ドラえもん のび太とスーパーロボット軍団 第二部


――聖闘士になると、肉体の老いという概念すら希薄になる。功ある聖闘士は蘇生もさせられる(絶頂期の姿で)ため、聖闘士で老いるという概念はあまり意味が無くなった。それは黒江と智子に当てはまっている。黒江はアイオリアと拳を交えた後、マリアの求めに応じて模擬戦を行った。

「このギアを使っていたのなら、小細工は通じないって事ね…いざ!」

マリアは開幕から小細工無しで斬りかかるが、箒の姿になっているとは言え、示現流免許皆伝の黒江は出合い頭の一撃が全力なのだ。それを思い知らされる場面がすぐにやってきた。

「マリア、師匠の出合い頭の一撃は!」

「!?」

黒江の最初の一撃は自己で生成した刀での一撃だが、これが馬鹿力で振り下ろされたものなのでアガートラームのアームドギアで受け止めたのにも関わず、その衝撃で吹き飛ぶ。

「なっ!?」

「黄金聖闘士の全力をなめんなよ?実戦なら、その剣ごとまっ二つだ。実戦だと、私はエクスカリバーの霊格を開放しているからな」

黒江は聖剣を使わない、肉体スペックの全力で斬りかかった。調の声を聞いて、咄嗟に防御を取らなければ、斬られていた。それは確実だ。これを見たアイオリアは冷静に言った。

「ふむ。今のは悪手だな。示現流相手に初手で全力はご法度だ。飛天御剣流の使い手でもなければ、避けられん」

「飛天御剣流を知っておられるのですか?」

「俺の世界にも、そのような剣術があるというのは、あの子の先々代にあたる『山羊座の以蔵』が残した記録から知られているのでな」

調に答える。聖闘士世界にも飛天御剣流はあり、日本の武士であった山羊座の以蔵(黒江から見ると、先々代にあたる)がその存在を知っていた。日本は意外と古くから聖闘士は輩出しており、幕末期には黄金聖闘士になる者がいたのだ。それと同時期に生きていたのが、星矢の過去生に当たる『天馬』という先代の天馬星座の聖闘士である。その転生が星矢であり、シオンと童虎は天馬と戦友であったため、知らず知らずのうちに、二代の天馬星座と関係を持ったわけだ。

「あ、師匠!いきなり牙突する気だ!」

「調、なんで動きを見ただけで分かるんデスか?」

「ゴメン、記憶を共有してるから、自然と」

黒江は、ビリヤードのキューを討つように、刀を持ち、態勢を取る。まるでビリヤードをプレイするような構えだった。それを見てすぐに牙突と判別したあたり、調は黒江との同調がかなり高いのが分かる。マリアは剣術の心得があるとは言え、西洋式であるため、牙突を初見では理解できなかった。そして、緋村剣心すらもすぐには反応できないほどの疾さで突く。これが牙突の一つの型である。

「……!」

刀に貫通されはしなかったが、これまた凄まじい衝撃で吹き飛ぶ。

「どうだ、かつての新撰組三番隊組長『斎藤一』の使っていた技の味は?」

「斎藤一……。明治になって警察官に転じた新撰組の生き残りとは聞いているけど、これは……?」

「その彼の可能性の中、一番を争うくらいの実戦肌で、明治以降もライバルがいた世界でたどり着いた境地だ。私も彼にはこっぴどくコテンパンにされた事がある」

以前、斎藤に言われたのが『ド阿呆が』と『犬娘』であり、黒江は二度の転生を挟んでまで、斎藤の技をいの一番に身に着けようと奮闘したが、ハルトマンに先をやはり越された。これはハルトマンの天才肌と、黒江がコツを掴むのに時間がかかったためだ。また、二度の転生でも、斎藤には手も足も出ないで破れており、やはり斬り合いの経験が斎藤や剣心に比すると、絶対的に劣るための必然だ。その為、黒江は敢えて相手を挑発してでも、斬り合いに持ち込もうとする思考を持つようになり、シンフォギア世界滞在中はそういう風に誘導し、斬り合いを行い、経験を積んでいる。それでモノにした技が一つある。それは。

「さて、ようやくモノにした技でも使うか。二度の転生でようやくモノにできた代物だ、正規ルートじゃ無い方法を使ったから、加減できるかわからん」

黒江は飛天御剣流の心得はあるが、九頭龍閃と天翔龍閃は正規継承者ではないので習得できず、転生を二度挟み、尚且つハルトマンから覚えるという方法で習得した。その為、加減できるかわからないと前置きし、刀を振るった。超神速の抜刀術である最終奥義『天翔龍閃』である。二度の転生と、聖闘士への叙任でコツをようやく掴み、実行した。刀を抜く瞬間に左足を全力でタイミング良く踏み込む事で速度を速め、一撃目が当たらなくとも、刀に弾かれた空気と真空によって敵の行動を阻害し、相手を引き寄せ、特異な踏み込みによる強力な二撃目で仕留める。理屈は簡単だが、それを実行できるだけの腕と胆力が必要となる。黒江は死を二度超える事で胆力を磨き、遂に習得に至ったのだ。

(か、体が動かない!?ギアを纏っているのに!?)

天翔龍閃で生ずる真空空間はシンフォギアを纏っていても、行動を封ずるほどのものであり、マリアは驚愕しきった表情を見せた。そこから更なる追撃が行われる。その二撃目は、黒江が空中元素固定で作った刀(本人曰く、軍の量産品程度の代物との事)で放ったのにも関わず、マリアを数十mは吹き飛ばした。黄金聖衣を纏っているものの、威力は抑えているので、吹き飛んだ距離は数十mで済んだが、それでも、ダミーのビルを4棟ほどぶち抜き、五棟目の端で止まった。当然ながらクラクラになったマリア。

「い、今の剣術……。あれが黒江綾香の力だと言うの……?…え…!?か、体が……」

ギアを突き抜けて、肉体に直接のダメージを入れられたためか、マリアは立とうとしても立てない程のダメージを与えられた。視界がぶれてぼやけ、足には力が入らない。たった一撃でだ。

(黄金聖闘士……剣を用いても、これほどの……!い、いえ……彼女は力を出していない。なのに……!?)

マリアは黒江の拳を食らった経験がある。その際、拳が黄金の輝きを放っていた事を思い出したのだ。黒江が拳系の攻撃を多用するようになったのは聖闘士叙任後からの事だが、使い勝手の良さからか、二度目の扶桑海事変やり直しでは、初っ端からぶっ放ったという荒技を見せている。また、調の姿になっていた時は、『体のコツが一発じゃ掴めなかった』とのことで、剣術は初見の相手に対しての見せ技として用い、本気の時は徒手空拳で対応していた。マリアが見たのは、アトミックサンダーボルトの時の光である。マリアの脳裏にテレパシーする形で、黒江は答える。

『純粋な肉体のスペックは今の通りだ。鍛え方がお前のようなガキとは、ワケが違うぜ』

「純粋な!?あれが貴方の肉体のスペックだと!?」

『ああ。人間、体を極限まで鍛えれば、限界を超えられ、常識を破れるってことだ』

多少乱暴な表現だが、シンフォギアは超常の力である。しかし、それを超える術はある。それを黒江は飛天御剣流で以て、思い知らせた事になる。調は黒江と同調した関係で、互いの記憶と経験を共有しているため、黒江が天翔龍閃を使った事にため息をついた。

「師匠、天翔龍閃なんか撃っちゃって……。あれじゃ、マリア、当分は動けないよ」

「だろうな。確か、飛天御剣流の最終奥義だったはず。それをお目にかかれるとはな。死んでから、というのも皮肉な話だが」

「他の黄金聖闘士みたいに蘇らなかったんですか」

「俺達の代の黄金聖闘士は既に、一回はオーディンによって蘇生されている。その関係で、俺は霊体のままで呼び出された。完全な蘇生がなされるにしても、時間がかかるので、次代の獅子座であるこの子の肉体を借りているのだ。少し、不本意ではあったがな」

「なるほど……」

「って!二人でかってに話進めないで下さいデス!話が飲み込めないデス」

「うーん。なんて言ったらいいんだろう……?」

「つまりだ。この俺は自分の後継にあたる子の体を借りているのだ。同じ守護星座であることが幸いしたと言っていい」

「なぁ!?『俺』って事は、生きてた時は……」

「ああ、男だ。もっとも、死んだ以上は意味を成さない事だが」

「……幽霊?」

「平たく言えばそうなるな。死んですぐに蘇生され、ようやくと思ったら、ゼウスに呼び出されたからな」

「死んだ魂をそう易易と?」

「神の成せる業だからな。人間の想像を超えてくる。我々の中でも、最も神に近いと謳われた男でも、神の御業の全ては理解出来なかった。人間と神には、そのような差があるのだ」

シャカのことを引き合いに出すアイオリア。シャカは全乙女座の聖闘士で最強とされ、神に近き男の異名を持っていた。その彼でさえ、神の所業の全ては理解できない。神々は人間には計り知れない目的があるのだと。

『聖闘士は信仰を受けられたら、日本でなら神に列せられるぞ、アイオリア、アイオロスの兄弟なら既にかなりの信者居るぞ、かなりの平行世界に』

『師匠、テレパシー使わないでくださいよ』

『な〜に、口が利けない時の最終手段にも使えるしな、これ』

セブンセンシズ以降のセンシズに目覚めていると、テレパシーによる会話が容易になる。特に体力も使わないため、ニュータイプの感応はこれを基礎的なところで実現させたものに近い。

「なら、私達の世界の超古代文明は……どうして聖遺物を作ったんデスか?シンフォギア装者になってから、色々な事に巻き込まれて、亡くしてから、それの大事さに気付かされる。私は……」

「聖遺物には、それを作った時代の者達の願いが込められている。俺達が纏っている、この黄金聖衣も、元はムー大陸が在りし日、アテナが命じて作らせた宝物だ。君が纏っているモノもそうだ。その根源にあるのは、人々の願いだ。それを受け入れる事だ」

アイオリアが言う。

「うん。切ちゃん、シンフォギアの基になった聖遺物は、神話の時代の人たちが願って作った。どんな形でもね。だから、今……この世界に必要とされてるなら……、私は戦うよ」

「調……。それと……なんて呼べば?」

「俺は獅子座の黄金聖闘士、獅子座のアイオリア。アイオリアと呼んでくれればいい。体の持ち主はフェイト・T・ハラオウン。今はこの子の肉体を、俺が使っている状態なのでな」

アイオリアは微笑む。彼が死亡したのは、20歳であった1990年であり、切歌と調の時代では壮年と言える年齢に達する世代にあたる。アイオリアの子供と言っても過言でないほど、切歌、調の二人とは世代が離れている。ある意味では不思議なめぐり合わせと言えた。







――未来世界でデザリアム戦役が開始された頃、ウィッチ世界では――

ウィッチ世界では、グランウィッチ達の思惑に乗っかり、山本五十六らがウィッチ兵科の特殊部隊化を進めていた。これは日本との連邦結成で、若年ウィッチの確保が不可能となり、実働部隊に残ったのが16歳以上の者達。従来では中堅〜高齢と言われた者達で、しかも、ウィッチ兵科の昇進速度がケチをつけられたため、44年までに現役の者たちは従来通りの速度の昇進を約束されたが、それ以後の年の志願者達からは昇進速度が緩められた。これは日本のジェンダーフリー団体や生え抜き女性自衛官らの抗議によるもので、女性自衛官らは『道理も弁えられる前の未成年者を士官にしてまともな軍としてどうなのか?』というもっともな反対で、この事もあり、14歳以下は一律で曹長固定にする事が検討された。しかし若齢でも、既に大尉にまで登りつめている者もおり、それらを曹長にまで一気に降格させると、クーデターを招くため、45年次に大尉になっていた者については階級は据え置きにされた。これは大尉になると、現場指揮官を担っているため、混乱を招く事になるからだ。(後に勤務階級の維持と、教育課程終了で実階級を少尉にする事で落ち着いた。ただし、44年以前に志願していた15歳以上の者については、以前の軍規での昇進が許された)

こうした措置で政治的にウィッチを通常兵科として維持するのが難しくなったため、『特技兵』枠で存続を図ることとなった。これはグランウィッチ達の突出した戦果と、通常ウィッチ達の戦闘機と代わり映えしない戦果の落差が要因で、連邦結成で色々な政治的都合が生じてもいたため、練度の高い者達を特技兵枠で前線に残置させ、それ以外を軍学校で再教育するという措置が取られた。これは黒江達が言う『前史』での、若齢ウィッチを軍から放逐することで生じた社会的デメリットの大きさを鑑みての措置であり、坂本のように『軍しか知らない者達の居場所を守るため』であった。

「山本大臣。どうして、少女達を雇用し続けるのですか?」

「怪異と正面切って戦える唯一の人員だからでありまして、人数を一気に減らせば、我々は本当に、23世紀の未来人頼りになってしまいますぞ」

日本から派遣された財務省の役人に、山本五十六は言ってのけた。ウィッチ達の最大の存在意義を。ウィッチ達はこの時代の兵器で正面切って怪異と立ち向かえる存在である事を。日本財務省は少年兵の問題をウィッチと結び付けて考えていたが、実際は現地で必要不可欠な存在であるという現実に悩んだ。しかし、日本では、少年兵を用いるというのは『戦時中の学徒動員』を連想させるため、特技兵枠で16歳以上を用いることとされたため、10代前半のウィッチは前線に出る事が禁止される事が決定されそうになった。ウィッチは本来、10代前半〜思春期に絶頂期であるため、連合軍から抗議されたのだ。更に、扶桑国内からも軍学校の一律の授業料徴収への猛反対が農林部中心に存在したため、これも頓挫。(授業料無しで高等教育を受けられるのが魅力と見られていたため)結局、政治的理由により、日本の鉄血勤皇隊の事例に則って、若齢ウィッチも後に『軍属相当官』として取り扱う事になった(日本の財務省と厚労省は露骨に渋ったが、扶桑国内世論の強烈さに折れた)。結果、若齢ウィッチたちはこの時の騒動で、それぞれの事情で軍から離れた者も多かったため、太平洋戦争で実質的な扶桑ウィッチの航空戦力を担ったのが、64Fや244Fなどのグランウィッチを要する部隊の面々であった。これがウィッチの特技兵科化を全世界で促進させたが、そうなれないウィッチらの受け皿も必要となるのは必定だった。その凡人達や、急激な倫理観の変容に対応出来なかった者、人殺しが出来ない者らの受け皿として、扶桑版の自衛隊が考えられたのだ。これは戦後にウィッチの人員削減を叫ぶ三輪の登場と台頭で一挙に具現化し、太平洋戦争を支えた提督らが次々と隠居してゆく1950年代に設立される運びとなる。

「どうしろと言うのです?」

「ウィッチ組織を特殊部隊化し、精鋭たちで戦線を維持するのです。これで古参ウィッチへの言い訳も立つし、レイブンズのような超人でない平凡なウィッチ達の居場所も、戦時中は維持できる」

「つまり、ネイビーシールズやデルタフォースのような?」

「そうです。熟練者を数か所に集約する言い訳もこれで立つ。人員の選別はこちらが行うので、あなた方はその予算の承認を」

「分かりました」

山本五十六は持ち前の交渉術でウィッチの居場所確保に成功したが、今回、64Fが巨大化した背景には、その精鋭である『グランウィッチ』(転生者でもある、リウィッチも更に超えた最上位のウィッチ)をなるべく前線に置こうとした扶桑皇国国防省の思惑が多分に働いたからで、数年後、64Fの幹部となる将校は黒江達と境遇を同じくするグランウィッチで固められる事になるのは、今回は山本五十六の意向だった。山本の残りの人生に於いて、それが最大の功績となるのだった。








――デザリアム戦役で生み出されるのは、地球人(アース・ガイア)が敵性異星人へ見せるようになる苛烈さである。この時に地球人が持った強烈な敵愾心がディンギル帝国の暴虐無道で根付き、アースとガイアの政体が二つの地球の統一を願い、ディンギル帝国が滅亡した後に『新・地球星間連邦』という統一政権に移行する2207年以後、『銀河連邦で最も慈悲があるが、その怒りを買ったら最後、根絶やしされるほどに恐ろしい鬼となる』と称されるような二面性を持つようになり、後年の敵性宇宙人達が内部から崩すようなアプローチを取ったのは、軍事力で侵略した宇宙人ら、地球人の苛烈な猛反撃で、母星や所属銀河諸共に滅亡していった戦乱期の宇宙人達の末路から学んだ事である。日本とイギリスの覇権に反発した者達の生み出したセイレーン連邦も、18代ヤマトによって終止符を打たれる運命にある。その歴史は大ヤマトやGヤマトの存在が証明している。

「藤堂さん、どうなされたのです?」

「沖田くん。30世紀までに人は二度の戦乱機と安定期を経験し、またも人は弛緩する運命にある。どう思うね」

「本来、私達が世を去った後の事は気にしなくていいはずですが、キャプテンハーロックから言われると、身につまされますな」

「民主政治は平和が続きすぎると思考が硬直して、国の腐敗を招き、衆愚政治化し易いという事だな」

「古くは共和政ローマ、近代では、ワイマール時代のドイツ、21世紀初頭の日本……、そして、冷戦後のアメリカ……。枚挙に暇がありませんからな」

「うむ。ワイマール時代のように、カリスマ性を持つ誰かがいれば、人々は腐った民主政治を捨て、独裁政権の誕生を許容してしまう。かつて、グレミー・トトは『自分さえ平和なら、独裁政権でも良い。それが大衆だ』と言ったと伝えられてるが、この状況下ではそれを許容する者もいよう。後世がナチスの事を否定しようとも、あれは市民が選んだ結果の産物だ。悪行三昧の所業とは言え、民衆が選んだのには変わりはない」

「ですな。民衆というのは現金なものです。この『帝都』の日本でさえ、デザリアムに従順な地域があるというのだから」

「全く、これが栄光ある日本連邦の末裔と思うと、嘆かわしい」

地球連邦政府が表向き降伏した後、デザリアムに尻尾を振った地域は『帝都』と俗称される日本列島にさえ存在している。沖田十三と藤堂平九郎は軍人肌であるため、こうした選択を選んだ地域に怒っていたが、別のメリットもあるのは事実だった。パルチザンは軍の各部隊が纏まって抵抗運動に転じた組織であるが、パルチザンの隠れ蓑になるし、生き残り策として中に入り込むのは大いにありだ。その為、これは個人としての憤慨であり、それで片付けた。ガトランティスと違い、デザリアムは従順な者には寛容である(自分たちのボディー確保にも有益なため)ため、中に入り込むのは政治的には妥当な線だ。


「さて、三沢は田舎だから、目はつけられておらんはずだ」

「あそこにどれだけの空軍が温存されているか、ですな。北京の空軍は?」

「殆ど壊滅状態とのことです。宛には出来ませんな」

『やり直し』においては、かなり連邦空軍の配置が変化しており、地下要塞や工廠が存在する三沢基地が隠れた抵抗拠点として機能していた。これはデザリアムには『大昔の軍事基地の跡地』としてしか察知されないほど巧妙なもので、ガミラスも爆撃をしなかったほどのものだ。三沢基地は23世紀では、地上部は米軍撤退時のまま放置されているように見せているが、地下空間こそが本領だ。地下都市と直結していたため、ゼントラーディの爆撃にも耐えたほどの堅牢さを誇る。そこに空軍の部隊がかなりおり、パルチザンはそれとの合流のため、長崎などを抑えた後は三沢へ進路を取っている。(みほたちの合流は文科省が渋ったのを、西住しほに説得してもらったため、前回より遅れた)

「さて、後はケイくんの手配した子達が間に合えばいいが」

藤堂は、圭子が現地の文科省を口説いて実現させた『戦車道で優秀な高校生を留学させる事』の実行が遅れた事に怪訝な感じを覚え、すぐに宮藤芳佳(同時に角谷杏でもある)に確認を取らせた。現地に行かせて。なんと、大洗女子の廃校問題が絡んでおり、芳佳は杏として、現地に飛んだ際に通告され、『なぁああ!?』と驚愕し、憤慨した。その関係で、現地に滞在せざるを得なくなった(西住姉妹には決勝戦で正体がバレたため、二人には芳佳としての姿も披露した)と連絡が入った。


――大洗女子の廃校問題が明らかになった後の大洗の某所――

「いやぁ、久しぶりに大洗に帰ってきた感じがするよ〜」

「あの、今まで通りに会長って呼んでいいですか?」

「まーね。今のあたしはどちらでもあるし、西住ちゃんの呼びやすいほうで構わないよ。まー、ややこしいけど、西住ちゃんの知ってるあたしはちゃんといるんだけど、別のところで動いてるはずよ

「えーと、つまり?」

「あたしは『宮藤芳佳』であって、『角谷杏』でもある。りょうほーが長い年月で統合した、より後の時間軸の存在だから、別々にいるんだよ」

「??」

「ドラえもんで、別の時間軸の自分同士で宿題解く話があるじゃん?あれと同じことだよ。あたしは未来の時間軸の存在だから、この時間軸のあたし自身とは別々の存在になるんだ」

「つまりあなたは……」

「遠い未来で宮藤芳佳と角谷杏が統合して生まれた存在って言ったほうがいいね。両方だからね」

姿は海軍士官に任ぜられた後の芳佳(ちゃんと軍服を着ている)だが、声の調子や振る舞いは杏そのものだ。双方が統合して生まれたのが、みほの目の前にいる芳佳である。理屈は単純なようだが、SFの話に踏み込むほどややこしい話である。

「今頃、この時間軸のあたしはサンダーズに行って、戦車を保管する手筈を整えてるはずだよ。あの子と話して」

「えーと、おケイさんですか?」

「ああ。だけど、今のあたしにとっては、ケイさんというと、加東圭子さんのほーなんだけどなぁ〜♪」

芳佳も、圭子を『ケイさん』と呼んでいるため、サンダーズ大学付属高校の『ケイ』のことは『おケイ』と呼ぶことで区別している。圭子は直接の上官であるため、黒江がプロパガンダで用い、以前に呼んでいた『ヒガシ』は使えない。その兼ね合いだ。

「あの人、どこか似てるんだよなぁ、お姉ちゃんに」

「そういう気質だから、ケイ姐さんは。あたしの上官でもあるけど、面倒見がいいよ」

「上官なんですか?」

「所属部隊の中隊長の一人で、あたしはその配下なんだ。ま、姐さん達と一緒にゼロ戦とかを乗り回してたってわけさ」

「パイロットなんですか、そちらだと」

「それだけでもないさ。戦車の運転技能あるから、その訓練受けるために、戦車学校の受験票だしたし、医者の勉強もしてるよ」

「なんですか、それ」

「まぁ、特殊部隊にもなると、一つの技能だけじゃ食えなくてね。ヘッツァーを自家用に欲しくてさ。ドイツ軍が戦車をパンターUにし始めたからと、換えられたパンターのヤークト改造であぶれて、相対的に旧式になったヘッツァーを放出し始めてさ」

「そちらだと、パンターの改良が?」

「本当はレオパルトをぶっ飛ばしで採用はどうかって話があったんだけど、装甲厚がネックになって、時期尚早って事でお流れ」

「車体の装甲厚自体はパンターにも劣りますからね。造られた時代が違うから、なんとも言えませんけど」

「有翼徹甲弾があるわけでもないし、高速徹甲弾も少数しかない時代だから、必要十分ではあるんだけどね」

「APDSもAPFSDSもない時代なら、中戦車の運用なら必要十分ですよ。日本の一式なんて、前面装甲が50ミリでしたし」

「それは言ってやるなって。原乙未生中将閣下も気にしてる事だ。独が異常なんだとさ」

日本戦車の父の原乙未生中将。カールスラントの戦車の強大化に危機感を抱いており、更にブリタニアがセンチュリオンの量産に成功した事から、74式のコピーを急がせているのが、扶桑での彼だ。

「でも、45年超えると、イギリスだってセンチュリオン完成させますよ」

「あれはキワモノ連発してたイギリスが、どこをどうしたか、な突然変異みたいなものだけどね」

「センチュリオンはいい戦車ですよ。確か、会長が今いる世界は」

「それもそうなんだけど、あれは日本にはなぁ。ナナヨンを作ってみようずなんて、事になったよ。ロクイチを繋ぎにして」

「無茶ですよ、ナナヨンを第二次の頃で作ろうなんて」

「車体自体はそれほど変わらないから、作るんだが、むしろサスやベトロニクスで手間取ってる」

「って、日本、あの頃、一体鋳造もままならないんじゃ。そもそもチトの砲塔製造で……」」

「そこはアメリカからの流れでどうにかできた。そうでないと、ロクイチも作れないしねー。ナナヨンはガワより中だよ、西住ちゃん」

芳佳は、74式戦車のコピーで、ガワより中身に手間取っている事を話した。杏=芳佳は、いつもの語り口であるが、なんとなく軍人らしさも感じると、みほは感じた。

「まー、ロクイチを早められたのは正解だったよ。あれないと、パーシングやジャンボぶち抜くのに、ホリ車を持ち出す必要があるからね」

「カト車じゃないんですか?」

「あれじゃオープントップだから、採用は見送りさ。目立つし、すぐに攻撃されちゃうよ」

「た、たしかに」

「予算の関係で五式チリの改良タイプって事にしてあるけど、実情は装甲がマシになったロクイチさ」

「マイナーチェンジ扱いですか?」

「本当は六式でもいいんだけど、財務省がうるさくてね。あれのマイナーチェンジと平行して、ホリとロクイチを作ったって感じ」

「財務省、その頃って大蔵省じゃ?」

「早めに名前が変わったのさ。で、陸軍の機甲関連予算の圧縮なんか宣ったから、マイナーチェンジ扱いで通したのさ」

連邦結成後、財務省は日本陸自の保有車両がプラスされるからという理由で、扶桑軍保有車両の大幅削減を行おうとした。理由は旧式化だ。これは前線部隊から大いに文句が出た。仕方がない事だが、実のところ、扶桑皇国陸軍の主力機甲戦力はミッド動乱参加部隊以外は『九八式軽戦車』と『九五式軽戦車』が主体で、中戦車より数が圧倒的に多いという有様だった。しかし、太平洋戦争で相対するだろう第一世代MBTや重戦車などにはそれらは無力であり、九七式中戦車と一式中戦車含めて、全てをスクラップにしたらどうかという非現実的な提案だったからだ。扶桑皇国陸軍の戦闘教義は戦間期の『軽戦車が主力で、中戦車以上はその補助』から改革され始めたばかり、戦後の人間達の認識である『中戦車である九七式が主力となる戦車で、軽戦車である九五式が補助となる戦車』では無かったので、現場から猛烈な反発が起こったのだ。扶桑皇国陸軍の機甲本部内部でも、『陸自の戦車は大きすぎる』とコピー反対論が存在したが、センチュリオンやパンターUなどの強力な中戦車が主力戦車として登場するにあたり、機甲本部内部の軽戦車主力論は『クルスクの戦い』の映像を流された事で消え失せ、『強力な中戦車が主力』と認識した事で消え失せた。結果、生産ラインが中戦車と重戦車、砲戦車主体に切り替えられたのだが、本土に存在する車両はともかく、外地に存在する車両は消耗品扱いにされ、予備パーツも生産打ち切りとされた事での混乱は甚だしいものだった。外地部隊に取って、新型中戦車は運用ノウハウが不足していたためもあり、猫に小判の状態だった。中には『あんなでかい重戦車より、ウィッチ用の装甲脚を送ってくれ!』とする要望も届く程だった。その為、最前線になる南洋には優先して、動乱を経験した精鋭部隊が配されたのである。機甲戦力の中でもとびっきりの腕っこきを南洋に集中することは反対論があった(大陸領奪還に使用したい思惑があったため)が、吉田茂の決定により、機甲部隊主力は根こそぎ動員で、南洋に集結していた。


「大陸領?奪還してもすぐに使いもんにならん所より現状の維持防衛が最優先に決まっとろうが! すぐ使える場所の確保が先だ、順番を間違えるな!」

これが陸軍高官らを怒鳴りつけた際の吉田茂の言葉だ。この決定のため、陸軍機甲戦力の過半が南洋にいるという状態になったのだ。


「こっちは開戦前夜だし、敵にはパーシングもジャンボもある状態だからね、初っ端はコテンパンだと思うよ。軽戦車のほうが多いし、それでパーシングとかパットン、ウォーカーブルドッグとやってみ?マジで死ねるから」

「確かに……」

扶桑は太平洋戦争を準備万端で迎えられるわけではない。海上兵力も、ウィッチが45年秋の不拉事件の影響で、海軍ウィッチの幹部級の六割が粛清人事でアリューシャン諸島に送られてしまっており、海軍ウィッチ部隊は使い物にならない。その事もあり、64Fが巨大化し、空母機動部隊の航空隊、海軍陸戦隊の旧任務すらも代行する事になるのだ。その為、今回は新人教育用隊と、戦闘部隊は明確に住み分けされ、戦闘部隊はグランウィッチの巣窟となり、戦死者は原則として、武子の療養中の代理であった通常ウィッチの隊長代理達に集中する事となる。(黒江達の奮戦にも関わず、四人の代理は皆、戦死する)グランウィッチは加護で以て、当初の全員が戦場から生還するものの、代理に選ばれた者達が皆、戦死した事から、武子の帰還まで隊長代理は送り込まれる事は無くなり、代わりにレイブンズが実質的な代理として戦争後半期のある時期を戦い抜く事になる。


「ってなわけさ。秋山ちゃんが知ったら興奮する案件ってわけさ。西住ちゃんとこのおかーさんはあたしが動かすよ。サンダーズから西住ちゃんの実家は遠いしね」

「そ、その格好で?」

「な〜に、いくらでも誤魔化しようはあるし、サンダースから帰ってすぐに西住ちゃんとこ行ったらさ、あたしの体力持たないからね。存在は別だけど、記憶は共有されてるから問題なしだしね」

「あ、勘定は私が」

「いいって。これでも高級取りなんだよ、海軍士官ってのは」

芳佳は23世紀で換金してきたため、かなりの大金が財布に入っている。レストランの代金は軽く払えるため、二人前の代金を払って、みほと別れて海岸まで行き。

「用意できた」

「サンキュー、イオナ」

なんと、イオナの操る伊401に西住家のある熊本県まで運んでもらうという荒技を見せた。

「しおいとしての姿ではダメなの?」

「しおいとしての速度じゃ遅いだろ?ここはこれで行かないと」

しおいとしては、水中速度が6.5ktで、鈍亀なため、メンタルモデル時の超高速が必要になるのだ。

「水上では18.7kt出るけど?」

「潜水艦が水上出てたら、自衛隊が群がってくるだろー?国籍不明だし、いくらびくともしないったって、気分のいいもんじゃない。何時間でつく?」

「おおよそ6時間くらい。自衛隊に捕捉されないように迂回するから」

「わーった」

こうした凄い手段で大洗女子の廃校阻止に奔走する角谷杏、その統合体たるグランウィッチの宮藤芳佳。移動手段にイオナを使うのも、ある意味では贅沢だった。




――デザリアム戦役中の地球(アース)では、横須賀で記念艦になっていた戦艦武蔵を艦娘の武蔵が修復し、武装を稼働可能状態に持っていっていた。ただし、偽装の意味もあり、今回は艦娘としての姿でなく、メンタルモデル姿で行動している。

「これで修復は完了。いつでも出港出来ますわ」

「これで、こいつは海上兵力に数えられるわね。でも、ムサシ。今回はその姿なのね?」

「あの姿は敵にも知られていますし、この姿ならば、敵にもバレはしません」

武蔵としての筋肉隆々、色黒の眼鏡美人の姿でなく、メンタルモデルとしての白い衣服を身にまとったブロンドの髪の少女の姿である理由を話すムサシ。相手は智子だ。

「普段の喋り方と180度違うわよ?」

「腹黒くなるお姉様よりはマシですよ」

ムサシは冗談混じりに言う。大和は『大和』としては天真爛漫だが、『ヤマト』としては腹黒さも覗かせる『掴み所が難しい』キャラになるため、ムサシはその点でからかいの対象にしている。精神年齢はメンタルモデル時のほうが年上なのだが、ムサシの言う通りに腹黒くなってしまうため、あまり大和は変身しないという。ムサシは逆に、普段の姿では『漢女』枠に入ってしまうので、メンタルモデル時の『ロリータ枠』では気楽に動いている。

「あの子、変身する時って、ブチ切れた時だったりするのよね。この間、神がかり参謀の顔見ただけで艤装展開して、46cm撃とうとしたし、変身してドSな事してたし」

「姉様、神がかり参謀が嫌いですからね。ただ、私も清霜が拗ねちゃうのが」

「は?」

「見てください」

「見た目変わらないのに戦艦〜!わたしも戦艦になーりーたーいー!!」

と、ジタバタして拗ねる清霜がいる。確かに、メンタルモデルとしての姿のムサシは駆逐艦娘とほぼ変わらないロリータ姿であるため、拗ねている。

「あの調子で」

「いいなー、武蔵さんは変身しても戦艦でー!」

「なるほど……」

「あの子、戦艦志望なのだけど、駆逐艦娘なのが」

「砲手でもやらせたら?」

「そうね……考えておきます」

こうして、パルチザンは各地で行動を起こす。ある場所では兵員確保のため、ある場所では、兵力確保のため。地球人の抵抗の象徴が戦艦大和の一族なのも、アメリカが戦後、アイオワを世界最大最強の戦艦と誇った歴史からすれば、大いなる皮肉であった。アメリカが否定し、葬ったはずの日本の大和型が、23世紀以降の人類の力の象徴として君臨する。これが後のセイレーン連邦での中枢部に君臨した者達の地球への憎悪の要因(統合戦争の敗者の地域出身であった)にも繋がり、数代のヤマトはそれに屈したが、最終的に自分らが力の根源としたエネルギーを得た18代ヤマトに葬られる。そして、ヤマトのあるべき姿、大ヤマトのコアシップになっていたGヤマトの登場が、彼らの遺したモノを更に葬り去る。これが23世紀からの更なる未来で確定している事実だ。30世紀までに、地球は二度の戦乱期と二度の安定期を迎える。この事実はパルチザン上層部の者が知らされた事で、転生したレイブンズも知っている。そして、力と暴力が蔓延る23世紀初頭の『第一戦乱期』(30世紀での名称)を生き残るため、皆が努力を重ねるのだった。







――シミュレータールーム――


「廬山!真武けぇぇんッ!!」

シミュレータールームでは、聖闘士としての高みへ足を踏み入れた調が廬山真武拳を放っていた。黒江からのフィードバックには感情の他に、黒江が強く抱いている心情も含まれていたので、調本来の性格からは離れた、熱血漢な振る舞いを見せた。また、黒江の強い心情がフィードバックされた影響か、黒江同様に朱雀がシンフォギア越しに浮かび上がっていた。

「ふむ。朱雀か。老師の下にいて、五老峰にいるせいか?」

「だろうね。あの子、紫龍の妹弟子になるそうだし、それにアヤカさんと強く同調してるそうだから」

将来的に天秤に成り得る素養を垣間見せた調。黒江との同調が小宇宙を強く呼び覚ましているのか、その威力は黒江に引けを取らないモノであった。ハルトマンとアイオリアは感想を言い合った。

「私に流れ込んで来る感情と師匠の思い……なんだが胸が熱くなる……。だから……師匠に代わって、私が相手になるよ、マリア」

黒江の抱いている確固たる心象。それは歴代ヒーロー達の抱いているのと同じであり、そのフィードバックにより、小宇宙が燃えている。

「調、貴方……!?」

調のシュルシャガナのロックの残りが物理的に外れていく。小宇宙の高なりで、僅かに残っていたロックも外れ、より強大なエクスドライブ状態となる。そして、鳳凰の翼のパーツが背中に生成され、ツインテールから生えていた翼が消える。これは調の心象が黒江と同じく、聖闘士になったのを示す変化で、黒江は射手座の翼であるのに対し、調は鳳凰の翼であった。

「師匠のようにはいかないけど……!廬山!昇龍覇ぁ――ッ!」

その瞬間、マリアは昇龍が自分を喰らうような幻影を見た。その次の瞬間、凄まじい衝撃波で吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。

「今はこれで精一杯……!だけど、これが私が目指してる『大事な人たちを守る』力……!」

廬山昇龍覇を決め、残心を終えると同時に言う。これが自分の目指している領域であり、力だと。今までよりも真っ直ぐな瞳をマリアへ見せて。(この時、シュルシャガナのギアが強大化した小宇宙を受け止めきれず、機能に一時的に障害が生じ、ギアが数日間解けなくなったという。同様の事は黒江もした経験がある)

「あー、あいつ、小宇宙を一気に上げすぎだ。ギアの機能に障害が出るぞ」

「どういうことデス?」

「私も経験があるが、あれを一気に高めると、ギア側のリミッターを物理的に解除できるんだが、歌を介さない、神の力での解除だから、無理が生じるんだ。エクスドライブは解除されたとしても、数日はギアが解除できんな」

黒江は同情した表情を見せた。成り代わっていた時期、同様に、運動中に宇宙を強めたら、ギアが限定解除状態になったが、無理な解除だったらしく、数日間はギアを解除できなかった。本来、70億の人間の祈りを媒介にしなければ発動条件を満たせないはずのものを、神の力で任意に起こすと、ギアのリミッターが物理的に解除される分、機能に障害が出る事があるのだ。

「例えるならISCの慣性蓄積がマックスだと、バルキリーから降りようとすると肉体に溜め込んだ加速度が一瞬で与えられて体が粉々にされたりするんで、慣性の解放が終るまでコクピットが開かないのと同じだ」

「あの戦闘機のパイロットが、機体から降りる時みたいな事になっちゃうって事デスか?」

「そうだ。この場合は小宇宙で与えられたエネルギーの消費が終わるまでだから、戦闘、非戦闘関係なく、72時間から128時間くらいはギアの解除機能はオンにならん」

「いいっ!?」

「私の時はしょうがなかったから、限定解除のままで買い物行ったり、詐欺グループしょっ引いたけどな。限定解除だと飛べるし」

「何デス、その限定解除の無駄使いは」

「無駄でもないぞ?詐欺グループをしょっ引いたから。飛んでて、どっかのばーさんの金を騙し取ろうとしてたのを見つけてブチのめして、そのまま本拠地を物理的に潰したし」

「どこのカチコミデス?」

「まぁ、細かい事は気にするなって」

大笑する黒江。それについていけないと言った雰囲気の切歌。実際にその後、数日間はギアが解けなくなった調は、その姿で生活する事で体力消費を抑える事に成功する、バトル漫画的な結果となったとか。




――そして、三沢では、大和の末妹『ラ號』が目覚め、潜伏していた。後に宇宙五大戦艦と謳われるラ號だが、デザリアムには存在を知られておらず、それが幸いし、潜伏に成功していた。波動砲を装備せず、ドリルを有する唯一のヤマト型宇宙戦艦。ラ號は静かに、反撃の時を待っていた――。



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