外伝その36


――新生501の機材・人材が万全の状態になったのは8月中旬頃であった。ウルスラ・ハルトマンが仮面ライダーBLACKRXやZXと五星戦隊ダイレンジャーによって救出されたという報が伝えられたのも同じ頃だ。『休暇』をとっていたエーリカ・ハルトマンがウルスラを伴って501基地に帰還し、事のあらわしを一同に説明した。

「何ぃっ!!何故私に黙っていたハルトマン!」

健康状態が持ち直し、職務に復帰したバルクホルンがハルトマンに詰め寄る。バルクホルンは『自分が行ってやったのに』と言うが、知らされたのがちょうどバルクホルンがノロウイルスに倒れていた日であること、拉致したのがヒーロー達の敵であったので、ヒーロー達に依頼するのが当然の流れであるとミーナが補足する。

「それで光太郎さんや村雨さん達がクライシスの作戦を粉砕したっつー訳か……それでお前はどうしてたんだ?」

「これを使って一戦したんだ」

「ああ、そいつを持ち込んでたのか」

「おい、リベリアンにハルトマン。そのプロレスリングがどうかしたのか?」

『来て。シュワルベ』

シャーリーは『それ』の正体を知っているため、納得と言った表情だが、バルクホルンは怪訝そうに最近、ハルトマンがしている『プロレスリング』(20世紀末以降の日本でミサンと呼ばれているもの)をマジマジと見つめる。どう見ても普通のプロレスリングのようにしか見えない。だが、その次の瞬間。バルクホルンを含めた一同(智子やミーナなどの中心人物、ハルトマンの未来での行動を知る者、未来へ行っている坂本を除く)は仰天した。なんと一瞬で装甲されたパワードスーツ姿へ一瞬で変身したのだ。バルクホルンは完全に目が点になり、ワナワナと震えている。ショックのあまり泡でも吹きそうな勢いだ。

「これが未来世界で開発されているパワードスーツの一つ『インフィニット・ストラトス』さ。超音速で飛んで、高機動力と高防御を兼ね備えてるけど、構造が特殊だから試作段階に留まってるんだ。だから別口のプロジェクトのやつが作られたわけ」

ハルトマンの説明に一同は聞き入る。未来から持ち込まれた『それ』は確かに別口のプロジェクトで作られた『レーバテイン』よりも高度な技術で作られているように見える。武装などはそれとの互換性もあるものの、戦闘機や戦車のように、短期間に数を揃えられる代物ではないと。

「なるほど。それは強力だけど、数が足りないから未来世界でもあまり使われてないっーわけか……」

「ええ。姉さまが持ち込んだこのパワードスーツは各国のジェットストライカー開発の参考にされました。私としましても実に興味があります」

「相変わらずね、ウルスラ」

「お久しぶりです、中尉、いえ、大尉。」

ウルスラ・ハルトマンはかつては智子の配下であった。かつてはマニュアル小僧的なウィッチだったのを覚えている智子としては感慨深いものがあるようだ。



「このパワードスーツの生産体制はどうなっている、ハルトマン」

「オートクチュールの服みたいな受注生産な上に試作扱いだから、トゥルーデが注文出しても半年以上かかると思うよ。私はたまたまテストパイロットしたから使えてるだけだし……それに武装も共通じゃないし、タッチパネルとか使えるの?」

「!」

ハルトマンはバルクホルンが機械音痴である事を指摘する。PCすら四苦八苦するのに、更に高度な操作を要求される兵器のタッチパネルに触れるのか、と。バルクホルンは思わず『ぐぬぬ……』と歯噛みする。しかし既存のストライカーを遥かに上回る性能を持つのは魅力的なようだ。

「武器はどうなんだ?」

「こんなのだよ」

「新型のビームライフルに、ブレードに……特殊用の腕部、ミサイルランチャーなど、か……遠近両方に対応しているのか……」

「あたしが選んだのもあるし、元からついてるものもあるよ。武装はある程度は調整効くからね。これでも宇宙刑事には及ばないけど」

「宇宙刑事のあのスーツはそんなに高性能なのか?」

「異次元でも行動できるんだよ、あの人たちのは」

「何ぃ!?」

そう。宇宙刑事に支給されるコンバットスーツは普及型でも異次元空間での行動を可能とする。三大宇宙刑事のそれはワンオフ高性能スーツであるが、それは彼らが聖地である地球の守護につくというので支給されたのであるが、異次元空間での行動は流石にISでは不可能なので、コンバットスーツの威力が分かる。バルクホルンは興味津々なようだった。

「で、その宇宙刑事達はどうしたんだ?」

「母艦でアフリカの救援に向かってるよ。あそこのネウロイとティターンズが同時に攻勢を始めたんだって」

「戦車とかバイク積んでるんだよな?よくまぁ入るもんだ。でもアフリカ戦線、大丈夫か?」

「だからあの人達が行ったのさ。連邦軍もアフリカの自然に苦戦してるよ?自然が豊かだった頃のアフリカ知らない人も多いし」

「そうか。向こうは長い戦争で国土が荒廃しているのだったな……おかしなものだ」

「敵はM26やファイアフライとかの強力な重戦車を配備し始めてる。こっちはまだW号G型やティーガーTとかが配備されだしたばかりなのに、だよ?ロンメルが焦ってるってハンナが言ってた」

「ロンメル将軍にしてみれば『開発前』か『開発途中』の次世代型が徒党を組んで襲ってくるもんな。焦るのも無理ないぜ。モントゴメリー将軍は?」

「一昨日、指揮中に狙撃されて負傷したって。有名な将軍だし、連邦側は前線指揮に大反対したらしいんだけどさ……」

「あちゃー……」

エイラは頭を抱える。モントゴメリーは未来情報にあった、自分が人類同士の戦争に参戦した場合の評判に悩んでいる節があり、功を焦っていると専らの評判。本来は不向きな前線指揮を行ったら案の定である。未来情報は各地を揺るがし、リベリオンの政情を狂わした。技術発展という陽の面と表面化していなかった人種差別問題に火をつけてしまったという負の側面があるというのはこの時には誰もが理解していた。そしてそれがネウロイに突きいる隙を与えてしまった事も。アフリカ戦線はまさにそれだった。


























――アフリカ

アフリカ戦線はティターンズとネウロイが奇しくも同時に攻勢を開始、二面作戦を強いられた連合軍は戦線を後退させつつあった。その打開のため、シャリバンとシャイダーは超次元戦斗母艦を以って殴りこみをかけていた。

「弾切れ!?」

マイルズは先行配備されていたセンチュリオン巡航装甲脚の一機を纏い、(後の改良で主力装甲脚へ類別変更)で奮戦していたが、とうとうネウロイは17ポンド砲に対する抗堪性を獲得し、大混戦になり、彼女の中隊は散り散りになってしまった。おまけにティターンズがばら撒いたと思しきミノフスキー粒子で通信状況は最悪。無線が使い物にならない。救援も求められない。おまけに四方を囲まれ、弾切れを起こした。万事休すだ。

「あ、あ……」

もはやシールドを貼るほどの余力もない彼女は今度こそ死を覚悟した。誰も来ないという絶望感、自らの無力さを恥じるウィッチとししての誇り。それらが入り混じる表情を見せるマイルズ。ビームが発射されようとし、思わず目を瞑ったまさにその時。

『赤射ぁっ!』

――その叫びが響き、赤い光が周囲のネウロイを弾き飛ばすと同時にマイルズを取り込んで手近な崖の上で実体化する。そう。彼こそ……。

『宇宙刑事!!シャリバンッ!』


宇宙刑事シャリバンこと、伊賀電である。赤いコンバットスーツに身を包んだ彼の赤射プロセスをもう一度見てみよう。

『赤射ぁッ!』

――灼熱の太陽エネルギーがグランドバースの増幅システムにスパークする。増幅された太陽エネルギーは赤いソーラーメタルに転換され、シャリバンに赤射蒸着されるのだ!

『チュウ!』

ヒーロー達はよく『トウ!』などの掛け声を使うが、宇宙刑事達は『チュウ』を用いる。これはギャバン以来の不文律である。彼はマイルズを安全な場所に寝かすと、コンバットスーツの強力な通信装置でストームウィッチーズに連絡を取り、戦闘を開始した。


『シャリバンキック!』

ヒーローお馴染みの飛び蹴りだ。一般的な仮面ライダーほどの威力はないが、ネウロイの装甲を穿つには十分な破壊力である。一体を吹き飛ばし、携帯火器のクライムバスターでとどめを刺す。コンバットスーツの威力はさるもの、ネウロイの瘴気を物ともせずに真正面から立ち向かう様はまさに『勇者』である。

『スパークボンバー!』

飛びかかる一体を同じく、体をドリルのごとく回転させながら拳でコアを打ち砕く。如何に強化されたネウロイであろうと、宇宙犯罪組織マドーを打ち破った勇士を倒すのは不可能だと言わんばかりの強さである。放っておけないとばかりに、上空から空戦型が爆撃を敢行しようとするも、それは駆けつけたマルセイユが阻止した。彼女の腕にはレーザーブレードがある。沢村大=シャイダーから渡されていたものだ。

「シャリバン!これを使えぇっ!アンタの後輩から頼まれていた物だっ!」

「ありがとう!」

マルセイユが投げたレーザーブレードをジャンプして受け取ったシャリバンはそれを自前のレーザーブレードと連結させる。そして……。



『俺の怒りは爆発寸前!!』





――その言葉とともに、シャリバンのゴーグルに隠されたツインアイが点灯する。そしてエネルギーを双刃となっレーザーブレードに注入する。(これはやがてシャリバンクラッシュが破られるであろうことを危惧したシャリバンがかつての地球の特撮ヒーロー番組『時空戦士スピ○バン』から着想を得、編み出した新必殺技である。彼が何故そこから取ったのかは諸説あるとの事)

『ツインブレードッ!』

ツインブレードをそのまま大型陸戦ネウロイの中央部に突き刺す。凄まじい破壊エネルギーにネウロイの外郭が次第に耐えられずに破壊されていき、コアを晒す。その一瞬を彼は見逃さない。最後の一撃を叫びとともにバシッと決める。

『アーク・インパルスッ!!』

夕日をバックに、引きぬいたブレードを高速回転させ、Xの字を描きながらたたっ斬る。1944年以来、ウィッチの間で流行しているこの技、彼がある意味では本家大本と言えるだろう。決めポーズもバシッと決め、ネウロイをすべて倒したシャリバンはそのままマルセイユと共に別の場所の救援に向かう。マイルズをグランドバースに収容し、治療を受けさせながら。








――グランドバースに乗り込んだマルセイユはかの戦艦大和の2倍はあろうかという巨大母艦を一人で操艦可能なコックピットに驚いていた。


「これだけの船をよくまぁアンタ一人で動かせるな?」

「銀河連邦警察は高度なインターフェース技術を持っている。音声だけで巨大な母艦を呼び出すことも、戦闘行動を行なわせる事も容易だ。コイツは人型への変形機構を持たせられた初の事例だから、試行錯誤だったと聞いているよ」

「人型への変形は流行ってるが、アンタらの世界はなぜそこまでして人型にこだわるんだ?」



「理由は巡航形態と使い分けることによる利便性と、敵への威圧とかいろいろさ。ガンタンクだって上を人型にしてるだろ?」

「確かにそうだが……」

「まぁ一番の理由は日本のアニメのおかげで人型ロボットへの抵抗感が無くなったことかもな。地球、それも日本はそういう分野じゃ世界最先端だったしね」

そう。20世紀頃の洋画での人型ロボットは人の地位を脅かす敵として描かれる事が多い。(ターミネーターや人類史上初のロボット登場映画『メトロポリス』でも悪巧みに利用されている)ところが日本は多くのアニメで『友達』として描かれる。実際に製造されたドラえもんからいってそうである。日本的考えが世界を席巻した証にモビルスーツが開発のされたのだ。伊賀電の言葉に思わず納得するマルセイユだった。















――話は戻って501基地。

「インフィニット・ストラトス、か……機動性や火力は確かに魅力的だな……」

バルクホルンは先程のハルトマンが見せたISへの興味が湧いてしょうがないようだ。あのハルトマンがいつの間に調達し、自己のものとした超兵器。単機ではミーナが出撃を許可しないだろうから最低でもペアを組む必要はある。電話をかける。電話先は未来世界の坂本の宿泊先である野比家だ。

『はい、野比です。ああ、バルクホルン大尉ですね。噂はエーリカさんから色々聞いてます。ちょっと待って下さい、黒江少佐を呼んできます』



数十秒ほどで黒江が電話口に出た。バルクホルンからというのは意外だったようだ。それでISが欲しいというと言うと……。

『アナハイム・エレクトロニクスに問い合わせてくれ。私の名を出せば担当部署がすぐに応対してくれるが、一応要望聞いた上で先方にオーダー出しておくよ。君の顔写真とプロフィールをこの電話先に送ってくれ』

『お願いします。出来れば火力重視で。格闘戦は固有魔法を活かせるもので……』

バルクホルンのオーダーは如何なネウロイをも粉砕できる火力を望んでいるのが分かるものだった。ミーナから以前に聞かされたバルクホルンの『過去に妹が昏睡状態に陥ってしまった』事のトラウマから来るものでもあり、黒江はバルクホルンが如何に妹を溺愛しているのかを理解した。

『君はやはり妹さんの事を?』

『……ええ。クリスは自分にとって戦う理由です。確かに祖国奪還という大義も理由の一つですが、あの子の生きる未来を作ってやりたいのです、少佐』

『確かにな。戦いを長引かせてしまったのは先輩である私や加東少佐らの世代が不甲斐ないためでもある。申し訳ないと思っている』

黒江は歴史改変後もやはり大まかな流れは変わらず、芳佳達らの時代まで大戦が続いた事を悔やんでいる。歴史の流れは変えられなくとも、ティターンズにいいようにされる可能性は減ったはずだと。後輩に誇れるような未来を作れなかった事への無力感があるのだ。


『いえ……起こってしまった事は仕方がありません。今はどんな事をしてでもネウロイとの戦いを終わらせなくては』

『ああ。ISのほうは手配しておく。君には何度かアナハイム・エレクトロニクスに出向いてもらうが、いいね?』

『構いません』

黒江に頼む形でISの注文を出したバルクホルン。シャリバンとシャイダーら宇宙刑事達の活躍にも触発された節がある彼女用のISはどういう仕上がりを見せるのか?一方でどんどん得体の知れない新兵器を押し付けられるミーナは頭を抱え、本格的に胃薬を服用するようになったという。



『ああ〜みんなどんどん得体の知れない新兵器を押し付けるんだから……こっちの身にもなってよ、トゥルーデ、エーリカ…』

『まぁまぁ、そう愚痴っててはせっかくの美貌が台無しですよ?まぁビールでもいかがかな?嵐山長官、カレーを二人前』

『すぐ用意する』

酔って愚痴を吐きまくるミーナを番場壮吉がなだめる。ミーナもたまには愚痴をこぼしたいのだ。スーパー戦隊側のブロックに出向いて、基地に新設された食堂「スナックサファリ」(嵐山長官経営の喫茶店)で酒を飲む。無論、番場壮吉の計らいだ。新兵器をぶっつけ本番で運用することは未来世界ではもはや日常茶飯事だからだ。そこにサファリカレーが運ばれてくる。扶桑で独自に発展したカレーライスという奴だ。


――サファリカレーに舌鼓を打ちながら、ミーナはしばしすべてを忘れることにした。始めてのカレーは美味かったとミーナの日誌に後日、記された



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