラは敬礼する。黒江が旧日本軍の高級将校であるのを知っているためだ。ラウラは少佐であるが、黒江はデザリアム戦役の時点で大佐となっているため、二階級ほど上に当たる。大佐は空軍で言えば、群司令級に補せられるべき立場で、一部隊の隊長であるラウラより遥かに上位の権限を持つ。海軍で言えば、艦長だ。そのため、ラウラが敬礼するのはごく自然の事と言える。


――事後、メンバー選抜が行われたが、中国が『データ回収』を名目に、鈴を戻せと言って来たと千冬から伝達された。これは中国の貴重な機体の実戦での損失を人民軍が恐れたためだった。別世界とは言え、23世紀の戦場は激しい。それにより失われる危険性を重大視してのものでもある。鈴は当然ながら激怒したが、上層部は『また行けるようにするから、IS学園に一旦もどってちょんまげ〜!』(意訳)と、鈴を呼び戻そうと必死だった。人民軍は23世紀の戦場の様子の一端を目の当たりにし、怯えたのが本当のところ。逃げ道を作っておくのは流石というべきだが、鈴は軍に不信を抱き、『戻らないわよ!』と通信で怒鳴るほど怒っていた。しかし、鈴の世界での中国は共産党政権であり、本国にいる母親を人質に取られる可能性が高いため、黒江と千冬が説得させ、帰還させる事になった。それと入れ違いにセシリアが送り込まれる事になった(条約で当人の権利は守られても、その家族には及ばないため)。セシリアの技能を藤堂平九郎が不安視したため、『更識楯無』が合わせて派遣させることになった。(黒江は『この手の声色の奴、多いなぁ』とボヤいた。楯無の声色がスバル・ナカジマ、ノーヴェ・ナカジマ姉妹にフランチェスカ・ルッキーニ』の三人に酷似していたためだ。因みに、セシリアの声も、トーンを低くし、ドスを効かせた場合はコンゴウになるのだが。)そのため、鈴は本国の要請でIS学園に戻り、代わりに楯無とセシリアがパルチザンに送られる事となった。これは、圭子が西住姉妹たちを呼びに行ったのと同時期にあたる。セシリアは派遣されるまで、黒江に特訓を頼み、未来に行くタイミングで、IS本体の未来での戦闘に適応させるための『小型化改造』も行われたという――



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