短編『神の名を持つ魔神の誕生秘話』
(ドラえもん×多重クロス)



――グレートマジンガーとマジンカイザーをテストベッドに使用して生み出されたゴッド・マジンガー。この完成が急がれた背景には新早乙女研究所がゲッター線の暴走事故で壊滅し、真ゲッターロボが封印されてしまったという経緯があった。完成間もない宇宙科学研究所に身を置いていた兜甲児らの下にこの報が伝えられたのはその事故の直後だった。

―2200年 晩夏


「何だって!?新早乙女研究所が……壊滅!?」

「そうだ。今、隼人から連絡が入った。敵の攻撃に伴うゲッター線の暴走でゲッタードラゴンと弁慶は地下へ沈降、研究所は壊滅、生き残ったのは竜馬と隼人の二人と敷島博士、それと外部に行っていた一部の人間だけだ」

「……」


甲児は絶句する。新早乙女研究所が壊滅したという事は、早乙女博士の家族やスタッフはほぼ死に絶えたという事を意味する。そして弁慶も………。

「何かわからないのか、鉄也さん!!」

「竜馬によると、ゲッタードラゴンは……進化を始めていたらしい」

「馬鹿な!?ドラゴンは無機物、それも機械なんだぜ!?それが生物みたいに進化するって!?」

甲児には信じられない。機械であるゲッタードラゴンが生物のように進化を始めるなど。それも弁慶ものともなどと……。


「にわかには信じがたいが、そうなんだ。政府の決定でそれを引き起こした元凶の真ゲッターロボは封印措置が取られる。竜馬はゲッターを降りて実家へ帰り、山篭り。隼人はネーサーへ移籍して研究を続けるとのことだが、新規のゲッター線開発は当面の間中止される」


それはゲッター線の危険性を政府が恐れた事の表れであった。それがゴッド・マジンガーへの期待に繋がっているのだと甲児は理解した。

「それで最近はやたらゴッドの建造を急かしてたわけか……」

「そうだ。それと隼人がゲッター線を使わないゲッターロボの建造に取り掛かったとか」


鉄也は神隼人がネーサーで建造に取り掛かったゲッターロボの事を示唆する。ゲッター線を動力としない時点でゲッターと名乗っていいのかと疑問が浮かぶが、装甲材質が合成鉱Gの派生型なのでOKだそうである。

「で、そのゲッターの名前は?」

「ネオゲッターロボだそうだ。当初はゲッターロボ號を造ることで決まりかけたが、データが全てミケーネの手に渡っているのを危惧した隼人の提言でゲッターGの設計を混ぜた機体に変更されたとか」

「分かった。ありがとう鉄也さん」

「ああ。また連絡する」



電話を切ると、甲児は新早乙女研究所の壊滅を篠ノ之箒に話した。甲児は宇宙科学研究所へ移籍するに当たって、ちょうど平時になって手空きになった箒を誘い、箒もそれを承諾したため、共に宇宙科学研究所で働くようになっていた。

「なんだって!?新早乙女研究所が……壊滅!?」

「ああ。それで真ゲッターは封印、実験に使われたゲッターロボGは暴走して地下で進化を始めたそうだ……。」

「嘘だろ!?ドラゴンにISのように自己進化する機構は無いはずじゃ……」

「ところがどっこい、膨大な量のゲッター線がそれを起こした。意志を持ったゲッタードラゴンは生き物のように進化を始めた。弁慶をその中に残したままで」

「……そうか。あいつが……。ドラゴンは弁慶を飲み込んで何になろうというんだ?」

「さあな。さしずめ……“真ゲッタードラゴン”にでもなるんじゃないか?」

「真ゲッター……ドラゴン」

そう。初代ゲッターロボとゲッターロボGの長所を融合させて作られたのが真ゲッターであったように、元々増幅炉を持つドラゴンが自己進化すれば真ゲッターすらも問題にならない戦闘力を持つスーパーロボットへ生まれ変わるのは容易に想像できる。

「……と言うとこんな感じか?」


箒は真ゲッタードラゴンと聞いて、“竜型の下半身にゲッタードラゴンの上半身が乗っかっている”奇抜な姿を想像した。すると甲児に否定される。

「いや、それはないだろ……」

甲児は箒が何を想像したか直に分かったようだ。甲児に引かれたのが分かった箒は顔を赤に染める。想像力の点では科学者の家系に生まれた甲児に一歩及ばないようだ。

「お、お前……これでも私は必死に考えたんだぞ〜!」

「はいはい♪」

もはや二人の関係は友人と言っていいものだった。甲児は光子力研究所にいる、弓教授の娘の弓さやかと恋人未満、友達以上の関係なのだが、ここのところは箒の面倒を見ていたので箒と親密になっていた。なのでさやかからの電話に答えるのに窮しているとか。


「ゴッドの計画は上手く行きそうなのか?」

「いや…動力関係の制御がうまくいかなくて行き詰まったらしい」


と、この時の会話に出されたゴッド開発計画だが、およそ一年後にエンジン関係の問題を克服し、機動実験段階に漕ぎ着けた。後日、竜馬と隼人が弁慶の墓を建てた事が知らされると二人は墓参りに行き、亡き車弁慶の魂を弔った。もう会えぬ戦友の魂が安らかに眠れるように。
























――一年後

「甲児のやつも大変ねぇ」

「ああ。新型のマジンガーの試乗だからな。何があるかわからんから準備も大変だそうだ」

「行ってくるぜ〜」

IS学園から凰鈴音が公式に未来世界へ派遣されて早、一週間が過ぎた西暦2201年のある日。甲児はゴットの初試乗を行うため、ゴッドマジンガーの基地となる、ゴッドの砦に出かけていった。



「鈴、どこに行くんだ?」

「決まってるじゃない、訓練場よ!今度こそ、今度こそ負けないわよ!」

「お、お前なぁ……」


鈴はこの一週間の内に行った模擬戦で箒に土をつけられた事を悔しがり、空戦機動などを猛勉強していた。無理もないが、箒はこの一年で実戦を嫌というほど経験してきた。そのためISも進化を重ねており、鈴とは差が生じている。模擬戦でそれを見せつけられた彼女は元来の負けん気からか、箒にリベンジしようと頑張っていた。箒は呆れながらも鈴の言葉に応じ、訓練を開始した。























――ゴッドの砦 

ゴッドの砦はゴッド・マジンガーの基地として新たに建造された拠点。科学要塞研究所と光子力研究所を超える武装が施され、要塞としての堅牢性は科学要塞研究所以上だ。ここにゴッド・マジンガーは格納されていた。


――第7格納庫

第7格納庫に鎮座するその魔神はマジンカイザーと実に似通っていた。胸のZのエンブレムの位置が違う、肩部などのモールドが無い以外はほぼマジンカイザーと言っていいくらいだ。なので甲児でさえ見分けがつきにくかった。




「これがゴットですか父さん」

「そうだ」

「あの……父さん。これって殆どカイザーじゃないですかー!」

甲児が父の剣造に突っ込むのも無理は無い。ゴッドの姿はカイザーとほぼ同じだったからだ。突っ込みたくなるのも分かる。

「甲児、それはカイザーがマジンガーの行き着くべき姿だからだ。だから最新型のゴッドと自己進化したカイザーの姿が似通うのは当然のことだ」

「そういうものなんですか。それじゃ……着替えてきますよ」

この時の甲児の防護服はマジンガーZ搭乗時のモノではなく、TFO搭乗に使う新型である。箒や鈴からはそのデザインを酷評されているが、甲児当人としては気に入っていっている。防護服を着こみ、颯爽とゴッド・マジンガーのパイルダーに当たる“ゴッドファルコン”に乗り込もうとするが……

(なんだこれ!サ○ダーバードじゃあるまいし……パイルダーに乗るのに長いぞ〜!)

そう。甲児はこういう一種の儀式ともいうべき発進シークエンスを踏んだ経験が無いため、驚いたのだ。やがてゴッドファルコンの座席に辿りつき、エンジンを起動させる。

「エンジン始動!ゴッドファルコン、ゴ―!」

カタパルトからゴッドファルコンが打ち出され、所定の飛行コースを飛行して外へ出る。

「マジーンゴー!」

マジンガーでお馴染みのシークエンスを挟んでゴッド・マジンガーを起動させる。散々技術者らを悩ませた反陽子炉の具合も良好だ。

「甲児、翼を展開してみろ」

「はい。でもなんて言えばいいんです」

「機構はグレートマジンガーと同じだからスクランブルダッシュと言えば展開される」

「了解。スクランブルダァシュ!!」

これはグレートマジンガーのそれを改良したモノ。超合金ゴッドZ製なのでグレートのものより遥かに強度は上。飛行テストを行なってみると、マジンカイザーに匹敵する性能を発揮。マッハを超えても装甲に皺や罅は発生しない。


『凄いですよ父さん、弓先生!ゴッドの性能は!』

高度は70000m。大気圏の成層圏である。グレートでは到達不能な高度だ。それを巡航速度で余裕で飛行可能というのは一部のスーパーロボットでもなければ不可能なことだったからだ。理論上は大気圏突破も可能とのことだ。


「では帰還してくれ。急降下性能を見るついでだ」

「了解!」


こうしてゴッドは性能検測段階に達し、その高性能を見せつけていたわけだが、当然ながらその性能に恐れを抱く者たちも存在した。ベガ星連合軍である。

「うぅぅ〜む。ただでさえグレンダイザーに手を焼いているというのに、ゴッド・マジンガーだと!?」

ベガ星連合軍・地球攻撃軍のガンダル司令はゴッド・マジンガー完成の報にますます頭を悩ませる。グレンダイザーに手を焼き、主力兵器の円盤獣はもはや物の役に立たず、地球のスーパーロボらに為す術なく粉砕されるのみ。なので円盤獣に代わる兵器を本国に要請しているのだが……。




「おまけに小娘共が使う妙なパワードスーツにミニフォーはバカスカ落とされ、この一週間で300機落とされ……ベガ大王様のお叱りを受けた。どうにかしなければ」

これはISの事だ。箒、さらに鈴も加わり、要撃に参加して撃墜していくのでベガ星連合軍の損耗率はこれまで以上に増え、ミニフォーのパイロットの補充も追いつかない悪循環に陥っていた。






「あのパワードスーツはどうにかできんものか?」

「科学班が必死に解析と性能分析を進めておりますが……何せあのようなパワードスーツを軍事目的に使うのは珍しいですからな」

実戦部隊の指揮官であるブラッキー隊長が愚痴をこぼす。ISのように搭乗者をバリアと装甲で守る形でのパワードスーツはベガ星連合軍にとっても珍しい上に、軍事目的に転用した例は数少ないのがブラッキー隊長の言葉からも分かる。

「この前はバレンドス親衛隊長がグレートマジンガーを奪うあと一歩までこぎ着けたのに兜甲児に奪還され、戦死した。おまけに新型マジンガーが完成……例の真ゲッターロボが封印措置がされているのが唯一の救いだな……。」

ベガ星連合軍は地球侵攻に先立って、連邦軍の軍備を下調べしていた。円盤獣は全体的に装甲が厚いためにモビルスーツやVFを含む通常機動兵器はさほど脅威と見ていなかったが、スーパーロボットは重大な脅威と見ていた。特に世界を滅ぼして余りある実力を誇る真ゲッターロボとマジンカイザーを恐れており、その両機が使用不可状態なのを見計らって地球に侵攻したのだが……結果は御覧の有様である。

「いかがなされます司令!」

「グレンダイザーに対抗しうる兵器が間もなくロールアウトすると知らせが入ってきた。次の作戦はその兵器を主軸に立てる」



グレンダイザーに立ち向かうために彼らは策を講じる。地球が強大な恒星間国家となりつつある事への反発とグレンダイザーへの対抗心が彼らの行動の源かもしれなかった……。
















――西暦2201年現在の地球連邦は確かにベガ星連合軍が危惧するように、強大な恒星間国家に脱皮しつつあった。宇宙怪獣をカルネアデス計画で駆逐し、白色彗星帝国をも討ち倒した現在、地球連邦の領域は銀河系の旧外縁部にまで広がっていた。中心部は吹き飛んだか、その他地域は健在なために意外に影響は小さかった。正に繁栄を謳歌するように思えるが、戦乱の火種は思わぬところに潜んでいた。










――旧・木星、軌道都市

かつて太陽系第4惑星と呼ばれた木星はカルネアデス計画でブラックホール爆弾化されたが、惑星間の均衡を保つために軍予算削減の煽りで建造が取りやめられたヱルトリウム級三番艦の船殻が人工惑星として設置されていた。その中の右派らは主に二つの派閥に分かれていた。一つはある一人の男による独裁体制となりつつある衛星居住者ら。もう一つは木星以降の惑星で発見された遺跡の技術で地球連邦への復讐を目論む、ある月面都市から追放された者をルーツに持つ者達。それらは利害の一致から渋々ながらも手を組む。最も互いに利用しながらの同盟である。かつてのティターンズに一旦は潰されたかに見えた、対地球強硬派は息を吹き返しつつあった。



「地球人どもの銀河系進出に伴う主権の掌握は何としても阻止せねばならん。そのためには我らが手を組み、地球を叩き潰さなくてはならぬ。よろしいな?」

「左様。何としても、な」


その首魁らは表面上は互いに笑い合っているが、片方は内心で地球を完全に滅ぼしたいと願っているし、もう片方は老人の妄想を内心、嘲笑っている。しかし利害は同じなので一時的にも手を結ぶ。地球連邦への復讐。どんな形であろうと。旧・ティターンズが潰しきれなかった木星圏の強硬派らは都市居住者と旧木星の衛星に潜む賛同者らを抱き込んでの蜂起を目論見、静かに“その時”を待っていた。現在は小さくとも……いずれ……。






















――実のところゴッド・マジンガーの建造を政府が急かした背景には、木星圏に潜む火種を現大統領と元軍人の政財界の大物らが恐れ、有無をいわさず対抗できる巨大な力を求めたのが原因である。そのために試しにネルガル重工に試験的に火星で発見された遺跡の技術を使用した艦艇の建造と機動兵器の開発を依頼していたりしていたが、それでも不安を拭えなかったのが、ゴッド・マジンガーの完成を度々急かす通達を出している事からも分かる。









――月 フォン・ブラウン市



「近い将来に首都をここへ遷都すると?」

「そうだ。帝都を東京とロンドンに置いたままではスペースノイドの不満分子共の気を反らせんからな」

地球連邦政府大統領(2201年時)と財界要人らはスペースノイドの不満を抑えるために近い将来にフォン・ブラウンへ遷都することが極秘裏に決定された事を話し合う。

「ベガ星連合軍の奴らを撃滅した暁には遷都を行う手はずだ。白色彗星帝国が崩壊し、友好国も出来た以上、月や地球本土を狙われる可能性は減ったからな」


月への遷都は地球環境の回復を促すために最低限の人数だけを地球に残すという環境的側面と、地球上の元主要国の主要都市を不要と考えるスペースノイドの不満を抑え、パリやシドニー、キャンベラ、旧ニューヨーク(現ニューヤーク)のような惨状を防ぐ(最も宇宙人の攻撃で一度全ての主要都市は壊滅しているが、二度目を防ぐため)ためという政治的事情も絡んでいた。

「木星がきな臭いからな。そのためにゴッド・マジンガーの完成を急がせた。“ディストーションフィールド”はスーパーロボットでなければ強引に突破できんからな。モビルスーツのビーム兵器はアレには無力だ。VFや実弾で対応するしか無い。最もタキオン粒子をぶつければ破れるが……ネルガル重工の奴らも腹黒いからな……」


彼らが言うのはテラフォーミング後の火星で発見された文明遺跡が残していった技術の産物の事。タキオン粒子文明へ進化しつつある地球連邦にとって火星の遺跡技術は魅力に乏しいと言えるが、悪用された場合に備えて技術を利用した装備を持つことが必須とされ、試験的に民間に委託して建艦と機動兵器の開発が開始されているが、余り当てにしていないというのがホンネであった。

「まぁ造らせてみようホトトギス、結果が良好なら採用しようじゃないか。ゴッド・マジンガーが完成した記念だ」

ゴッド・マジンガーはこのような政治的事情も複雑に絡んでの誕生であった。だが、時勢にマッチしていたのは確かであった。






















――余談

「悪いが鈴、これで終わりにさせてもらうぞ!」

箒はこの日、鈴にこの世界で得た力を初披露する。本人にもわからない力を。雷の如きエネルギーが箒が両腕で天に掲げた雨月に宿り、赤椿全体を包み込む。当然ながらそれは鈴には理解できるはずはなく、一瞬の隙が生まれた。そこを箒は突いた。

「雷ぃぃぃぃぃっ!光ぉぉぉぉぉっ!!ざぁぁぁぁんっ!!」

それは一種の雷の波動の奔流となって鈴と甲龍を襲った。しかも波動自体が鋭利な切れ味を誇る刃と化し、訓練場の床を裂いて抉り取っていくから鈴にとってはたまったものではない。

(何なのよこの攻撃ぃぃぃ〜〜!!波動を打ち出すなんてそもそもISでできるもんなの!?嘘でしょ!?)

「くっ、うううっ!!」


鈴は箒の放った雷光斬に激しく動揺する。何せこのような漫画じみた攻撃を受けた事などもちろん初めてである。動揺するなという方が無理だ。咄嗟に機体を動かして軸線上から逸らすのが精一杯だった。波動が衝撃波と爆発を起こした瞬間の余波で鈴の顔に切り傷ができる。ISの防御も全てを防ぎきれるというわけではないのだろうか。





「何なのよあんた、今の攻撃!反則よ反則〜!!」

「いやあすまん。まさかここまで威力あるとは思わなかった。何故撃てるようになったかは私にも正直言って分からないんだが……」

「はぁ!?何よそれ〜!!」

鈴は箒の説明に膨れる。本人でさえ分からない力の実験材料にされたことに不満気だ。あの瞬間に宿っていたのは確かに雷光である。鈴には不思議でならなかったが、それには礼の心が関係しているなどとは箒自身も気づいていない。この類の技は何かしらの“心”に目覚めれば撃てるようになる可能性がある。箒の場合は“礼”。ではもし鈴が“覚醒”した場合は何に当たるのだろうか……。“仁”か、“信”、それとも……。





















鈴はこの後、箒に昼飯の食券を奢らせ(宇宙科学研究所は食券を買う方式の食堂である)、やけ食いとばかりにご飯を3杯たいあげたとか。そのため地味に痛い出費となってしまった箒は自室でこの月の仕送りが入る封筒を手にため息をついたとか。



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