外伝その162『日本のギャフン2』


――21世紀に中継された海戦の再生数は40万を突破していた。実際、大艦巨砲主義全開の古典的な海戦など、太平洋戦争を最後に行われていなかったからだ。しかも、排水量10万トンを有に超える規模の戦艦が撃ち合う光景など、まるで架空戦記の世界である――

――日本の国会での答弁を終えた山本五十六は国会議事堂から出ると、防衛省に迎えられた。三笠型と播磨型についてヒアリングを頼まれたのである――

――防衛省内――

「山本閣下。あの規模、どう見ても50万トン近いですが、どこに建造ドックを」

「アレについては完全に、かの文明に委託しての建造だよ、君」

山本は、『三笠型は地球連邦に委託して用意した艦である』事を明言する。播磨型も地球連邦が扶桑の南洋島に提供された土地をドックにして、900m規模の大ドックを造り、そこで350m級として建造された。三笠型の廉価版として建造されたので、主砲の小口径化などのダウングレードは経ているが、大和型以上の攻撃力は確保している。

「では、播磨は」

「廉価版だよ。三笠型はでかすぎて、文句が出てな」

「あれは500m…」

「いや、それは完成時だ。今は改善で100m長くなってね」

「大型化しすぎです、閣下」

「兵たちの居住区の充実をしたり、艦内配置の改良を施していたら自然にな」

「副砲は積んでないのですね」

「小艦艇ならミサイルで片がつくし、君達が指摘したように、誘爆の危険があるからね。副砲は積んでいない」

三笠と播磨は大和型を基本ベースにしているが、ミサイル装備をした兼ね合いと、波動カートリッジ弾を撃てるショックカノン構造にした関係で砲塔が大型化した事もあり、副砲は廃されている。76ミリ速射砲を両用砲で積んでいるが、これは長10cm砲か長8cm砲の速射砲化と採用を争って採用されている。主砲配置はセオリー通りの配置で三連装五基だが、三番艦以降はコスト削減のため、四基に減らされている。概ね、対空砲の配置は大和型の史実の最終時および、宇宙戦艦ヤマトと同様だ。主砲は高雄型重巡洋艦のような配置も考えられ、第三砲塔は後ろ向きに配置する案があり、能登はそのプランで作られる予定であった。これは主砲バーベットの集中配置を狙った案でもある。これはまほろば形式では、常に第一主砲が波をかぶるのを覚悟であることの地球連邦軍の反省から来ている。そのため、播磨と越後は三連装五基なのが、美濃では四基に減らされているのだ。美濃はこの時、進捗率80%で最終艤装寸前、能登は担当造船所の設備更新で休工、讃岐は40%であった。この数字は扶桑が南洋島を再開発して用意し、造船会社に割り当てられた港湾とドック、造船会社の人員や現地の施設のグレードの差もあった。そのため、ラ級への切り替えは当然であった。

「三笠と播磨は基本的に、共通規格部品で作っていると聞いている。主砲は宇宙戦艦ヤマトの技術で作ったそうな」

「宇宙戦艦ヤマト、ですか」

「君達がアウトレンジ攻撃は机上の空論とか言うもんだから、大砲屋共が怒ってね。それで採用したのだよ。実際は25キロほどで撃ち合うもんなのがねぇ」

「しかし、アナログコンピュータでは動く敵艦に……」

「リベリオンでさえ、その距離では命中率は2.7%しかないのだよ?」

「まさか」

「ニミッツ提督に問い合わせての公式回答だよ、これは」

扶桑は内に自由リベリオンを匿う事になり、リベリオン兵器の詳細なスペックを手に入れている。それで得られた知見は『距離26000では、時代相応の技術ではお互いの命中率に顕著な差はない』で、ある。そのため、21世紀の指摘は『砲撃戦が起こることが無くなった後の後知恵によるバイアス』と取られている。少なくとも、宇垣纏などはそう認識している。

「戦艦の砲撃戦というのは、君たちのミサイルと違い、百発百中というわけでもない。君たちは条約型巡洋艦までは対応出来ても、戦艦は対応できんだろう?」

21世紀までに開発された対艦ミサイルは、ブルックリン級軽巡洋艦の最後に参加したフォークランド紛争で使用された事例があるので、理論上は条約型巡洋艦ならば撃沈可能だが、第二次世界大戦で姿を消した戦艦は想定外である。革新政権時代に自衛隊が研究していたのが、対潜アスロックをかつての魚雷のように打ち込み、水線下に大穴を開けて撃沈するという方法である。これは、実際に2017年にリベリオン本国軍の艦隊が偵察に現れた際に実践され、一隻の無力化には成功している。だが、自衛隊の護衛艦の戦艦との交戦が国内世論の圧力で、『危険である!』と避けるように通達されてしまったので、海自は大いに憤慨している。それで、ラ號を防衛族が欲しがるようになったのだ。つまり海自は、研究の末に、戦艦への有効な打撃を与える方法を得ていたのに関わらず、戦艦との大きさや搭載火砲、装甲の差などが原因で直接交戦は禁じられてしまったのだ。

「2017年、ゲートを通っての強襲があった時、君らは確かに良い仕事をしたよ。我々側の天候が回復し、急ぎ信濃を送り込んだが、一隻は無力化し、撃沈に成功した。見事だったよ。だが、あの後の通達はどういう事かね?」

「国民が海自に死傷者が出る事を嫌ってましてね。特に一般人は戦艦と護衛艦を装甲と火砲だけで強さを判断するんですよ、閣下」

「政権を倒すための道具に野党がするのかね」

「ええ。今の野党は金儲けと利権を守ること、与党叩き。この三つしか能がない」

実際、日本連邦は日本を『長年の経済的死に体』から見事に蘇らせたが、そこに至るまでに揉めまくったのが軍事力の事である。扶桑側の軍事力の大幅縮小、扶桑軍人の大幅なリストラと自衛官が扶桑軍へ主導権を握るように画策するなど、野党は色々なベクトルで日本連邦の結成の障害でしかなかった。また、華族の扶桑側での将来的解消(当代の者達に限り、華族を名乗る事を許す)も画策する野党さえあった。

「全く、この国はノイジーマイノリティの声が無駄にデカイものだ。黒江君のどこが軍国主義者だ?忠勇なる扶桑軍人ではないか」

「はぁ。お詫び申し上げます。黒江統括官は自衛官としても優秀です。基地祭では羽目をはずしますが、それ以外は模範的ですらあります」

「源田くんが選抜して送り込んだのだよ。もっと信用すべきだったね」

「提督の言うとおりだな」

「君は長門、だね?」

「今は扶桑皇国海軍特別艦隊という形で実戦に参加しているがな」

「私や長門さんは扶桑の九十九神信仰の象徴でもありますからね」

「君が大和かね」

「はい。大和型一番艦、大和。今は長門さんの下で任務に就いています」

「私や大和はメンタルモデルへの変身もできるが、大和はメンタルモデルだと腹黒くなるのが難点でな。あまり変身は勧めておらん」

「確かに。しかし、君、なんかツインテールでギター弾きそうな声だねぇ」

「よく言われますよ、それ」

「まさか、艦の化身とこうして会話できるとは」

「私達は扶桑の最高機密でしたから、実戦は実のところまだでして」

「そうだ。私と大和が辛うじて、事変を経験してはいるが、あとは艦としての記憶頼りだ」

「なぜ秘匿を?」

「日本艦ばかり現れたのでは、他国の海軍の嫉妬を買うからね。聖上が憂慮なされたのだ」

「他国の艦は?」

「基本的にそちらでの枢軸国の艦が優先的に現れる傾向があってな。リベリオンでさえ、戦艦が一人と空母が二隻だけだ」

「あー…なるほど」

「詳しそうだね、君」

「ハッ。休暇中にゲームをプレイしてまして」

「なるほど」

「うーむ、恥ずかしいな、これは」

「自衛隊にはその手のプレイヤーが多いとは聞いてはいたよ。黒江くんもしとるし」

「統括官は就任されてからは暇に近いですからね」

「統括官という職は黒江君の幕僚長就任がだめになった後に出来た代替ポストのようなものだしね」

黒江はブルーインパルス離任後、将補に昇任している。扶桑で大佐になった上、叙爵が約束されたからでもある。これは革新政権が黒江の幕僚長就任や統幕入りを内規で潰したら、扶桑で昇進してしまい、更に叙爵が約束されたという有様に大いに狼狽えた当代の首相が山下大将との会談で黒江への代替ポストを約束した結果が統括官というポストなのだ。有事では忙しいが、平時では暇なので、書類仕事を副官にさせているのもあり、暇である。勤務終了時間には、どこでもドアでその時代の野比家に帰っている。2018年には、のび太も30歳を迎え、ノビスケも小学校入学を控えている時期だが、のび太が環境省に就職した事、しずかにも地球連邦政府からの恩給が出ている事もあり、かつてより裕福な暮らしを送っている。調は2018年でも変わらず、野比家への居候は続けている。2002年から同じく居候を始めたが、不在であることが多い切歌の事もあり、野比家の家政婦のような地位を確立している。黒江も、のび太の成人と就職・結婚後は父親不在が多い(静香はG機関に斡旋されるまでは専業主婦であったが)ノビスケの遊び相手になってやるなど、野比家に居着いている。調も黒江も、大人のび太が築いた新生・野比家を守ることも同時に行っていると言えよう。

「環境省の野比のび太という人物を知っていますか?」

「うむ。彼は我々の協力者でね。黒江くんを自衛官にするに当たっては尽力してくれた。瑞宝章を与えたいくらいだよ、君」

のび太は黒江に多大な協力をし、更に、ウィッチや艦娘に自宅を拠点として提供している。そのこともあり、山本はのび太に瑞宝章を与えたいと言った。

「彼にエージェントとしての任務を与えているのは本当なのですか」

「うむ。彼が成人した後に正式に任命し、我々の機関のエージェントとして動いてもらっておる。これは安倍シンゾー総理と官房長官、それと歴代の防衛大臣しか知らぬ事だ」

「なぜそんな事を?」

「日本連邦を確実に結成させるためだよ。多少は裏工作せんと、君の国は動かんからね」

のび太をG機関のエージェントとした張本人かつ、扶桑のフィクサー組織『Y委員会』を遺言と称して結成させるなど、今回は根回しが匠な山本。長門や大和の入れ知恵もあるだろうが、もし、終戦まで存命であれば、東京裁判で裁かれた可能性すら言及されている山本にとって、偉大な初代国防大臣/最後の海軍大臣としての足跡を刻むウィッチ世界は幸せと言える。遠大な策略を練る当たり、軍政家として一級であるのは確かである。(同時に博打打ちでもあるが)

「それに、彼は和製ジェームズ・ボ○ドとも、和製刑事コロ○ボとも言えるからね」

のび太は成人後、ウォッカ・マティーニを嗜む一方、ヨレヨレのコートを着て、『うだつのあがらない青年調査員』を装うなどの特徴を持つ。そのため、刑事コロ○ボの皮を被ったジェームズ・ボ○ドとも、ハリー・キャ○ハンとも同僚に言われている。銃器の規制が日本連邦化で許可制という形で緩和されると、のび太は早速、S&W M29、スーパーレッドホークなどを登録(子供の頃に得ていたもの)し、保有している。これは扶桑の状況を無理に変えるのを日本側が諦めたからでもある。日本国内で一般人が銃器を買うのには相変わらず厳しい規制がある(これは警察が治安維持のために審査を厳格にしているためでもある)が、のび太は仕事での必要もあり、すぐに許可されている。自衛官、警察官、そして、のび太のような裏稼業に勤しむ者。それらが銃器を比較的楽に手に入れられる者である。のび太はキングス・ユニオン、日本連邦から『殺しのライセンス』すら非公式に与えられており、かなりの仕事を負っていた。のび太は殺さずとも、任務は達成できるが、万一、デューク東郷と遭遇した場合に備えての措置だ。デューク東郷も、のび太の事は『俺の心に火をつけた男だ』と高く評価しており、のび太とは奇妙な友情を持つに至った。そのため、デューク東郷はのび太へ尊敬の念を持ち、のび太もデューク東郷へ敬意を払って接している。これはのび太がデイブ・マッカートニーのお得意様になったことで出会う機会が増えた事もあるが、デューク東郷の窮地を図らずも救う形になった任務があったからだろう。

「彼は、かのデューク東郷と戦って生き延び、彼をして『拳銃では俺を上回るかもしれん…』と言わしめたほどのプロだ。我々が重宝するのはそれでわかるだろう」

「あのゴルゴ13と対等に!?」

「そうだ。未だかつて、彼と戦い、遂には友情を築いた男は彼だけだろう」

のび太は持ち前の才能と成人後の訓練で、あのゴルゴ13と対等に渡り合い、遂には友人と見做された。のび太の人格者ぶりはその筋では一匹狼と目されるデューク東郷でさえも一目置くレベルなのだろう。

「彼は表向き、環境省に身を置いているが、日本の内閣情報調査室とも違うライン、つまり、日本連邦評議会直属のエージェントなのだよ」

「なぜ、内閣情報調査室ともラインを別に?」

「諸外国のスパイ同様、非合法な事も行うからだよ。場合によれば殺人も許される程のね。それに環境省は外務省ほど警戒されずに外国と往き来出来るからね」

のび太は旧内務閥に属さない官庁の人間であるが、やってる事は内閣情報調査室顔負け、かつての陸軍中野学校さながらである。黒江の同期の一人が引退後に中野学校に行き、スパイに転じた事もあり、黒江はそのラインで成人後ののび太をエージェントに育て上げた。つまり、のび太は陸軍中野学校の正統な末裔と言えるほど情報線に長ける存在になったのだ。

「彼は中野学校流の教育を、大学生の頃に黒江くんの手で受けておる。あの子は顔が広いからね。中野学校にも知り合いがいるそうだ」

のび太はなんと、黒江の手で大学生の頃に陸軍中野学校の教育を受けたらしいことが公式に明らかにされた。更に調の修行に付き合い、雑賀衆の忍びともなっており、実のところ、野比家歴代当主の中では最もスリリングな人生を送ったと言える。雑賀衆が活動していた時期には、ちょうど野比家は狩人の生活を送っていたので、野比家の公式記録よりも、雑賀に属していた者の子孫たちの記録に『乃火太』なる忍びと友達だったと残されたという。のび太は成人後にそれらの技能を活かし、ゴルゴ13と渡り合い、生き延びてみせた。そのサバイバル術はゴルゴも『見事だ……』と感嘆しており、その次に出会う事で友人となったのだ。また、のび太はトレーニングと称し、学生時代を通して、度々、西部開拓時代のアメリカのドラ・ザ・キッドを訪ねており、保安官としても活躍している。キッドとは悪友であり、時には調を巻き込んで、資金確保のため、開拓鉄道の警備をやったりもしている。キッドのいる時代は西部開拓時代の黄金期であり、南北戦争直後であるので、南軍残党が蠢いている時代でもある。資金集めにはまさにうってつけで、青年期からは『夕陽のガンマン』さながらの格好で、流れ者を装う事もあり、相変わらずのフリークぶりをみせている。時には旧北軍(合衆国軍)の用心棒として、旧南軍残党の掃討に関わったりするなど、西部開拓時代での身の振り方を熟知している。キッドはならず者が一週間に何回も襲ってくるような『いいカモ』な地域の警備を引き受けているので、のび太たちには良い訓練になる。西部開拓時代はならず者に最も優しい時代でもあるが、同時に先住民には地獄のような時代でもある。基本的には体制側に味方するが、用心棒であるので、時としては先住民側に味方する。その事から、のび太は西部開拓時代においては『ノビータ』というアジア系の二人のガンマンという形で歴史に名を残した。街を守った出来事は1880年頃、青年期に活躍したのは、1870年代初頭頃であるのが原因だ。青年期になると、少年期が高潔な英雄であるのに対し、『報酬にガメつい用心棒』とされているが、小遣い稼ぎに、先住民の用心棒をしたり、時としてはアウトロー側に与したせいだろう。

「彼は少年時代から学園都市にマークされている。しかし、学園都市も手を出さんのはどうしてと思うかね?」

「は?」

「元・常盤台中学の誇ったレベル5の能力者、御坂美琴君がのび太君の友人なのだ。更に言えば、歴代のスーパーヒーローが陰ながら守護している。そんなところに暗部部隊を送り込めるかね」

「確かに」

「学園都市はもはや下り坂だが、まだまだ力は残っている。ドラえもん君のテクノロジーが欲しいのだろうな、恐らく」

学園都市は美琴や上条当麻の行動の結果、この時代になると、勢力が下り坂になり始めていた。詳しい理由は不明だが、恐らくは上条当麻が何かをやったためだろう。学園都市は日本連邦の結成に図らずも貢献したが、それ以降は歴史的役目を終えたのか、衰退し始めている。山本はその理由を『上条当麻が何かを成し遂げた結果だろう』と睨んでいる。

「ドラえもんのテクノロジーはどこから生まれ、そして変質してゆくのです?」

「少なくとも、22世紀に戦争が起きる。それで文明の退化が起こるとは言えるのだがね。それが超文明に繋がる『線』だよ、君らにとっての」

ドラえもんの生まれた時代は地球文明の安定期かつ、最も発達した時代だが、統合戦争と時空融合の悪影響で多くは失われ、ドラえもんが23世紀で『オールマイティーワクチン』を復活させようとしたら、スペースノイド、とりわけジオン系に敵視されているように、ドラえもん時代の文明はある意味、23世紀よりも優れた点も多いのだ。オールマイティーワクチンはがん細胞さえ一発で死滅させられる万能薬であり、ドラえもん時代の医療技術のシンボルである。正式名称は『ウルトラスーパーオールマイティワクチン』といい、宇宙の新種ウイルスにさえ効果を持つ万能薬だが、スイートウォーターやサイド3のスペースノイドは『アースノイドの生存欲の悪しき象徴』と糾弾しており、ドラえもんも命を狙われる事が多い。しかし、ジオンの理想は地球連邦が星間国家に変質してゆく時代では、時代遅れになり始め、コロニーや移民船団同士の抗争が表面化し始めたため、『親世代の夢』とするスペースノイドも多い。実際にザンスカールはジオンに否定的だったし、コスモ・バビロニアはジオンを『旧時代の遺物』と内心で蔑んでいる。しかし、いずれも理想と現実の前に儚く消え去り、ジオンへの回帰と待望論がスペースノイドの間で起こっており、シャアはそれを利用し、ネオ・ジオンを復興したのである。

「超文明が出来上がったのは、いったいいつの時代なのです?」

「そう遠くない未来としか言えんね。少なくとも、30世紀とかでは無いことしか、な」

はぐらかす山本。実際、23世紀には地球連邦は銀河連邦の新興国ながら、常任理事国の地位を得ている。そのため、イルミダスが危険視し、一旦は打ち破るが、最終的にゲッターエンペラーに星系ごと母星を滅ぼされ、イルミダスの支配地域が地球の手に落ち、再びの繁栄期を迎え、30世紀にはまたも停滞期を迎える。地球連邦は30世紀までに定期的に戦争、平和、停滞を繰り返す事になるのだ。

「ゲッターロボが造られているのは知っているね?その最終到達点はわかるね?」

「ゲッターエンペラー…」

「そう、ゲッターエンペラーだ」

山本はゲッターエンペラーの存在をレイブンズから聞いている。地球連邦が限定戦争の時代を経て、宇宙という海を制覇せんと覇道を歩み出すのが地球連邦に待ち受けている運命だ。

「地球が危機に落ちた時に、ゲッターエンペラーは覚醒める。ゲッタードラゴンと真ゲッターロボが融合進化して、ね」

ドラゴンと真ゲッターの融合進化体。それがゲッターエンペラーであり、究極の機械仕掛けの神である。エネルガーZをマジンカイザーに変えられる力を持つゲッターエネルギーならばの現象であり、合体するだけでビッグバンを引き起こすほどのゲッターエネルギーを引き出せる。ゲッターエンペラーは23世紀から見ても『機械仕掛けの神』なのであり、レイブンズに時空を超えて干渉するほどの力を持ち、マジンガーZEROをいざとなったら自分で飲み込むつもりであったり、ZEROよりは良心的な行動を見せている。言うならば、早乙女博士や流竜馬の意思がゲッターエンペラーの意思であるとも取れる。

「エンペラーは何故、生まれるのです?」

「地球人を戦い、互いを食い合う戦闘兵器と見なす神々の思惑で生み出されし機械のバケモノだ。神々は我々を戦闘兵器と見なしているのだよ」

「ハト派が聞いたら激怒モノですよ、それは」

「仕方あるまい。神々は幾度か失敗し、我々、地球がその成功例なのだ。神々にとっては、文明など、彼らに利するものでなければ滅ぼされるだけの実験室のフラスコのような危ういものだ」

「超文明はそれを?」

「突き止めておる。プロトカルチャーやアケーリアス超文明はその失敗例だ」

「アケーリアスが最初の始祖文明と?」

「そうなる。プロトカルチャーはその復興に成功した末裔の一つに過ぎん」

プロトカルチャーも地球も、アケーリアスの系譜に位置し、アケーリアスの力の根源であった波動文明に行き着いたのが未来世界である。従って、アケーリアスの正統な後継文明こそが地球であると言える。

「ややこしいですな」

「仕方あるまい。宇宙全体から見れば、我々の観測できる領域など、太平洋から見たら江ノ島から東京湾よりも近いような感覚なのだからな。波動エネルギーの実用化こそがアケーリアスの継承者の証だ。それ上、将来は危険視されるのだがね」

「どこにです」

「イルミダスという文明だそうだ。遠い未来での事だがね」

未来世界はその急激な伸長がイルミダスに危険視され、一度は屈伏させられるが、ゲッターエンペラーや当代のハーロック、ヤマトなどの抵抗の前に滅ぼされ、逆にイルミダスを駆逐する運命が待ち構えている。23世紀から更に遠い未来の話であるが、地球が直面する試練としては言及した。イルミダスはガミラスよりも古い機嫌を持ち、ガトランティスの大本の一つではないかと、キャプテンハーロックは推測している。アケーリアスの派生文明ではないか、とも言っており、当時としては強大な力を持っていたのは確かだろう。また、プロトカルチャーは自分達の持っていたアケーリアス時代の断片的な記録から、ゼントラーディを創造したのではないか、とも言っている。

「この銀河団だけで、アケーリアスの派生や末裔の文明はどのくらいあると?」

「全ては把握できんよ。局部銀河群だけでも、50の銀河はあるからね」

アケーリアスの記録は宇宙各地に断片的に伝わっており、それらを繋ぎ合わせると、局部銀河群はその領域に入るのは、ほぼ確実である。おとめ座超銀河団全体を支配していたかは不明だが、イスカンダルがそうであるように、各銀河に穏健派の末裔が逃れた事を見るに、種族としては滅亡は免れたが、長い年月で『遺伝限界で寿命の尽きるのが始まっている』のだ。それはイスカンダル人がもはや王家のみになっているのが証明であり、より若い種族と交わらなければ、種としての滅亡が待つだけである。つまり、種族として見ると、イスカンダル人を寿命間近の老年期とするなら、地球人は少年期になるほど新しい種族なのだ。

「我らは神々から『互いに戦い、食い合う』宿命を負わされておるのだろう。怪異も宇宙怪獣も、そのために用意された代物だろう」

「なんともそれは…」

「我らは神々の戦の道具にされる運命にある。なら、それなりの意地を見せようではないか」

「ですな」

山本はレイブンズの幾度と起こった転生に隠されし、『神々の都合』を見抜く慧眼ぶりを見せた。つまり、ゼウスは何らかの都合で地球人を育成し、彼の敵と戦わせるための兵士にしたいのだ。その事を悟り、レイブンズを育成する事で、神々が自分達に何をさせようとしているのか。その事を見抜いたのだろう。山本が賛否あれど『英雄』と言われるのは、その聡明さだろう。









――戦場で炸裂する、約束された勝利の剣。黒江、アルトリア、調。三人が束ねて放ったエクスカリバーはバダン怪人軍団に確かな打撃を与えた。

「これで怪人軍団も何割かは始末できたはず」

「フハハハ…、それはどうかな?」

「!」

「貴様はマシーン大元帥!生き返っていたのか!」

「そうだ。我らデルザーは滅びずと言ったのを忘れたか、ヒーロー共。我らは大首領ありし限りは必ず蘇るのだ!」

「さすがは大首領直属の戦闘集団ってところか?大元帥」

「我らは大首領に生み出されし魔人の子孫、下等な怪人共とは一味違うわ!」

マシーン大元帥。ミイラ男の子孫の個体が更に強化改造されし最強の半機械人である。そのポテンシャルは他の改造魔人をも上回る。7人ライダーが総力戦で臨み、尚且つ激戦になった最初で最後の相手であるデルザー軍団を束ねる者だけあり、生前そのままの戦闘力を維持しているらしく、自信満々の登場である。

「フン、不意打ちのつもりか?」

モードレッドの不意打ちを察知し、モードレッドの兜を裏拳を叩きつけて叩き割り、モードレッドが反撃とばかりに振り下ろしたクラレントを指だけで白刃取りし、更に額のレーザー照射装置で不貞隠しの兜を破壊する。

「なにィ!?」

「失せろ、小娘」

マシーン大元帥は2号ライダー相手に優勢になるほどの実力派であるため、モードレッドは完全に三下扱いである。モードレッドに掌打を食らわせ、吹き飛ばす。モードレッドは空中でなんとか受け身を取って着地するが、額を割られていた。

「クソ、オレとした事が…」

「大元帥、俺が相手だ」

「一号ライダーか。フフ、貴様とはもう一度戦ってみたかったのだ、あの時の続きと洒落込もうぞ」

モードレッドをかばうように、ライダー1号が立ち塞がる。一号と大元帥は激しい戦闘となる。スペックは大元帥のほうが圧倒的に上のはずだが、一号の長年の経験がなせる技が大元帥と対等に戦える力を与えていた。

『ライダーフライングチョップ!!』

空中での諸手打ちが炸裂し、そこから伝家の宝刀たるライダーキックに繋げる。一号は月面宙返りからのキックもよくするので、いつしかついた名は…。

『ライダー月面キィィ――ック!!』

月面キックが炸裂し、大元帥を地面に叩きつける。クレーターができるほどの一撃だ。長年の間に磨きをかけたライダーキックは後発のライダーに劣らない威力であることが実証された。それに堪えない様子で立ち上がる大元帥。

「今の一撃はなかなかだったぞ、一号ライダー……」

「さすがに貴様だけの事はある。威力を増した月面キックに無傷とはな」

一号と大元帥の重みのある会話。強者同士の凄みを周囲に示す光景だ。

「なんか、この状況……助けに入れねえな」

「入ったところで、半機械人相手じゃ並の英霊が入ったところで足手まといですよ、モードレッドさん」

「クソ、今回はいいところが殆どねーじゃんか〜!オレ」

「ゼータク言わない。エクスカリバーを連発しても数減らないどころか、むしろ増えてるんですし」

「あいつらの兵力は底なしか!?」

「あいつらは魔方陣さえあれば、いくらでも怪人呼び出せんからな。体力勝負になってきたな、こりゃ」

黒江も調も持久戦を覚悟したらしい。アルトリアはのび太からパンを受け取り、これを口の中に流しこんでいた。エクスカリバーを連発すると、やはり体力をそれなりに消費するらしい。エクスカリバーを連発しても、怪人軍団はますます元気。デルザー軍団の加勢により、戦局はまた振り出しに戻ってしまったと言えるだろう。この戦闘の模様はシンフォギア世界にも中継されているので、エルフナインがますます混乱に陥っていたりする。エクスカリバーの力をホイホイ行使する者達。しかも、少女騎士という風貌のアルトリアは伝説の円卓の騎士のアーサー王その人であるという事実により、シンフォギア世界のS.O.N.G(特異災害対策機動部二課の後身)は大パニックに陥っている。更に、調までもがエクスカリバーを行使したために、エルフナインは知恵熱を出して寝込んでしまった。エクスカリバーのバーゲンセールというべき状況(更に、リーネ/美遊が使用したのもカウントされている)であるからだ。エクスカリバーそのものはシンフォギア世界で黒江が幾度か放ち、翼、響などをノックアウトさせている。エルフナインは錬金術などの側面から解析を魔法少女事変中から試みたが、失敗している。黒江はエクスカリバーを『人々の願いや神々の意思が生み出した最強の幻想だ』とし、エルフナインにもそう言ったが、エルフナインはシンフォギア世界の常識で考えてしまうため、黒江の行使する力が哲学兵装の効力の対象にならないのか、何故、黒江が聖遺物の力を完全に引き出した上で、ブーストをかけられるのか。その謎が納得出来ていない。それが続いていたところで、調、美遊のエクスカリバーである。目を回して当然である。これはシンフォギア世界では聖遺物がぶつかり合うと対消滅を起こすという概念があるため、他世界での『宝具』の概念とは、おおよそ相容れないところがある。黒江が滞在中にエクスカリバーを使ったのは、シンフォギア世界の観念に真っ向から挑戦しているようなものであった。魔力までも触媒にしての剣からの斬撃はもはや、『一点集中型の指向性のエネルギー兵器』としか思えないものであったので、エルフナインを混乱させている。ガングニールの『エネルギーベクトルの制御』の特性を因果律操作でねじ伏せた、ただ一つの攻撃でもある。エクスカリバーとはそんな武器であり、宝具だ。シンフォギアでのイガリマを弾くことは容易である。調が発動させた際には、シンフォギアと装着者の繋がりを断ち切るなど、まさに奇跡としか言いようのない力を持っている。

『約束された勝利の剣……!これが綾香さんのいう、人が、星が、神が願い、遂には成した奇跡の産物なのですか……!?』

エルフナインは、黒江達の持つエクスカリバーにこのようなコメントをしている。哲学兵装となったガングニールに匹敵する力を持ち、更にガングニールに打ち勝つ因果律操作力を誇る『最強の剣』(黒江がエアを隠していたとは言え、エクスカリバーはガングニールの能力を真正面から上回り、響の特性でもあるエネルギーベクトルの制御の干渉をさせなかった)。それをシュルシャガナを持つはずの調までもが、見事やってのけた事の衝撃映像は知恵熱を起こすのに充分だった。また、アルトリア、ジャンヌ、モードレッドの三英傑の存在もあり、地球連邦軍と時空管理局が中継する映像に、シンフォギア世界のS.O.N.Gは『自分達の固定観念をぶち壊しに来ている』と驚嘆しっぱなしであった。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.