外伝その76『NEXTGENERATION』


――佐々木勇子に敗北した黒江は、負傷と言って、隊と別れて母艦に戻り、人格がまたも入れ替わった。予定調和と言うべきか、敗北後は聖闘士としての人格に戻り、タイム電話を使い、自らの大姪達に連絡を取った。

『翼、私だ。麗子と澪はいるな』

『どうしたんです、叔母さん。どこからかけてきてるんですか?過去で遊んでないで……』

『詳しい状況は後で言う!今すぐ、私が501にいた1945年に来い!聖衣持ってだ!麗子と澪も連れてこい!あいつらには、ヒガシと穴拭の命令とかテキトーに言え!いいな?』

『わ、わかりました!叔父さんには言います?』

『亮介はいい。あいつも来ると、説明が余計にややこしくなる』

『了解』

黒江一族は、綾香が黄金になってからは、聖闘士も輩出するようになり、次兄の子『亮介』が白銀聖闘士に1970年代に任じられ、その30年後に自身が後継として、翼を育成し始めていた。黒江当人は当分の間は現役だが、万が一に備えて、何人かいる大姪の内、自身の才覚が隔世遺伝で受け継がれている、三兄の孫である『黒江翼』を後継者とし、弟子扱いで育てていた。長兄の忘れ形見である孫の『麗華』、次兄の孫『晶子』などが他に後継候補としており、麗華は1979年生まれ、晶子は1982年に生を受け、翼は黒江の孫世代では、最年少の1986年度生まれにあたる。麗華と晶子は幼少期に小宇宙に目覚めており、招来を嘱望されていたが、晶子には『従姉妹を見下す』、麗華には『精神的に打たれ弱い』という難点があったが、最年少である翼は未熟であったが、大叔母も認める『反骨精神』を持っており、聖闘士としての『仁・智・勇』を全て持っていた。翼が15歳を迎えた2000年代初頭頃に、黒江当人が仕合をする形で選抜を行った。その結果、翼がカリバーンを生まれながらに備えていた事や、孫達の中で、唯一、翼がカリバーンで黒江に痛烈な一撃を食らわせた事から、審判役の甥と相談し、翼を後継に指名し、以後は自分が引き取って育てた。その結果、翼が長じる頃には、二拳二刀の異名を受け継がせ、自身はかつての老師・童虎のように隠居生活を送るようになっていた。


――二代目スリーレイブンズがやって来たのは、連絡を受けた30分後であった。

「叔母さん、また過去のご自分で遊んでるんですか?」

「今回は大真面目だ。この時期の状況はお前らもよく知っているだろう?」

「はい」

「麗子、叔母さんがいるから、髪型は変えてくれ。お前がそれだと、どっちがどっちだか分からん」

「んじゃポニーテールで」

穴拭麗子。2006年当時、空軍大尉。『沈着穴拭』と謳われ、智子譲りの美貌と才覚を持つ。智子と違って、ファッションには敏感で、それが高じて、広報のファッションモデルもしているため、髪型が安定しない。愛刀は大叔母と異なり、『菊一文字則宗』である。

「澪、お前はどうする?」

「あー、あたしはヘアピンつけてるんでいいです。それに、あたしは叔母さんと違って、刀と弾のバラ巻きが戦法だし」

加東澪。2006年次に空軍少佐。『スエズの悪魔』の異名を持つ。これは敵に無慈悲な戦いぶりと、銃の乱射魔である事による。澪の戦闘スタイルが乱戦向きである事もあり、圭子の面影を色濃く受け継ぎながらも、決定的に異なるところである。

「まったく、人使い荒いんだからな。叔母さんは」

黒江翼。2006年次に空軍中佐。『スエズの稲妻』の異名を頂き、聖闘士としての後継でもある。身に宿す聖剣は『アロンダイト』と『クサナギ』。黄金聖闘士としては、『若く未熟』とされているが、潜在能力は高い。三人は同世代であり、かつての大叔母達を彷彿とさせる強さから、2000年代入隊世代の出世頭である。


「機体は持ってきてるな?」

「F-15Jをくすねてきましたよ。新鋭のF-22は流石に無理だったんで……」

「充分だ。他の叔母さんたちには、私が話す。お前らはこの時代の501を直接支援しろ。ミサイルとバルカン持ちの火力を見せてやれ」

「了解です。トリエラとも連絡取ります」

「頼む」

三人のストライカーは、2006年次には旧式化しつつある第4世代ジェットストライカー『F-15J』である。21世紀水準で旧式とは言え、能力はこの時代のジェットとは月とスッポン、ISに匹敵する機動性を備え、火力もメッサー262とは比較にならない。一線を退き始めているため、確保が出来たのだ。

「私の分はあるか?」

「ISとVFあるんだし、十分でしょ?まぁ、予備機があるからそれを」

「恩に着るぜ」

「それじゃ、出撃してきます。智子叔母さんと圭子叔母さんに説明しておいてください」

「分かった」

二代目スリーレイブンズは直ちに出撃。消耗した新501をカバーする形で参陣した。

――戦場

「はぁ!?あたしと圭子の大姪が来てるぅ!?どういうことよ、それ!」

「未来から呼んだ!もう、そっちにつくはずだ!」

「は〜い、智子叔母さん♪」

「★※☆〜!?」

「お〜い、来ただろ?」

「来たわよ、バッチリ……」

智子は額を抑える。自分にとてもよく似ているが、如何にも現在っ子な雰囲気の娘。これが自分の姉の孫であると直感し、ため息をつく。ストライカーには、バックパック方式が復活しており、武装ラック代わりにモチーフになった機体の胴体部が分割される形の武装ラックがバックパックにつけられており、各装備が備えられている。開発時にはかつての船方式の復活も検討されたが、既に宮藤理論が普及していたので、猛烈な反対があり、頓挫した。(燃料搭載量が増えるという利点もあったが、尻が痛くなる!という苦情で大問題になった。機動戦闘時には腰の横に固定するという改善案、水中スクーター方式も出されたが、猛烈な反対で戦闘用は頓挫した。ただし、F22では腰の横に固定する方式の武装ユニットが採用されている)

「あんたがあたしの姪っ子?」

「そうだよ、智子叔母さん。あたしは穴拭麗子、よろしくね」

麗子はニカッと笑い、バックパックから『M193』を取り出し、構えて撃つ。この時代ではオーバーな火力である。そのため、智子は唖然となる。

「え、M193ん〜!?バ、バルカン砲なんて撃てるの!?」

「あたしたちの時代じゃ標準火力だからね、これ。反動の都合で発射速度は緩めてあるけど、毎分3000発以上の速度だし」

M193バルカン砲。F-4Eの頃に採用されたサイドアームである。ウィッチ用はサイズの小型化や発射速度の調整などが施されており、ウィッチであれば『片手で撃てる程度』の反動になっており、実質的には『M193』の手持ちミニガン化と言っていい。ウィッチが使うので、威力はヘリから放つフルサイズM193と同等以上である。そのため、この時代の怪異には過剰であり、一斉射で10機が落ちる。

「ハッハー!こっちはミニガンよ、ウスノロ!」

過剰と言える火力に、智子は唖然となる。宮藤理論の集大成と言える『F-15』の威力は凄まじく、麗子の天性の才能もあって、スコアを稼ぐ。

「さて、刀でもいいところ見せないとね」

麗子は太刀筋も智子譲りだが、時代故、智子が持った『柔軟な発想』がない状態であり、14歳当時の智子と同じ状態であった。『基本が出来てやっと自分の型が出来てきた』というのが、智子の第一印象であった。

(14の時のあたし自身を見てるみたい……武子があの時のあたしを心配したの分かるわ〜)

大姪を見ることで、かつての自分を見つめ直すいい機会にもなったのだが、同時に、自らのかつての姿の生き写しである大姪に不安を覚えるのであった。



――二代目スリーレイブンズは顔立ちも初代とよく似ているが、属性や役目が入れ替わったりしている。ズボラだが、まとめ役の翼、突撃の澪、その支援担当の麗子と、叔母達と違うトリオであった。それと、21世紀には空軍の戦闘服に階級章がつけられるようになっており、意匠はこの時代の陸海軍のそれと微妙に違う。また、翼と麗子は意図的に髪型を大叔母達と異なるものへ変えているのもあり、見分けはしやすかった。

――坂本が収容されている空母

「何!?お前らの姪っ子がいるだと!?」

「そうだ。どうせ多くが紛れ込んでるんだし、この際だから呼んだ。正確に言えば、大姪だが」

「と、言うことはお前らの兄弟姉妹の孫になるのか?」

「そうだ。私の場合は三番目の兄貴の孫だよ」

「ややこしいな。今はそいつらが?」

「そうだ。皆には事情は話したが、驚いてたよ」

「それもそうだろう?21世紀くらいに生きる孫世代を呼び寄せるなんて、普通は思いつかんよ」

「そうか?タイムマシンあるんだし、これくらい普通だと思うんだけどなぁ」

「その時点でおかしいだろ?いくらなんでも、生まれてもいない世代を連れてきて、戦争させようなんて」

「ロマーニャを敵の手に渡していいってのか?敵はオーディーンに取り入ってまで、こっちを殺しにかかってるし、ソビエツキー・ソユーズの動きも掴めてねーんだぞ?オーディーンって分かるか?」

「北欧神話の主神だろ?いくらなんでも、それくらいは分かる」

「そうだ。既にその加護を持つ闘士によって、30人近くが病院送りか、天国行きだ。並のウィッチじゃまともに戦えんからな。それに。地中海はオリュンポスのシマだぜ?軍神の配下としては兵隊集めさせてもらってるだけだ」

「神々すら関わってるというのか?」

「そうだ。言うなればアテナとオーディーンの軍勢が人間界の軍勢でドンパチしてるようなもんだ」

「痛っ……」

「何、サーニャ!?」

「どうした、お前ほどの手練が……」

「坂本少佐、黒江中佐、エイラが、エイラが……」

「落ち着け!エイラがどーしたんだ」

「わ、私を庇って……撃墜されたんです」

「何!?」

「イッル、しっかりしろ!イッル、死ぬな、死ぬなぁ……お姉ちゃんを一人にしないでくれぇ……!」

エイラとサーニャが後送されてきた。サーニャもかなり負傷しており、エイラに至っては意識不明の重体で、手術室に運ばれていった。姉のアウロラが憔悴し。号泣しているのが聞こえてきた。

坂本も黒江も、豪胆なアウロラが憔悴するほどのショックを受けるほど、エイラの撃墜が衝撃的であるのを察し、声をかけられない。とりあえず、サーニャから事情を聞く。サーニャは、エイラが敵の闘士の必殺技から自分を庇い、『サーニャ、逃げ……』という一言を叫びながら、攻撃を一身に受けた。サーニャも追撃を受けて片腕を折られたと、涙ながらに話した。

「神闘士か……!奴ら、情け容赦無く殺しに来てやがる!」

と、黒江が怒りを顕にしたのと同時に、

「う、ああああ……」

「私の目が、目がぁあああ!」

「腕が、腕がぁあああ!!」

ウィッチと思しき重傷者が運ばれてくる。無残に四肢のどこかを切り刻まれた者、盲目にされたものが15名近くに及び、無残な状況を呈していた。各国のウィッチ部隊から律儀にも、一人づつ重傷者を出している。すぐに治療が施される。それから数時間後、黒江と坂本が、憔悴したアウロラを連れ立って、エイラの様態を聞きに行くと、軍医が説明してくれた。

「かなり強力な力で斬られている。臓器に傷がないのが不思議なくらいだ。ただ、顔に切り傷が残るだろう。こればかりはどうしようもない。目が斬られなかったのが救いだよ」

「……!!」

アウロラはショックのあまり、口も聞けない。最愛の妹が半死半生に追い込まれたのだ。しかも空で。スオムス最強の陸戦ウィッチとして知られたアウロラも、こればかりは手は出せない。無力感に打ちのめされている。

「傷は腕がいい整形外科であれば、目立たないようにはできる。外傷は既に治した。だが、まだ意識が戻らない。所謂、昏睡状態だ」

「妹の、妹の意識は戻るんですか!?」

「分からん。脳にダメージが行っていれば、最悪、植物人間状態に陥る。そうでなければ、いずれ目覚めるとしか」

「そ、そんな……イッル……」

アウロラはやっと口を聞いたが、声色は弱々しく、とてもスオムス最強の陸戦ウィッチと思えないほどだ。

「さあ、大尉……」

坂本と黒江がアウロラに促す。アウロラも力なく立ち上がり、医務室を去る。アウロラの憔悴は凄まじいもので、ニパが愕然となる程であった。アウロラは『自分が空戦でないことを、こんなに恨めしく思ったことはない……』と呟き、昏睡状態の妹につきそう。

――その後、アウロラはISを注文したいと言い出し、黒江を驚かせる。だが、エイラの敵を討ちたい一心で懇願するアウロラに折れ、一機のISを与える。そのISを以て、彼女は『スオムスの戦女神』の名を頂くようになる。エイラの昏睡状態が治るのは、その5日後の事だったという――





――二代目スリーレイブンズの一人にして、二代目『魔のクロエ』である黒江翼は、大叔母から聖衣を借りる形で、山羊座の黄金聖闘士としても活動し、敵を叩いていた。

『我が眼前の敵を切り裂け、アロンダイト!!』

彼女の右手の聖剣はアロンダイトである。エクスカリバーほどの精霊の加護は無いが、威力面は互角であり、既に敵に寝返っていた祖母世代のウィッチをアロンダイトでまっ二つに屠っていた。この行為を黒江当人と勘違いされた事で、黒江の伝説が更に誇張される事になるのだ。それを空母に帰還し、CICで確認したミーナは開いた口が塞がらない。

「アレが黒江中佐の大姪に当たる黄金聖闘士……」

「あれで大叔母同様にウィッチらしいから、驚きだな……」

「もう、扶桑はオリンポス十二神の加護でも受けたのかしら?」

「お前、ワンパターンになりだしてるぞ。その台詞。もうちょっとひねりを出したらどうなんだ?」

「トゥルーデ、なんだかあなたも変わったわね」

「あのような人達に揉まれれば、な」

「!?と、トゥルーデ!あ、あ、あれ!」

「は、ハルトマン!?」

戦線復帰したハルトマンは、ミーナもバルクホルンも見ていないのをいいことに、刀を抜刀し、坂本や黒江もかくやの剣戟を見せた。戸隠流の型をばっちり決めての真っ向両断、はたまた、甲板上で敵ウィッチに対して牙突弐式を行い、相手の胴体と下半身を泣き別れにするなどの修羅ぶりを見せたが、二人はばっちり目撃しており、特に牙突の『ビリヤードのキューを構えたような状態からの突き』のモーションに移る際の表情は、優しいハルトマンとは到底思えないような『冷酷非情』にも思える鋭いもので、『こいつで終いにしてやる』という、ドスの利いたハルトマンの声もあり、まるで別人にも思える。高度に訓練された剣術を用い、躊躇なく元仲間らを殺してゆく姿に氷つく二人。

「ハルトマン……なのか?あそこにいるのは?」

「ど、どういうことなの……エーリカ……」

二人は、ハルトマンのもう一つの姿に驚愕する。ハルトマンの剣技は素人目に見ても『プロ』と分かるもので、牙突で敵を殺した後に、タバコを咥えるなど、まるで別人にしか見えない振る舞いを見せている。

『敵に下るなんて、自分の身の振り方も分からない阿呆にかける慈悲はないね』

と、決め台詞を吐く。刀を鞘に納める姿もサマになっていたので、ますます決まる。

『ハルトマン、お前、タバコはまだ早いぞ!』

『なんだ見てたの。これ、タバコじゃなくて、ココアシガレットって駄菓子だよ』

『何ぃ!?』

『駄菓子なんて咥えて、何してるのよ、エーリカ』

『いや、こういうシーンは、ちょっとそれっぽくきめてみたいじゃん?』

と、微笑う。

『お前、その剣技はどこで!?』

『えへへ、なーいしょ♪』

『こら、教えろ!ハルトマン!!」

はぐらかすハルトマン。ハルトマンや二代目スリーレイブンズの活躍もあり、戦局は完全に連邦=連合軍の優位になったかと思われたが、ティターンズは隠し玉を遂に使った。


「ん、な、何!?海中からドリルストーム!?」

エーリカもミーナ達も驚く。海中からドリルストームと思しき竜巻が海中から発しられ、その場にいたブリタニア巡洋艦が5隻は巻き上げられ、宙を飛ぶ。そして、そこからショックカノンの光芒が走り、巡洋艦らは為す術もなく貫かれ、爆発する。そして現れる。かつて滅亡した『ソビエト連邦』の旗を翻す、脅威の大戦艦。その名もソビエツキー・ソユーズ。

『ヨシフ・スターリン、いや、ソビエト連邦そのものの忘れ形見、ソビエツキー・ソユーズ……ラ級戦艦として生まれていたのか…!』

ドリルストームが晴れ、姿を現したソビエツキー・ソユーズ。その威容は周囲を圧倒する。そして、徐ろにソビエツキー・ソユーズは何と、艦首部分の砲口から光線を発し、なんとイタリア半島の命中した箇所を、どう見ても核爆発な大爆発で包み込んだ。その艦橋では。

「見たか、これぞ、旧約聖書よろしく、ソドムとゴモラを滅ぼした『天の火』だ!ラーマヤーナではインドラの矢とも伝えているがな」

――核爆発の爆発エネルギーを転送し、射線軸上に出現させる、ソビエト最終兵器『原子破壊砲』。設計段階でソビエト連邦がラ號に対抗するべく、搭載させた最終兵器。それをレストアし、使用した結果である。きれいな水爆を志向したソ連が、学園都市やバダンの超技術を盗み出し、実現させた超兵器であった。

「艦長、ロマーニャのウィッチが来ますが」

「あのようなハエなど、物の数ではない。適当にあしらえ」

「ハッ」

ソビエツキー・ソユーズの行いを目の当たりにしたルッキーニは激昂し、多重シールドを展開してソビエツキー・ソユーズに突っ込む。だが、ソビエツキー・ソユーズはバリアを展開し、ルッキーニのシールドとぶつかり合う。

「いっけええええっ!」

ルッキーニはドリルのように多重シールドを貼り、突っ込む。だが、ソビエツキー・ソユーズの貼ったバリアがそれを通さない。

「ぐぬぬぬぬぬ……」

チェンタウロのエンジンをオーバーブーストさせて前進しようとするも、バリアがそれを許さず、ストライカーユニットが音を上げ始める。固有魔法は光熱で、その発露である多重シールドは触れる対象物を破壊するのだが、相手が同じ種類の防壁であり、更に波動エンジンの膨大な出力を前提にするバリアが相手では特性が発動せず、力負けし、ストライカーがオーバーロードで爆発し、吹き飛ばされてしまう。が、それを救ったのは――

「やれやれ。子供の頃のおばーちゃんを助ける事になるとはね」

「へ!?」

「初めまして、ってことになるのかな?フランチェスカおばーちゃん」

「あ、あたしの名前を!?それにおばーちゃんって、まさか!?」

「統一ロマーニャ空軍、新生赤ズボン隊・隊長『トリエラ・ルッキーニ』。あなたの孫娘ですよ、おばーちゃん」

「あ、あたしの孫!?」

トリエラはルッキーニを抱きかかえる。同じルッキーニ家の人間ながら、その身に纏う雰囲気は全く異なり、賢さが前面に押し出され、高い教養と知性を持つトリエラ。その祖母であり、天真爛漫なルッキーニ(フランチェスカ)。トリエラがルッキーニの子孫であると示すのは、共通の髪型であるツインテールくらいだ。使用機材は、21世紀では古めかしくなった『F-104S』で、統一ロマーニャ軍の財政状況が芳しくない証と言える。

「さて、あなたを空母まで送り届けます。ラ級にレシプロで挑むなんて無謀ですよ」

「あいつは、あたしの、そ、それと!あんたのロマーニャを焼き払ったんだよ!?許せない!」

「あの戦艦は文字通りのバケモンですよ?波動エンジン搭載、全てを穿つドリル持ち。普通に戦ったら、こっちがやられますよ」

「じゃ、どうしようっていうのさ〜!」

「大丈夫。彼らが来ます」

「あ!」

ソビエツキー・ソユーズと対峙する、歴代スーパー戦隊ロボ、ゲッターロボG、グレンダイザー、グレートマジンガーのスーパーロボット軍団と、二大宇宙刑事の要塞。それに呼応し、海中から浮上する、戦艦大和に酷似した上部構造物を持つ大戦艦。そのコードネームは『ラ號』。

「ここからは宇宙戦艦とスーパーロボットの戦いです。彼らティターンズの最後の切り札たるラ級戦艦と、神々に擬せられるほどの力を持つ魔神達の」

――ティターンズが切ったジョーカーはかつての東側諸国の超大国『ソビエト連邦』が残した最後の忘れ形見『ソビエツキー・ソユーズ級戦艦』。それを迎え撃つは、『大日本帝国海軍最後の遺産』である超々大和型二番艦にして、最初のラ級戦艦『ラ號』とスーパーロボット軍団、二大超次元戦斗母艦。大日本帝国海軍とソビエト連邦海軍という、共に滅亡した海軍の忘れ形見。そして、戦艦という滅亡した艦種の生き残り。日露戦争以来の因縁の相手と言える日露の超兵器が地中海で対峙する。戦いの最終局面は、『大和型戦艦』と、『ソビエツキー・ソユーズ級戦艦』の宇宙戦艦としての対決で幕を開ける。

「ソビエツキー・ソユーズ、貴様ら野望と妄執は、このラ號が止めてくれる!」

と、意気込む『ラ號』艦長の神宮寺大佐。地球連邦宇宙軍の中堅どころでは、最も波動エンジン艦に熟達した『水雷閥』出の艦長であり、好戦的な気質から『戦争キチガイ』と、敵対者から揶揄されている。(艦娘の川内、神通と仲がいいとの事)

「ハハハ、来るか、ラ號!スーパーロボット軍団よ!我が祖国の誇った『ソビエツキー・ソユーズ』を止められるものなら止めてみるがいい。全火器、管制システム・オンライン。目標、前方のエゥーゴ共だ!」

――ソビエツキー・ソユーズの火砲が一斉に動き始める。それを歯がゆい思いで見つめるルッキーニ。モニター越しにその威容に圧倒されるミーナ達。空母の甲板で見上げるハルトマン。戦場から見える威容に圧倒される二代目スリーレイブンズと、残りの新501の面々。日本とロシアが心血を注いで作り上げた最強の海獣の新生は、地中海を血に染めるのだった――



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.