ドラえもん のび太とスーパーロボット軍団 第二部


――切歌を寝かし、応接間に場所を移した二人の話題はやがて、ネオ・ジオンの事に移っていった。ネオ・ジオンはもはや年月と共に、生え抜きのジオン軍人は少数派になっており、雑多なテロリストと軍人崩れの集団の受け皿にすぎないと言い合っていた――


「アムロ少佐が言ってましたが、今のネオ・ジオンは『シャア・アズナブルのネームバリューと、ジオンの名前』で生きているに過ぎない組織というのは本当なのですか?」

「ええ。今のネオ・ジオンは雑多な連中の寄せ集めにすぎない。一年戦争からのダイクン派、ギレン/グレミー派残党、共和派(共和国軍の合流)、ティターンズ残党、ギガノス残党、連邦軍の軍人崩れ……。それをシャア・アズナブルがまとめ上げているだけです」

ネオ・ジオンは数こそ、第一次ネオ・ジオン時代以上に膨れ上がったが、その内実は『反連邦の元軍人、テロリスト』を纏め上げたにすぎない。クロスボーン・バンガード残党やザンスカール帝国残党も合流したという、身も蓋もない状況であった。デザリアム戦役の混乱で、組織をなんとか正規軍と呼べる規模にまで回復させたが、連邦軍に対する技術的優位は無くなっていた。ビームシールド、小型/ミドルサイズMSの量産化にこぎ着けていた連邦軍に比して、ネオ・ジオンはギラ・ドーガが主力機に留まっており、そのマイナーチェンジモデルの『ギラ・ズール』も数が出揃っていなかった。共和国が右派によって掌握され、実質的に国土を拡大したネオ・ジオンだが、サイド3の工業施設は『一年戦争当時のそれから世代交代』が大して進められておらず、ザンスカール帝国やクロスボーン・バンガード残党の持ち込んだ小型機の整備は荷が重く、シャアも思わずため息だった。従って、ネオ・ジオンが戦力として運用できるのは、フルサイズMSのみであった。数を揃えるために機体の年式は問われず、一年戦争中の機体も使わざるを得なかった。それがネオ・ジオンの内情である。

「これは、サイド3を偵察した部隊から送られてきた映像ですが、雑多な寄せ集めですよ」

ジャンヌがタブレットで見せた動画には、バラバラな年式の機体(ザクUF2型がギラ・ドーガを率いていたり、ドライセンがリック・ドムを率いていたり、ムサカ級をチベ改級が統率しているなど)がコロニーを警備する様子が映されていた。

「ジオン系というところしか、共通点がありませんね……これは」

「彼らも機体のやりくりに苦労しているのでしょう。ジオン系MSはアナハイムしか製造できませんし、今では一線級の機体とは言い難い機体も多い」

「旧型も駆り出すとは。しかし、それでは烏合の衆では?」

「ジオン軍人達は基本的に高練度兵が多いので、多少の性能差は埋められるという事でしょう。かつてのようなおかしい練度の兵士は流石に減ったようですが」

「あんな練度の兵士がそうそういてたまるか……と言いたいくらいですよ、彼らは。個人技においては連邦軍を凌駕している。連邦軍の高練度兵は基本的に外郭独立部隊か移民船団に多い上、ジオン残党狩りは連邦政府の事情で、一時棚上げだったと聞き及んでいます。その隙を突かれた形でしょうね」


――ネオ・ジオンは、地球連邦の軍縮騒ぎに乗じて勢力を復興させた。このことが、連邦内部のハト派議員の大半の失脚、議会の軍出身議員の大幅増加の原因の一つだった。ハト派議員の大半は残党軍の武装解除を期待したが、その逆に、軍縮が蜂起の口実に使われたので、その立場を失い、九割近くのハト派議員が辞職に追い込まれ、殆どは軍縮で退役した元将官級の軍人らに取って代わらえた。ガトランティス戦役からメカトピア戦役までの間、連邦軍は実のところ、安全保障会議の廃止(元々は防衛軍への移行後に再建するつもりであったのが頓挫したため、そのまま)状態にあり、事実上、内閣の統制下には無かった。そのために軍全体を動かせず、メカトピア戦役で動けた部隊は原則的に、レビル/ゴップの影響下にある部隊に限られた。戦後にベガ星連合軍の襲来と、政府組織の再編で、安全保障会議が再建された。軍隊の解体からの再編が立ち消えとなったのと、連邦軍の組織が保全されていたからだった。その時間が一時は死に体寸前のネオ・ジオンに立ち直らせる時間を与えた。安全保障会議の新たな資格者の八割が軍出身者なのも、軍縮時の混乱で政府が軍から不信を買った時の名残りである。結果、ハト派の発言力は責を問われる形で大きく減退し、デザリアム戦役当時には、中道右派の勢力が連邦の実権を握った。タカ派でないのは、地球連邦国民の良心だろう。――


「しかし、これをこの時代の人間に見せても、アニメの映像としてしか思わないでしょうね」

「理解できるのは軍関係者か、学園都市のみでしょう。人型ロボットの有用性は学園都市で研究されていましたと言いますし」

「しかし、まさかエクスカリバーをサイコフィールドで弾かれるとは……正直言って、あの時は心臓が止まるかと」

「私の宝具『我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)』も黄金聖闘士の全力攻撃までは防ぎきれませんし、それはお互い様ですよ」

ジャンヌも、アルトリアも宝具の力を更に超えるような力を味わうことで、人間が宝具を凌駕する可能性を知ったためか、宝具は以前ほど宛にはしなくなったらしい。アルトリアは更に、自身の剣術が飛天御剣流に圧倒されかけた事を語り、自信喪失になりかけたとも言う。

「確かに。その後、ハルトマン少佐と一戦を交えてみたのですが、飛天御剣流……反則すぎる。この私が初見で見切れないとは……」

アルトリアは覚醒後、ハルトマンと一戦を交えたが、ハルトマンも飛天御剣流を習得しており、アルトリアは初見で見切れず、日本刀を使うハルトマンに圧倒されかかり、九頭龍閃で吹き飛ばされて大ダメージを負い、その光景はモードレッドを青ざめさせた。

『伊達に、戦国時代から最強を謳われてないさ』

ハルトマンはGウィッチとしての覚醒後は剣術の技能を維持するため、秘密裏に特訓しており、ブランクが有るアルトリア/モードレッド母娘を圧倒するに値する強さを誇っている。モードレッドは九頭龍閃を放たれ、吹き飛ばされたアルトリアを見て激昂。『母上を超えていいのはオレだけだぁ!!』と、『我が麗しき父への叛逆』を使ったが、発動寸前のタイミングで天翔龍閃を全力で叩き込まれ、邪剣を砕かれている。

『そんな邪剣、この童子切安綱の敵じゃないよ』

ハルトマンは扶桑の天下五剣の筆頭格『童子切安綱』で宝具と化したはずの『我が麗しき父への叛逆』を真っ向から叩き折り、モードレッドは『不貞隠しの兜』も叩き割られている。この事がきっかけでモードレッドの宝具は変質し、生前の邪心が浄化された事もあり、黒江が『燦然と輝く王剣』を再生させ、不貞隠しの兜は『窶し身の甲』として再生した。むしろ、この模擬戦は扶桑の刀剣史上至高とされる五つの刀の力を、存分に発揮できる発揮できるハルトマンの技量の高さの証明だった。円卓の騎士すらも赤子の手を捻るように圧倒せしめたハルトマン。この模擬戦により、彼女は扶桑ウィッチに模擬戦を挑まれる事が増加したのだが、『円卓の騎士が初見で赤子の手を捻るように圧倒された』というのは屈辱感があるらしいアルトリア。

「まさか、と思いましたよ。仮にも円卓の騎士だった私達母娘が、ああもいいようにあしらわれるとは…」

「貴方方はまだいい方ですよ。私はパイロットをやることになったんですから。それも接近戦に適応してる」

ジャンヌはルナマリアを依代にした影響で、パイロット技能を持った。ルナマリアが接近戦に適性があった影響で、生前は剣で戦っていない(生前は槍でなら経験がある)のに、剣の技能を持ってしまった。しかも、インパルス搭乗時は対艦刀『エクスカリバー』を使っていた。そのため、アルトリアとは不思議な縁がある。

「インパルスに乗っていた時は、対艦刀『エクスカリバー』を使っていましたから、貴方と縁がないとも言えません。もっとも、二本で一本のツインブレード状態で使っていましたので、貴方の『約束された勝利の剣』には及びませんが」

「うーむ……エクスカリバーのバーゲンセールですね……」

「貴方が言っちゃお終いですよ」

ジャンヌはぶーたれるアルトリアを宥める。

「それだけ、ち……、もとい!母上は敬愛されているのだ!」

「モードレッド、そこでお主が何故現れる!?」

「いいじゃん。母上を持ち上げてんだぜ、オレ」

「う、うむ……」

ペリーヌと一体化した影響か、元々の歪んで捻くれた性格が裏返ったらしく、アルトリアを素直に慕い、子供の面倒をよく見る『慈悲深い』性格になったらしい。アルトリアは内心で、『生前にこの性格であってくれたなら……。いや、私の落ち度だな。仮面ライダー1号にも言われたからな。『王という偶像に取り憑かれ、理想しか見ていなかったと……』と独白した。


――本郷猛はアルトリアの『治世を後悔している』姿を見て、アルトリアを一喝している。彼女を過去の英霊とするなら、仮面ライダーの始まりである彼は『現代の英雄』。立場としては似ている。本郷猛は『反省は必要だ、しかし後悔は何も生まない。 後悔していることは反省とし、次の未来に繋げる糧としなければなんの意味も持たなくなる。 英傑勇者の一人として語り継がれている者がその有り様では語り継いで来た者が哀れだな』と言い、それにアルトリアは思わず怒り、『風王鉄槌』を叩き込んだ。だが、本郷はその全エネルギーをライダー一号への変身で吸収し、発散してみせた。アルトリアにこうも言ってのけた。

「君に与えられた、その新たなる『生』の意味をよく考えるんだ。後悔するために与えられたわけではあるまい。過去を乗り越えるために与えられたチャンスでもある」

「では、貴方はその身体になった事を後悔はしていないのですか!?望んでなったわけでないのなら、元に戻せたはず……」

「確かにこの体を憎んだ事もある。だが、逆説的に言えば、バダンのような『歪んだ文明を破壊する大自然の使者』になれる力を得たことでもある。俺は人の自由が脅かされるのを止めるために仮面ライダーとなった。そして、時代が望む限り、俺たちは死なん」

本郷猛は仮面ライダーであり続ける理由を端的に述べた。本郷は愚直までに貫くその英雄たらしめる姿勢と、武道家の側面を垣間見せる求道者的な姿から、黒江からは父親のように慕われている。アルトリアにも、本郷のその姿は影響を与え、生前になれなかった理想像、それと、アルトリアが遥か昔、父『ユーサー・ペンドラゴン』に見た『男の背中』を思い出させ、本郷はアルトリアから『師匠』と認定されたという――

「あ、そろそろ飯だぜー。調を起こして作らせてるけど、ドラえもんに出前電話出させて頼んだ。あ、出前の金、出してくんね?」

「お、お主……まだ私にせびるのか!?持っておらぬのか!?給料」

「だって、ペリーヌの奴、フランスのフランに換金して、復興財団にほとんど寄付してたんだぜ?どうやって日本円に換金すんだよ」

「う、うぅーむ……」

アルトリアは思わず唸る。ペリーヌは自分の給金の殆どを復興財団に寄付し、残された遺産も寄付しているほどの愛国者であるのは周知の事実。モードレッドは給金を使おうとしたら、副人格のペリーヌが咎めるため、ペリーヌと『話し合い』、寄付金を多少減額し、モードレッドの小遣いとする事になったのだが、ペリーヌはフランに換金してしまうため、そこが困ったところだった。従って、モードレッドは日本円の持ち合わせがないのだ。

「あいつに言ってるんだけどな。『換金前に分けてくれないと両替手数料がかさんでもったいない!』って。おかげで持ち合わせがね〜んだよぉ」

「ペリーヌに言っておく……。だが、私もあまり……お主に買ってやったので、その……」

「良ければ、私が払います。給金は日本円に換金してあるので」

「おお、恩に着るぜ、ジャンヌさん!!」

この時、アルトリア/モードレッド母娘には、ジャンヌが文字通りの救世主に見えた。しかし、モードレッドが出前を頼んだのは、アルトリアとジャンヌが見かけによらず大食いで、赤城や加賀とタメを張れる水準の『フードファイター』の素質があるという事情も絡んでいた。二人を満足させられる量は、野比家の全食料を使っても無理なので、グルメテーブルかけが修理中という事情から、のび太とドラえもんは出前電話を使ったのだ。しかも、超大盛りを。当然、料金も高いので、ジャンヌが支払った。台所には全員は入れないため、順番に面々が食事をしたが、アルトリアとジャンヌの二人は別枠で、居間で超大盛りチャーシューラーメンをすすっていたりする。


――台所――

「母上とジャンヌさん、別枠かよ?」

「アレみて、飯食う気持ちになります?」

「確かに。あれは無いわー。オレもペリーヌの体を使う立場だから、元のペリーヌの二倍は食べるんだけどよ。母上は融合タイプだから、オレより入らねぇはずなんだが……。わかんねぇ〜!!」

実際のところ、甲冑を出現、生前の加護を維持したり、宝具を使うとかなりのカロリーが消費されるらしく、アルトリアとジャンヌは素体となる肉体の必要エネルギーも多くなる。そのため、モードレッドよりも必要カロリーが多いのだ。その必要量は赤城や加賀とタメを張れるほどだ。それを考えると、二重人格として出現したモードレッドは省エネだ。ペリーヌの二倍と言っても、バルクホルンと同程度で、常人の範疇だ。しかし、融合した二人は必要カロリーが遥かに多く、スネ夫には『フードファイト系番組に応募したら?』と勧められたほどだ。

「まぁまぁ、ラーメン伸びますよ」

「分かっとるわい。円卓の騎士のこのオレがまさか、こんな極東の島国でラーメンなんぞすするたぁ、世の中わかんねーぜ」

「英国の食事は不味いってスネ夫が」

「不味いんじゃねぇ、調味料も無かったし、日本みてーに土壌がよくて、天候が良い土地が中々ねーだけなんだよぉ!ペリーヌにも言われて落ち込んだんだぞ…」

自国であった英国の飯が不味いというのは、モードレッドも地味に気にしていたようで、副人格のペリーヌにも言われたのが効いたのか、ぐずった。

「あ、モードレッドさん、それ…」

「あ?……うおおぉおお!?なんだこれ!?かれぇえええ!?み、水!!」

「唐辛子かかってるって言おうとしたんですけど」

「バッキャロー!!早く言え!!水、水!!」

当然、唐辛子に耐性が無かったモードレッドは水をぶっこんで辛みを取ったが、息も絶え絶えになっていた。

「あれくらいでそうなります?」

「バッキャロー!!円卓時代に香辛料なんて、影も形もねーよ!!死ぬかと思った」

「それじゃ胡椒も?」

「ペリーヌがかけてるから、それはまぁ……。しかし、ピリピリ来やがった……オレとした事が……」

円卓の騎士の時代には香辛料が無かったので、二重人格タイプのモードレッドには初体験だった。アルトリアとジャンヌは人格融合タイプであるので、違和感なく香辛料入りのラーメンをすすっていた。そのあたりが覚醒タイプの違いなのだろう。

「母上達、よく耐えられるよなあ。二人の時代にはない香辛料もあるだろうに」

「覚醒タイプが違うからじゃ?あの二人は肉体と魂の親和性が高くて、融合したタイプだし」

「ある意味じゃ、オレより行動の自由効くもんなぁ。オレなんて、ペリーヌがうるせーから、中々ハメ外せなくてよ」

ペリーヌの人格は健在なので、行動に一部制限をかけられているらしいモードレッド。ペリーヌにしてみれば、ある時突然現れた存在であるが、モードレッドが円卓の騎士であるため、ペリーヌは肉体を貸している。だが、ペリーヌの「羞恥心」がストップをかけているため、モードレッドは過激な服装をできないなどの制限がある。そのあたりは折り合いをつけるしかなく、ペリーヌとの議論が絶えない。

「折り合いつけるしかありませんね」

「そうなんだよ。これからネオ・ジオンとも大戦が控えてんだろ?戦争に格好はかんけーねーって言ってるんだけどよ」

ラーメンをすすりながら、ドラえもんとのび太に言う。モードレッドは人格共存タイプの覚醒であるので、行動の自由度は元の肉体の持ち主と話し合わないとならない。ペリーヌは服装センスは時代相応で、上がチューブトップだけなどの服装は『はしたない』と嫌っている。モードレッドは時代が時代なぶん、ファッションはこだわりはなく、20世紀末基準のラフな格好を好む。円卓の騎士であったモードレッドのほうが服装センスが解放的なので、調もツッコミを入れており、ペリーヌは脳内で困っていた。しかし、モードレッドが肉体を動かしている故、意思の発露はできない。そこもまたペリーヌの悩みだった。ペリーヌは夜中にのび太にその旨を伝える事を決意、ペリーヌが主導権を取ると、当然ながら、肉体の容姿は元のペリーヌ・クロステルマンに戻るので、夜中にのび太かドラえもんに意思を伝える事で、意思を伝える回りくどい方法なので、モードレッドは『回りくどいやり方じゃねーか』と呆れたとか。こうして、ペリーヌは自らの意思をモードレッドに伝える方法を模索し始めるが、モードレッドから『念話覚えろ、めんどくせー事するならよ。念話で会話して―んだよ』と伝えられたので、肉体の主導権を一時返却してもらい、ミッドチルダで念話を習得して来るのだった。



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