ドラえもん のび太とスーパーロボット軍団 第二部


――地球連邦軍の扶桑への介入は『地球連邦政府の忘れ去られていた飛び地へのティターンズ残党のテロ攻撃を阻止する』という名目が成り立ったため、連合軍は念願叶い。正式に地球連邦政府との協力体制を構築。扶桑三軍は過去の日本の自衛隊の派遣部隊共々、地球連邦軍の実質的な指揮下に入った。デザリアム戦役中当時、地球連邦は星間連邦国家への再編途上にあり、本星は制圧されても、外征部隊は健在であった。ヤマト艦隊のみならず他艦隊の奮戦で、デザリアム(暗黒星団帝国)は早くも地球占領体制に綻びを見せ始めていた――



――カシオペア 艦内――

「21世紀日本で、地球連邦の存在を知るのは、限られた者だけだ。だから、今回の自衛隊員の従軍も名目上は、国連のPKO活動という名目になってる」

「日本人はどうしてこう、回りくどいやり方を?呆れますわ」

「戦後日本は国連と世界のお墨付きが無いと、国際貢献活動すら及び腰なんだよ。戦後は自分達の殻にこもったって、裏で馬鹿にされてたしな」

レヴィ(圭子)は、戦前世代かつ職業軍人であるため、戦後日本に冷ややかであった。その為、日本連邦樹立に20年近くも費やした事を『馬鹿げてる』と考えていた。日本と扶桑皇国との交渉の後半期は扶桑の三軍の取り扱いが主な議論の焦点で、日本側は革新政権発足時、『三軍は即座に解体、自衛隊に装備を引き渡すまでは、保安庁と米軍が装備を管理し、人員は自衛隊/日本警察が数次の選抜を行ってから引き受ける』という夢物語的な目標を掲示、扶桑側の呆れと反発を招いた。それは総理大臣の交代で即座に撤回され、『扶桑三軍を時間をかけて緩やかに解体し、自衛隊へ次第に取り込む』という第二案が出来上がったが、日本側のエゴであるため、却下。ここで扶桑の世論が沸騰し、暴動が起こったため、恐れをなした日本革新政権第三の内閣は『扶桑の世論状況を鑑み、扶桑皇国三軍はできるだけ保全し、自衛隊とは別個に維持させるが、指揮や栄典などは統合する』という政権交代前の案を選び、再度の政権交代で実現した。その間に20年近くが経過し、扶桑から潜り込んだ軍人達も自衛隊で相応に栄達する年代を迎えていたので、日本側の一部には『旧軍人が自衛隊の中枢を支配する前に統合して、自衛隊のアイデンティティはなんとしても守る』という『背広組』中心の思惑もあったから、国の統合を急がせたのではないか、という憶測も囁かれた。

「今回の従軍は一応、表向きは『国連の要請による、ある地域のPKO活動』って事になる。統合数年前に、ウチの国が韓国をシメたら日本の左派が喚いたから、日本の世論を変に刺激させないための策だ」

「ナンセンスですわね」

「それが21世紀日本のおかしなところさ。自分達に火の粉が降りかかりそうになった途端に集団ヒステリー起こしやがる」

扶桑皇国が日本に苦言を呈しているところは『扶桑の国権である軍事行動』を非難するところだ。まだ正式に統合していない国を批判するのはお門違いもいいところであり、学園都市がロシアに勝利した事も重なり、日本と扶桑の統合を阻む壁は完全に消えた(反対派の言い分は大半が『ロシア軍や中国軍に攻められるだろ』!という感情論だった)。

「交渉に何度か立ち会ったから分かるんだが、日本は、私達『職業軍人』を脳筋って見下す癖に、恐れているっていうのが感想だった」

「日本以外では、軍隊は栄達の一手段とされてますが、日本は『手に職をつける』程度の感覚の者が多いですものね」

連邦国家樹立の交渉の最後の辺りで問題になったのが、旧軍の勲章と自衛隊の叙勲制度の共存だ。扶桑皇国軍人は現役期間中、戦功に応じて感状や年金を伴う勲章が適宜、授与されている。更には叙爵も行われる事もあり、日本側の戦後勲章制度の根拠が揺らぐ事になる。そこで『元々、別の世界の国家であるから〜』の論理で接合性が取られ、金鵄勲章や武功微章などは危険業務従事者叙勲の一環として組み込まれ、生え抜き自衛隊員は外国勲章という形で、扶桑皇国軍人達へは、ほぼ従来通りという形で扶桑の武功関連勲章は授与されていった。また、日本やアメリカとの兼ね合いで空海軍にエース制度が公的に設立されたが、その名誉の第一号授与に預かったのは全員、陸軍出身の空軍軍人(64F配属予定の幹部。レイブンズを含める)であった(志賀少佐などの海軍出身者の有力候補はいたが、全員が海軍航空隊の不文律に逆らわずに辞退した)。これを豊田副武などが問題視した。46年秋、47年度春の叙勲で64Fの幹部達へ次々と名誉が授与されていき、レイブンズに至っては、それまでの国家への貢献により、騎士爵への叙爵をも賜ったからだ。その結果、その次の名誉授与は何が何でも海軍出身者が取れと極秘通達がなされ、その不文律を打ち破るように、若本がその名誉を賜る事となる。しかし、これ以後は空軍の設立による、海軍陸上基地にいたベテラン勢の大量引き抜きで、海軍航空隊そのものが大幅に弱体化した事もあり、純粋な海軍航空隊所属者がエースの名誉に預かる事はほぼ無くなり、『かつて海軍に在籍した経験を持つ空軍軍人が名誉を授与される』事が慰め程度にあるのが当たり前となる。井上成美提督の提言で、戦前から海軍の空軍化を目指し、陸にベテラン勢を集めていた事が海軍航空隊の大幅弱体化、短時間で世界最強の空軍が出来たという相反する結末が訪れ、井上自身は議論中の自分の理論への批判に憤激した勢いで空軍へ移籍した事もあり、扶桑国内での彼の評価を、彼自身の死後に至るまで分ける事となる。(彼自身は比叡に『空軍というのは、戦前は陸海航空隊の統合任務部隊という認識だった』とも漏らしており、外部に漏れたら、軍民を巻き込む大事になる可能性があったため、Y委員会がそれを公表するのは、彼の死から数十年後になったという)

「あなたはパイロットなのですか?」

「まーな。正確に言えば、ここだと海軍だから、エヴィエイターになるな」

「アメリカ軍由来の文化ですわね」

「空母機動部隊関連の文化は基本的に、ジェット時代も空母を一貫して持ってた米軍のそれがベースだ。それが米軍由来のところらしいぜ?」

――日英が世界を統一しても、米が隆盛を誇っていた時代のシーパワーのシンボルであった『空母機動部隊』関連の文化の殆どは米軍に由来を持つ。エヴィエイターという単語が使われているのも、その名残りだ。この時代になっても、宇宙軍や海軍のトップパイロットらの戦技訓練校を『トップガン』と呼んだりしたりするのも、米軍の遺した文化だろう。

「米軍の文化が残っているのは、どうしてですの?」

「多分、近代に入った後の100年とちょっとは世界最大最強って言われてたからじゃねえのか?20世紀後半からの100年とちょっとは、その謳い文句も実力が伴ってたしな」

レヴィの言う事は本当である。この世界においての米軍が弱体化を始めたのは、軍備の整備が無人兵器主体へ切り替えられたあたりであった。21世紀も半ばを超えると、無人兵器は第一の隆盛期を迎え、米軍は軍備費削減との名目で有人部隊の多くは解散させていた。だが、無人兵器の暴走でとある地域を破滅させてしまった事を期に、米軍は悪循環が続き、22世紀が間近に迫った時代になると、『張子の虎』と揶揄される内情にまで落ちぶれていた。時空融合現象を経て、ひみつ道具時代を迎えていた日本が形成し始めた、人格を持つAIを持つロボットを一人格とみなす社会がその絶頂を迎え始めていた頃には、ロボットとの共生は既に、特異点への恐怖を持つ欧米列強の殆どの恐怖の対象でしかなかった。

「確か、戦争で散逸しなかった貴重な資料にあった話だ。なんで、アメリカが日本に猜疑心を急に抱き始めたのか。日本がドラえもんに使われてる人格を持つAIを実用化して、普通に製品化したからっていう、後から考えりゃ、馬鹿げた理由だそうだ」

「十字教の絡みですの?」

「たぶんな。統合戦争の最初の開戦理由なんて、終結した時の政府首脳だって知らないとかぬかしやがったくらいだから、全ては推測だ」

「……子供の教育にはよくありませんわね、その薬」

「しゃーね―だろ?叫びすぎで喉痛めたんだからよ」

レヴィはドスの利いた声をしているが、初変身時に喉を痛めたため、タバコ型の喉薬を変身時には愛用しており、口に咥えている事も多い。ケイとしては禁煙しているが、レヴィとしては、薬を吸う形で『喫煙』している。喉を痛めた経験からだ。しかしタバコ型であるため、『漫画での雰囲気』を本当に醸し出す上でのアクセサリーとなっている。

「それに、欧米じゃ、タバコ吸わねーと大人と取ってくれない国もあるからな。私の上官も家族がいないところじゃ吸ってるぜ」

レヴィは上官のガランドに言及する。G機関の長であるガランドも喫煙者だが、義理の子や孫の前では吸わないようにしている。しかし、マルセイユはGウィッチ覚醒後は酒に酔えなくなったが、ニコチン中毒は継続している。その為、近頃はティアナに隠れて吸っているとのこと。

「お、そうだ。切歌のやつが見たいって言ってた動画のデータ、あのタフガイからそろそろ送られてきてるはずだな」

「……?動画のデータ?」

「前、綾香が調に成り代わってた時に色々なところで取られてた行動の際の動画データだ。あいつ、あたしに対抗して、ガンアクションをやらかしたみてぇだな。確か、そこの端末で見られるはずだ」

風鳴弦十郎から送られてきた動画データは、レヴィ爆笑ものであった。黒江は成り代わりの独自行動中、レヴィ(圭子)が行い始めたガンアクションに対抗心を持ったのか、空中元素固定で形成した二丁のベレッタに、アンデッドに効果を発揮する『銀の弾丸』を装填し、ガンアクションを行っていた。黒江は転移と成り代わりから間もない頃、当時は敵対関係にあったマリア達を追っていた米軍特殊部隊を『巻き込まれた形であるが、返り討ちにしている』。その際に見せたのが、レヴィを多分に意識している『トゥーハンド』ぶりだった。その際に、戦いに巻き込まれた小日向未来を救ってみせ、米軍のハンヴィーをグレネードランチャーで撃ち、見事に破壊している。その際のアクションは完全にレヴィのそれを真似したものであるため、結果として、切歌に精神的ショックを与えてしまったのは確かだ。

「貴方を多分に意識した動きですわね、この動きは」

「だろ?私達は引き鉄が引かれる瞬間の銃口の向きで見切って躱すのも余裕だからな。切歌のガキがこれを映像越しでも見りゃ、口から泡吹くぜ」

レヴィがそう評する通り、黒江(映像では調の姿だが)は見事なガンアクションを見せる。切歌が思い込みを重症にした一因ではあるが、別人であるのだから、当たり前だ。ベレッタや対物ライフル、グレネードランチャーを棒切れのように扱って米兵を倒しまくり、『パイナップル』(手榴弾)も『戦争屋どもにイースターエッグをくれてやる』とキレ、即座に投げ返している映像。まさに切歌の精神を壊しに来ている。事情を知らない当時の切歌の精神バランスを狂わせるには充分だろう。

「この続きはあいつから直接聞いたんだが、この後、響とクリスがやってきて、一触即発の状態になったそうだが、小日向未来って、響の親友が事情を説明してくれて、事なきを得たとさ。その時はどっちからも追われる立場だったそうだしよ」

「貴方方の銃の扱い方はセオリーからは外れてはいますが、実戦向きですわね。くぅぅ、私の立場が…」

「てめえらガキ共とは、潜った修羅場がちげーんだ。セシリア、お前なんて、あたしから見れば、卵の殻も取れてねぇようなヒヨコだっつぅーの」

「あれ、何話してるんですか」

「シャルか。お前も訓練終わったみたいだな」

「はい。なんだか今までと感覚が違うから、戸惑いましたけど。レヴィさんの声、織斑先生とすごく似てるから最初は驚きましたよ」

「そうか?あたしのほうが若々しいぜ?」

千冬とレヴィとしての圭子の声質は酷似している。違うのは、はっちゃっけているのと、若々しさがあるか、だ。これは千冬も驚くほどだが、良く聞いてみると、性格面での違いで聞き分けられるとは、箒の言だ。

「一夏でも聞き分けにくいと思いますよ?私達でも一瞬、ドキドキしますし」

「そんなに似てるか?」

「ええ。それは同意致しますわ」

「うーむ……」

「おい、レヴィ。ボウズ見なかったか?」

「綾香なら、陽動作戦で出てますぜ。まっつぁんの姉御」

「そうか。儂の従兄弟がプラモデルを送ってきてのぉ。ボウズに頼もうとしたんだが」

「あいつ、今回は長距離で出てるんで、なのはに投げたらどうです?綾香も忙しい時は投げてるから」

「おー、それもそうか。頼んでくる。若いのをあまり揉むなよー」

「分かってまっせ」

「あの方が貴方の更に先輩に当たる?」

「赤松貞子。航空ウィッチ長老の二巨頭の一角で、あたしが志願したての士官候補生だった頃にはもう古参下士官だった人だ。ウチであの人に反抗する奴はいない」

赤松は見かけが若々しい(外見上は20代半ば)が、45年で30代に突入している。北郷や江藤を子供扱い出来る世代のただ二人の生き残りの片翼。黒江など、彼女から見れば子供である。二回目の黒江達のやり直し始めの日には、既にGウィッチであったので、基地に陸王で乗り付け、困り果てた黒江の声を聞くなり、ドアを蹴破り、『ボウズ共の言うことを信用せんのか、あぁん?』とドスを効かせて現れ、江藤を驚かせた逸話も持つ。江藤は知らぬとはいえ、不用意な一言を言ってしまい、赤松を怒らせ、孔雀の羽ばたきを食らって、吹き飛んだ。黒江はそれで赤松の転生を確信して大喜びしたが、江藤はたまったものではなく、衛生兵の手当を受けたが、昏倒そのものは数分程度だったが、その後の検診で精神に変調を来たしていた事が判明、二週間の検査入院をしたという。

「あの人、怒らせるとこえーぞ?あたしらの直属の上官だった人も、姉御を怒らせたから、ちょっとした事あったからな」

事態が知らされたダイ・アナザー・デイ作戦後、その事を愚痴った江藤。白銀聖闘士の最強格として君臨し、黄金聖闘士に並ぶほどの力を持つ者の力を食らったので、精神的ダメージ大であったと語り、赤松に『ナニ、殺すつもりじゃなかったし、結果的に休暇取れたんだし、我慢しろ。本気だったらお前はあの時で五体バラバラだ』と言われたとか。

「なんですか、それ」

「その上官に口止めされてるが、そろそろ時効だし、言うか。実はな……」

と、江藤の恥ずかしいエピソードをバラすレヴィ。この他にも、黒江が調として、リディアン音楽院へ入校し、響達とつるむようになった後、ワルキューレの『僕らの戦場』を一人ハモリで歌って、翼を唸らせた笑い話も聞いていたりする。黒江は23世紀の銀河ヒットチャートは意外な事だが、几帳面にチェックしていたので、この時点では『ワルキューレ』もカバーしていた。転移した当時にはワルキューレの楽曲を一定程度は覚えていて、独自行動期には『一度だけの恋なら』をシュルシャガナを制御して唄いながら戦った事もある。その時の動画も実はもらっている。黒江ほどの力があれば、シンフォギアが形成する楽曲を制御出来るため、自分で好みの曲を流せる。その為、響は数度の交戦での違和感と、未来を敵から(ノイズ含めて)守ったという事実から、『初めて会った時の調とは別人ではないか?』とする推測を立てていたという。(見かけとしては、前より高い背丈だが、黒江は聖闘士であったため、アトミックサンダーボルトの前口上に『正義』の二文字があるのを淀み無く言うという、分かりやすい違いも大きい)フロンティア事変が終わった後、マリアはアガートラームを亡き妹から引き継いだ際、黒江が事を告白した事で、切歌の精神が破綻しかけている事を告げ、『矛を交えた貴方に頼むのは不躾かも知れないけど、調が戻るまで、調を出来る範囲で演じて……!』と懇願した。黒江は流石に難色を示したが、響も『なんとかしてやってほしい』と頼み込んだ事で折れ、ある程度演じることで、切歌に仮初の安定をもたらした。切歌はその後、半年間で正気に戻っていたが、『失う恐怖』から逃れるため、そうではないことにし、それを魔法少女事変中は通した。その為、戻った後の調は黒江との共有意識に大いに頼る事になってしまったのは言うまでもない。学業面調は元々、フィーネの器候補(実際にそうだったが)の子供達と見なされ、監禁状態に置かれ、まともな教育も受けていなかったため、黒江との共有意識を使うことで、学業面の成績を成り代わり当時の水準で維持している。この共有意識は当人達にもうまく説明できないものである。調の帰還後、互いに記憶が参照できる事、調に黒江の影響が顕著に現れていた事から、マリアは『互いが同調したのと、綾香が神格だったから、それに影響されたのかしら』と述べている。この事情を聞いた真田志郎は『君らはミラーリングのような状態に置かれている。ハードディスク二台を同時に使用した記録方法だが、調ちゃんと綾香くんの場合、調ちゃんの強い願いで、綾香くんとの間に擬似的なミラーリングが形成されたのだろう』と述べている。それでいて、それが解除され、黒江の情報クローン化した状態が、デザリアム戦役時点の時点での調なのだ。黒江の経験値や感情を引き継いだ状態なので、転移前と比較すると、実に熱血漢になっている。血の気が増したため、ガイちゃんとウマが合うようになり、ガイちゃんが今では保護者になっている。

「さて、話し終えたとこだ。あたしらも周辺の様子を見に行くぞ」

「どうやってですの?この艦は飛んでますのよ?」

「なーに、バルキリーの一機でも拝借するさ」

レヴィは一応、バルキリーの操縦ライセンスを持っている。ケイとしては狙撃仕様を充てがわれたりしたが、レヴィとしては前衛仕様を好む。また、元々、銃剣道教育が成された後期の世代であったため、レヴィとしては特注で、銃剣付きビームガンポッドを作らせている。基本、ビームガンポッドはドライブ出来る機体がVF-25以降の新鋭機であることから、低率生産段階のVF-31をメーカーの倉庫から引っ張って来たとの事。また、半完成品であった事から、カシオペアに貯蔵されていたフォールドクォーツを組み込んで完成したので、試作機に当たる『クロノス』と同等以上の高性能となった。元々、J型であったため、当時の時点で最も先進的なアビオニクスであった事もあり、操作性もいい。ウリバタケ・セイヤとアストナージ・メドッソ、ドラえもんの手で追加生産が開始されている。


――格納庫――

「あ、レヴィさん。出るんですね」

「ああ、ちょっくらガキ共連れて散歩だ。おー、丁度いい。邦佳、お前。暇か?ガキ共をシーガルで運ぶから操縦士がいるんだよ」

「分かりました。直枝にも声かけます?」

「あいつはいい。ここでもブレイクされるとアストナージさんたちが死ぬから」

「了解です」

「あ、一応ストライカー積んどけ」

「コスモストライカー入れときま」

レヴィとなっても、菅野のブレイクぶりには参っている節がある圭子。その為、副操縦士には、同じく暇であった西沢を動員した。

「でも、とても信じられませんわ。私の時代と飛行機の姿はそれほど変わりがないというのは」

「お前らの時代で基本は出来たからな。その辺は後で、IS学園で留守番のラウラにでも聞け」

ラウラは正規軍人であるため、留守番中でありながらも、度々電話でアドバイスを求められる事が多い。航空機操縦の経験もあるため、箒に空母着艦のコツを仕込んだ一人でもある。(彼女曰く、VFは便利な兵器との事)ラウラは元々、ドイツ軍のデザイナーベビーであるので、未来兵器でも問題なく乗りこなしている。(彼女はVF-11を高く評価しているとのこと)

「でも、箒さんに空母着艦技能を何故教え込んだのですか?」

「いざという時のためだ。いつでもシンフォギアや聖衣、それとISが使えるとは限らねぇからな。お前の故郷、お前の頃だと空母持ってねぇだろ」

「し、失礼ですわ!クイーンエリザベスとプリンス・オブ・ウェールズが…」

「ISのせいで無くなったかと思ったよ」

IS学園の世界では、ISが絶対王者として君論していたが、通常兵器の流通が止まったわけではない。白騎士事件で価値を減じたが、女性専用なISの費用対効果の低さ故、通常兵器は流通が続いていた。その為、レヴィのこの一言に地味に落ち込むセシリア。

「僕達も驚いてるんですよ、レヴィさん。ISの優位性を、回りから散々にアピールされて育ってますから」

「白騎士事件って奴だろ?織斑千冬から聞いたが、この世界だと、数ある兵器の一つでしかねぇから気にも留めてなかったぜ」

――山を一個吹き飛ばせるような兵器が普通に流通し、神になれる力を持つスーパーロボットが普通に存在している状況では、ISの優位性は相対的に消滅する。更に基礎性能面でも、聖遺物の力を媒介にしているシンフォギアに劣るため、連邦軍に取っては『兵器ジャンルを増やした』感覚にすぎない。そのため、箒がIS学園に一時的に帰郷した際に、アガートラームを使うのも当然であった。一夏は箒がISを使わず、得体の知れない力を使うのを選んだのに怒ったが、千冬が諌めた事で矛を収めている。(黒江が先に使ったためでもあるが)一夏はヒーロー達にも怒り、噛み付いた事があるからか、レヴィからは『まるで教育されてねぇ犬だな』と呆れられており、千冬と声が似ているためか、一夏もレヴィの言うことには一発で従った。箒の二度目の帰郷の際には、ケイとしてではなく、レヴィとして訪れたため、一夏を抑えるのは容易であった。千冬も驚くほど互いの声は似ているが、レヴィの方が威圧感が上であるので、声だけ聞いた場合、一夏が萎縮するのも無理はない。

「あの時、一夏、この世の終わりみたいな顔してましたけど、声だけで怒鳴ると、誰も聞き分けできませんよ」

「当人でもダメか?」

「当人なら聞き分け出来るみたいですけど、他人からは無理ですね。内部伝導の関係で、自分の声は聞いてるのと、聞こえてるのは違うって言いますし」

千冬当人であっても狼狽えるほどに声質が酷似しているレヴィ。一夏であっても聞き分けが困難であるとの事だが、千冬は『よく聞けばわかるだろう?』と流している。シャルは比較的冷静に返す。

「それと、一夏が怒ったのはたぶん、綾香さんの変装だって勘違いしたからだと思いますよ」

「どうしてだ?」

「箒もマリアさんと同調進んだみたいで、『好機』を使わないで『マイターン!』と言っちゃってたし」

「あのガキ、そんなところで目くじら立ててたのかよ」

「箒は神社兼道場の娘だから、英語を使うのはないって先入観が合ったみたいで」

「だから、箒のやつ怒ってたんだな」

レヴィは呆れる。言うなれば一夏は先入観を持ちがちなので、箒も流石に怒り、『大事なところ』をアガートラームで蹴ってしまったほどだ。これには箒も瞬間的にやってしまった事なため、殆ど記憶はない。レヴィはその際、『馬鹿、『黄金』のお前がアガートラームで蹴り上げたら、使いもんにならなくなるだろ!』と諌めたほどだ。悶絶した一夏へは『ボウズ、二重の意味で聞くぜ。生きてるかぁ〜』と声掛けしている。

「あの時、簪が羨ましそうにしてましたよ?箒が変身ヒロインみたいに変身してたの見て」

「ああ、楯無の妹のヒーローオタクか。って、お前ら普段から似たことしてんだろ?」

「それが、あの子。機体が未完成だったんです」

「確か、日本の候補生だと聞いたが?」

「一夏と楯無さんがアレコレして機体は完成したにはしたんですが、経験不足で」

シャルが説明する。更識楯無には妹の簪がいるのだが、色々な面で経験不足気味なのが災いし、今回の出来事は蚊帳の外状態である。箒がアガートラームと聖衣を得て、戦闘能力を高めたのに比例し、セシリアも立場が危うい状況であったりする。甲龍の損失を恐れた人民軍の命令で一時帰国を余儀なくされた鈴の代打ポジションでの登板なので、当人としては不本意である。なので、ブルー・ティアーズの小型化改造は思わぬ福音であった。

「んじゃお前ら、そろそろシーガルに乗れ。あたしは31で出るから」

「分かりました」

二人がシーガルに乗り込んだのを確認し、レヴィは一応、エクスギアを着込んだ上で31に乗り込んだ。そんな彼女に通信が入る。

「なんだ、ビスマルクか。何の用だ?」

「実は私の声がシェリル・ノームに似てるって分かったから、歌うことになったのよ」

「お前が?シェリルの歌を?」

「そういう事になっちゃって」

「確かにお前、シェリルに似てるからな……。その理屈だと、ゴーヤかイムヤあたりがランカか?」

「そうなるわね。私の柄じゃないけど」

「フロンティア船団にいる当人は呼べない状況だしな。シェリルは昏睡状態だって聞いたからな。ランカもそうそう地球に行けんから、しょうがない」

「衣笠はいないのか?」

「あの子、演習で青葉に誤射されて、元の世界でウンウン唸ってるわよ」

「あ、あおばぁ〜…」

ガクンと肩を落とすレヴィ。青葉型重巡洋艦の青葉はサボ島沖海戦の誤認がパーソナリティに影響したらしく、誤射・誤認率が群を抜いて高い。五藤存知少将の今際の際の恨み節が影響したのだろう。流石にウィッチ世界に生きる彼自身も気の毒に思ったらしく、青葉の教育は彼が行っているという。

「さて、そろそろ準備に入るわ」

「What 'bout my starでもいくのか?」

「インフィニティよ。ホントは衣笠かゴーヤ、イムヤとのデュエットがいいんだけど、あの子たち、連邦海軍への連絡に駆り出されてるから」

「なるほどな。綾香が居れば、ワルキューレでもやりだすだろうが」

「あの子も驚いてたわよ?私がシェリルと声質が似てるってことに」

「だろうな」

「あら、代わりに私がいますわ」

「なんだ、三隈。いたのか」

「いたじゃありませんわ。このくまりんこを忘れるとは…」

ランカに声が似ている艦娘のダークホース『最上型重巡洋艦二番艦の三隈』。戦歴はミッドウェー作戦までであるので、壊滅してゆく海軍の記憶はない。なので、全体的に明るめだ。

「お前、何歌うんだよ」

「嫌ですわ、星間飛行に決まってるじゃ……」

「お、おぅ……」

流石に予想の斜め上だったらしく、レヴィもこの反応である。頭を抱えつつ、レヴィは調達した機体を駆って偵察に出たのだった。





――調達は、収容所の兵舎部でデザリアム軍と死闘を展開していた。調と切歌に取っては、聖闘士としての実質的な初陣であった。ガイちゃんが二人の面倒を見ており、マリアが戦闘能力とは別の意味で足枷になっているのは否めなかった。

「サーペント!バスタァァァ!」

ガイちゃんは右腕に砲塔があり、サーペントバスターというエネルギー砲を放つことが出来る。トリプル形態での技だが、砲塔自体は任意に作り出せるため、ザ・グレート状態で使用している。姿はザ・グレートだが、トリプル形態での武器も積極的に使用しており、それはこの一端であった。

「ガイキングアックス!!」

ゲッターのトマホークと違うデザインの両刃斧が出現し、ぶん投げる。ガイちゃんは頭脳面では、Zちゃんよりはマシ程度の脳筋と評される。暗黒星団帝国の兵士達はこれで複数の兵士が倒れるが、沸いて出て来る。

「くそ、奴等の物量は底なしか!?」

ガイちゃんは、トリプル形態以降では、基になったガイキング(L.O.D)の搭乗者の小学生『ツワブキ・ダイヤ』(ツワブキ・サンシローの平行世界での存在)のに引っ張られる形で、言動は彼寄りだが、ZEROに引っ張られ、色々と傍若無人なZちゃんよりは道理を理解している。基本は二人共似たり寄ったりであるが、ガイちゃんは完全な善の存在であるため、ZEROから生まれたZちゃんとは反りが合わない。また、黒江の親友ポジにちゃっかりと収まっているあたり、ガイちゃんは黒江と気が合うらしい。

「狼狽えるな!収容部分に通じる通路までたどり着けばこっちのものよ!とにかく一点突破あるのみ!ライダーの皆さん!」

「分かった、道は俺達が拓こう!……さて、なるべくなら26の秘密はギミック頼りになるから使いたくなかったが……『V3フリーザーショット』!!」

V3はマリアのシンフォギアの維持時間が気がかりだった。LINKERの効き目が安定していて5時間であるのなら、持ってあと数時間と見ており、26の秘密も使用すべきと考えたのだ。そのため、後輩のXも初めて見る能力も多かった。V3は秘密の解明を忘れたわけではなく、すべてをデルザー軍団戦までには解明したが、自己の能力を鍛えるため、使用を封印していたのだ。

「V3電熱チョップ!!」

V3のチョップに電気エネルギーと熱エネルギーが加わる。V3はギミック面で後輩らの雛形になった特殊能力を多数有する。グライダーのように空を滑空する能力、100万ボルトの電気を攻撃に用いるV3サンダーなど。本郷と一文字が色々と試験的に組み込んでみた機能が多い。それを解析したのが別次元のホッパーバージョン3としてのV3なのだろう。

「これでどうだ!V3サンダー!!」

触覚から出す100万ボルトの電流。V3がこれを使用するのは極めて珍しい。ストロンガーのお株を奪う攻撃だが、V3は改造電気人間ではないため、威力と使用可能間隔はストロンガーより落ちる。

「V3さん、こんな能力あるんだ……」

調も驚きの能力の数々だが、体術を得意とするV3(風見)にとってはいささか不本意ではある。しかしながら、早川健の名を受け継ぐ決意をした片鱗を見せ、キザな伊達男的な台詞を言う。

「魅力的な男には秘密が有るものさ」

ズバッと解決する伝説の男の後継になることを選んだ風見志郎。仕草もビッグワンとまた違ったキザさを感じさせた。

「マリア、下がってて。巻き込むといけないから」

小宇宙を滾らせる調。幾分か成長した背丈、黒江の影響を受けた、意志のこもった目。そして真・馭者座の聖衣。彼女の周りに風が巻き起こる。黒江がそうであるように、彼女もこの技を撃てる。その技こそ。

「ケイロンズライトインパルス!!」

拳圧で暴風を巻き起こすこの技。竜巻が暗黒星団帝国兵たちを飲み込み、バラバラにねじ切り、粉砕する。彼女が聖闘士として初めて大技を放った瞬間である。マリアは呆然としてしまう。技自体は黒江が牽制や人命救助の際の消火で活用していた技ではあるが、攻撃に転用した場合、凄まじい威力だった。

「これが師匠から受け継いだ闘技。私は昔の私じゃないッ!」

聖闘士として正式のファイティングポーズを決める。その姿は響を想起させるものであり、本来辿るべき流れから考えれば、不思議なめぐり合わせだった。黒江から記憶と感情を受け継いだ結果、響を想起させるような真っ直ぐな性格となったというのは、調が本来に辿るべき流れを断ち切り、他次元との違いを明確に持つ『固有の存在』と昇華した証でもあった。

(変わったわね、調。これが貴方の置き土産ってことね、綾香)

黒江とは比較的話す事が多かったマリア。黒江に演技を懇願した本人であるし、後に、派遣交渉に訪れたレヴィとも装者としても面識が真っ先に出来た。黒江の戦友であると言い、クリスが『どうやってやがる!?』と言わんばかりのガンクレイジーなレヴィに面食らい、調の変化に一番驚いているのもマリアである。箒に自身が影響を与え、同じ過去生を持つと分かってからは、ますます苦労人ぶりが加速している。それを自覚し、自分の力が不安定であると内心で嘆きつつ、LINKERの効用が薄れ始めた事を感じ取る。効用が消えるまでの時間は自分でも読めない。自分の力はまだ小宇宙に至らない。その悔しさを糧にせんと、ライダーや調、ガイちゃんに続くのだった――



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