外伝その24


ーストライクウィッチーズの新基地へ到着した扶桑勢5人。その新基地には既に先客がいた。扶桑皇国の今時内閣の海軍大臣である山本五十六元帥海軍大将―扶桑皇国においては元帥は名誉的称号である―であった。


「久しぶりだな、坂本少佐。7年ぶりくらいか?」

「お久しぶりです、山本閣下」

――坂本は駆け出し時代に当時、海軍次官であった山本五十六と面識があった。北郷が山本の直属の部下だった関係もあり、山本は御前会議で彼女らを擁護した。それが“陛下”のご息女に加藤武子が提案した作戦を承認させる要因の一つとなったため、山本五十六を尊敬していた。

「あれが山本五十六か。あの人は軍政方面でなら手腕を発揮する御方だよ」

「ああ。戦略家としては戦下手にすぎたからな」

同地に駐留する地球連邦軍の兵士たちは未来世界で一般化した彼に対する評を語り合っていた。実際、歴史的に山本五十六は戦略家としては間が抜けていて、博打好きの戦下手という情けない評を後世から頂いてしまったが、教育家・軍政家としては一級の評は揺るがない。そのため、こう評したのだ。それに対し坂本は不快感を露わにしたが、山本自身がそれを諌めた。

「あいつら……!」

「いや、良い。それが向こうでの俺の歴史的評価なのだ。実際、俺は実戦経験もない武官だからな」

山本五十六は自分自身、戦上手ではない事はよく認識していた。扶桑皇国では対米戦が起きなかった事で、彼は暗殺防止のために一時的に連合艦隊司令長官を務めた後に海軍大臣になったが、その間に実戦経験はない。しかしその先見の明は軍政方面で発揮。海軍大臣となってから真価を発揮。改大鳳型の増産、雲龍型航空母艦の一五番艦までの生産決定などの功績を挙げた。

「しかしかわいそうなのは陸の連中や向こう側で無能の烙印を押されてる奴らだ。軒並み中央から追放されたからな。敵ながら哀れよ」

「そうだったんですか」

山本五十六は地球連邦軍の手によって陸海軍人事にメスが大きく入れられ、参謀も多数が追放された事を坂本に告げる。エリートコースを歩んでいた福留繁中将などの将官は言うに及ばず、一時、山本五十六の寵愛を受けていた黒島亀人などの佐官などもその対象に含まれ、腐敗した軍を浄化するための“Yリスト”に挙げられた軍人らは陛下からの勅諭を受けた内閣や軍令部などによって予備役編入などの処分を受けて軍から去っていった。逆に一気に将官の地位を約束された者も多くいた。そして、後世に一応の功績を残しつつも、戦時中に失策をした者、俗にいう、功罪入り交じる者は罪の部分への懲罰を兼ねて、意図的に今後の出世を遅らせる措置を取るようにされた。これには343空の司令で、後の航空自衛隊の高官、史実では真珠湾攻撃時の第一航空艦隊の参謀でもあった源田実大佐がこのケースに該当した。彼はこの辞令を粛々と受け止めたという。

「陸海軍のこの粛清人事でかなりの者が第一線からいなくなった分、我々改革派の好きにできるようになった。福留や神などのノータリン共もいなくなったし、清々するよ」

「いいんですか、閣下」

「良い良い。彼らには悪いが、軍全体の改革のための人柱になってもらう」

山本五十六は同志らと共にウィッチを含む航空戦力を整備しようとしてきた。が、大艦巨砲主義者や航空機軽視者などの邪魔で雲龍型航空母艦の量産が立ち遅れ、主力戦闘機が1943年時点でさえ零戦各型と九九式が混在するという有様だった。が、前年のティターンズの襲来と地球連邦軍の来訪は山本五十六や井上成美らにとっては“渡りに船”であった。彼ら改革派の発言力は自分ら自身のもう一つの姿たる、大日本帝国の破滅が伝えられるにつれて増大。その影響は全軍に及び、皇国議会で陸軍の騎兵部隊を機械化部隊へ改変、歩兵師団の削減と引換の機甲師団の大増設、空軍の設立準備が採択されるに至ったと話す。

「空軍を?」

「そうだ。陸軍の飛行戦隊や海軍の基地航空隊は直に空軍として統合させる。それに伴って軍大臣も一本化の方向で決まった」

「いいんですか。相当な反発があると思いますが」

「陸軍の方は今村くんや中川くんが手を回しているよ。直に収まる」

「ところでひとつ聞いていいですか」

「何だ?」

「閣下はどーやってここに来られたのです?」

「ああ。そこから見えるあの戦艦で来た」

「ん……!? あれ…?隣にいるのってもしかして大和型か!? あの戦艦は何なんだ〜!!」

坂本が窓から見える、超々々弩級戦艦に驚いたのも無理は無い。見かけは大和型とそっくりだが、大きさが大和型よりも桁外れに大きい。何もかもが。そして大和型のそれを拡大させた塔楼には未来技術による電子装備が備えられていた。

「あれが我が海軍が地球連邦に依頼して建造してもらった“超々大和型戦艦”だ。その一番艦の三笠だよ、少佐」

そう。大和型が巡洋艦、下手をすれば大型駆逐艦に見えかねないほどの対比を誇る、その怪物級戦艦こそ、扶桑皇国海軍が建造を依頼していた超大和型戦艦なのだ。建造課程で地球連邦軍の造船部があれやこれやと設計をいじくっているうちに大型化してしまい、400Mどころか、500M級になってしまったという戦艦。大和型すら超越する巨砲の56cm砲を三連装12門備え、副砲や高角砲の代わりに対空・対艦ミサイル、アスロックを備えるなど、未来技術による改良が加えられ、対空砲もCIWSになっていて、別の時代の技術がふんだんに使われているのが坂本の素人目から見ても分かる。

「三笠……1905年の戦役で活躍したあの敷島型戦艦の……?」

「そうだ。向こうで言うところの日露戦争で連合艦隊旗艦だったあの艦の生まれ変わりだよ、コイツは」


――三笠。それは日本にとって、栄光の象徴とも言える戦艦。大和と武蔵が連合艦隊落日の象徴なのに対し、三笠はその逆に旭日の象徴。近代日本の栄光の始まりと言える日露戦争にてバルチック艦隊を撃滅した。それは扶桑皇国にとっても同様で、近代最初の国難を救った戦艦として有名である。その名を受け継いだので、旧国名を基本的に名付けられる日本戦艦としては、山の名が戦艦になるのは久しぶりの事であった。ちなみに建造中の二番館は富士との事。

「あんなに大きいんなら飛行機の運用できそうなもんですが?」

「うむ。その通りだが、飛行機の運用は想定しておらん。しかしヘリは積んでるぞ。水上機は時代遅れだからな」


そう。ジェット機が跳梁跋扈し、レシプロ機でさえ大戦末期以降の究極レベルの機体が出現した現在、既に水上偵察機・戦闘機は時代遅れの代物でしかなかった。山本五十六の言葉を借りるまでもなく、扶桑皇国海軍は水上機に大きな被害を出しており、二式水上戦闘機や強風などを装備した部隊がベアキャットに手もなくひねられたなどの悲劇も報告されている。それら部隊のヘリコプターへの改編は当然と言えた。

「あれの更に二番艦を調達するのですか?」

「旧型艦と紀伊の代替だよ。超甲巡と併せて調達された。呉でかなりの水上艦艇を失ったからな、我が軍は」

「ええ。その代わりに大きい戦艦を二隻ですか?」

「モンタナ級への対抗だよ。大和と対等の戦艦があるならそれよりでかいのを二杯くらい持っていればいいという軍令部の判断だ」


呉軍港には未だに横転したままの戦艦榛名が放置されているなど、東南海大地震と併せた国の打撃の問題で、復興が立ち遅れていた。そのため坂本が配備を切望していたストライカーユニットの烈風は回されてこず、坂本を憤慨させているが、こうした仕方がない事情がある。そしてモンタナという超戦艦は大和型戦艦でさえもモンタナの前には普通の戦艦に成り下がるほどの総合性能を誇る。三笠型と名付けられた、超大和型戦艦はそれを超えるために生み出された。正に大和型戦艦の後継に相応しい、日本戦艦の集大成だ。

「護衛に大和型戦艦がつくのか……ゼータクじゃありませんか?」

「現状を鑑みれば仕方がない事だ。今や我が国で世界水準で第一線級の性能を持つのは大和型戦艦のみなのだからな」

「何てことだ……」

山本はモンタナ級戦艦やアイオワ級戦艦などの高性能戦艦が敵の手にある以上、扶桑の老朽化した戦艦はお呼びでないと。実際、伊勢型戦艦や長門型戦艦でさえも陳腐化した現在、1930年代建艦の紀伊型戦艦が第一線級の性能でないと判断された以上は至宝として温存されていた大和型戦艦を前線で積極運用するしか扶桑海軍には道は無かった事を示唆した。坂本はそんな海軍の現状を嘆いた。


「あら、美緒じゃない」

「醇子!?お前……ロマーニャにいるんじゃ?」

「例のコミュニケーション作戦が失敗して部隊が実働不能に陥ってね。今は再建のための)事務処理を兼ねてここに間借りしてるの。山本閣下、祖父の具合はどうでした?」

「ああ、君のお祖父様は呉の壊滅に心を痛めておられた。それと、加藤武子大尉の精神的療養に一役買ってくださったよ」

――竹井醇子は代々軍人の家系に生を受けた。祖父や父らも海軍軍人で、祖父は扶桑海事変の際には退役少将として御前会議で殿下に作戦の承認させる功績を上げた事で有名である。その彼を山本五十六が見舞った際には呉でのショッキングな出来事により意気消沈していた加藤武子を一時預かり、家で療養させていたと醇子に告げる。

「……そうでしたか。大尉が……」

「それは私も聞いた。大尉は呉で大勢の教え子を失ったと聞く……。あの人が打ちのめされるなんて、とても私には信じられないよ」

坂本は扶桑海事変の際に、どんな時も冷静沈着だった武子の姿を間近で見てきている。その武子がすっかり意気消沈してしまった事を信じられないというのも無理かしらぬ事だった。武子は醇子がエースになるのに間接的にだが関わり、醇子の第二の師とも言える存在であるのをよく知っていたからだ。

「それじゃ私は連邦軍のシナプス提督と協議があるからこの辺で失礼するよ」

「ハッ。ご苦労さまです」

「閣下のご武運をお祈りします」

「ああ。また会おう」

山本は協議のため、会話を終えて任地へまた飛んでいった。海軍大臣ながら、多忙ということだろう。

「お前もいることだし、今日は久々に楽しめそうだ。ここ最近は忙しかったからな」

「えぇ〜!?」

坂本は醇子を伴って、皆がいるところに足を運んだが、司令室ではミーナがこれまた大層な御仁を出迎えていた。智子である。智子は1943年まで507統合戦闘航空団を率いていて、扶桑海事変の英雄と名高かったからだ。


――新501基地 隊長執務室


「扶桑皇国陸軍、飛行第64戦隊所属、穴拭智子大尉であります。本日付けで501統合戦闘航空団に着任いたしました」

「501統合戦闘航空団隊長、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐です。大尉のご高名は坂本少佐から聞いています。それとウルスラ・ハルトマン中尉からも、ですが」

「二年前までの事が懐かしいですよ。私は元は507の指揮を取っていましたから」

ミーナは坂本や自分より遙かに先輩である智子に対して、敬意を払いながら接していた。一方の智子も生来の生真面目さ故か、ビシッと決めた態度を見せているので、珍しい光景だった。因みに智子、今回は地球連邦軍の軍服を着込んでいる。派遣元が扶桑皇国陸軍ではなく、地球連邦宇宙軍だからだ。

「そういえば大尉は例の処置を受けなさったんですか?一度前線から退きておられたと聞いていましたけど」

「ええ。去年に上からの命令で処置を受けました。今は扶桑海事変の初期頃の歳に若返ってます。その時、坂本……いえ少佐は駆け出しでしたが」

智子のこの時の外見年齢は芳佳やリーネなどと同世代かと見間違える、15歳になっていた。実年齢が23歳なのを考えると色々と面白い。精神的にも影響を受けており、芳佳らとつるむ時は外見相応のはしゃぎを見せるのは内緒だとか。

「ところで、大尉が乗ってきたあの可変戦闘機は新型ですか?前見た時にはデータベースには載ってませんでしたが?」

「ええ。移民船団の一つ“フロンティア船団”が造った新鋭機です。ガリアの聖剣のデュランダルにあやかって、デュランダルバルキリーと呼ばれてるんですよ」

「デュランダル……形式が9番の機体は剣の名前なんですね」

「そうですねぇ。アレはカットラス、エクスカリバーと続いてますからね。それにあやかったんでしょう」


智子が未来世界から引っさげてきた可変戦闘機。それは最強と名高い最新鋭機“YF‐29”であった。資源の関係で大量生産が困難という事情で開発が遅れ、完成後も大量生産できる状態ではないためにエース用に特注される形でしか生産できないという、大昔のスーパーカー同様の生産体制が維持されている。そのため、試作機を示すYのナンバーは外されていない。智子は黒江が試作機の実戦テストに携わったため、開発元の新星インダストリー社が特別に回してくれた機体だ。

「シャーリーさんも可変戦闘機で乗り付けてきたんですが、流行ってるんですか?アレに乗るのって」

「ええ。未来行った連中の間じゃちょっとしたブームなんですよ。ルーデル大佐も乗り回してますから」

「は、はぁ。」

ミーナは呆れといおうか微笑ましいといおうか、微妙な表情を見せた。未来世界の連中が持ち込んだジェット戦闘機の一種で、人型機動兵器としての側面も持つ可変戦闘機はミーナの故郷のノイエ・カールスラントでもブームを起こしていたからだ。これもルーデルがその性能に惚れ込んでいる様子がニュース映画として流されたおかげだが、機械オンチであるバルクホルンは「乗る気が起きない」と敬遠している。未来の民生用パソコンすら四苦八苦するのだから、その機械オンチ振りがわかる。対照的にリベリオン空軍のシャーリーはVF‐9カットラスを乗り回し、それでこの基地に乗り付けてきた。これは生来の機械好きが関係しており、501のメンバーでは最初に可変戦闘機に慣れた人物となった。

「中佐、機材配備の方はうまく行った。新鋭機を回してくれるそうだ」

「それは良かったわ。前の時に調達してた機材は504に回されてたし」

――501は502と統合され、実質的には統合戦闘航空軍と言っても差し支えない規模に達した。そのため、指揮系統はそれぞれ基本的にミーナと旧・502の司令たる、グンドゥラ・ラル大尉がその頂点に位置する。因みにラルは世界第三位の撃墜王であるため、奇しくも世界トップ3がそろい踏みという、ある意味恐ろしい状態となっている。奇しくも世界トップクラスの撃墜王達がここに大集合という、仮面ライダー張りの事態となったわけである。

「あなたが噂に聞く、元・507の……」

「穴拭智子大尉です。よろしく、ラル大尉」

「こちらこそ。しかし……今回の件は一分から反発がでてるそうだ。“人材独占しすぎ”って」

「まぁ。世界トップ3がそろい踏みな上に各国の有名な撃墜王だらけだからねぇ。扶桑にも似たような考えの部隊があるけど、それより桁外れに豪華だからなぁ。でも敵はティターンズだけじゃないし」

「ああ。どうしてこうなったんだろうな」

ラルと智子は互いに敬礼しあって挨拶を交わし、続いて雑談をする。今回の新・501は2つの統合戦闘航空団を更に統合して編成されている。そのため2つの部隊の人材を横滑りに引き継いでいる。502にはエイラ・イルマタル・ユーティライネンの実姉のアウロラ・E・ユーティライネンも陸戦ウィッチとしているので、余計にそう批判されてしまうのだ。しかし、敵は更に強大無比。ティターンズ残党軍、クライシス帝国、バダンの三大組織に狙われているので、スーパーヒーロー達が更にこの基地に間借りしているという現況であった。






――ブリーディングルーム


「久しぶりね、宮藤さん」

「お久しぶりです竹井さん」

芳佳は自身をウィッチにスカウトした竹井醇子と久々に再開した。およそ一年ぶりである。芳佳は今では海軍有数の撃墜王に成長し、“空の宮本武蔵”の異名を誇るようになっているので醇子としては誇らしい気持ちであった。部屋には芳佳の他に菅野、下原などがいたので、さながら同窓会のようだった。

「あれ?坂本さんは一緒じゃないんですか?」

「美緒はさっき、急にお腹が、とか言ってトイレに駆け込んでいったわ。あれだと当分出てこれないわね。宮藤さん、直枝。美緒って何か悪いの食べたの?」

「菅野さん、どーでしたっけ?」

「そーいや昨日…大艇の中で大根飯食ってたな。それが原因かな?」

「そういえばあの大根変な匂いしてたもんなぁ。坂本さん、無茶しやがって……しかし随分遅く出たんだなぁ」

「なるほど、美緒らしいわね。でもまさか穴拭さんまで来るなんて……なんか懐かしいわね」

「今回は地球連邦軍の軍籍を持ってるからそっちのほうの権限で派遣が承認されたとかなんとか」

智子は今は扶桑皇国陸軍軍人であると同時に、地球連邦宇宙軍軍人としての籍も保有している。未来世界での暮らしには未来世界での戸籍などが必要なために、色々な関係でそうなったわけだ。

「ややこしい話ね……。でもまさかこうしてみんな一緒に戦えるなんて」

「めぐり合わせって奴でしょうね。色々な」

菅野のこの言葉は的を得ていた。今回の騒乱で奇しくも扶桑が世界に誇る撃墜王が5,6人以上も同じ釜の飯を食うこととなった。しかしそんな彼女たちの思いとは裏腹に、悪の野望は着々と進んでいた。







――ヒスパニア近くの空域 クライス要塞


「この世界のイタリアを我がクライシス帝国の不沈空母にせよと皇帝陛下から勅諭が下った。半島を切り離し、念動力を以てしてイタリアは我がクライシス帝国の不沈空母となる」

「しかし、そう簡単に行くものか?」

「さしもの仮面ライダー共もスーパー戦隊達も我が要塞が次元を超えた事は気づかぬだろう。我が帝国が選んだ子供らの念動力を持ってすればイタリアは動くのだぁぁぁ!!フフ、ハハハ!!」

と、笑いを浮かべる軍服姿のこの男はクライシス帝国皇帝の派遣した査察官“ダスマダー”。美男という容姿だが、性格は一言で言えば傲慢。皇帝の権威を傘に振るってジャーク将軍の指揮権にさえ干渉する。それが他の幹部らに煙たがられている要因だが、戦闘力はRXと互角。栄光の7人ライダーとも渡り合えるほどであるため、これまで11人ライダーやスーパー戦隊に敗北を喫してきた他の幹部たちは「ぐぬぬぬ……」という心境なのだ。彼がロマーニャ公国、ヴェネツィア公国などがあるイタリア半島を標的にしたのは「軍隊が歴史的に弱い」、「パスタやピザ食い、女のナンパしか脳がない」からそうだ。ロマーニャ人が聞いたら憤慨間違い無しの理由であった。ここに、“イタリア空母化計画”は動き出したのだ。













――扶桑皇国 長島飛行脚

「ええい!!何故だ、何故誉がだめだのだ!!」

「性能の多少のばらつきくらいがなんだ!!兵士には大和魂が足りんのだ!!」

長島飛行脚は軍からの発動機発注の一切が消えた事に悩んでいた。その主因は彼らが生産していた2000馬力級発動機“誉”が地球連邦軍の提言により“欠陥品”の烙印を押され、生産打ち切りの憂き目にあったからだ。癒着とも言える軍との関係も指摘され、結局、誉は僅か500基が戦闘機・ストライカーユニット用併せて生産されるに留まり、宮菱の開発したハ43にその座を取って代わられた。確かに誉はこの世界においては十分な性能は備えていたが、限界的設計が仇となって工場の工作機械の精度や工員の熟練度の差によって、精度がバラついていた。各戦線から「性能がバラついて編隊飛行できねーよ!!」、「所定高度まで上がれねーじゃねーか!!」と文句が出まくった上、地球連邦軍の出した歴史的的な誉の評価は長島飛行脚の発動機部門の採算悪化を決定づけたと言ってよかった。彼らが宮菱や、自分たちを「戦線の実情も知らない常識知らずの技術屋ども」と嘲笑した地球連邦軍に一矢報いらんと、次期発動機である“ネ130”ジェットエンジンの研究に邁進していた。レシプロエンジン分野では軍の需要は縮小していくのを見込んで、2400馬力発動機のハ44計画を放棄してジェットエンジンに彼らは自分たちの名誉のために起死回生を賭けていた。これは海軍空技廠も一枚噛んでおり、ジェットエンジン開発は長島の発動機技術者達による自己の名誉回復のためでもあった。だが、運命は彼らにはあまりにも残酷であった。この年の秋以降にリベリオンが先進技術を以ってして後退翼かつ亜音速を叩き出せるF-86を一気に配備しだすのだから……。



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