ドラえもん のび太とスーパーロボット軍団 第二部


――アナハイム・エレクトロニクスの会長であるメラニー・ヒュー・カーバインは、地球連邦の星間連邦への再編と地球連邦の中興こそが、アナハイム・エレクトロニクスが存続してゆく上での絶対条件と考えていた。別次元では、アナハイム・エレクトロニクスはサナリィに小馬鹿にされる程度の地位に堕ちた事を知った彼は、UC計画の機密保持に躍起になる息子の妻であるマーサ・ビスト・カーバインの行動を危険視し、ゴルゴ13に会社のトップエンジニア達の身辺保護を依頼した。本来なら、ガンダムF90の登場を契機に、アナハイム・エレクトロニクスの衰退は始まっていくという事を知ったメラニーは、進行中のユニコーンガンダムの存在を重要視せず、(ユニコーンガンダムは別次元では、機体性能面で小型機であるF91には及ばないため)ネオ・ジオン残党やティターンズ残党に武器を流すマーサの存在を危険視する。旧エゥーゴ閥が主体のパルチザンに『昔のよしみ』の理屈でMSや物資を与えていた――






――パルチザンは彼の行動により、続々と高性能機を受領した。パルチザンでありながら、『ジェスタ』、『ジェイブス』などの新鋭機が与えられ、機体の質の面では他を圧倒するものに飛躍した。シン・アスカには『シルエットガンダム改』が与えられた。比較的であるが、デスティニーと運用形態が似ていたからだ。ただし、シンは小型MSという存在に疑問を呈してもいる(重量を武器にできないなどの観点から)。――



――カシオペア 格納庫――

「あら、不満そうね」

「こんなちっこいのが本当に高性能機なんですか、武子さん」

「スペックはF91を部分的には超えるそうよ。アナハイム・エレクトロニクスが技術盗用をしてまで作った『クローンのF91』。貴方が元の世界で動かしてたガンダムに運用形態が近似するガンダムよ」

「デスティニーの所在は分からないんですか」

「無茶言わないの。君のガンダムは珍しいものだから、あちらこちらたらい回しされて、最後に確認出来たのはコンペイトウよ」

シンは武子(一時帰国から帰還した)から説明を受けていた。シンはようやく、この世界のMSの操縦をモノにし、自分にMSを与えるよう、武子に要請を出し、受理された。その結果、与えられたのがシルエットガンダム改だった。同機は、シルエットフォーミュラにまつわる事件が有耶無耶になった後、肝心のネオガンダムが失われたこともあり、宙に浮いていた。ダイ・アナザー・デイ作戦での納入候補であったが、運良くネオガンダムの予備パーツが発見され、それが組み立てられたため、土壇場で変更された経緯を持つ。そのため、今回が初納入先となる。

「そこから先はわからないんですか?」

「移動した記録はないわ。おそらくそこにあるわ。どんな状態かは分からないけど」

「どんな状態って……」

「あなたの世界のMSはこの世界とは似て非なる世界の産物。研究材料には持って来いだもの。それに、純正部品も無いし、アレで歯が立たなくて投降したんでしょ?」

「うっ……」

シンはデスティニーを欲していたが、今更持ち出しても、この世界では大した性能水準ではない事、純正部品もない。そこを言われてタジタジだ。武子は、見かけはシンとそれほど変わりないが、Gウィッチであるので、大人な雰囲気を持つ。そこがシンには不思議だった。

「文句なら乗ってから言いなさい、腕の問題以外なら何とかするから」

「わ、分かりました」

シンにMSを受領させると、武子は中間管理職として、艦の人員掌握に努めた。元は陸軍だが、やってることは海軍の艦長だ。Gウィッチに覚醒しているため、手慣れたものだが、昔に死んだ姉が聞いたら驚くだろう(武子には、戦間期の前期に病死した姉がおり、姉は陸戦ウィッチであった)。


「大佐、シンフォギア世界からの返信が来ております」

「私の部屋に回しておいて。レヴィから渡されたやつと一緒に見るわ」

副官からの報告を受け、自室に戻り、メールを閲覧する。黒江がシンフォギア世界でどのような暮らしをしていたのか?それは囘りの証言で明らかとなった。



――証言その一――

「女史は月詠の立場に置かれ、しばらくの間は月詠を演じていたらしいが、私達と戦いになった際、マリアたちから脱走する機会と考えたのだろう。女史は変身していても、160cm台はあったから、私達も違和感は抱いた。あの時、すぐに確信に至ったのは立花だけだったが」

翼も、調が成長したにしても、背丈がいきなり10cmもの成長があるはずがないとする事は疑問に思っていた。そして、マリアも翼も黒江がいきなりエクスカリバーを放った事が疑問を決定づけたと話す。

――証言その二――

「あの時――、調、いえ、綾香がエクスカリバーを放ったことで疑問は決定的になったわ……。翼の剣を手刀で弾いて、黄金のオーラを纏ったと思えば、そのまま手刀でギアを切り裂いたもの」

マリアは頷く。黒江の強さの片鱗たるエクスカリバーはその場の誰をも凍りつかせるほどの代物であると。

「切歌の精神バランスが崩れたのは、おそらくだけど、あの時の綾香が自衛のためとは言え、『自分に向けるはずの無い、敵意を顕にした視線で見た事がきっかけかも知れないわ」

マリアは言った。切歌が受けたショックを。黒江が自衛のために向けた『視線』が暴走のきっかけだと。それがマリアの確信する『暴走』のきっかけであろう。




――証言その三――

「綾香さんは強い人でした。調ちゃんの姿でしたけど、ギアの姿が違ってましたし、私のガンニグールの拳を真っ向から受け止めて、それ以上の拳と技で応えた。鋸を使わないで、拳で応えたから、なんとなくですけど、違うって感じました。それと、未来を助けてくれましたし」


響も事後、黒江が去った後、レヴィ(圭子)の聞き取り調査にこのように回答した。響は数度の交戦で、『目の前の人物は調ではない』という奇妙な確信を得ていた。響は自由奔放な黒江の行動を読めなかったと言い、まさかギア姿で、あちらこちらに出没する奔放な生活を送っていたとは思ってなかったと話す。

「綾香から聞いたが、お前らとは、よくすれ違ってたらしいぞ?」

「え、本当ですか!?」

「嘘言ってどうする?あたしやあいつは聖遺物の力を抑えられるから、お前らの探知に引っかかる事も稀だったのさ。あいつ、コスプレ喫茶でバイトして当座の金を稼ぎながら、お前らのいる街をぶらついてたらしい」

「そういえば……私の友達が見かけたとか言ってたなぁ。気づけば良かった」

「で、タイムマシン使って写真取ったんだが、こんな感じだった」

「う、えぇえええっ!?嘘ぉ!?」

それは、黒江がシンフォギアを着た状態で接客している時の写真だった。飲み物とケーキを乗せたお盆をシュルシャガナのローラーを使って、テーブルに運ぶ様子だった。それに何かを思い出したらしい響。

「お、思い出した―!あの時……」

ガクッとうなだれ、肩を落とす響。黒江の大胆不敵さは、響ががっくりくるほどのものであったらしい。

「あいつ、なんでもやるからなー。この程度は造作もないだろう。やろうと思えば、私も起動できる。なんてたって神様だしな」

「そんな、バーゲンセールみたいな感覚で言わないでください……」

「しゃーねーだろ?事実なんだし」

レヴィは聞き取り調査を、デザリアム戦役が始まる数ヶ月前、シンフォギア世界の協力を改めて仰ぐのも兼ねて、行った。この頃には、調は既に野比家に行っており、切歌は聖域行きの準備中の段階で、響達はこの時に未来行きの声がかかったが、『SONG』側の都合で、この時は辞退せざるを得なかった。また、レヴィは黒江が世話になった礼とばかりに、戦いに参加した。『軍神』化し、不老不死となっているため、ノイズの攻撃も効果はないし、敵と判断したモノを滅する事を可能とする能力を持つため、まさにアルカ・ノイズの天敵であった。






――戦場――

「なんだよ、あのばーちゃん!?生身でアルカ・ノイズを倒してんぞ!?」

「普通の弾丸でアルカ・ノイズは倒せんことはないが、一撃で、だと…!?」

「あの人、凄い動きですよ!?」

レヴィは響らが驚くほどの身体能力を見せ、クリス顔負けのガンアクションを見せる。使う弾は念のため、ヴァチカンから調達した洗礼処理を受けた銀の弾丸だ。クリスは、黒江より年上である事から、レヴィの事も『ばーちゃん』と呼んでいる。クリスのキャラは、なんとなく怒る気にならないのか、レヴィも許したらしい。

「ガキ共。化け物退治はいいが、そればかりしてるとカンが鈍るぜ?偶には人を相手にしねーとな」

ベレッタを乱射しつつ言う。レヴィの戦技は彼女らから見ても一級と分かるものだった。グレネードランチャーを鼻歌交じりに撃つ。元々軽量とは言え、ジョン・ウェイン張りのプレイを見せるのはさすがだろう。

「嘘だろ……、グレネードランチャーを片手で持って撃ちやがった!?」

「あん?ガキンチョ、銃使いの割に、こいつ知らんのか?M79。ナムで米軍が使ったグレネードだぜ?それに、変身した今のお前なら、水鉄砲感覚で持てるはずだぞ?」

「……知らなかった……」

「そうか、お前の年代だと、ナムの戦いは半世紀も前の事になるんだった」

「あたしのじいちゃんが若い頃に見てるかなーってところだぞ?綾香ばーちゃんより年上のアンタからすれば、つい最近だろうけど」

「まぁ、あたしらに年齢はもう無意味だけどな。ガキンチョ、お前に本当の銃撃戦ってのを見せてやるぜ」

「あ、お、おい!」

クリスの制止より先に、レヴィは躍り出、アルカ・ノイズを蹴散らす。南方でよく見るタンクトップとホットパンツのファッション。右肩のタトゥー。とても堅気とは思えない。ファッション自体は普通だが、タトゥーと『血と硝煙の匂いを愉しむ』ような表情が、クリスを引かせている。

「雪音ッ!女史は?」

「見ろよ、あれ……」

「何ぃィッ!?」

翼が駆けつけた時には、レヴィのガンアクションが鮮烈を極めていた。レヴィ(圭子)の元々高い身体能力が神格化で磨きがかかり、更に無茶が出来るようになったこともあって、シンフォギア装者よりも早い次元での反応と、機敏な動きを実現している。黒江が戦友であると言った者の一人であるのは真実であると認識せざるを得ない。

「あ、女史!後ろです!」

「そぉい!」

回し蹴りでアルカノイズを消滅させる。オーラパワーを足に集中させたのだ。ノイズの解剖器官に明らかに触れているのに、炭素化せず、ノイズのほうが粉砕される。

「お、おい!アンタ、今、解剖器官に触れてたんじゃ」

「だから言ったろ、不老不死になってるって。智子が居れば面白いことになったんだけど、しゃーねーか」

「もしや、穴拭女史の事ですか?」

「あいつも戦友だ。あいつは本来、剣使いなんだよ、翼、だったな?お前のように」

「あの方の剣さばきは拝見しましたが、光速で振るうだけではないのですか?」

「それは加減してるだけだ。全力でやれば、お前を上回る炎を扱える奴だ。炎と氷の双方を扱えるんだよ、あいつは。それに、その時は天秤の剣を使っていたからだよ」

「炎と氷を!?」

「あいつは水瓶座の聖闘士だ。絶対零度の氷を扱うなんてのは簡単だ」

レヴィは二人と違い、聖闘士ではないが、別アプローチで同等の能力を手に入れている。人間は極めると、常識を覆すものだ。どちらかと言うと、レヴィはガンダムファイター寄りだと言えよう。

「ぐぬぬ……あなた達は神であるのをいいことに、好き勝手してませんか…?」

「神様なんてそんなもんだ、日本の神様の半分くらいは災害や天変地異に関わりかねんからな」

「立花が聞いたら首傾げますよ、女史」

「あいつはしゃーない。そういうやつなんだろう。多分、あたしが神様ってのは分からんだろーさ」

「そのお姿で言いますか?」

「本来の姿と名前は別にある。今の姿は仕事用、本当の名前は如何にもって感じの日本人だぜ。後で写真見せる」

「姿を変えられるのですか!?」

「その辺は自由に変えられるからな。本当の姿だと有名すぎて、仕事が出来ねぇから、姿を変えてるんだよ」

黒江達は二回目の転生に当たる今回は、非合法的な行為をも行える立場だが、元の姿では国家の英雄なので、諜報活動では、圭子はレヴィとなる。レヴィである時の方が多くなっているのは、圭子の個人的な理由によるものだ。最も、ケイの場合は軍務の内なので、兼業には当たらないが。

「国家の英雄と讃えられる軍人なんてしてると、ストレスも多いんだよ。副業でジャーナリストもしてるんだが、これもストレス溜まる仕事でな。だから、変身能力を活用してるわけだ」

扶桑では、ウィッチであった者は軍籍が復活しても、それまでの職業を副業にできるとする不文律があった。しかし、日本連邦の結成に伴い、兼業の禁止が明記されるため、ウィッチの多くから文句が出ている。(日本では、扶桑軍人は自衛隊員と看做されるための措置。しかしながら、扶桑ウィッチは何かかしらの事情で家業を手伝っている事が多い。)

「あれ?戦前の軍人って兼業できたのかよ?」

「そっちじゃ無理だったな。こっちじゃ、素養がある女子は10代の内は軍務に就くのが戦国時代くらいから慣習であってな。花嫁修業も兼ねてたから、兼業も一定は黙認されてた。が、事情も変わってきてるからなー」

ウィッチ世界でも、とりわけ扶桑では、ウィッチ覚醒からの軍務は花嫁修業と見なされてたこともあり、44年までは『職業軍人』であり続けるのは物好きと言われる世の中だった。(事変から一貫して、職業軍人で有り続けているのは、華族のみならず、一般家庭でも異端視されやすい。ケイもそれだ)だが、扶桑海事変で小学生からそのまま戦時下の教育で軍人となった者達の取扱いが問題視された。彼女らは戦時下の状況で軍にそのまま入隊した上、小学生としての教育も修了を待たずに入隊扱いとなった。華族の出で、経済的に比較的余裕があった黒田(出身は分家だが)も、事変初期は幼年学校に入学して間もなかった。戦況に余裕のあった時期に幼年学校を出て任官した時点でGウィッチとして目覚め、今回は第一戦隊〜旧64戦隊と、一貫して黒江の部下であり続けている。今回は家を継ぐことも分かっているためか、士官学校を出て職業軍人としての道を選び、黒江にかれこれ十年近くは仕えている。(そのため、501への赴任の際には、坂本は同じGウィッチとして信を置き、入隊年度が自分より早いこともあり、坂本は黒田へ敬語を使っている。)日本は陸軍幼年学校を『思考硬直の元凶』と忌み嫌っており、幼年学校卒であるだけで、統合幕僚会議からの排除を目論んでいる(幼年学校から士官学校へのコースをトップエリートと見なしていた扶桑と、普通大学から士官学校のコースを嫡流と考える日本の違い)。江藤も例外なく幼年学校卒であるが、佐官級で唯一に近い、『黒江達を御する事が出来る』という点と、入隊以来の彼女自身の戦功で特別に会議の議席に得たが、これは幸運なケースだ。旧軍エリートを『近代戦争の素人』と侮蔑している。(最も、図上演習でズタボロにされたが)防衛省背広組の提言もあり、彼らは海軍では。『特務士官の差別をした者は数ヶ月の謹慎処分か、軍法会議で降格もあり得る』とする案を出している。これは外部からの提言でもあり、兵学校卒の新米少尉が特務大尉に上位として振る舞う事を問題視したのだ。外部と言っても、予備士官出身者が多かった海保からの提言であるのは暗黙の了解であった。扶桑海軍はウィッチの存在もあり、大日本帝国海軍よりマシではあったので、軍令承行令の悪弊はあまり表面化していない。また、大日本帝国海軍と違い、古参下士官の威光がものすごく強く、北郷や江藤も若手時代は、古参下士官だった赤松などに従順であった。表面化していないのは、事変レベルの戦いであったのと、これまで主戦場ではないので、咄嗟の判断を求められる柔軟性が全体では求められていなかったからだ。それと、江藤(陸士)、北郷(海兵)もそうだが、士官候補生時代、古参下士官が士官学校教官である事が多く、骨にしみるほど古参下士官の恐ろしさを体験しているため、大日本帝国海軍のような事はどの兵科でも起きにくい。(江藤も、任官後でも赤松や若松には頭が上がらず、大先輩と呼んでいる)

「軍隊ってのは、年の功が効くところだ。学校出て間もない新米将校より古参下士官が偉いってのも当たり前だからな。あたしも若い頃は絞られたもんだ」

「お、おい、戦ってるつーのに、長話してる場合かよ」

「大丈夫だっつーの。そんくらい出来なきゃ、戦争の時代で出世できねーよ」

レヴィ(圭子)は戦功で爵位を得た久方ぶりの例である。レイブンズとしての戦功は将官級になれるほどであるが、三人とも、この時の段階では、太平洋戦争開戦で准将へ昇進を約束された大佐である。(事実上は『代将』扱いで将官勤務に移行している。正式昇進は早まることになる)

「これで最後だ!」

ベレッタの銃弾を叩き込んで、アルカ・ノイズを殲滅した。マリアと響が駆けつけたが、既に殲滅した後だった。

「あの、レヴィさん、でいいんですよね?アルカ・ノイズは」

「ぶちのめしてやったが?」

「シンフォギアも無しに!?綾香さんみたいな力を!?」

「あいつとは違うな。まぁ、神様なのは同じだけどな」

「貴方が神って、そうは見えないけど」

「ほう?お前の恥ずかしいとこ、こっちは掴んでるぜ?マリア」

「なッ!?」

「別世界だから、お前らがアニメとして存在する事もあり得るだろう?あたしの弟子の一人がそれ見ててな?」

「な、な、な……!?」

「黒いガンニグール着て蜂起した時、お前、顔はドヤってるくせに、本当は……」

「わーわーわー!!」

レヴィが悪戯っ子な表情で言おうとしたのを、マリアは途中で遮る。まさかの事態だからだ。

「貴方達も笑ってる場合!?あれやこれを知ってるって事なのよ!?」

「そうだ。お前らの恥ずかしいところも知ってるってことになるな」

「!?!?!?」

「お互い別世界だから、こういう事はよくある。マジンガー見た時、お前らだって、似たような事思ったろ?多少違ったりしてるから、その調査も兼ねてたんだよ、あたしが来た目的は。それに、ここじゃ、グレートマジンガーがカイザーになるって無いだろ、クリス」

「あ、ああ。聞いたことねーな…」

「そういう事だ。マジンガーZがマジンカイザーになって無いし、大型MSが小型機に駆逐されたわけでもない。メディアと実際の違いって奴だな」

「あたしはアニメ見るほーだけど、マジンガーとかゲッターはオッサンが見てるのに付き合うくらいで、あんま詳しくないぜ?センパイはアレだし」

「ぐぬぬ……、は、反論のしようがない…」

翼は『剣』となる事とアーティスト活動に邁進しすぎたせいか、アニメの類は響よりも知識がない。そのため、歯噛みして悔しそうである。

「あたしの本当の姿は、割とこの世界で売れてる小説のままだから、もしかしたら見てるかもな。この姿も例外じゃねぇし」

「そういう事が違う世界ではあるのね。前に、綾香から名を聞いておいたから、あなたたちのことが気になって調べてみたのだけど、もしかして『アフリカの魔女』の?」

「なんだ、知ってたのか?」

「やはり……。綾香から聞いた話と違っていたから、確証はなかったのだけど……」

「まぁ、あたしらは『事実は小説より奇なり』を地で行ったけどな。あたしの本当の姿は『ケイ』そのままだ」

「これも違う世界の奇跡、というモノかしら?実は気になって、同人誌の戦場写真集買ってたのよ」

「買ってたのか。それ、あたしが撮ったのだぜ?」

「それなら、帰ったら確認してくれるかしら?」

「いいぜ。それなら話は早い。あたしの本当の名は加東圭子。アフリカの隊長だ」

「なんだが不思議ね」

「まぁ、慣れたよ。こういう事は」

この時、マリアのおかげで正体が知られたレヴィ。本物の写真は持ってきているので、マリアと見比べる事になり、それに装者全員が加わった。


――帰還後――

「再現度たけぇなー、イラストレーションになってるけど、ここまでとは」

「あれ、これが綾香ばーちゃんの本当の姿かよ」

「ああ、航空審査部時代の奴だ。あいつ、これだと引退後はテストパイロット畑になったのか、へぇー」

「そちらでは違うの?」

「あいつ、テストパイロットに行ったはいいが、実戦で名を挙げたのと、テストパイロット向けの能力だったのが災いして、いじめられてたんだ」

「いじめられてたとは?」

「具体的な数値を上げて技術的な説明ができたから、技術屋の受けは良かったんだが、同僚や先輩達から嫉妬されて、鬱病一歩手前だったんだ。それで騒動になったんだ」

「嫉妬によるいじめ……。綾香さんも苦労してたんだ……」

「で、騒動が天皇陛下の耳に入って、いじめてる連中を免職させるーとか、お偉方が呼びつけられて叱られたとかなった」

「どうなったの?」

「天皇陛下のお叱りがお偉方に下ったから、大パニックだよ。あいつを欧州の激戦地送りにして、上はお茶を濁した。お偉方の辞職とか自刃問題に発展したから、審査部も厄介払いしたかったんだよ」

「激戦地送りって、死ねってことじゃねーか!?」

「そうなるな。私達はその前の事変で名を挙げたが、同期や先輩後輩から嫉妬も随分買ったぜ?本と違って、三桁は落としたから」

「それでどうなったのです?」

「あいつは生き延びたよ。5番目の統合戦闘航空団に教官として招かれた。そこからが運命の分水嶺だな。ややこしいから詳しくは言えないけどな」

「あの性格はそれで作られたのね?」

「ああ。所属してた統合戦闘航空団が目の前で壊滅してな。精神がなんて言えばいいのか……、壊れちまったんだ」

『壊れた?!』

「あいつは年齢的に、一線で戦える力は無くなってたんだが、飛べるには飛べたから、教え子に『自分が犠牲になるから』って言わんばかりに逃されたのが直接の原因だ。それであいつは『壊れた』んだ」

「で、でも、全然そんな風には…」

「精神バランスが一応は安定したからだよ。その分、その連載本とはかけ離れたキャラだったろ?」

レヴィは黒江が抱える闇を語った。黒江は精神崩壊し、そこから再度の安定を取り戻す過程で、二重人格化してしまった事、力を求め、黄金聖闘士にたどり着いた事、それを経ているので、前線勤務で据え置かれている事を。

「ああ、その漫画じゃ女言葉使ってたろ?こっちじゃ使わなくなってるから、こっちが変な気分だぜ」

「そう言えば、そうね。その漫画だと女言葉を使ってるけれど、実際に会った綾香はまるで江戸っ子の気質だったわね……」

「甲児と友達だからなー、あいつ。感染ったんだろう。で、あいつが剣の達人なのは分かったと思う」

「実際にはどうなの、この子との関係」

「マブダチだ。と、言っても姉と妹みたいなもんさ。漫画と違って、綾香が今でも剣で勝ってるしな」

漫画では互角として描かれているが、実際には黒江が今でも優位に立っている。これは漫画や同人誌などと違い、黒江は現役に戻っているからだ。資料の一つである、アンソロジーコミックの一編を解説するレヴィ。それには『自分』も出ているので、おかしくなる。

「うーん、貴方のキャラって、本当はこんななのね?」

「猫かぶりしてるんだぜ?これ」

自分にとっては、今の性格が地に近いので、落ち着いたキャラであるのは猫かぶりである。それを付け加える。

「ね、猫かぶり?」

「マルセイユのお守りに、書類仕事してると、ストレス溜まるんだよ。だから、変身してる時は素を出そうってなったんだよ」

薬を吸うレヴィ。圭子としてのキャラをかなぐり捨てている振る舞いだが、今となってはこれこそが素である。なので、当人にとっては今更である。

「お前、色々調べたんだな。あたしが書いた回想録をラノベ風味にしてるのまで買ったのか」

「手がかりになりそうなのは漁ったわ。でも、随分違うのね?」

「一言で言えば、吹っ切ったって奴だ。事故の事も遠い昔の事になったし、神様になって、人生やり直ししてるから、心境も変わったしな」

圭子としての本音だった。心境も黒江と付き合うようになって変わったし、黒江も自分を必要としている事を認識しているので、転生を選んでいる事を。

「人間関係もそれと変わったさ。三羽烏も武子がメンバーじゃ無くなって、綾香が入った。それがあいつが求めたものだ。戦友が欲しかったんだろう、本当の」

黒江が求めたのは『パートナーと言える間柄の戦友』であるのを、レヴィは知っている。505の上官からは仲間とも認識されておらず、本当のパートナーがいなかった事に気づき、無意識に求めたのが『パートナー』であると。智子、圭子、武子の三人は黒江の行いを黙認し、今に至る。武子は三羽烏から外れたが、自分から『扶桑海七勇士』を宣伝している最中である。自分とレイブンズ、黒田、坂本、若本の7人をそう自書で記す事で、黒江がレイブンズに入った事の埋め合わせをした。黒江が歴史を変えたので、武子はこの宣伝で埋め合わせしたのだ。また、若本も自書で、竹井と北郷含めて『九人の戦鬼』と宣伝していたので、これが武子と若本なりの(若本はトップエースの座を譲る対価。)埋め合わせだった。

「歴史を変えていいのですか、女史」

「あいつがそれを望んだし、悪い結果に行くわけじゃないからな。あいつはあたしらと一緒にいるために、転生を選んだ。求められるのは悪い気はしねぇからな。それに変わるんじゃねー、分岐するだけさ。」

黒江は良くも悪くも、自分達と一緒にいるために転生を二度も選んだ。ゲッターの使者となったレヴィ(ケイ)も黒江が自分を求めるのには悪い気はしないので、そばにいてやっている。

「それに、あいつには今の転生前に、ショックな別れを体験させちまったからな。」

「何したんだよ」

「ちょっとゲッターロボで自爆して」

「あー……」

ゲッターロボで自爆死したのをサラッと流すレヴィ。黒江がこの世の終わりのように泣いて、智子もすぐに亡くなった事を、今回の始めの時に聞いたので、黒江が最初に自分を見つけた時の喜びようは目に焼き付いている。当初はすぐに別れるつもりだったが、黒江が大喜びする様子に、裏切る事へ罪悪感が沸いた彼女は黒江に付き合うのを選択した。竜馬もそれを勧めたからだ。

「最初は理由言って別れようとしたんだが、あいつの顔見ると、嘘をつけなくてな。自爆した事を引きずったまま転生してるようだったから、裏切れなくてな」

遠い目をするレヴィ。黒江の事については、すべて本心だった。黒江の喜びようを目の当たりにした上、前史の自爆後、智子をも失った事で意気消沈してしまった事を涙ながらに言われたので、罪悪感が沸いたと。それと転生したての瞬間の流竜馬の忠告もあったので、結局、黒江のそばにいてやる事を選び、今日まで来た。

「でも、羨ましいです、レヴィさん。人生をやり直ししても、友達でいて欲しいって言ってくれる人がいて」

「そういうもんか?長く生きてると、そう感じること減ってなー」

「それが当たり前になってるって事ですよ。前と関係が同じになるって限らないってあり得ますから、手を同じようにつなぎたいって人がいるってことは凄く大切ですよ」

響が言う。響は過去の暗く陰湿極まりない迫害を受けた経験から、誰かと手を繋ぐ事を何よりも大切に思っている。その事から、黒江の思いに好感を抱いたようだ。これは後に、デザリアム戦役の際に響達が招集に応じる要因となるのだった。




――それがメールの内容だ。微笑む武子。黒江からの報告を受け、自分も出る準備を始める――

「格納庫?綾香と合流するから、機体を用意して。Zプロンプトかプルトニウスは用意できる?」

「無理だ。今ちょうど整備に入ってる。ネオガンダムなら用意できる」

「お願い。シンを連れて行くわ。シルエットフォーミュラなら、統一しないとね」

格納庫に行き、ちょうどシンがシルエット改に乗り込むところだった。用意させたネオガンダム三号機(予備パーツで建造した機体。二号機と同型にあたる)に武子も乗り込む。アナハイム・エレクトロニクスのメラニー・ヒュー・カーバイン会長が、息子の妻への抑止力も兼ねて送り込んだ『シルエットフォーミュラの忘れ形見』。ネオガンダムとシルエットガンダム改。それこそ、アナハイム・エレクトロニクスの技術が独力ではサナリィに及ばなかった事の証明。マーサの認識を覆す証明だ。ネオガンダムはサナリィのF91の独自発展機という側面を持つが、クラスターガンダムと似た特徴を持つに至ったため、連邦軍は結局、双方を採用している。サナリィはクロスボーンシリーズのようなFシリーズの汎用機の特徴が薄い接近戦用の機体を生み出したが、アナハイム・エレクトロニクスが歴代の流れを汲むオーソドックスな汎用機を生み出すのが興味深いとされたのだ。それと、同系統の機体なら、隊列は組みやすい。

「シン・アスカ、シルエットガンダム改、行きます!」

「加藤武子、ネオガンダム、出る!」

二人は発進する。シンはこれがパルチザンとしての初陣だった。この世界で訓練に使用したフルアーマーGとは違う機体で出るのは久しぶりの事だが、慣れればプラント製の如何なる機体よりも動かしやすく、OSの細かい調整もいらないのも、彼には助けとなった。

「フルアーマーと違って、こいつは飛べるんですね」

「小型だから重量が軽いのと、割と最近に作られた機体だからよ。フルアーマーは重いから、νガンダム系でも無いと飛べないわ」

シルエット改とネオは小型機であるため、重量が軽い&余剰推力が高いこともあり、元々の時点で飛行可能である。24世紀の先進技術が入っていなくとも、だ。入った現在では、両機ともに安定した飛行能力を得ている。そのためもあり、敵勢力は連邦軍の新型MSの戦力を過大評価している。飛んでくるのを想定していないものが飛ぶというのはそういうものだ。

「どこに行くんですか?」


「味方との合流と援護よ。ここからだと、子供達のほうが近いから、そっちを先にするわ」

「了解」


二人は機体の進路を調達がいる方角へ向ける。戦場には、武子が参戦の口火を切った。グレちゃん、レヴィ、切歌の三者が掃討三脚戦車の登場で態勢を整えるべく、一箇所に集まったところ、三脚戦車を極太のビームが撃ち抜く。

「あのビームは!?」

「桜色の極太メガ粒子砲……Gバードか!?」

「と、言うことはネオか!?」

Gバード。アナハイム・エレクトロニクスがヴェスバーの技術とメガライダーなどの技術を組み合わせ、それをMSが携行するサイズにまで小型した代物で、ヴェスバーを超える威力と、長距離射撃を可能とする。武子はそれを実践したのだ。

「見たこと無いガンダムデス……なんデスか、あれ」

「ネオガンダム。昔、影の計画の集大成とされたガンダムだ。まだ残ってたのか」


「へぇ、ネオを使うとは、洒落たことしやがる。誰が乗ってる?」

『私よ、レヴィ』

「なんだ、お前か。随伴機つけないで来たのか?」

『いえ、訓練も兼ねて一人連れてきたわ。ほら例のコズミック・イラ世界の』

「全部乗せ小僧か?あの小僧で大丈夫か?」

「機体の仕様が近いのを持って来られたから」

「あの小僧を何に乗せた?」

「シルエット改よ」

「まだあったのかよ」

武子に続いて、シルエット改がヴェスバーを放って突入し、ビームサーベルをホルダーから引き抜いて、無駄にパースの聞いた動きでポーズを決める。

『わざわざ何十万光年も宇宙を旅して来て、別の星を攻める……そんなに戦争がしたいのかよ、アンタ達は!!』

と、お馴染みの台詞回しで言うシン。彼は若く、血気盛んである。初陣の時と同じように、ポーズを決めながら叫んだ。


――シンは『本来の歴史』においては、最終的にアスラン・ザラに敗北し、結果としてプラントの『堕ちた英雄』という烙印を押され、ラクス・クラインの軍門に下るという、彼にとっては最悪の結末を迎える。それを思えば、初陣当時の願いを成就させられるであろうこの世界で、失ったモノを一部でも取り戻した方がマシである。少なくとも彼自身は、ステラ・ルーシェを失った後の世界線からの来訪者であるため、その思いを持っているのは確かだ――

シンは近接格闘戦を得意とするが、シルエット改は当然ながら、『対艦刀』を有さない。武装の違いに難儀しつつも、すぐに最適な戦闘の仕方を導くあたりは、曲がりなりにもトップエースであった名残りであろう。ビームサーベルを構えるシン(シルエット改)、それを支援する態勢の武子(ネオ)。両者の機体特性の違いと、行動スタンスの違いが出ているワンシーンであった。

「武子、小僧を援護するのか?」

『適宜、ね。あの子の腕を見極める必要があるから。報告によれば『闘志旺盛、しかしながら反抗心あり、暴走癖あり』とされてるわ。プラントは個人プレーの多い軍隊だと聞いたから』

「なるほどな。お手並み拝見、ってとこか」

レヴィは『ふーん』と言いたげな顔だ。切歌はレヴィが『正体』を明かした場面には居合わせていないため、あまり事情は知らないが、マリアから一定の事は聞いていた。『レベッカ・リー』を自然に演じる事ができる『加東圭子』個人にも興味を持つような素振りを見せ、当のレヴィに怪訝そうに見られたという。



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