ドラえもん のび太とスーパーロボット軍団 第二部


――パルチザンは最大勢力であるロンド・ベル母体のそれ以外にも複数がおり、各地でデザリアム帝国に反抗を行っており、カザンは地球占領軍の兵力を地味に削るパルチザンを燻り出すため、『人間狩り』を開始した。それを阻止せんとする各地のパルチザンだが、デザリアムは対人特化型の戦車を作り上げ、投入したため、パルチザンが返り討ちに遭う事も増えてきていた。小型四脚戦車。アルフォンという新進気鋭の技術将校が提案し、作り出した兵器であった――。







――聖闘士の地位に叙任された調と切歌は、消耗が少ないこともあり、そのままガイちゃんとグレちゃんと共に、人間狩り阻止の任務についた。現地では、昆虫のような風体の小型戦車が人間狩りを行っており、正に凄惨な光景が繰り広げられていた――

「こ、これは……!」

スズメバチのような風体の小型戦車が人の頭部だけを綺麗に破壊し、兵士らが残った首から下を回収してゆく。まさに一方的な殺戮であった。これに調は激昂し、コスモシーガルから、いの一番に降り、空挺降下を敢行した。

「待ちなさい、調!……あの子、頭に血が上るタイプだったかしら?」


「あーやに似てきたって事だろ。あたしとグレちゃんは先に行って追うから、ヨロシク!」

「あ、ち、ちょっと!」

グレちゃんとガイちゃんは自前のウイング(エンペラーオレオールとGウイング)で空を飛び、後を追う。それに呆れるマリアだが、副操縦士に操縦を託し、自身もアガートラームを展開し、切歌と共に後を追った。調は黒江との同調と、ガイちゃんが友達になった影響で、性格が以前よりも熱血漢じみてきており、凄惨な光景などを目にすると、頭に血が上るタイプに変わりつつあった。これは古代ベルカで10年を過ごした事も影響したのだろう。

「なんで、こんな事を平然とやれる!?」

小型戦車を手刀でまっ二つにし、脱出した兵士を情け容赦なくノックアウトする。正式に聖衣を纏ったからか、黒江を思わせる荒っぽい戦法、この世界のパイロット達が行う独特の台詞回しを見せていた。

「ハァッ!」

超音速の拳で小型戦車の車体をひしゃげさせ、そのままビーム砲塔を斬り落とし、投げ飛ばす。かなり強引な戦法だが、情け容赦の無さは師である黒江と共通している。元々、自己犠牲精神が強かったのが、黒江との同調で『守る』という意識がかなり強くなったため、『何かを奪う者』へ強い敵意を向けるようにもなった。(ジャイアンのように、時に篤い友情を見せる者は例外であるとのこと)

「!」

一台が太陽を背にジャンプし、踏み潰そうとするが、それは駆けつけたガイちゃんの『ギガパンチャーグラインド』が破壊する。

「先走りすぎだって、しらべ」

「ガイちゃん……」

「ほら、おいでなすったよ、敵兵が」

「やることはわかってるよね?」

「もっちろん!……デュランダル!」

「エクスカリバー!」

二人はそれぞれ、アテナとゼウスに託された(調は黒江が聖域に連れていき、聖闘士の叙任を必ず了承する条件で聖剣を正式に与えられた)聖剣をギガンタークロスとショルダースライサーを媒介に発動させ、デザリアム兵を斬りまくる。

「どりゃ〜!!」

「はぁああっ!」

一撃離脱に近い、駆け抜けての複数人斬りである。飛天御剣流とは違うが、それに近いスタイルである。調は、古代ベルカで一流の剣士から仕込まれた事があるらしく、『訓練された』剣筋を見せている。ガイちゃんもミラクルドリルランスを剣のように振るう機会が増えたので剣筋は鍛えられており、既に接近戦のノウハウが絶えていたデザリアムにはこれ以上ないほど有効な手段だった。廃墟となった市街地を高速で移動する二人を捉えきれず、橙色のレーザー光が空を切る。格闘戦では、接近戦用の武術を維持している地球人のほうが圧倒的に有利なのだ。

「はぁああっ!」

上空から光の短剣の雨を降らせ、マリアが到着した。自分の領分である『剣』を、調に使われた事に改めて驚いており、ちょっと悔しそうな顔だった。

「強くなったわね、調。綾香との同調が貴方を強くしたのは本当のようね。だけど、私も綾香を介して、セレナからアガートラームを受け継いだ。そして、アガートラームには神剣『ヌアザ』がある。言うならば、私も『聖剣保持者』よ。貴方達に遅れを取るつもりはないわ!」

アガートラームのアームドギアは剣である。マリアの高い技能もあり、接近戦では風鳴翼と同等レベルの戦闘力を見せる。現時点では持ち込んだLINKER(黒江が自己の研究のためにと言い、脱走時に大量に持ち出した改良型の在庫)を服用しているため、4、5時間前後の戦闘可能時間がある。一回の戦闘では充分な時間ではあるが、マリアは聖闘士として完全に覚醒した二人に比しての差から、箒との同調を強く望むようになってもいた。(後に、それを案じた黒江がマクロス7のDr.千葉にシンフォギアの研究の依頼をし、彼がエルフナインに協力した事で、シンフォギアの解明が進められ、ある一定の『チバソング値』が聖遺物の力を呼び覚ますのに必要である事と、聖遺物に完全に適合するには小宇宙に目覚めるか、気合でもぎ取る(響のように)か。奇跡によるもの(天羽奏も、努力と気合で起動させられるだけの適合率は確保した)という結論にたどり着く。Dr.ウェルの研究とは裏腹に、響や黒江などの例外的な事例が現れた事により、シンフォギアで余計に謎が増えたため、地球連邦はシンフォギア研究に協力してゆく事となる。

「突破する!」

「うん!」

「おう!」

三人はヌアザ、デュランダル、エクスカリバーという三つの聖剣を奮い、デザリアムの人間狩り部隊を蹴散らしていった。デザリアム(暗黒星団帝国)の装甲車などに使われる金属では、聖剣の加護の妨害も不可能であるため、薄紙を斬るかのように軽く捻られていく。

「来た来た、掃討三脚戦車だ」

「なますにして、あいつらに思い知らせよう。地球人の恐ろしさを!」

「言う事が綾香に似てきたわね、調……」

「遠い目してないで、攻撃だよ!マリア!!」

「わかってる!」

掃討三脚戦車は対人戦向けではないため、三人により、一瞬で搭乗員ごとなますにされる。と、そこで思わぬ人物と出会う。

『ほう。それが聖遺物を媒介にした鎧なり、アテナの宝物か』

「そのスカした声は……えーと、アポロガイスト!」

廃墟となったビルの屋上に、二度目の再生が成ったアポロガイストが変身前の姿で立っていた。一見すると、白いスーツ姿の青年であるが、かつてのGOD秘密警察第一室長(大幹部)であり、神敬介/仮面ライダーXに二度も敗れた経歴を持つ。今回は完全な再生であり、尚且つ、生前の記憶も保持している。生前の不敵な笑みを浮かべていた。黒江との共有意識で彼を知っていた調は、その名を呼んだ。

「知っているの、調!?」

「7人ライダーの一人、仮面ライダーXの好敵手だった男だよ。だけど、二度ともXライダーにボコられて敗れたはず!」

「確かに俺は二度、神敬介に敗れた。だが、バダン大首領の御慈悲により、蘇ったのだ。今日は君たちとの手合わせのために来た。『アポロチェーンジ!!』」

変身し、アポロガイストとしての姿になる。三人は身構える。Xライダーと死闘を展開した男。並の相手ではない。アポロガイストはガイちゃん、マリア、調の三人を相手取って、大立ち回りを演じた。

「アポロマグナム!!」

アポロガイストの十八番である銃撃。のび太のそれを見慣れた調から見ても達人の域に達していると容易に分かる早打ち。調やガイちゃんでようやく反応ができるほど早く、ガイちゃんが咄嗟にガイキングシールドでマリアを守る。が、シールドにはっきりと弾痕が刻まれていくので、ガイちゃんも冷や汗をかいている。

「フ…、小娘、戦車も吹き飛ばすアポロマグナムをよくぞ防いだ。褒めてやろう」

「Xライダーを倒すのがお前の生き返った目的なら、こんなところで油を売ってていいのか?」

「言っただろう。お前が守っているその小娘の纏っているモノに興味があると」

「このアガートラーム、お前などに負けやしないッ!来いッ!」

「バカ、挑発に乗るな!相手は改造人間だぞ!いくらシンフォギアを纏っても、基礎スペックが違うんだぞ!」

マリアは冷静な方だが、ガイちゃんが諌める側に回るのは珍しかった。アポロガイストは仮にも、Xライダーが好敵手と認めるほどの強さを誇る強豪。今のマリアでは相手にならないとガイちゃんは示唆する。

「しかし!!」

「ガイちゃん、どうする?」

「くっそ、私達が本気出しても、勝てるかどうか。それにマリアを守りながらだと……」

ガイちゃんと調が身構え、アポロガイストがガイストカッターを投げようとする。その時であった。

『それまでだ!!アポロガイスト!!』

「その声は!」

アポロガイストが嬉々とした声を発した。彼から見て、斜め付近に立っているビルのテラスに『彼』が現れた。彼こそ。

「やはり俺を追って来たな、神敬介!」

「どうせこんな事だろうと思って、スペインからわざわざお前を追ってきたんだ、アポロガイスト!」

「フッ、袋のネズミとはこういうことを言うのだな。現れよ、我がGODの亡霊達よ!」

アポロガイストは、周辺に潜ませていたGOD神話怪人と戦闘工作員の軍団をけしかける。古風な悪の組織の作法に則っているため、ガイちゃんと調は思わずハモって、『うわぁ、今時珍しいテンプレ通りの悪の組織だぁ』と関心する。アポロガイストの『変身を待つかのような姿勢』に応えるかのように、ベルトからパーフェクターとレッドアイザーを取り出し、構える。敬介の原点と言える変身コードを。

『セタァァップ!』

レッドアイザーが半分づつ装着され、二つとも装着された後、エネルギー回路も兼ねるパーフェクターを口に当たる部分にはめ込む。これがXライダー改造当初の変身法だ。

『Xライダー!!』

ライドルホイップでX斬りを決めつつ、Xライダーに変身を完了する。その構図は実に決まっており、ガイちゃんと調は大喜び、マリアも思わず見とれてしまい、『か、カッコイイ……』と一言漏らすほどにかっこよかった。

「トウ!」

Xライダーは三人のもとに降り立ち、蘇ったGODの怪人軍団を戦いを開始した。Xはマーキュリー回路装着後、力任せの戦法も見せるが、ライドルを駆使した戦法が彼の特色である。

『ライドルスティック!!』

ライドルをスティックにし、見事な棒術を見せる。神話怪人軍団相手に『ライドル脳天割り』も披露する。と、思えばロングボールで吹き飛ばしたり、叩きつけ、ホイップで細切れに斬り裂く。まさに変幻自在の戦闘術を見せつける。

「こうしてまた、貴様と戦うことになろうとはな」

「貴様は平行時空の俺とも戦ったのだろうが、そいつは俺とは似て非なる者。黄泉の世界で貴様へ歯がゆい思いを抱いていたぞ、Xライダーよ!」

「いいだろう。何度再生しようと、貴様らの野望はXライダーが打ち砕く!!」

アポロガイストと拳を交えるXライダー。双方が『加速して』戦闘に入ったため、ガイちゃんと、覚醒した調でなければ視認すら不可能であり、マリアには『衝撃波が空中ではじけ飛ぶ』バトル漫画で見たような光景にしか見えない(エクスドライブ形態でなら可能だが)。

「マッハ5くらいかな?」

「Xライダーの加速装置、たしかZXのと同等に取っ替えたとか聞いたから、マッハ5.5くらいは出てるんじゃないかな?」

「貴方達。しれっと、ものすごい会話をしてない?」

「仮面ライダーもアポロガイストも高位の改造人間だし、『加速装置』は標準装備だよ、マリア」

「いや、その、サラッとそんな事言われても……。本当、変わったわね、調……」

以前より調の声のトーンが明るい事は、マリアが一番に感じており、態度が歳相応になったというべきだろう。(成り代わり以前はフィーネが宿っていた影響で大人びていた)

「Xキィィィッ――ク!!」

ライドルを軸に空中で大車輪からのXキックを決め、アポロガイストを吹き飛ばす。三人のそばに降り立ち、決めポーズを決めるXライダー。

「Xライダー、アポロガイストは?」

「奴はこれくらいでくたばるタマではない。今のうちに神話怪人軍団を蹴散らすぞ!」

「はいっ!」

神話怪人軍団は所謂、再生怪人である。再生前のスペックは省略されている場合が多く、たいていはヒーロー達に雑兵扱いで蹴散らされる。その法則通り、Xライダーと三人に容易く蹴散らされてゆく。

「ほう。これが小娘共の力か。なるほど。良いデータが取れた。さらばだXライダー!」

怪人軍団を捨て駒として、アポロガイストはそれ以上交戦せずに去っていく。怪人軍団を捨て駒とするあたりは生前の職務に忠実であると言えるが、いくらでも再生の効く雑兵同然の者たちとは言え、この扱いはあんまりであるため、調のボルテージが上がる。黒江の影響を濃厚に受けたのが容易に分かるが、本来の性格からすれば想像だも出来ない事であった。

「あ、逃げた!もうこうなったら!!」

調はその場に落ちていたゲームセンターのコインを媒介にし、黒江から引き継いだ『電気を操れる』能力を使って超電磁砲を放った(黒江は『お前は声的に、流体反発じゃねーの?』とからかっている)

コイン媒介なので、美琴のそれ同様に射程は短いが、弾速は上であったため、アキレス、ネプチューン、ヘラクレスの三体を一瞬でぶち抜く。放つ際の態勢は美琴と同様であり、印象的なポーズであった。

「い、今のは、綾香が見せた……」

超電磁砲(レールガン)。本当は師匠も借りてる技なんだけどね。御坂美琴さんから。この世界には学園都市あるから、この程度はよく見られたそうな」

「そ、そう……」

「綾ちゃんは技のレパートリー増やしたいとか言って、俺たちにも技の使用許可聞いてくるからな。スピルバンから、後でアークインパルスの使用の承諾取ったとか喜んでいたな、そう言えば」

「あの人、茶目っ気多いわね。それだから、響やクリスとすぐに馴染んだんだろうけど」

「綾ちゃんは元々、子供っぽいところもあれば、冷徹な軍人としての面もあるからな。知らなければ、気味悪く感じるだろう。実際、ダイ・アナザー・デイ作戦の時には、それが問題になっている」

黒江は辿った複雑な経緯から、複雑な人間性を持っている。それに言及するXライダー。黒江が自分達を慕っているのを知っているので、黒江を明確に擁護する姿勢をダイ・アナザー・デイ作戦の際には取った。

「あの戦いの前と後、綾ちゃん達は後輩たちの多くから批判を浴びせられてね。ケイちゃんが強硬手段を取るほどだったよ」

「強硬手段?」

「同調している仲間と一緒に退役届を出したり、反対派のリーダーに変身能力を見せたりしたのさ。それが上層部の耳に入って、対立の表面化が参謀本部の会議の議題になったそうな」

グランウィッチの存在はダイ・アナザー・デイ作戦で一気に知れ渡り、ペリーヌが『貴方方は自分の首を締めたんですのよ!?』とリーネに怒鳴るほど、対立が表面化した。上層部が『ウィッチの軍事的な意義を近代兵器から守る』ために、グランウィッチ側に立った事も、通常ウィッチ達の立場を弱めた。戦闘機と代わり映えしない戦果しか期待できない『通常ウィッチ』よりも『一騎当千の剣』たるグランウィッチ側に立つのは当然の帰路であり、ウィッチの最高位であったガランドが、ランウィッチへの覚醒者であったのも通常側の不幸であった。反発には黒江達の戦果の伝説と公式スコアの乖離もあったので、裏で赤松と若松が江藤をまたもや脅し、スコアを確定させた一幕もあった。江藤は二人を前にして『どうすればいいんですぅ〜!』と泣き、若松が『童どもの戦果を確定してやるだけでカタがつく事だぞ。事変の時に教育したはずだが?』と睨みつけ、決着した。これにより、三人の公式スコアは三桁に到達し、扶桑最強格の一角である証明ともなり、記録された1937年時点では世界最高のスコアであった。江藤は赤松らに『あなた達や黒江達が転生者と分かっていれば、あの時に公表してました……』とうなだれて言い訳し、二人にこってり絞られたという。大佐である江藤が遥かに下位の特務士官(赤松)らに謝り、言い訳する姿はシュールであり、しばらくの間、統合幕僚会議の同僚らにからかわれたという。

「で、当人達曰く、通達のあとは嘗めた口聞いてくるのはいなくなったそうな。あの子達は現役を離れてた期間があったし、往時を知るものは世代交代で殆どいなかった。それが不幸だろうな」

Xライダーは世代交代こそが不幸と推察した。着任当初、レイブンズの往時の威光を知り、尊敬しているのは坂本や竹井などの極小数の古参のみ。多くの現役(今回はミーナを坂本とガランド、竹井が懐柔していたので、ミーナとの対立は起きなかった)は『昔の栄光を振りかざす、飛べるエクスウィッチ』としか見ていなかった。が、実際は現役より圧倒的に強く、現役勢のプライドを傷つけた。特に陸戦でも無敵であり、黒江がエクスカリバーを使って伝説を実証した事、智子のセブンセンシズ+覚醒のビジュアルと強さもあり、ダイ・アナザー・デイ作戦中には認識が変わった者も多いが、ロスマンや赤ズボン隊のフェル、下原、ジョゼ、リーネのように、結局、意見の引っ込みがつかなくなり、減俸処分となった者もいる。(下原は減俸処分の後、菅野と黒田に促され、三人に詫びたという)このように、ウィッチの世代交代サイクルが早いが故の不幸であった。リウィッチ・グランウィッチの概念の誕生、日本と地球連邦軍から持ち込まれた近代戦の概念により、ウィッチという存在が変容していく様を目撃してゆく事になるため、この世代の多くは定年まで軍務に就くことになるのである。

「あの人も苦労してるんですね」

「あの子達は特にややこしいから、理解者には恵まれにくい。だからこそ、仲間を大事にするのさ。調ちゃんにもそれはよく言い聞かせてるそうだ」

「うん。師匠はいつも、私にそれを言ってる。だから、私も怒られたよ。ほら、師匠が成り代わる前、響さんに言っちゃった事」

「あの事ね。綾香が貴方の姿だった時にも謝っていたと聞いたわ。あの人は仲間を大事にするのね」

黒江は前史で戦死した部下や同僚の記憶からか、今回は特に『友情に篤い熱血漢』として知られており、成り代わり時には、成り代わり前に調が響に言った『偽善者』、『そんな綺麗事をッ』を自分が代わりに先行して侘び、後で調当人からも謝罪させているなど、仲間を大事にする姿を見せている。自分がグランウィッチとして、理解者を中々得られなかった事もあり、こういう面には厳しい。

「記憶を引き継いで転生するという事は、けして軽くない選択だ。あの子達はそれを二回も行った。その分、蓄積された記憶は膨大になる。それ故の苦しみも持つことになる。それがあの子達の苦しみであり、喜びでもある」

「二回もって…!?」

「一回目の時は、綾ちゃんが残される形になってしまったし、智ちゃんの葬式の時の憔悴ぶりは目も当てられないくらいだった。それで二回目に踏み切ったんだろう。あの子は大切な者を失ったら脆いからな……」

「私も共有意識で見ましたけど、あれは……」

智子が前史で病死した際には、あまりのショックで憔悴し、『私を一人にしないでくれぇぇ……』と号泣している。その様子を垣間見た(敬介は実際に参列している)二人は、黒江の『弱さ』に共感していた。圭子の壮絶な自爆死も時期が近かったため、心に大きな傷となって残っているらしく、今回はあーやとしての時に、その本音を漏らしている。その傷はシンフォギア世界での成り代わりの時にも顔を覗かせており、魔法少女事変で切歌がギアを破壊された際に、ゼウスの助けを借りて、山羊座の聖衣を纏ったという出来事もある。

「後で場を設けんと、あの子達の事はこれ以上は語れないさ。……さて、君達の任務、俺も力を貸そう。その方が早い。V3もV3ホッパーでデザリアムの装甲車の出先を探っているから、間もなく連絡が入るはずだ」

「貴方達も探っていたんですか?」

「ビッグワンからの依頼で動いてる、パルチザンとの事は彼が中心になってる」

ビッグワンはこの頃になると、黒江達の依頼に応じ、各戦隊や仮面ライダーらとパルチザンの仲介人として動いていた。彼らには彼らの都合もあるため、依頼に二つ返事で応える者は案外少ない。仮面ライダーらでは7人ライダーとRXが、戦隊ではゴレンジャー、ジャッカー、サンバルカン、チェンジマン、マスクマン、ライブマン、ターボレンジャーが依頼に無条件で応じる例だ。彼らは個人的にレイブンズと知己であり、比較的容易に依頼に応じてくれるヒーロー達である。戦隊は、戦隊によって応じてくれるかどうかは分からない面があり、ゴレンジャーとジャッカーが率先して動くことに引きずられる形で動いている戦隊も多く、今のところ、存在したと分かっている戦隊の全てが動いてくれてはいない。

「俺達は基本的に自分の正義のために戦っているから、個人の意思が尊重される。だから、あくまで『依頼』という形を取っているんだ。俺達は『ヒーロー』という括りの集団には属しているが、基本的には軍隊じゃないからね」

スーパー戦隊は9割が民間人の有志が立ち上げた組織である。その事もあり、『依頼』が重要となり、パルチザンとの仲介はビッグワンが自ら担当している。仮面ライダーは一号の号令で全員を集められるが、スーパー戦隊は如何にアカレンジャーと言えども、全部の戦隊の同意無しには動員できない。そこがヒーロー達と共同戦線を張るにあたっての思わぬ落とし穴であった。

「なるほど」

「みんな聞いてくれ。ライダーV3から連絡が入った。敵は自分たちで市街地を一部解体して築いた収容所に軍民を問わず収容している。そこをV3と共に襲撃する」

「分かりました。距離は?」

「一般的なオートバイで、ここから15分ほどと近い距離にある。俺はクルーザーがあるが、君達は乗り物ないだろう?」

「は、はい。空挺降下したら、各自で探す予定だったので」

「仕方がない。そこの店からバイクを数台盗んでくるしかないか」

「なぁ!?」

「仕方がない。俺のクルーザーに複数人乗りはできないからな。正確に言えば徴発だな。軍隊が戦争でよくやってる手だ」

「……分かりました。こうなったら恥も外聞もない!」

「あ、マリア。盗むのはデュアルパーパスにしたほうが」

「調、私にオートバイの種類を聞かないで……。車なら運転できるけど、オートバイは……」

「あ、そうだった……。私が選ぶよ。師匠がオートバイ好きなおかげで知識と運転技術は持ったし、免許も取ったから」

「そ、そう」

調は未来世界で、オートバイの二輪免許を取得した事をマリアに告白した。黒江が趣味でオートレースに出るほどの技能を持っているため、それを共有意識で引き継いでいたので、黒江の勧めで二輪免許を未来世界で取得していた。

「ガイちゃん、他のみんなに合流地点を伝えておいて。私たちはバイクで向かうよ」

「OK!徴発状は?」

「マリアが書いて置いといた。店の主人が帰ったら気づくと思う」

クルーザーにマリアが同乗し、他に調とガイちゃんがデュアルパーパスの市販バイクを動かした。放置されていた展示品を動かしたモノで、この時代では珍しいガソリン仕様のバイクだった。

「よし、みんな。行くぞ!」

クルーザーを先頭に、数台のバイクが隊列を組んでデザリアムの人間収容所に突撃を敢行する。途中で仮面ライダーV3がハリケーンで合流し、4台のバイクで人間収容所に向かった。マリアは車の運転と航空機の操縦は出来ても、オートバイの運転技術はさすがに無いので、Xライダーのクルーザーに同乗している。街は無人なので、時速100キロほどを出している。

「凄いですね、クルーザー。100キロでも小回りが効く」

「元は親父が作った深海開発用のマシンだからな。どの速度域でも安定した旋回性を維持できるし、水上も走れる」

「上限は?」

「1500馬力のエンジンで、750キロだ。スクリューを兼ねたプロペラがあるから、それが限度だ」

「なぁ!?第二次世界大戦の戦闘機並じゃない!?」

「パワーアップは考えてるが、それをしても800だろう。プロペラはその当たりが推進効率の限度になるからな」

マリアが驚く。1500馬力という数値は、バイクのエンジンではオーバースペックだからだ。仮面ライダーのバイクは旧サイクロン号の時点で500馬力、現在建造中のネオサイクロンで900馬力と、基本的に時速400キロ以上の高スペックを求められる。ただし、例外は多く、ライダーマンやストロンガー、アマゾンのマシンのように、速度スペックは『平凡』であるモノもある。10分ほどで件の場所が見えてきた。案の常、入り口に検問があるが、ハリケーンとクルーザーが先頭に立ってのアタックで強引に突破した。そこからは一同で激しいバイクアクションである。

「みんな、俺たちから離れるなよ!」

「こっちの馬力じゃ、あんたらについていくので精一杯だよっ!」

「敵はレーザーライフルだが、相対速度などの関係でそうそう当たらん!恐れずに進め!まっすぐには走るな、常にタッキングしながら接近するんだ」

「タッキングって?」

「(しまった!)…と、とにかくまっすぐ走るな、敵に予想がされない様に走るんだ!」

「Xさん、なんか踏みましたよ!?」

「地雷だ!一気に駆け抜けろ!走り抜ければ、直撃は食わない!」

「そんな無茶苦茶な!?」

ガイちゃんと調が愚痴るが、仮面ライダー達の言う通り、地雷源は突破する。そして、建物内部にそのまま突入してマシンを止め、片っ端から兵士を倒していく。

「ここはどこですか!?」

「わからん!とにかく片っ端から倒すぞ!通報されたら厄介だからな!」

「X、ヨット用語を出すな。子供達が分からないだろう」

「すみません。水産大学校の出なので……」

「まぁ、以後、気をつけろ」

Xは説明で口をついて、ヨット用語が出たので、V3が注意する。

「こいつは水産大学の出でな。時々、船の用語を切羽詰まると言うんだ。今のようにな。本郷先輩も注意した事あるんだ」

「へぇ……」

「V3もなんでもやるじゃないですか」

「そこはまぁ、俺だしな。それにズバットを引き継いだから、多芸にならんとな」

笑うV3。怪傑ズバットを引き継いだ事もここでサラッと言ってのけた。

「日本で一番にでもなるの?」

「まぁ、そうなるな」

V3は冗談めかして言う。ただし、彼の場合はシャレにならないが。ガイちゃんのツッコミもツッコミにならない。

「アオレンジャーも巻き込もうか検討中だ。運がいいのか、俺とアオレンジャーは双子のように似てるからね」

「でも、ここがどこだか分からないと、進みようがないですよ?」

マリアが言う。それにV3が返す。

「ここは収容所だ。見取り図を置いてると思うかい?コンピュータをハッキングできればいいんだが…」

「ハッキングって、地球と仕組みが違うかも知れないんですよ?」

「先輩。低周波ソナーで多少探れるはず。みんな、ちょっと耳を塞いでくれ」

「そうか、お前はカイゾーグだったな」

「ああ。やるぞ!」

バスドラムのような低周波音に、ガイちゃんと調はビビる。マリアもちょっと驚く。すると、音の跳ね返り度合などから、大まかな棟の間取りを把握した。

「なるほど。ここは兵士の休養と待機に使う棟のようです」

「兵士の待機所というわけか。こちらの連絡手段を確保するか?」

「味方との通信手段の確保は軍事の常識ですけど、そううまく行きますか?」

「それは分からんが、目標にはしよう。幸い、敵は外の騒ぎに夢中で、中にまで気が回っていないようだ」

大まかな目標を立てたV3。外の様子はV3ホッパーの映像で分かる。切歌とグレちゃんが陽動作戦を行ってくれているのだ。

「グレちゃんと切歌ちゃんが敵を引きつけてくれている。善は急げだ」

V3の決断力は定評がある。『早川健』を引き継ぐには必要なモノであるが、もう一つ。マリアのLINKER効用継続時間は持って5時間。あまりのんびりも出来ないという事情もある。その為、スピーディに事を運ぼうとするV3。ギアが時限式であるマリアを気遣っての事で、(調は馭者座の聖衣のまま)マリアはその事を察し、内心、自身の力が時限式なのに負い目を感じ、悔しさを感じたのだった。


押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.