短編『IS学園事件の顛末』
(ドラえもん×多重クロス)

※これは本編の「IS学園編」の後日談の短編です。


――箒と鈴が離れた後のIS学園。しばし護衛のためにグレートマジンガーと兜甲児、加東圭子、穴拭智子が滞在する事になったが、当然ながら篠ノ之束ですらも解析しきれない超オーバーテクノロジーで固められているグレートマジンガーの存在は秘中の秘とされ、寝かされた状態で開いていた地区に保管された。

「この束さんでも解析できないスーパーロボット、か。ますます興味ひかれるよ、ちーちゃん」

「さすがのお前も完全には解析できんほどの技術で固められているとはな……驚いたぞ」

「あの子たちの話は嘘じゃないって事さ。まぁ私としてはものすごーく探究心を唆られるよ」


束は天才を自負する科学者である。それでいて超人と言っても差し支えない身体能力を誇る『規格外』の人間。そしてこの世界を女尊男卑の価値観に染めた張本人でもある。何故、彼女が世界を変革させるような大事件を平然と起こす冷酷さ、それと相反する子供っぽさを併せ持つ二面性のある人間になったのか?それは実妹の箒でさえわからない。彼女が心を開くのは、学生時代からの親友である織斑千冬とその弟の一夏、自身の姉妹の箒だけである。その証拠に、千冬と話す時には無邪気そうな声(感じとしては、子供時代のなのはによく似ている)で喋っている。圭子達はそんな彼女に一つ隠し事をしていた。それは別世界に箒によって持ち込まれた“赤椿”をベースにISを絶賛制作中という事項。これは地球連邦の極秘プロジェクトに組み込まれている事項であるが、圭子は千冬にその旨を報告した。これにはさすがの千冬も頭を抱えた。その時の会話は以下の通り。

――前日のIS学園内のとある一室

「何だって……!それは本当か?」

「はい。既にコアを構造から省いた一般用の製造も始まってまして……。軍用は束博士の妹さんのISが基礎になっているんです」

「不味い、実に不味いぞ……少佐」

普段、クールビューティーさを崩さない千冬。しかしながら今回告げられた事は重大である。束が労力を傾けて作り上げた最新作が『許可なしにコピーされて生産されようとしている』のだ。束が知ったら如何な手段を用いてでも次元転移装置を作って地球連邦軍本部へ殴りこみテロをかけかねない。


「ええ、箒さんも言ってました。烈火のごとく怒って殴りこみかけかねない、と。連邦政府は“パテント料は払う”との事ですが……それで納得しますか?」

「いや……あいつの性格から言って、そんな事で収まりはせんだろう。篠ノ之の言う通り、間違いなく君たちの世界に殴りこむ。それも赤椿の後継機か発展型を引っさげてな」

「そんな事できるのですか?」

「束ならやりかねん。各国が第3世代の試験段階なのに、世代を飛び越えた機体をポンと妹に与えるからな。その気になれば二、三世代くらいは飛び越えられるのがあいつだ。目的のためなら国一個を犠牲にしかねん」



千冬は親友である故に束が考える事をほぼ読んでいた。もし、圭子が言ったこの事実が束の耳に入ったら『現行機より世代の進んだ新型を作って殴りこむ』のは間違いなし。束の性格から言って、敵と判断すれば『一般市民の犠牲などなんとも思わない。国が消えようが関係ない』ような大量殺戮を引き起こしかねない。

「何故そこまで彼女をそうさせるのですか?」

「それは私や篠ノ之でもわからんところだ。だが……一つだけ糸口になりそうなところがありそうだ」

「それは何ですか?」

「私や束がまだ10代だった頃の話だ。大昔の男尊女卑や二昔前の男女平等思想が生き残っていたあの時代、既に天才の名を欲しいままにしていた束は研究成果であるISを発表した。だが、いくら天才でも、たかが10代の小娘にすぎないあいつに世間は冷たかった。ISが当時の技術水準を遥かに超えていた故に、世界は懐疑心しか抱かなかったのさ。それからしばらくたった時だった…」

千冬はかつて、この世界を他者から見れば大昔の裏返し的と捉えるだろう社会形態へ変えてしまった事件のことを話す。その名も白騎士事件。日本に向けて撃たれた何千発ものミサイルを全て撃ち落とし、(しかし弾道ミサイルでは大気圏突入時の速度はISをも超越する秒速約7kmの速度なので、通常の巡航ミサイルと思われる。)最新鋭を謳われたステルス戦闘機を含めた多数の通常戦力を返り討ちにしたこの事件。この事件が束が仕組んだ盛大なマッチポンプであることを千冬は見抜いている。だが、確証はない。それ故に表立って束を追求できないのだ。

「博士はいったい何をしようとしてるんですか?」

「……今はわからん。あいつは目的のためなら第三者を平気で殺すような恐ろしいところがあるからな。事を未然に防ぐためにも、君たちの世界でのISの件は極秘にしておいたほうがいいだろう。連邦政府にはそのように伝えてくれ」

これは千冬の、束が異世界で無差別テロを引き起こす危険性を鑑みた末の結論だった。親友として過ごしてきた千冬としては束にこれ以上の罪を重ねさせたくないのだろう。ただでさえ束はバレていないとは言え、(と、言うのには語弊があるが)やったことが既に戦時ならA級戦犯扱いで裁かれてしかるべきなのに、更に異世界でテロ行為を働けば、それこそ化け物級の強さを持つヒーロー達や23世紀最新テクノロジーで固められた軍隊が全力で殺しにかかる。そうなれば束と言えども五体満足ではいられない。いくらISと言えども無敵の万能兵器ではない。それは開発者である束自身もわかっているはずだ。

「ISは決して最強ではない。これは私も束も重々承知している事だが、この世界の大半の人々はISを万能ツールのように考えている。過激な奴らの中には『男性は女性が子孫を生むための種にすぎなくなった』とすら吹聴する者もいる……驕りは反発を招くのをこの世界の殆どの女達は忘れている。なんとも言えんよこれは」

そう。男尊女卑が覆され始めた20世紀初めから中盤までの時代、男性たちは中々現実を直視しようとしなかった。女性が支配者になって栄えた国は枚挙に暇がないのにも関わらず、だ。その過去を裏返したような状態の世界が顕現した事に女性達の大半は驕っているのだと千冬は考えていた。

「どこの世界でも起こりえる状況とは言え、馬鹿らしいですね」

圭子は女性の地位が歴史的に高い世界の出身である。千冬にはそのことは言っていないが、普通に考えて、この世界はどこか歪に見える。箒から以前聞いた話だと、男に対して高圧的に出る女性が爆発的に増え、戦争したら女が男を3日で屈服させるという予測まで出ていたらしい。しかしゼントラーディの事例を知る身としては、そのような話はちゃんちゃらおかしい。現にゼントラーディはプロトカルチャーの遺産の遺伝子工学のおかげでそれぞれの性別に分かれ50万年単位で戦争やっていても決着ついていない。しかもマクロスの元クルーの話によれば、ゼントラーディを創造したプロトカルチャーはそれを大失敗と断じていたとの談。なので自分の世界の事例も加えて考えても馬鹿らしく思えたのだろう。

「もっとも、私にもそんな世界を作ってしまった責任は無いわけじゃない。白騎士の開発に協力していたからな」

千冬は自嘲気味に言う。古今東西の女性達が目指した世界は男女平等の世界だったはずだ。が、今の世界はかつての男尊女卑をひっくり返しただけの女尊男卑が当たり前な世界。そんな世界を創りだしてしまった責任の一端は自分にあると。それ故に束をこれ以上暴走させたくないのだろう。これが事の経緯だ。千冬は圭子との会話を思い出しながら、束との会話を続ける。




「それにあのRXってヒーローの力の根源だっていうキングストーンにも興味あるんだよねぇ。賢者の石の実物を作れるなんて、ファンタジーの世界じゃん」

「やめとけ。あれは人間が扱えるレベルを遥かに超越した代物だ。如何にお前でもな」

「ふぅん……。だけどさ、なんでRXは片方の石しか無いのに進化できたんだろうね」

「南光太郎の話によれば、太陽の膨大なエネルギーがオーバーロードを引き起こしての偶然の産物だそうだ。それであの姿になった。元はもっとバッタっぽい外見だったようだ」





――キングストーン。RXとシャドームーンの体に埋め込まれた“賢者の石”を具現化させた代物だ。ファンタジーなどでは不老不死を与えるとされている代物である。光太郎の証言でも、実際に“二つのキングストーンを手にしたものは世界を手にする程の力を持てる”とされる。太陽と月。その二つの星を象徴する石が揃った時、手にしたものは『創世王』となる。ただしそれほどの力を以ってしても世代交代は避けられなかった。そのために、かつてのゴルゴムは創世王が死期を迎える五万年を世代交代のサイクルとして考え、キングストーンを埋め込んだ二体の怪物(種族としての人間が出現した後は人間ベースの改造人間)を戦せ、生き残った方を次代の創世王に選定する手法でゴルゴムは支配者を世代交代させてきたという。もっとも、ゴルゴムそのものが滅亡した今となっては実証不可能なことだが。

「なるほどね〜。まっ、箒ちゃんの消息も分かったし、今回は結果オーライとするよ、ちーちゃん」

束はニィッと笑う。いたずらっ子のようなその笑みはいつものように何かを含んでいる。けして善人ではない。かと言って完全な悪人でもない彼女をここまで突き動かしているのはなんであろうか。それは千冬でさえも理解しきれていない側面であり、本心であった。しかし今回の無人ISを送り込んだのは彼女に他ならない。色々な介入者によって事態が更に進展してしまったのはさすがに予想外だったようで、それの誤魔化しと一夏を死ぬような目に合わせた事への罪滅ぼしの意識からか、IS学園に姿を見せたし、しばし滞在しているのだろう。それは冷酷な天才とも言われる、束にもまだ友人や姉妹への情愛の念が残っているという表れかもしれなかった。






















――こちらは居残り組の代表候補生ら。一夏を好きにできるかといえば彼も負傷しているためにそうでなく、逆にバダンやミケーネ帝国(百鬼帝国出身も多いが)という異世界からの脅威へ立ち向かえる力を持ち得ぬ事への歯がゆさが彼女達に重くのしかかっていた。

「現有最新レベルのISでようやく立ち向かえるレベルのサイボーグ軍団に巨大ロボット軍団……。一般の生徒では返り討ちにされるから我々にお鉢が回ってくるのは自明の理だが…それでも正面切って戦うのはキツイ。これは重大事項だぞ」

「そうだね……あの場にいたみんなのISじゃ明らかに攻撃力不足だった。RXやあのロボット……グレートマジンガーが来なかったら確実にやられてたよ」


「そうですわね……私など何度も捕まりましたし……いい所無しでしたわ……」

ラウラ、シャル、セシリアの三人は実質的にほぼ太刀打ちできぬまま戦闘が終わった。ラウラはまだ見せ場があったが、他の二人はまったくいい所無しであった。騒ぎそのものはIS学園のあれこれの目撃者への緘口令や、マスメディアや各国の自主的判断で報道はされなかった事で当事者以外には知りえぬ事実となった。(ネット時代を迎えて久しいこの時代においては完全な隠蔽は不可能であった。後々にまで『怪談』としてネットで噂され、語られることになる)IS学園上層部としては度重なる大事件に対する対処法が現有の保有手段ではほぼどうすることも出来ない事のほうが重大なようで、千冬を含めた教師陣に対し減棒を申し付けたようだ。


「教官たちは今回の件に関する責を負わされ、減棒処分された。しょうがないとはいえ、ほぼどうすることも出来なかった事に学園の上の連中は焦っているんだろう。独力で撃退出来なかった事で他から政治的につけこまれてしまうのを。規約も有名無実化が進んでるからな」

「確かにあの方たちが来なければ私たちは遅かれ早かれ倒されていましたし、学園も破壊は免れなかった。悔しいですわ……」

「私たちのISじゃ絶対的に攻撃力が不足してた。巨大ロボットはともかく、あのサイボーグにも……。現有の通常兵器を問題なく無力化させられるはずだけど、あの時の敵には通じなかった。これは無視できないよ」

「うむ。一夏や会長のISでさえもあの様だったものな。しかもアイツらの話だと、あのサイボーグ共は核融合炉で稼働していたとの事だ。どのような国でさえ核融合炉はまだ稼働実験段階のはずだが、それを人サイズの体内に封入し、しかも拒否反応無しで稼働させるというのはとんでもない事だ。ノーベル賞ものの技術だ。当然、装甲も堅牢なものとなる。今の私たちのISで歯が立たないのも無理ないさ」

ラウラはこの中で唯一の正規軍人だけあって、バダンの戦力の強大さを見向いていた。それ故に正面切って戦うには今のISの状態では性能不足が否めないのだと。そのために鈴は未来へ行ったのだろうとも追加する。

「未来かぁ。23世紀っていうけど、戦争が常態化しちゃってる世界って想像できないよ」



「ある意味、今のこの時代だって暴動とか紛争は絶えないからな。国家総力戦が常態化してると言われても納得行く。戦争など、いつの時代も起こるものだからな」

ラウラは軍人だけあって、未来世界の状況に一番納得しているようだ。戦争するのは人の本能のようなもので、無くせるものではないと理解しているのだろう。

「23世紀に入るまでに色々と技術的パラダイムシフトが起こったと言いますけど、あんなものが普通に使われていますの?」

「いや、グレートマジンガーの類は特別だそうだ。部下にも聞いてみたが、ああいうのは“スーパーロボット”で、軍が使ってるのは“リアルロボット”の類だろうとの事だ」


「ラウラの部下さんって妙なところに詳しいよね……」

シャルが呆れた声を出す。ラウラが日本に対して間違った知識しか持っていないのは、ラウラの所属部隊「シュヴァルツェ・ハーゼ」の副官の「クラリッサ・ハルフォーフ」が日本のマンガやアニメのオタクで、そこから得た知識を教え込んでいるのだ。それを知っているのだ。

「うむ。あいつ、最近はロボットアニメにも興味の幅広げたみたいでな。私に『六神合体ゴッドマーズ』と『超獣機神ダンクーガ』のボックス買って送ってくれとか電話で言ってきてな……Amaz○nでポチったから船便か航空便で送るつもりだ」

「ら、ラウラ……ま、まぁいいけど…」


ラウラのこの一言にシャルは思わずずっこける。アニメ全話収録のディスクは意外に高いのだ。まぁ代表候補生なので数万円程度は屁でもないが……しかしゴッドマーズはともかくも、ダンクーガに関しては未来世界から本人等を呼んできたほうが早いのだが、無論、ラウラたちは知る由もない。


「それでセシリアはどうしたんだ?さっきから落ち込んで」

「あの時、僕以上にいい所無しな上に、何度も捕まったからね……それだよ」

セシリアからは所謂、『落ち込みオーラ』がぶんぶん出ていた。あの騒乱でいい所無しだったのがよほど堪えたらしい。このままでは戦力外通告さえされてしまうくらいに気にしてるようだ。

「それで、あの旧日本軍の将校だと言ってたあいつらはどうしている?」

「ああ、あの人達なら織斑先生と今後の事について協議中だよ。あの後、生年月日聞いたら大正年代の生まれだってさ……」

「やはりな」

「わかってたの?」

「あいつらが着ていた旧日本軍の軍服は1943年制式のタイプだ。と、なるとその時代に青年将校なのは大正年代生まれだ。こちらでは45年に負けて解体されたから昭和年代生まれは年齢的に将校になれていない。自ずと絞られるさ。あちらの23世紀にはタイムマシンや異世界への航行技術がパラダイムシフトで獲得されているというからあいつらはそれで未来世界にいるんだろう。本当の年齢をはぐらかしていたのは、この年代、普通に生きていれば大正15年生まれでも100歳超えている計算だからだろう」

ラウラは智子らの軍装から大体の出自を見抜いていたようだ。さすがに正規軍人なだけあって、観察眼に優れている。


「でも、旧日本軍将校って割にはノリが軽いような……」

「あいつらの軍装の胸章をよく思い出してみろシャルロット。航空胸章と空中勤務者胸章
がついていただろう?」



「あ、ああ〜確かに」

「あいつらは飛行戦隊の人員だ。だからああいう性格なのだろう。飛行戦隊には自由な気風があったからな。」

ラウラはシャルに日本陸軍の航空行政と編成について説明する。日本陸軍に意外に自由なところがあった事は知られていない。これも戦後日本で一般化した陸軍悪玉論の弊害だろう。それは外国人にも影響していたようだ。

「そうなんだ」

「しょうがないとはいえ、日本には戦後、陸軍を擁護するとジト目されて蔑まれる風潮があったからな。だから海軍寄りの論調が今でも多い。実際はどっちもどっちなんだがな。戦史書とかを見るとわかるぞ。航空行政でも海軍の方がヘマしてるからな」


ラウラは丁寧に日本陸軍のいいところを説明する。学園の生徒には、日本陸軍というだけで智子達へ悪印象を持つ者も少なくない。それ故に千冬も頭を抱えていると。

「教官も頭を抱えておられるよ。生徒達の中には戦前の陸軍というだけで悪印象を持つ者も多いからな」

「確かに。戦後日本にはそういう風潮があるからね……ねぇ。ラウラ。セシリアが殆ど放心状態なんだけど、どうする?」

「いかん、すっかり忘れていた!!」

セシリアはすっかり落ち込み、放心状態に陥っていた。気持ちはわからないわけではないが、最近は一夏との模擬戦で負け続けな上に、騒乱でも何の役に立てなかった。尋常ではない落ち込みようで、負のオーラ出しまくりである。

「とりあえずぼくはセシリアを部屋まで送ってくるよ」

「それがいいな。頼むぞ」

セシリアを慰めながらシャルは部屋へ送る。しかしこの場にいる誰もが少なからず力不足を感じているのだ。自分たちの想像を超えた敵がこの世に存在することを知ったことで、強く。

(セシリアだけじゃない。僕達……それと会長もだと思うけど……の力不足で一夏に無理させちゃった。僕も機会があれば『向こう』に行こう。それで……!)


ある決意を固めるシャル。それは自らの力不足を痛感した故にたどり着いた答え。彼女が何をしようとするのかはまだ語られるべきではない。今はまだ……。















――未来世界の厚木基地では、黒江が試作ISのテストをしていた。そのISの形状は赤椿をベースにしているが、ロールアウト当初より大掛かりな改修が数度行われた結果、機体各部が小型化され、背部のウィングがウィングガンダムを思わせる形状に変えられていた。これは別プロジェクトとある程度の技術協力が行われている表れであった。その一方で、赤椿の展開装甲機構は完全には模倣出来なかったために、武装に関しては歴代ガンダムやスーパーロボットからのスピンオフを中心にした、ほぼオリジナルのものとなっていた。この時の装備は以下のとおり。







・試作型バスターライフル(パワードスーツが携行可能なように小型化されたウィングガンダム系列モビルスーツのメイン射撃武装。カートリッジ式なために規格が違う別プロジェクトの機体でも射撃可能。小型化されたもの、威力面ではカートリッジの改良によりウィングガンダムと遜色ない)


・ゲッターマシンガン(実弾兵器の有用性を鑑みた軍が新早乙女研究所の生き残りであるマッドサイエンティストの敷島博士に制作を依頼したもの。元は初代ゲッターの攻撃力改良案の一つとして考案していたとの事)


・ダブルトマホーク(ゲッターGのそれを単純に小型化したもの)


・ツインブレード(これは赤椿の雨月と空裂の機能統合&レーザーブレード機能追加型。普段は片方の刃で戦闘し、エネルギーを注入する事でもう片方の刃が展開され、レーザー剣化する。なぜツインかというと、この武装の開発者が時空戦士スピ○バンの大ファンで、必殺技もアークインパルスと名付けるほどの熱の入れよう。)

・ビームサーベル(ツインブレード破損時の格闘能力維持のための予備武装。新型ガンダムの装備レイアウトを模しており、背部バックパックに二基、腕のホルダーに一基づつ装備されている。ビームトンファーとしての使用可能)以上だ。射撃武器より格闘戦用武器が多いのは黒江の要望によるもので、推進系の強化が数度に渡って行われた結果、格闘戦時の瞬発力と追従性、機体剛性は赤椿を上回った。

「ふむ……追従性が前より上がっているな?」

「はい。各部にマグネットコーティングを施しましたから。反応速度は以前より上がっています」

「分かった。それじゃ模擬標的相手にテストをしてみる」

黒江のISはスラスターを吹かし、加速する。その速力は高度10000mで赤椿を若干上回るマッハ3.2をマークしている。(赤椿の速力はおよそマッハ3ほどとの事。他の機体は第3世代で大体マッハ2程度。)各部が小型化されている外観なためか、ISらしさを残しつつも、宇宙刑事のコンバットスーツに近い印象を与える。その様子を地上から見学する鈴は興味深そうだった。


「ふぅん。あれがこの世界で実験されてるIS……見た感じ、赤椿がベースになってるのね……」

「最初に持ち込まれたのが赤椿だったからね。それが私達には幸いしたよ。」

「真田さん」

この一連のパワードスーツ関連プロジェクトにはヤマトの技師長である真田志郎も一枚噛んでいる。ISは民生面と軍事面の双方で有効活用可能という、彼の解析結果が出されると連邦政府はまず民生面からの研究を開始した。最初にコアなどの複雑な機構を省いた簡易型を作り、それをアナハイム・エレクトロニクス社などの民間企業へ譲渡し、生産設備を整えさせた後に流通させた。軍事用の研究が本格化したのはその後だ。黒江が身に着けているのは模倣という形で生み出した軍用試作一号機だが、現在では数回の改修により、オリジナルの赤椿から離れた姿となり、オリジナリティが増している。

「あれは当初、機構こそ模倣出来なかったが、赤椿とほぼ同じ姿だったんだが、銀河連邦からの技術協力で改修を数回行わってあの姿になったというわけさ」

「銀河連邦……それってバード星が中心になってるっていう恒星間連合のことですよね?」

「そうだ。銀河連邦には元来は銀河の過半数の文明が属していたんだが、ここ数百年の戦乱で勢力が減退気味だったんだ。そこを地球の加盟で持ち直しを図っているところさ。だから地球にすごく協力的でね。たぶん政治的事情も絡んでるけどね」

「そういう事だったんですね」

そう。銀河連邦は地球での1950年代付近に最盛期を迎えたが、80年代に宇宙犯罪組織が次々に武装蜂起すると混乱期を迎え、宇宙刑事シャイダーの時代には敗北直前にまで追い込まれたこともある。近年はガミラス帝国や白色彗星帝国の台頭で銀河連邦も分裂の危機を迎えたが、地球連邦が両国を打ち倒した事で回避された。なので恒星間国家として、今や宇宙有数レベルの軍事力を誇る地球連邦の加盟を諸手を上げて歓迎。新参者でありながら、地球は銀河連邦の非常任理事国に名を連ねたのだ。そういう政治的事情も絡んでの協力であったが、バード星の進んだパワードスーツ関連技術を得られたのは僥倖であった。これによりかつての学園都市以上に高性能なパワードスーツを自力で作れるようになり、ISの模倣に成功したのだ。


「地球は奴さんにとっても特別な星だそうだよ。なんでも大昔に地球が彼等の星に多大な影響を与えたそうで、彼等が地球に好意的なのはそのせいらしい」

「ややこしい話ですね」

それは宇宙刑事シャイダーのコードネームの由来となっている出来事。ムーが海底国なのに、何故大陸としての言い伝えが残っているのかの謎を解く鍵でもある。不思議界フーマ誕生に絡んでいるとされるこの記録が銀河連邦が地球連邦に対して好意的な理由の説明となる。






「いつ宇宙犯罪組織に襲われるかも分からんからね。そのためにもこのプロジェクトが進められているのさ。君の甲龍も稼働データ取りしたいから用意しといてくれ」

「分かりました」

鈴もISを展開し、稼働データ収集の協力準備を始める。ここ、厚木基地は元々は海軍基地であったが、宇宙軍設立後に宇宙軍へ移管された。最近は大都市圏内というのを逆手に取って、航空兵器などの試験場としても使われていた。黒江達がここに来たのはISと別プロジェクトのパワードスーツに関する稼働実験である。ISなどのパワードスーツがどの兵科の扱いになるのかは2201年時点では未定であるが、以後の地球連邦軍の主要装備の一角を占めるようになっていくと同時に民生分野でもある程度普及していく。篠ノ之束の発明は異世界でも思わぬ形で花を咲かせたのだった。



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