外伝その105『ダイ・アナザー・デイ4』


――扶桑皇国は望まずとも、必然的に連合国最大の国力を持つ国となり、それに見合うだけの軍事力を持つ必要に迫られた。21世紀/23世紀の各勢力は自らの思惑で、ウィッチ世界にその影響力を行使したが、その過程でオラーシャは衰退、国土がガタガタのガリアは意に介されず、リベリオン、ガリア、カールスラントにその影響が大だった。カールスラント軍は、海軍再建というよりは潜水艦隊整備に海軍予算の六割が使われるなど、史実と同様の役割分担が徹底された。その結果、扶桑は独自の潜水艦整備が停止され、カールスラントとリベリオンに範を取った攻撃型潜水艦の整備、通商破壊に対応するための艦隊整備にされるなど、対人戦を前提にした整備が急ピッチで行われていた。そんな連合国最大の懸案はマジンガーZEROだった。



――南洋島の飛行場――

「事の経緯は老師から聞いたな?お前らを参加させるのは気が引けるが、仕方がない。概要のレジメは受け取ったな?」

黒江は出発前、童虎との相談の結果、奏者らの希望を汲む形で、自らの世界に呼び寄せたが、戦力的にはエクスギアを考慮に入れても、奏者らの戦力は白銀聖闘士の最低限から平均クラス。唯一、闘技を引き継いだ調がZEROに打撃を与えうる可能性を秘めている。マジンガーZEROの脅威ぶりは奏者らにも見せておく必要が有るため、連邦軍が協力してくれたが、真っ向から戦えるポテンシャルはないため、むしろ、それと同時に起こるであろう『スーパーヒーロー大戦』に参加させるつもりであった。

「なぜ、私たちは後詰めなのです?」

「翼、いいか?主敵は神の如き敵だ。お前らの敵はむしろ、それに乗じて襲いかかるであろう奴らだ。お前らのポテンシャルでは、光速の攻撃を繰り出す魔神に対抗は出来ん。それはわかってるな?」

「地球を穿つ攻撃力を備えているロボット……。そんな科学力があるのなら、それを超えるのを……」

「それが、奴は誕生の経緯が特殊でな……。自己強化と自己再生、因果律操作すらお手の物だ。その関係で、奴の予測を超える必要があるのさ。その都合で奴が得ている因果に関係があると推測される兵器は、スペックがどれだけ強力であろうと、使用しない」

マジンガーZEROの単体のマジンガーとしての能力は、マジンカイザーをも圧倒的に上回る。超合金ニューZαであろうと溶解せしめるブレストファイヤーを放つ事ができるからだ。その都合でマジンカイザー系のマジンガーは使われず、その代わりにゴッドマジンガーとマジンエンペラーGが使われる。

「馬鹿な、機械にそこまでの予測の精度が……」

「自分の意思を持った超兵器は神にも悪魔にもなる。そいつは悪に堕ちた。そういう事だ。そう言えば、お前は初めてだったな?本来の私と話すのは」

「ええ、黒江女史。あなたが月詠の姿をとっておられた時以来ですから」

「ああ、お前の名前だが、私の姪につけさせてもらったぞ?」

「なっ!?そ、それは!?」

「お前の事がふと、頭に浮かんでな。兄貴のガキにつけたんだよ」

正確に言うと大姪だが、ややこしいので、姪と言っておく黒江。嘘ではないからだ。事後承諾という形だが、自分の後継者の『翼』は風鳴翼がその名の由来である事を明かし、なし崩し的に承諾させた。

「……それは分かりました。それで、我々はそのロボットとは?」

「ハッキリ言って、命の保証は出来ん。お前らが奇跡を起こそうとも、奴は魔神だ。むしろ、それと同時に起きるであろう戦いに参加して欲しい。魔神は私ら聖闘士がやる。それに対抗できるスーパーロボットと共にな」

「……それほどの相手なのですね、そのロボットは」

「ああ。そいつの全力は世界を一瞬で火の海に変える。他の奴らにも聞こえるようにスピーカーにしたか?」

「してあります」

「よし……。お前らにはこれから、これまでと毛色の違う戦いを戦ってもらう。相互理解なんざ全く起きない『獣性』に従って動く連中とな。ウチの若い連中は、あいにく対人戦の経験がない。それが当たり前じゃなかった世界だからな、私の故郷は。私のように、転生を経験したり、平行世界を渡り歩いた連中は魔神戦に投入する。お前らはその裏で起こる戦いの主力部隊の一角に入ってもらう。一応、国連軍の後身に当たる軍隊の指揮下に入ってもらうから、指示に従うように」

「魔神の侵攻に乗じて、何が攻めてくると言うのです?それを話してもらえますか?綾香さん」

「その声、マリアか?お前は確か、アメリカ人だったな。戦うべき相手は、お前の国がかつて打ち倒したナチス・ドイツ、その残党共の成れの果てだよ」

「ナチス・ドイツの残党!?そんな馬鹿な、23世紀の時点までナチ共が生きていることなど……!?」

「ところがぎっちょん、奴らは戦時中のオカルト研究の数々を戦後に完成させていた。その成果で生き延びていたのさ。人為的な吸血鬼製造や、ナノマシン技術、伝説で悪魔と言われていた先住族との融合、サイボーグ技術の実用……。それらを手に入れて生き長らえた」

「なっ……」

「中には、元日本軍の軍人も複数いる。戦後直後、日独の元職業軍人達は疎まれたからな」

――バダンには、元帝国陸海軍軍人も複数いる。戦中に独に派遣されていた、戦後の白眼視に憤り、誘いに乗った者と千差万別だが、日本陸海軍軍人もバダンにはかなりいた。しかも当時の姿で。自衛隊設立の理由には、バダンに誘われて加入した軍人らのテロリズムを警戒し、その供給源である元軍人(日本軍は最大で550万人の陸軍軍人、240万人の海軍軍人を有した)らが喜ぶ再就職先を用意し、バダンへの参加を抑制、ひいては断つのが吉田茂の真の狙いに含まれていた。未来世界の過去における話だが、当時の元・大将と中将らとの吉田茂の会談の記録においては、吉田茂がナチスの復活を危惧し、元の陸海軍軍人らが戦後の風潮に嫌気が差して、かなり参加した事を気に病んでおり、それを抑えるため、予定を変更して、GHQの再軍備要請を妥協したが、内務閥が跳梁跋扈していると嘆いている。吉田茂は(旧軍人の再就職先を作る目的で自衛隊を作ったのに、内務省閥が跳梁跋扈したのは誤算だった』と嘆いており、本来、『内務省出身者は、旧軍人の暴走抑制の監視目的で入れたにすぎない』事が記録に残されていた。23世紀はその記録を開示する事で、21世紀自衛隊の枷を外していき、自衛隊内部の内務閥勢力を削いでいった。これは日本の自衛隊が法制面で『完全体』になるのを補助するためのもので、学園都市のおかげでウラジオストクを得て、韓国が無力化して『久しぶりの戦勝』を味わっている国民世論を煽るためのものだった。それが第一目的だが、第二目的は、太平洋戦争における日本左派の介入を防止するためであった。前史の左派の策謀は太平洋戦争の戦争遂行に明らかに悪影響が生じ、バダンとの戦闘にも支障が生じた。播磨が今回、早期に完成したのは、宇宙戦艦の建造ノウハウを完全に適応した。前史の播磨と違い、『いつでも波動エンジン搭載の宇宙戦艦に改装できるように出来ている』。黒江が『全部が加速している』と言ったのは、ここにも転生者の影響が生じていたからだ。

「転生経験者として言うが、ウチの世界の物事の全部が前世より加速している以上、何が起こるか予測がつかんところがある。重ねて言うが、正直いって、命の保証は出来ん」

「物事の加速、ですか。それはそうでしょう。誰かが何かの入れ知恵をすれば、それに伴う何かの影響が生じます。それはおそらく……」

アガートラームの奏者になったマリア・カデンツァヴナ・イヴが推測を言う。黒江らが転生者として行っている事による影響は、けして良い影響ばかりでなく、ZEROの襲来の早期化を招いてしまったという負の影響も起きている。

「ああ。何かかしらの悪影響は生じているだろうが、そんな些細な悪影響なんざ、魔神を止めることに比べれば、どうということはない。奴が因果を操るのなら、それを断ち切るまでさ。勝利を約定されし剣でな」

エクスカリバーはアテナの加護で因果律に干渉できる力があるため、天羽々斬やアガートラームが無効化された事がある『錬金術』の『哲学兵装』であろうと無効化されない。オリンポス十二神が与えしモノなので、人間が過去に研究していた錬金術では干渉も出来ないからだ。

「貴方の剣は、私達の中で唯一、哲学兵装もねじ伏せた。なんなのです?アガートラーム、天羽々斬も干渉されて無効化されたというのに、貴方のエクスカリバーだけは……」

「エクスカリバーは、神器で概念兵装だ。一見して、概念破壊に弱そうだが、概念の規定方法が違うから、(人の道具としての剣と闘う意志の象徴としての剣)に哲学兵装も及ばないのさ。真っ向から勝つには、シュメール神話の無銘剣をぶつけるしかない」

「シュメール神話の……。あなたはもう片方の腕にも聖剣を宿していると言っていましたね。だけど使わなかった。それはまさか…」

「便宜上、『エア』と呼んでいる。エヌマ・エリシュとも言うべきだな。対世界用の剣だから、神格の私が振るったら、ダース単位で世界が滅ぶぜ」

黒江の最大の切り札『エヌマ・エリシュ』。天地乖離す開闢の星とも言われ、その威力は世界をも斬り裂く。人として振るっても世界を斬り裂くので、神格になった黒江が全力で振るったら、近接する平行世界がダースで切り裂かれる。それに開眼しているため、黒江は左腕の手刀を封印している。これはアテナも予想外の事だ。

「なっ……」

「あ、そうだ。事後承諾ということになるな。すまんが、お前のアガートラームだが、シュルシャガナをコピーした時に、一緒にコピー取っといた。」

「!?え、えぇっ!?」

「私の弟子の一人に持たせてある。お前に声の感じがよく似てるんだ、これが」

箒の事だ。マリアの声は箒によく似ており、ものはついでと、コピーしておいたのを、箒に送っておいた。箒は赤椿が姉のところで解析中、射手座の聖衣は黒江が持っていく事が多くなったので、緊急避難的にアガートラームを起動させた事がある。これには偶然の要素が多分にあったが、聖闘士であったがため、アガートラームの起動ができたのだ。違うのは、マリアが銀の『左腕』であるのに対し、箒は伝説通りに『銀の右腕』である事、意匠に射手座の聖衣のような翼がある点だ。箒にアガートラームを渡しておいた事も事後承諾という形になったのと、マリアにとっては妹の『セレナ・カデンツァヴナ・イヴ』の形見でもあった(結果的とは言え、マリアは正規適合者であった妹から受け継いだ事になる)ため、黒江の行為に眉をひそめた。が、黒江には、調のことで恩義があるため、渋々ながらも了承した。黒江が『そいつは武士道精神を持つ。お前と、お前の妹に恥じぬように、アガートラームを使ってくれるさ』と告げた事で了承した。

「本来、シンフォギアというのは、相性もあるのですが……貴方方にはそれは関係ないらしいですね…」

翼の嘆息混じりの声が聞こえてきた。本来、シンフォギアは相性も関係してくるものだ。例えば、翼が慕っていた『天羽奏』はガンニグールを纏うべく、制御薬『LiNKER』の初期型の過剰投与でやっと限定的に纏えるようになっていた。それで限定的であったので、マリアたちは改良版を使っていたが、それでも奏より適合率は下だった(フロンティア事変当時)。だが、黒江と箒はセブンセンシズに覚醒し、黄金聖闘士になっているため、存在そのものが聖遺物と同等以上に昇華している。いわば、セブンセンシズに覚醒した黒江と箒は適合率が正規適合者以上であるので、バックファイアも起きず、ギアを纏う時間に制限がない。翼は奏の衝撃的な死を引きずっているところがあるため、聖闘士になる=神の祝福を受けると解釈したらしく、嘆息混じりだったのだろう。

「仕方がない。私達はオリンポス十二神を守護する使命を帯びて、神々の聖戦の尖兵になる事が義務だ。しかもその最高位たる黄金聖闘士だ。神殺しができるだけの加護もある。お前が慕っていたという天羽奏って子や、マリア達とは差がついてしまうのは当たり前だ。翼、私にも憧れている人たちがいる。その人達は異形の姿になるのと引き換えに、永遠に等しい命と、悪と戦う力を得た。その人たちが言っていた事だが、『人々が求める限り、俺たちは不滅』だと。お前にも夢や今、守りたいモノはあるだろう?」

黒江の現在の行動原理の根幹には、栄光の7人ライダーが大きく関係している。その心象がシュルシャガナのギアのカラーリングをヒロイックなものに変えたし、後輩らにもその事を叩き込んでおり、芳佳と共通する点を持つようになったと言える。その共通点は黒江に『純真さと一途さ』を持たせ、ある意味では調の立場に立った事で、調と混ざりあったというべきだろう。

「綾香さん……」

「そんなわけで、そろそろ飛行機乗る時間だから切るぞー」

「は、はい」

黒江は、奏者らにとっては『掴みどころが難しいが、生まれた年代の割に、自分たちと変わらない感性を持つ』祖母のような存在と言える。大正の末頃に生を受けたというと、響達は『厳格な良妻賢母教育』を受けたと当初は思っていたが、フランクな人柄、陸軍の職業軍人であるのにも関わず、ユーモアを解するなど、ステレオタイプの戦前人とは明らかに違っていた。黒江はシンフォギア世界滞在中、それを笑い飛ばしており、『日本人は元来、洒落や笑いを好むんだぜ?オンオフがハッキリしてるだけで』と大笑している。ノリがいい面は多分に発揮されており、響とその友人らに見つかった際には、バイト代を受け取ってから、そのままカラオケに連れていかれ、『LEVEL5 -judgelight-』(入っていた)をギアを纏ったままで熱唱していたりする。これが調の相方である切歌に知られたのは、黒江が去る間際の事で、『ギアの無駄使いデス!』と憤慨した(切歌当人はやってみたいらしいらしい)。その夢は、その後の聖闘士への叙任で叶うことになり、シンフォギアの平和利用例になったのだった。(黒江は戦場の士気高揚のために歌ったり、ヴァールシンドロームの治癒の目的で歌っているので、ある意味では『ワルキューレ』や『シェリル・ノーム』、『熱気バサラ』に近いと言える)


「あの人は飄々としているが、どことなくだが、純粋なところがある。彼女が言っていたが、複数の世界との行き交いがあるこの世界では、『歌』の研究が進んでいると聞いた事がある」

「羨ましい限りだぜ。『歌で戦争を終わらせた』歌姫なんてよ……」

雪音クリスは、戦争で両親を失ったため、実は争いを終わらせたい信念を持つ。戦争を終結させ、和平に導いた、リン・ミンメイの伝説は眩しいようだ。未来世界では、歌が動乱を終わらせる鍵となった事が何回もあり、イサム・ダイソンがシャロン・アップルを停止させた際に心に想っていたのも、ミュン・ファン・ローンの『VOICES』という曲だ。その経緯を知ったクリスは羨望を抱くようになっていた。(VOICESについては、イサム・ダイソンから教えられたという事で、黒江がよく口ずさんでいた。奏者達には『憧れの人から教えられた歌だよ』と言っている)

「綾香さん、調ちゃんの姿だった時もそうだけど、どこか純粋で、一途なところがあるんですよね」

「うん……。『師匠』は、私にも影響を与えた。その一つが、腕に宿ったエクスカリバーだと思うの。だから私は師匠に弟子入りしたんだ」

調は黒江からのフィードバックにより、人格に影響が生じ、人格を崩さない範囲で義や仁を貫かんとする性格になった。オリヴィエの影響もあり、どことなくポジティブになったらしいところを響に見せた。黒江を師匠と呼ぶのは、正式に聖闘士志願を童虎に伝えたからだろう。

「しかし、この世界にはムー大陸があって、しかも日本の領土だと?……地理感覚がおかしくなりそうだ」

「中華文明圏が明代で滅び、織田信長が天下統一を成し遂げた世界だぞ、翼。我々の世界の常識は通用しない。大英帝国が45年でも維持されていて、ドイツが南米に亡命しているのだから」

マリアと翼の年長組は、ウィッチ世界の地理などでため息をついていた。更にローマ時代の古名が多数残っている世界でもあるので、それを覚えるのは困難である。違った歴史を歩む世界に足を踏み入れる事自体が彼女らにとって、前代未聞の経験である。更に平行世界を股にかけての大規模な戦いになる。翼がウィッチ世界の地図を片手に格闘しているのに対し、マリアは冷静である。もう覚えたのだろう。そんな彼女らを乗せたミデア輸送機は一旦、南洋島に立ち寄る。黒江らが民間のチャーター便で飛び立った後のことだ。彼女らに呼応するかのように、欧州はロマーニャへ向かう、スカイライダー、仮面ライダースーパー1、仮面ライダーBLACKRX、仮面ライダーZO、仮面ライダーJ。更にスーパーバルカンベースで臨戦態勢に入る歴代スーパー戦隊。バード星から急派される三人の宇宙刑事。日本から警視庁の特命で動き始める『機動刑事ジバン』と『特警ウインスペクター』。マルセイユとエーリカの連絡でロマーニャに向かった『磁雷矢』。ビッグワンからの連絡で遂に復活の狼煙を上げる『イナズマンF』……。日本を守ってきたヒーロー達の多くが大戦に参加する意思を見せる。バダン、ティターンズ、ネオ・ジオンの三者がどう動くのか。地球連邦軍には読めない状況が続く中、ダイ・アナザー・デイ作戦の予想日は刻一刻と迫っていく。扶桑の最新鋭戦艦『播磨』が主力艦隊を率いて出港したのもこの日の内であった。それらの到着が、遅くとも三週間以内に求められたため、全艦が全速で航行し、補給艦との合流を数度実施してまで欧州まで全速力で突っ走ったため、大艦隊としての艦隊航行のギネス記録級の速さで到着する事になったという。



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