外伝その0


――何故、ティターンズはウィッチがいる世界においてその版図を獲得し、維持できるのか?それは宇宙空間に浮かんでいる、ヘリウム3ガスを少量であるが、自己製造できる施設を持つ資源衛星が転移しており、ティターンズはこの世界の人間が手を出せない宇宙空間で兵站体制を整え、そこから各地域に展開していた部隊へ定期的に物資を送り、兵站体制を構築していたのだ。緒戦の戦いを至ってワンサイドゲームで勝ち抜いたのは、人同士の戦争に不慣れな各国軍を熟成された諸兵科連合部隊と空軍で粉砕していったからだった。








――1944年 東部戦線

1944年。ネウロイとの戦争が膠着状態にあった世界は大きく変わろうとしていた。それは。

「各部隊は付近を制圧、市街地を最低限の被害で手に入れろ。第二次大戦型の軍備でこの近代装備は打ち破れん。安心して戦闘を行え」

ティターンズ陸軍が初めて東部戦線に姿を現したのは44年の5月頃。彼らはMBT(主力戦車)、対MS用に改良されていた多連装ロケットシステム、自走砲、歩兵戦闘車などを投入し、ロシア東部方面の部隊は版図獲得に乗り出した。第一撃は多連装ロケットシステムによる陣地への掃射で幕を開けた。




複数の車両から一斉掃射されたロケット弾が行うのは連合軍の機甲師団の軽装甲車両の数減らしと防御線の破壊。未来技術によって制御されたロケット弾はティターンズ基準で第二次大戦型でしかない各国軍の戦闘車両を瞬く間に破壊せしめ、防御線に穴を穿つ。当然ながらこの駐屯地の司令官らはいきなりの攻撃に戸惑う。

「なんだ!?ネウロイの襲撃か!?」

「いえ!ネウロイではありません!ロケット弾です!」

「ロケット弾だと!?」

この頃にはネウロイは攻撃手段の主流を実弾からビーム兵器に切り替えていたため、実弾兵器を使うのはその技術を有さない人類側に限られていた。だから驚いたのだ。


「航空偵察ウィッチより入電!“基地の北東、30キロ付近に所属不明の機甲師団を発見ス!”です!」

「未知の部隊だと!?どの国でもないのか」

「ハッ!」

オラーシャ帝国陸軍のホームグラウンドのこの付近を大規模な部隊が敵対意識を持って、攻撃をかけてくる。しかも国境付近の部隊や502、505の両統合戦闘航空団からも発見されずに、である。これに彼らは狼狽する。ネウロイでなく、本当に人間なのかと。基地には次々と損害報告が入ってくる。



「第7独立親衛戦車旅団、壊滅!第385親衛砲兵旅団、通信途絶しました!


「馬鹿な!今の砲撃でか!?」

「はい。信じられませんが、事実です」

瞬く間に二個旅団が通信途絶したというのは類を見ない損害の負い方である。しかも軍近代化の過程で設立されたばかりの最新装備の旅団が、である。

「ウィッチ部隊はどうした!制空権はこちらの手にあるはずだが?」

「戦況は不利との通信が……敵の速度は優に900キロを超えるようで」

「ぬうううう……」

副官の言う通り、ウィッチ部隊は押されていた。何にというと。


「糞、糞、糞っ!こいつら化け物か!?」

ウィッチが必死に戦う相手はティターンズ空軍が繰り出してきたジェット戦闘機、MiG-29の動態保存機の改修型である。地味に後世の技術で改良が加えられ、“数が多く、手っ取り早く使える安価な旧式機”として使われた。今回はその初陣だ。亜音速で空戦を行う彼らにウィッチ部隊は苦戦を強いられ、戦線離脱者を続出させていた。

「駄目だ……ついてくる!ああ、エンジ……があああっ!」


超音速で飛来する空対空ミサイルの試射の標的にされた者はシールドで致命傷は避けたりしていたが、その内のシールド強度が低くなり始めていた高齢者は破片と爆発でストライカーを破壊され、撃墜されていくものが出始める。エンジンがオーバーブーストの負担で出力低下を起こしたところに近接信管入りのミサイルが爆発を起こしていくからだ。


「バリアのようなもので防いでいるが、強度は個人差があるようだ。全機、バリアが弱いと思われる比較的高齢の魔女を重点的にやれ!そうすれば統制を失った幼女らは何もできなくなる」

隊長は隊内の無線回線で部下に指示し、侍身は時速1000キロでの一撃離脱の機銃による対進攻撃で隊長ウィッチを攻撃した。向こうもそのつもりのようで、受けて立つようだ。だが、レシプロエンジン機でジェット機に火力で勝負しようなど愚かな行為だ。射程は当然ながら後世の技術で改良されたミグ側が優位だが、バリア(ウィッチのシールド)を突破し、殺傷するためにはなるべく近接して撃つ必要があった。800m付近で二発程度撃った。それで決着はついた。一発を防いでも二発目はシールドの抵抗に勝ち、ウィッチを2つに千切った。胴体から上と下半身だ。ただし胴体部の中央部は、ほぼ原型を留めない破壊であるが。これが30ミリ砲の破壊力である。オーバーキルもいいところだ。

「恨みはないが、これが戦争だ。悪く思わんでくれよ」

隊長機は散っていった少女らへ敬意を払うかのように、機内で敬礼する。蟷螂の斧という言葉があるが、彼女らは勇敢だったからだ。付近の制空権はこの時点でティターンズの下に渡り、陸戦部隊は圧倒的火力で前線中枢を痛撃していた。多連装ロケットシステムと自走砲を組み合わせての砲撃で防衛戦を破壊、突破し、61式戦車で残存装甲車両を徹底的に蹂躙した。

「目標、距離1500m。BT-7ですが、細部が異なります」

「ロマノフ王朝が存続している世界だからな。イワンおじさんの軍隊と差があるのだろう」

並行時空故に、出てくる戦闘車両にティターンズが知る歴史との差異があるのに驚きつつも、滑腔砲で狙撃する。敵は史実の独ソ戦期のソ連地上軍のような洗練された戦闘行動を取っていない。戦闘ノウハウがないからだろうが、戦車戦闘の基本さえできていない動きは哀れですらある。各個撃破のいい格好ともいうべき動きだ。

「いいんですか、中佐」

「生存権獲得のためには一方的な殺戮もやむを得ん。徹底的に敵を撃破せよ」

155ミリ滑腔砲の砲撃が続く。隊長車を優先的に撃破し、動きが乱れた小隊を狙い撃つ戦術、熟練兵の操縦と火器管制装置の働きで高命中率を叩きだした61式戦車隊は戦車戦での勝利としては一年戦争中盤以来の凱歌をあげ、非公式ながらも究極の主力戦車としての面目を見せた。機甲師団が戦闘車両を制圧した後、基地中枢を歩兵部隊が抑え、駐屯地そのものはほぼ無傷で手に入れた。こうして、東部戦線で橋頭堡を確保した彼らは数百年間で完成された電撃戦で戦線を推し進め、ついにはこの世界の人類とネウロイとの隙間を縫う形でまずは東部戦線での生存権獲得に成功。505統合戦闘航空団の壊滅はそれから数ヶ月後のこと。



――数カ月後、505統合戦闘航空団基地

「嘘だろおい、嘘だろ!?こんな事あっていいの!?」

当時、黒江は在籍していた505から本国へ召還命令が下ったために帰国の途に就こうとしていた。その矢先にこの攻撃に遭遇し、モビルスーツからジープで逃げ惑うというピンチであった。この頃は当然ながら未来文化に感化されていないため、黒江の言葉遣いはまだ女性らしさを残したものであった。

「この私が逃げることしか出来ないなんて……!力があれば雲鷹で斬ってやるのに……!」



既に戦う力を喪失していた彼女は仲間に逃がされる形となった。この時ほど黒江はウィッチの“あがり”の宿命を呪った事は無かった。なんとか機銃掃射を運転技術で躱す。

「くそっ……裏道に回りこむしか……」

ジープのハンドルを切って基地から離れ、森に入る。しばらく走り、燃料が切れたところでジープを乗り捨てると、徒歩で逃走に移り、追手から必死に逃れようとした。それから数週間、黒江は持っていた日本刀と拳銃でのサバイバル生活を送った。






――三週間後

「お、釣れた」

なんとかカスピ海付近にたどり着いた彼女の軍服はボロボロに敗れ、辛うじて階級章と将校である事を示す胸章が残っていたが、左側の胸が露出している有様で、ショートカットだった髪形もサバイバル生活の内にセミロングヘアへ変化していた。

「なんかロ○ンフットみたいだよな……やってること。熊とやりあうわ……湖で魚釣ってるし……魔のクロエって呼ばれてた私が……」

魚を起こした火で焼く。かつて撃墜王と呼ばれた自身がロ○ン・フッドを思わせるサバイバル生活を送るはめに陥った事にため息をつく。軍服はボロボロになり、拳銃の弾は既に底を突き、日本刀も魔力強化で持たしてはいるが、使いすぎで刃こぼれが酷くなっている。

「ちくしょ……死ぬ時はベッドの上か釣り堀でって決めてたのになぁ……」

夜空を見上げながらそう呟く。黒江は自らの置かれた状況を悲観的に呟く。死を覚悟したのか、もう軍服も脱ぎ、胸当ての包帯をさらけ出した姿で地面に横たわって眠りにつく。体力を消耗しすぎて魚一匹程度ではとても腹を満たせない。サバイバル生活で精魂尽き果てたのだろうか、意識がふっと消える。彼女が連邦軍に保護されたのはこの翌日のことである。









――連邦軍空母 医務室

「ここは……?」

目が覚め、上体を起こす。ベットに寝ていて、病院の病室のようなところだというのは分かった。

「味方が発見してくれたのか…?…あれ……なんか変な感じが……」

黒江はここで自らの身体の違和感に気づいた。ベットの掛け布団の膨らみの長さがおかしいのだ。身長と掛け布団の膨らみの長さが一致しない。両足をピンと伸ばしているので、足が出るはずが、布団から出ない。声のトーンも感覚的に変である。高くなっている。“これはどういうことだ”とばかりに起き上がって部屋の鏡を見ると……。


「うわあああああ、あああああ〜!!何これぇ〜!」

鏡に映る自分はまるで子どものように幼い姿だった。狼狽し、悲鳴を上げてパニック状態に陥る。

「目が覚めたようだね」

やって来た医者の声で平静を取り戻した黒江は軍人の性故か、反射的に敬礼の姿勢を取ってしまう。

「は、はい。先生、これは一体どういう事なんですか!?!?体がまるで子どもみたいに……!?」



「説明しよう。君の体は見ての通りに若返っている。目測、12、3歳程度にまでかな。だから子どもと言って差し支えない。かなり衰弱していたからそのついでの治療だよ」

「治療って、そんな馬鹿な事が!?」

平静を失っている黒江に彼は更に追い討ちをかけた。外の様子を見せたのだ。窓に広がっているのは空。眼下に広がるは、大陸の風景。これにますますパニックになる黒江。が、説明を受け、艦内を散策する内に納得した。軍司令部から黒江に前線復帰命令が下されたのはその更に数日後。こうして復帰時の約束である“前線復帰しない”という条件を反故にされた形で前線復帰する事になった。が、ティターンズという軍隊の存在を知り、世界をシッチャカメッチャカにされている事への復讐心も無いわけでは無かったため、約束を反故にされてもそれほど怒りは沸かなかった。数日間の療養の後に彼女は戦いの空へ舞い戻り、自らを鍛え直す意味も込めて未来行きを志願する事になる。そこでフェイト、次いでなのはと出会って行く。












電撃戦でティターンズはある一定の領域を確保し、占領体制に気を使いながら統治を行なっていた。彼らは大型艦艇を建造可能な造船所である、ニューポート・ニューズ造船所などを確保するのを目的にリベリオン領内へ上陸作戦を敢行する計画を1944年時点で計画していた。


――1944年 7月末 ティターンズ残党軍本部 作戦室

「リベリオン領内へ侵攻する?」

「そうだ。近い将来にエゥーゴの奴らが扶桑などの海軍大国を抱き込む可能性が高い。そのためにはある一定の海軍戦力を拡張せねばならぬ。サンフランシスコは核でぶっ飛ばす予定のなので、あそこの海軍工廠は使えないが、東海岸の海軍工廠を確保する。東海岸さえ抑えればリベリオンは烏合の衆だ」

「しかし東海岸に侵攻するにはある一定の戦力が必要だぞ。それにアメリカ大陸方面には我が軍の戦力は殆ど転移していないんだぞ」

「そこはリベリオン軍の一部を味方につければいい。軍には魔女に反感を持つ者が多いし、黒人などへの有色人種差別意識も多分に残っている。黒人や黄色人種系の人員を扇動すれば、空母や戦艦の一隻は手に入れられるかもしれんぞ。長期的計画だよ」

この時期の合衆国が抱えていた“人種差別”問題。それはリベリオンでもアメリカでも同じである。ティターンズはその点を利用してリベリオン軍に潜む火種を拡大させる腹づもりだ。これは転移間もない時期に自由ガリア海軍がある地域で建造していた次期戦艦“アルザス級戦艦”を2隻前後運良く鹵獲に成功したのを期に海軍戦力を拡張するための計画であった。その計画はひとまず成功に終わった。反ウィッチ派の軍人が艦の首脳陣を謀殺したり、拿捕したりしたて、44年6月までにモンタナ級一隻とエセックス級空母を一隻戦力に加える事に成功していた。


「例のモンタナだが、思わぬ収穫だった。大和型戦艦に匹敵する火力と装甲を有する大戦艦だからな。数ヶ月の近代化改修を行い、編成に組み込む予定だ」

「乗員はどうするんだ?」

「元乗員と宇宙戦艦乗艦経験者とを組み合わせる。改修で乗員は減るしな」

戦艦は人数がいる艦種だが、ティターンズの技術であれば自動化で乗員を削減できる。元々の乗員は再教育の最中で、8月中旬頃には前線任務に出せるとの見積もりが出されている。

「モンタナとやりあえるのは大和や武蔵しかいない。ビスマルク級やキングジョージ級など雑魚だ。砲弾も試験的に弾頭部にガンダリウムを用いたものを供給する予定だ」

「ガンダリウムを?確かに一年戦争中のジオンのモビルスーツにはガンダリウムを弾頭部に使ったショットガンを持ったのがいたが……?」

「ガンダリウムならこの時代の大抵の装甲に大打撃を与えられる。昔の劣化ウラン弾より安全だしな」




ティターンズ海軍関係者は若く、40代の者が上級職についていた。これは老人らがティターンズへの異動を嫌がり、代わりに創建時に当時の若手佐官らを抜擢した結果、生じた結果。崩壊時には最古参世代が42,3歳になっていたため、アレクセイがその世代を転移後に上級職に任命したのだ。そのため普通の海軍の常識を超えるアイデアを出す組織となっていた。

「アルザス級の完成は何年後だ?」

「CICを組み込んで作ってるから46年には戦列に加えられるだろう。砲塔も造らせている。現地の技官のアイデアで新規に42cm砲にランクアップさせるからその完成とテスト期間込みの納期だ」


これは自由ガリア海軍のとある部隊が有していた戦艦建造可能な海軍工廠をそのまま自軍の施設として用いていることを示していた。工廠の一部の人員は未だに残るガリアの貴族文化に反感を持っていたため、ティターンズに協力する道を選んだ。これはガリアが植民地支配しているアフリカ地域出身者が主だった。

「アフリカ人は上手く使うと強いからな。志願者は募っているが、300人を建造工員の第一陣に回す。竜骨の製造途中だったのが幸いしたよ」

「無理なく近代化できるからな。基本設計は有るし、それを改造すればいい。防御はアメリカ式にしよう」

と、戦艦を設計通りには作らないところが彼ら流である。こうしてティターンズは海軍戦力を強化し、1944年7月末の時点で呉を攻撃できるだけの戦力となる。アレクセイが呉攻撃案を了承した背景には、連合艦隊の行動を制限させたい軍事的理由の他に、祖国のロシアを3度に渡って敗北させた(日露戦争、第三次世界大戦、統合戦争)日本人への個人的な対抗心が少なからずあったとされる。それが彼がかつての王家の血を受け継いでいた出自故かもしれなかった。これがティターンズの勢力拡張の事情であった。しかしそれはティターンズの傲慢な行為であるのには変わりなく、扶桑皇国とブリタニア連邦などは地球連邦軍との協力関係を結び、ティターンズに対抗していく。大国を諜報ノウハウで翻弄し、切り崩すティターンズ。大国は自らの誇りを守るため、ティターンズの身勝手を阻止するため、総力を上げて戦いを挑む。ネウロイとの三つ巴の戦いはいつまで続くのであろうか。


「攻勢限界点はリベリオン東海岸だ。そこを取ったら守勢に戦略を本格的に切り替える。攻勢は来年度までは維持する。リベリオンの東海岸を取れば世界各国の兵站能力は3割低下すると思われる」

ティターンズとしても兵站能力向上にはリベリオン東海岸の主要工業地帯は不可欠とし、最終目標点と定める。他には南洋島と呼ばれるムー大陸と日本列島との補給線をボロボロにする通商破壊を本格化させる事項が決議される。1944年12月を境に次第にティターンズは占領地域の統治を初め、1945年度には民主的方法でアフリカ地域のガリア植民地を“開放”し初める。つまり21世紀で言うところのコンゴ地域などである。これは世界を細分化し、大国の影響を弱める戦略のもとに行われたものだが、予想以上の効果であったことが後の歴史に記されている……。こうして旧ティターンズと旧エゥーゴ母体の地球連邦正規軍の世界と時を超えた戦いが本格化していく。



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