短編『三羽烏の奇妙な死後』
(ドラえもん×多重クロス)



――三羽烏は使命を終えた後、その生涯を閉じたはずだったが、なんとそれぞれ違う形で『高次の存在』となる形で現世に戻ったのだ。


――23世紀のウィッチ世界

「オッス、みんな久しぶり」

「まさか、こういう形で現世に戻るとは思わなかったわよ」

「そうねぇ。私はゲッター線の化身になったし、黒江ちゃんは聖衣と一体化して、智子は使い魔を逆に取り込んで、高次の存在になった。子孫の連中が知ったら驚くわよ?」

「あー、私はもう、それしたわよ。大ばーちゃんとか子供に言われてさ。外見は15くらいなのに……」

「プー……」

「笑わないでよ!確かにそうだけどさ」

「んで、向こうの世界に年数が追いついたけど、どうなったんだ?世界は」

「それは説明するわ。私が一番早く、現世に戻ったしね」

ウィッチ世界も23世紀になり、未来世界と同じように、地球連邦の設立が検討され始めていた。この頃にはブリタニアが衰退し、リベリオン合衆国は太平洋戦争での傷が癒えきらず、扶桑が相対的に超大国化して久しかった。智子は使い魔と一体化し、一種の神の化身となる形で現世に舞い戻った時間が他の二人より早く、現世の事に詳しかった。


「……というわけ」

「こっちは地球連邦政府樹立検討中で、向こうの世界は百年戦争の真っ只中、か」

「そう。移民星のある一団が『地球星間連邦』から離脱して、連邦とドンパチ中。向こう側は2520年あたりで、17代ヤマトが戦没したとかなんとか」

智子の口からは、未来世界は自分達の知る時間軸から更に300年が経過し、26世紀に入っている事、25世紀から『第二戦乱期』に突入している事が大まかに語られた。

「向こうは26世紀か。どんな世界になってるんだ?全く」

と、黒江がぼやいてると……。

「オッス、久しぶり」

「何ぃ、か、兜!?お前、どうしてここに!?」

「あんたらと同じ理由だよ。俺の場合はカイザーと一体化したんだよ」

甲児だった。往時の若々しい姿で姿を見せたため、三人も驚く。甲児は死後にマジンカイザーと一体化し、マジンカイザーの意志と化したために、このような事になったのだと説明する。

「なるほど。マジンカイザーと一体化ねぇ。竜馬さんは?」

「真ゲッター、それと真ドラゴンと融合して、聖ドラゴンになったよ。いずれエンペラーへ進化するために力を蓄えてるんだと」

「なるへそ。自由に動けるのはお前だけか?」

「そういうこった。鉄也さんもグレートカイザーと一体化してるが、あの人は戦闘に駆り出されたからな」

「グレートカイザーを動かせる奴がいたの?」

「ジュンさんとの間にできた子孫が今は操縦者だよ。そいつが負傷したりしたりすると、鉄也さんが動かすんだと」

「で、あなたは暇なのね?ここにいるって事は」

「ああ。俺の子孫はまだ、カイザーを動かせるだけの力を持っていないからね。MSとかも随分様変わりして、今じゃマン・マシーンに名前が変わったよ」

「何それ?」

「24世紀に入る頃には、小型MSに限界が訪れてね。ミノフスキードライブの普及もあって、また大型化していったんだよ。それで既存MSからマン・マシーンへ改修された機体も多かった。ガンダムタイプがそれさ。大型化に傾向が戻ってからは加速度的にサイコフレーム、バイオコンピュータ、バイオセンサーとかが発達して、ニュータイプで無くてもファンネル撃てるよ」

「マジかよ……技術の発展は恐ろしいぜ」

「百年戦争のせいさ。あれで俺らが肉体を持ってた時代とそう変わらない程度だったのが、一気に飛躍したから」

甲児の口から、26世紀には、MSという兵器はマン・マシーンという進化形となっている事、百年戦争がMSをマン・マシーンへ変えた事が示唆された。基本的にはMSの基本を守りつつ、オールレンジ攻撃が非ニュータイプでも可能、完全な飛行能力、小型機では不可能な豊富なオプション武装が特徴で、MSが辿るであろう道筋と言えた。

「百年戦争か。移民星の反乱がなんで100年も続いてんだ?」

「敵が波動エンジンよりも高出力で高トルクの機関を実用化したせいさ。それで数代のヤマトも戦没してる。そのせいで戦局が膠着状態なんだよ」

「波動エンジンよりも高出力で、高トルクのエンジン?想像もつかねーよ」

「モノポールを応用したエンジンだよ。それで波動エンジンを凌ぐ出力を得られるんだ。それで連邦に衝撃が走って、偶々、ある移民星でそれを積んだ戦艦が造られて、連邦に加わったから、それが18代ヤマトを襲名したところさ」

それは未来世界のヤマトの進化形の一つ『第18代宇宙戦艦YAMATO』である。更に後の時代、キャプテン・ハーロックの時代の記録によれば『初代を彷彿とさせる活躍を演じた5代か6代前のヤマト』として記録されている。波動エンジンとモノポールエンジンの複合機関『波動モノポールエンジン』はそのあまりの高出力が更なる未来の軍縮の時代になると、高出力が逆に疎まれていき、従来型波動エンジンの発展が好まれたため、主流には成り得なかった。だが、一対多が当たり前になるワンオフ戦闘艦には搭載され続けており、アルカディア号の後期建造艦の一部に搭載されたという。

「おっと。こんなところで話もなんだから、その様子を見に行こう。今の状態なら、普通に次元も時空も超えられるし、宇宙空間でも大丈夫だしな」

「言われてみれば。よし、行こうぜ」

「んじゃ、行ってみるとしますか」

4人は光の粒子の状態となり、未来世界の西暦2520年の宇宙空間へ飛んだ。飛んだ先はある宇宙空間。ちょうど第18代宇宙戦艦YAMATOが地球連邦艦隊を率いる形で、敵と戦っているところだ。

「あれが26世紀の未来のヤマトと連邦艦隊か。どことなく面影があるなぁ。ん?あのヤマトだけ、なんか連邦のデザインラインと違くない?」

智子が指摘する。ヤマト以外の船は、23世紀時点で主力を張っていた船たちの系譜を感じさせるデザインであるが、ヤマトは敵の船と地球連邦の折衷的デザインラインなのに気づいたのだ。

「あのヤマトは、連邦が直前まで使ってた17代ヤマトに、敵国家、名前はセイレーン連邦っていうんだけど……の技術を混ぜたハイブリッドなんだよ。俺も詳しくは見てないけど。ほら、その証拠に戦闘力がアンドロメダの子孫より高いだろ?」

「あ、本当だ」

第18代宇宙戦艦YAMATOは正確に言うと、民間人がコンピューターに造らせたと言っていい経緯がある。その際に各部にセイレーン連邦の技術が加えられたため、同時期の連邦軍恒星間航行艦艇より一歩抜きん出た性能を誇った。それを示すかのように、僚艦のアンドロメダ級の遠い発展型が三斉射でようやく撃沈する巡洋艦を、YAMATOは主砲の一斉射で粉砕し、一撃で戦艦にも痛打を与えるところが見られる。

「ん?あのショックカノン、なんかプラズマを纏ってない?ピリッときたんだけど」

「ああ。俺達の時代の最後に在った第二世代ショックカノンの『プラズマショックカノン』。この時代にはその改良型が普及してるんだよ。YAMATOのは特に主力が高いから、余波を感じたんだろう」

「なるほどなぁ。どことなく面影があるのが心憎いぜ。マン・マシーン達もジェガンの面影があるし、VFの子孫もどことなく、どの機種の子孫かわかる。あれは11の子孫だな、そんな感じだ」

黒江が指摘したのは、この時代のVFの一つだった。廉価量産型であるらしく、多数が乱舞している。自分達も乗った経験があるVF-11のデザインラインを持つことから、同機の子孫だと判別できたらしい。

「俺達の時代の機体は博物館で飾られてたり、マン・マシーンになって投入されたりしてるMSも多いぜ。スミソニアン博物館を見てみるとしよう」

4人は今度は、この時代の地球本国に跳躍した。場所はスミソニアン博物館群の一つ『の国立航空宇宙博物館』だ。金は自由に生成できるため、律儀にチケットを買って入った。

「お、コスモタイガーが置いてあるぜ!」

「こっちはVF-19よ!」

「お、VF-22!」

この博物館は自分達の専門分野であるため、三羽烏も年甲斐(?)もなくはしゃいだ。自分達の知る各航空機(23世紀で使っていた機体群)が博物館に飾られているのは感慨深いらしい。

「おーい、ここの特設展見ろよ」

「どれどれ」

――それはVFの系譜と題された特設展示だった。23世紀では現有機であったVF-19以後の発達具合に触れられており、高級機には前進翼が採用される割合が高い事、VFの性能はその時々の技術的革新と同時に飛躍する事が記されていた。この当時の現有機の性能についても触れられており、そのスペックは廉価量産型でさえもVF-25を超える水準である事、高級機はYF-29をも超越する水準で、デルタ翼機と前進翼機が有ることがわかった。


「この時代でも前進翼が高級機か……。なんかそういう法則あったな?」

「あと、9ナンバーに剣の名前がつくのもね。現在の新鋭機は『エクスカリバーV』ですって」

「Vぃ?という事は、Uがどこかであったのか?あれ。イサムさんも草葉の陰で喜んでるかもな、これ」

「でしょうね。今頃は天国でクシャミしてるかも」

この時代でも、VF-19の血統を受け継ぐVFが造られている事に、生前に同機を愛機とした経験がある黒江と智子は嬉しそうだった。その現有新鋭機は19の正統発展型を連想させるフォルムを持つことが写真で誇示されており、イサム・ダイソンの最終的な功績を連想させたからだろう。

「お、こっちはストライカーの展示よ」

「何ぃ!連邦にもウィッチが出たのか?」

彼女らが連邦軍に在籍中は連邦生え抜きのウィッチは出なかったが、時空管理局の駐在魔導師が地球に定住し、現地の人間と交わってから、およそ二代から三代が経過した24世紀初頭頃から連邦軍にもウィッチが出始めたようで、数の増加で新たな兵科が創設され、真田達が作っていたストライカーの系譜を継ぐモノたちが主力ストライカーとなっていった事が暗示されていた。説明文には『特に優秀なウィッチは第13外郭独立艦隊『ロンド・ベル』に配属される決まりがあり〜』とあり、この時代でもロンド・ベルは時代とともに軍編成上での位置付けが変わりつつも、なんだかんだで存続していた事が分かる。

「ん?外郭独立艦隊?あれから編成がまた何度か変わったみてーだな」

「ああ。24世紀以後は、地球の状況も変わったから、数十年単位で、定期的に軍縮→軍拡→軍縮→軍拡って無限ループと言おうか、昔のビデオの早回しだか巻き戻しみたいな事が起こったから、ウチも編成がその度に編成が変わってるんだよ。今はまた軍拡に向かってるから、外郭がまた外れるかも。通算で10回目くらいだな、そうなると。扱ってる兵器が兵器だし」

連邦軍唯一のスーパーロボット運用部隊であるという泊があるため、ロンド・ベルは他の独立部隊がその後の政治的状況の変化で改編なり解体がされるのを尻目に、23世紀から位置付けが変化しなかったのが窺えた。それと戦乱の度に勝利の原動力となった功績のため、政治家が手を出せない『軍の聖域』と化した側面がある。と、そこで4人は思わぬ人物と再会した。

「あれ、智ちゃんじゃないか?」

「え、光太郎さん!?」

南光太郎=仮面ライダーBLACKRXである。彼が往時と変わらぬ若々しい姿で現れたので、智子は驚くが、黒江は冷静だった。

「光太郎さん、100年ぶりくらいですか?」

「150年かもな。君がまだ人間として存命中だった頃以来だし」

「ち、ちょっと待って、綾香!なんで普通に会話してるのよ!」

「おいおい、光太郎さんの事をよく考えてみろよ。改造人間なんだぞ」

「あ……そうか。」

光太郎は生体改造タイプの改造人間だが、キングストーンを産みこまれた時点で5万年の寿命を得た。そこからRXになったので、老いという観念がそもそも存在しなくなっている。更に『光があるかぎり不滅』という恐ろしい能力があるため、倒せるとすればシャドームーンしかいないという、悪の組織涙目な事態なため、バダンも未だにRXを倒せないのが分かる。

「積もる話も沢山ある。本郷先輩がこの近くに住んでるから、ご飯貰いに行こう」

「本郷さん、この時代はアメリカに住んでるんすか?」

「ああ。最近はアメリカに宇宙犯罪組織の残党が現れてるから、俺達が鎮圧してるんだよ。…おっと、君たち、乗り物に乗って行く必要はまだあるかい?俺はバイクで来たんだけど」

「今となっちゃワープもできますけど、旅情ないんで、バイクか何かを作って行きます」

光太郎の言う通り、今の四人は高次の存在となっているため、その気になれば空間跳躍は容易である。しかしながらそれでは旅情がないため、黒江は生前の愛車の形を思い出しつつ、空中の元素を固定させるというキュ○ティーハニーのような手法で生成する。

「ん?いちいち作るより、四次元ポケットみたいな空間にモノを入れといて、そこから取り出したほうがよくないか?」

「お、それなら……」

光太郎の指摘に、智子は思いつき、生前の遺品を保管してある空間から、生前に使っていた愛車を取り出す。


「あー、ずりぃぞ、それ!私はできねーんだぞ、そんなドラえもんの奴みたいな芸当!」

「だって、私、神だもの。使い魔と一体化してるし」

「くそぉ、ま、負けた…」

「はいはい、妙なところで張り合わない。行くわよー」

「って、なんだよ、ヒガシ。その単車!」

「智子に取り出してもらったのよ。保存を晩年に頼んどいたのが功を奏したって奴?」

ハーレーダビッドソンに跨がり、エンジンを吹かす圭子。それに『ガビーン!』と言わんばかりに唖然としつつも、黒江は生成したバイクに跨がり、後を追う。26世紀にもなると、北米大陸も昔年の賑わいを取り戻しつつあるようで、人通りも多く、人々の目が明るい事に気づく。


「ん?気のせいか、人通りが多いし、昔に行った時のような、なんと言おうか、日本人への敵愾心さえ見え隠れする視線を感じないな?」

「この時代にもなると、北米も復興してきたし、統合戦争の記憶も薄れている。だから、23世紀の時ほど治安は悪くないし、大分住みやすいところになったよ。相変わらずストリートギャングはいるけどね」

「なんすか、それ」

「アメリカじゃお馴染みの光景さ。チンピラの若者達がマフィアの真似事したりして、縄張り争いをするんだが、衝突がヒートアップすると、一般人も巻き込むから、警察で抑えられない場合は、俺達が鎮圧してるんだ」

「なるほど」

「23世紀の時のほうが今より過激だったよ。ティターンズから身を持ち崩した、軍隊崩れが多かったからね」

「あの時はあまりこっちには行かなかったからなぁ。ティターンズやジオンが絶えたと思ったら、今度が移民星の一部が反乱か……なんか複雑っす」

「俺達も特に変化無しと言いたいけど、結城先輩が亡くなった」

「結城さんが!?」

「ああ。何度かコールドスリープしていたが、今から30年ほど前、天寿を全うされた。あの人が残した武器は各ライダーが受け継いでるよ」

ライダーマン=結城丈二は25世紀終盤頃に天寿を全うし、亡くなった事が明かされた。その為、ライダーマンの持っていた『仮面ライダー4号』のポジションは空位になった事を教える。それに顔を曇らせる4人。結城丈二の生前に世話になったからだ。

「あの人は今でも、俺達の心の中に生きている。あの人の意志を継いでいく事が今の俺達の使命さ」

光太郎から教えられた『結城丈二の死』は4人にはショックであったが、時代が進んでいる故の出来事である事を理解し、納得した。本郷邸につくと、歴代ライダーが集まっているらしく、各ライダーの愛車が集まっていたが、見慣れぬマシンが三台ほどあるのに気づく。

「あれ?新サイクロン号とハリケーンは?」

「あの三台は先輩達が乗り潰してね。今はその後継車に乗り換えたよ、先輩方」

見てみると、新サイクロン号の後継らしきマシンが二台、ハリケーンのカラーリングをしたバイクが一台ある。

「乗り換えたんすね。後で三人に聞いてみよう」

「よう、数百年ぶりじゃないか、みんな」

「お、お久しぶりです!本郷さん」

黒江も流石に、本郷の貫禄と迫力には畏まってしまうようである。生前の晩年には、聖闘士の中でも、かつての老師・童虎のようなポジションにいたのを知る他の三人にはそれが可笑しかった。本郷は料理をしていたようで、珍しくエプロン姿だ。

「あれ、本郷さん。なんですかその格好」

「料理してたのさ。これでも世界各地を飛ぶ身だ。自炊くらいは否応なく覚えるさ。今日は皆も集まってる。遠慮無く食べてくれ」

「はい!ゴチになります!」

と、4人は本郷に招かれ、御馳走を振る舞われる。今や高次の存在なので、食事行為はもはや意味がないが、生前の名残りとも言うべきものだ。と、その時、本郷邸の真上を連邦軍のマン・マシーンが通過していく。そのマン・マシーンはZガンダムの面影を残すもので、その血統の遠い子孫であることを示すフォルムを持っていた……。



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