外伝その65


――連邦軍の援軍はその絶大な火力を見せつける。

「全機、ハイパーメガカノンを一斉射撃!敵艦隊を海の藻屑にしてやれ!」

連邦空軍の有するファッツ第二期生産機(元々はフルアーマーZZガンダムの検証試験機であったのを、更に砲撃支援機として再設計して建造された型)が一斉にハイパーメガカノンを撃つ。ZZのハイメガキャノンの更に6割増し以上の破壊力を誇る火器が複数で放たれたため、射線軸にいる全ての船、レシプロ戦闘機は一瞬で消滅していく。その中には、史実で真珠湾攻撃で日本軍が着底させた旧式戦艦も含まれていた。


「メリーランド、コロラドが今の一撃で護衛空母と一緒に消滅したみたいです、隊長」

「本当か。まぁ、宇宙戦艦を撃沈出来る火器を浴びれば、あんな旧式戦艦なんぞ溶解するわな。」

ファッツ隊は砲兵的運用がなされていた。有視界戦闘である都合上、相手方が最後に見たのは『迫って来るビーム』なのは容易に想像がつく。ファッツ隊は遊撃し、敵を発見次第、制圧射撃をハイパーメガカノンで行い、ティターンズ海軍の別働隊を制圧していくのであった。



――再出撃したミーナは機動力に優れるフッケバインと、ゲルググJスタイルののビームマシンガンの組み合わせで敵機を撃墜していった。


「次っ!」

敵のF3Hがビームマシンガンで蜂の巣になり、落ちていく。人を殺す事に複雑な表情を見せつつも、撃墜スコアを伸ばしていく。

「これが未来の兵器……。エネルギー容量も相当にあるわね。まだ65%もある」

ミーナはビームマシンガンのEパックを4個ほど携行していたが、想定よりエネルギー容量が多い事に感心する。

「MG42に機構まで似せてあるなんて。本当、未来の技術者はカールスラント軍かぶれがいるのね。ええいっ!」

出力を上げた単発射撃は通常の連発射撃よりもエネルギーを食うものの、極めて高精度な狙撃が可能になる。ISの照準システムとの連動が想定されているため、ストライカーでは、自動照準補正は出来ない。だが、ミーナは射撃には自信があるため、マニュアルでそれを実行。見事に遠距離のSM.79を撃ちぬいてみせる。

「ふう。こんな距離からでも、この精度……すごいわね。流石といったところかしら。これで第一波は阻止できたはず。艦隊司令部に問い合わせて……」

ミーナの活躍により、雷撃機の第一波は艦隊の中枢に到達せずに終わった。大和型と富士は無傷であり、他のウィッチも同様に未来装備を持ちだしたりして応戦している事が通達される。自らの通達の抜け道を利用した部下達に思わず苦笑する。連邦軍の戦闘機群の姿もある。すると、ミーナから見て、東の方角から眩い閃光が走る。ネウロイかと身構えるが……。




――その光の正体は圭子だった。再出撃直後に敵ウィッチと遭遇、怖気づくリーネを坂本に託し、自身は真っ向からの格闘戦に突入した。オーラパワーに目覚めたおかげか、素手での格闘戦には自信があり、そこで、黒江がかつて、扶桑海で行った『ストロンガーの真似』をやってみた。

「ストロンガーさん、技、借ります!『エレクトロサンダー』!!」

かつて、黒江はこれを魔力の変換気質を利用してやっていたが、圭子の場合はオーラパワーを魔力と組み合わせる事で、威力を強化して放った。方法は腕から電気を発し、その電撃を落雷として攻撃するが、オーラパワーによる複合のため、そこに衝撃波が加わった。その威力は防御できなかったウィッチが五体を引き千切られた上で、黒焦げになってバラバラになるという、相当にエグい光景を出現させる。

「おおう、こりゃ結構エグいわね。さて、決め技と行くか!『オーラロードスパート!』」

オーラパワーで道を作り、それで敵を拘束する。そこからオーラギャラクシーに繋げるのが黄金パターンだ。

『鉄拳!!オーラギャラクシー!!』

最後に宙返りしつつ、手刀で敵を真っ向両断し、最後に合掌するまでが一連の流れである。坂本は幼少期の一場面が蘇り、思わず見とれてしまう。

「お前のその技、衰えていないな」

「磨きがかかったと言って貰いたいわ。あの頃から更に鍛えてるわけだし」」

「確かに。しかし、さっきのはエグかったぞ。リーネが見たら吐いてるぞ」

「まさかオーラパワーを組み合わせると、ああなるとは思わなかったわ。だけど、使える技よ」

「あの手刀で、前に文献で見た古来の秘技『烈風斬』を思い出したぞ、私は」

「あー、あれか。あれは魔力を補充出来ない普通のウィッチがやると、魔力を急激に消耗して完全に枯渇させる危険が大きいから、禁断の技になってるのよ。やめときなさい、まだ飛びたいのならね」

「ああ。だが、私のウィッチとしての寿命はそうは長くない。持って、あと数ヶ月。おそらくは秋ごろには『上がる』だろう。……お前達が羨ましいよ。一生飛べるし、戦える」

「けど、同時にそれは自分の限界を知る事にもなるわ。黒江ちゃんはそれを最初に知ったから、ウィッチの力に必ずしも頼らない戦闘術を求めた。私もそうよ」

「どういうことだ?」

「一人で出来ない事で、力を借りられるのも力なんだって。 未来世界の可変戦闘機や宇宙戦艦は元々、異星の技術の産物なのよ。 必要なら他から借りてこれるのも力だし、そうする事を恥ずかしいと思う必要は無いのよ。私の技だって、言ってみれば借り物なんだもの」

「そうなのか?」

「そうよ。だから、あなたも一人で気張ってないの。なんだったら未来世界の装備でも借りて使ってみる?」

「ああ、前にテストしていた奴を使ってみる。そうか、力を借りる、か……。ん?ちょっと待て、それじゃ……あの時に穴拭が召喚した剣もそうなのか?」

「あれはマジンカイザーのカイザーブレードよ。正確に言うと、その写し身。マジンカイザーの力を借りて、智子が召喚したのよ」

「そうか、これで7年越しの謎が解けた。言ってくれてありがとう。気が楽になったよ」

「あなたはそれで悩んでたのね。黒江ちゃんが困ってたから、後で言ってやりなさいな。黒江ちゃん、あなたにどう説明しようか、ここ一年くらい悩んでたし」

「ハッハッハ!なんだ、そういうことだったのか!」

憑き物が落ちたように、大笑する坂本。長年の謎が解けたからだ。ここからしばらくの後、坂本は立場上、三羽烏と政治的には対立してしまうが、親友としての友情は揺るがなかった。双方の絆は源田実、山口多聞、大西瀧治郎などのなどの一部の提督や将軍達がが知っていたが、彼らが全員、世を去った後の時代は、この時の当事者、それも501や64Fに属した経験がある極一部の人間のみが知り得る事になってしまう。それが坂本の軍退役後の後半生の悲劇かも知れなかった。



――同じ頃、マルセイユが試験運用したΞガンダムのデータを得たアナハイム・エレクトロニクスは、先の運用テストで判明したHi-νガンダムの改良に取り組んでいた。


――フォン・ブラウン市 アナハイム・エレクトロニクス工場

「アムロ少佐は格闘戦を想定し、フレーム厚と装甲の増厚を望んでいる。そこで、機体を作り直し、外装はできるだけ流用する」

「ジェネレーターは?」

「メガバズーカランチャーを連続ドライブするのには今の出力では不足だ。それを実現させるには、6000キロワットから7000キロワット級のパワーが必要だ。ZZやV2と同等の」

と、熱い議論が交わされる。ラインではフレーム段階にまで解体されたハイνガンダムのジェネレーターがνガンダムのものを小改良した型から、根本的に新規設計の高出力型に換装されていく。フィールドモーターはこの時に新規設計の高トルクのものへ換装され、効率改善などが行われ、エンジンもふくらはぎとファンネルにコアファイタークラスを駆動させられる小型ジェネレーターが内蔵され、ジェネレーター配置はRX-78と同じ配置に落ち着く。その関係でハイνガンダムは、次第にフォルムを変化させていく。この時に腕部にマシンガンが内蔵され、より実戦向きに改造され、デザリウム戦役勃発の数カ月前には、正式にアムロのもとに渡った。外装は今まで同様だが、作り直した箇所も多くなり、実質的には二号機を作るのと同じ手間がかかった。ジェネレーターはこの時に、更なる新型に載せ替えられ、ハイパーメガバズーカランチャーの連続ドライブに耐えられる出力になった。サイコフレーム箇所も増大し、ユニコーンガンダムのスピンオフ技術も取り入れられ、ユニコーンガンダムの暴走が起こった場合に止められる抑止力としての役目も期待された。



――完成した機体のデータは、すぐに連邦軍のデータバンクに登録されており、偶然、黒江が検索した時にヒットしたのだ。

「お、ハイνだ。相当にごつくなってる。改修されたな?」

機体フォルムがごつくなり、火器も専用設計の新型へ強化されている。νガンダムからの流用品は予備サーベルくらいになっている。各部がブラッシュアップされ、現時点でのRX-93系統としての到達点を感じさせる。

「ん?ハイνガンダム用のヘビーウェポンも制作が検討されてるのか。気が早いこった」

「何見てるんですか?」

「ん?宮藤か。こっち来て一緒に見ようぜ」

「はい〜」

「話は聞いたが、スカイさんと一緒に戦ったんだって?あの人と隊列組めるのなら、お前をひよっことはもう呼べないな」

「スカイさんの事を知ってるんですか?」

「あの人とは去年に未来で会ってから何度か組んだ事がある。あの人、空でも強いが、陸でも強いぞ」

「そうなんですか。あ、これって、去年にシーブックさんがテストしてたガンダムですね」

「そうだ。正式な名前はHi-νガンダム。連邦最強の一角を占めるガンダムで、ロンド・ベル隊での私の上官の『アムロ・レイ』少佐の専用機でもある」

「へぇ……。実はみっちゃんが『未来の兵器のデータ教えてね♪』なんて手紙送ってきたんですよ。私、そういうのはあまり興味ないんで、困っちゃって」

「みっちゃん、ガチのミリオタだもんなあ。内部の人間と遜色ない知識持ってるし。どこから入手してんだ?あれ」

「さ、さあ…。ところで、ミリオタってなんですか?」

「お、おう。そこから説明しないといかねーか。ほら、釣りキチとかモトキチとかの言葉あんだろ?」

「はい」

「それが時代が下って、1970年代あたりにそんな奴らの二人称『お宅』が転じて、『〜キチ』を指す言葉の一つになったんだよ」

黒江も、芳佳の親友『山川美千子』(芳佳のはとこ)の知識が自分らと遜色ない水準であるのには驚いたクチで、黒江に海軍関連の知識の一部を授けた張本人でもあった。みっちゃんの家に邪魔した時、自室には当時に刊行されていた少年雑誌『少年倶楽部』などの軍事関連雑誌の他に、大人向け雑誌の軍事関連記事をスクラップしていたので、黒江も思わず心の中で『うわぁ、ガチだぜこりゃ…』と引いてしまったほどだ。

「みっちゃん、ラー・カイラム級のデータ欲しいとか言ってました」

「マジかよ。あの子は、どこ目指してるんだ……。下手な軍高官より詳しくなってるっーに」

そう。みっちゃんはこの時代のミリオタとしては最高峰に近い知識を持つ。なので、未来世界の兵器のデータが欲しいのだろう。

「どうしましょう〜黒江さん」

「アナハイム・エレクトロニクスから、艦艇プラモでも取り寄せてもらって、扶桑に送ろう。みっちゃん、プラモデルの作り方覚えたはずだし」

「それがいいですね」

「あと、航宙ジャーナルや宇宙の艦船とかの雑誌を送ろう。確か定期購読のハガキがあったはずだ」

「良かったぁ」

その話を聞きつけた空母の士官たちの厚意もあり、最終的にはコスモタイガーのプラモデルなども提供してもらい、後日に船便で送られた。そのプレゼントはみっちゃんを大いに歓喜させ、彼女の進路に影響を与える事になる。(両親は師範学校を勧めている)






――この時、幾多の戦闘機が動員され、仮面ライダー達も加わっていたのだが、坂本達と別れ、単独行動を取っていた圭子の前に、V3がマフラーで滑空しながら現れたので、圭子は呆然としてしまった。

「……え、か、風見さ……もとい、V3さん!?飛べたんですか、貴方!?」

「ハハハ、俺自身もすっかり失念していたんだが、先輩達が俺に簡易的な滑空飛行能力を与えていてくれたんだ。ただし、洋のセイリングジャンプのように長時間は維持できない。その点が俺がツバサ一族との戦いで使わなかった理由さ」

V3は後輩らの雛形になった能力を複数持つ。その内の一つがグライディングマフラーである。伊達や酔狂で二枚のマフラーをしているわけではなく、滑空能力のためだが、不完全なものであるため、ツバサ一族との戦いで使わなかったのだ。

「V3フル回転キィィ――ック!!」

回転を三度ほどし、そこからドロップキックをかまし、雷撃機を胴体からまっ二つに破砕するV3。すぐにハリケーンに乗り、飛行に入る。

「ハリケーンで飛んだほうが早いし、上昇が難しいのもあって、あの能力は使っていなかったのさ。洋のそれと比べると完成度が低いからね。最もハリケーンでの飛行と言っても、ジャンプに毛が生えた程度さ。まぁ、俺と同じ時期に現役だったヒーロー達の殆ども空飛ぶマシンは持っていなかったからな」

「え、いたんですか、他にヒーロー。V3さんの時期に」

「ああ。イナズマンとかロボット刑事Kとか、キカイダー兄弟とかが同期だった。彼らがどこへ行き、どのような結末を迎えたのかは分からんが……」

風見志郎が現役の1973、4年の時期にライダー以外に存在したヒーロー達。その全てはV3もわからない。それを考えると、日本は悪の組織の聖地なのかと思うほどに襲われすぎである。

「呼べそうですか?」

「なんとかイナズマンには連絡ついたが、キカイダー達の行方は掴めなかった。ロボット刑事もどこに姿を消したか分からん。キョーダインや大鉄人17は特攻して果てたしな」

「イナズマン?」

「ぶっちゃけると、彼は超能力者だよ。美琴ちゃんを超える力を持つかもしれない、生まれながらの超能力者だ。その力で悪の組織を倒した。だが、それでも一方通行には及ばない。もしも、彼を倒すならば『超神ビビューン』でも連れてくる必要があるだろうけど」

「超神?」

「神を超えた力を持つ戦士のことだ。我々の世界で最も強く輝く『破軍星』という星があってな。その破軍星の加護も持つ。彼らがいれば百人力だ。更にアクマイザー3と呼ばれたヒーローの後身でもあるから、説明が長くなる。後でまた説明するよ」

「はぁ」

破軍星、イナズマン、アクマイザー3、超神ビビューンと、大鉄人17、キカイダーという単語に首をかしげつつも、破軍星という星があり、そんな名前のヒーローがかつて、日本を守っていた事は理解する圭子。

(日本って狙われすぎじゃない?なんか狙われていない時のほうが少ない気がする)

と、半分呆れつつも、V3と共に戦線へ突っ込む圭子だった。

「よし、行くぞ、ケイちゃん!」

「はいっ!」

『ケイちゃん』と呼ばれている辺り、V3からは『妹分』扱いされているのがわかる。圭子は日頃、『お姉さん』ポジや『お袋さん』ポジションを担う事が多かったため、偶には妹分扱いをされたいらしく、風見志郎=V3の呼びかけに喜々として応え、密かな願望が見え隠れする。この時だけは年長者としての責務から解放され、一人の戦士として戦うのであった。



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