外伝その180『大空中戦2』


――空中戦はあちらこちらで生起しているが、その中でもミッドチルダ動乱で鍛えられたパイロットを有するカールスラントや扶桑は特に目覚ましい活躍を見せていた。元・日本軍将兵の再訓練の手間がかかったが、それに見合う成果は収めていた。扶桑だけでは確保が困難な熟練兵を多数確保できたからだ。これは実戦経験が少ない扶桑の抱えていた難題でもあった。特に、日本軍の元軍人達はかつての技能を活かせる仕事に就けた者はどちらかと言うと少数派であり、終戦時の総人数からすれば自衛隊に再入隊したり、保安庁や警察に転職した例は少数派に属する。戦争にトラウマを持つ者も多いが、かつての生活に郷愁を覚えている者も多く、そこを煽る形で、黒江は東二号作戦の頓挫の穴埋めを行った。これはちょうど激しい戦闘に入る少し前の事である。作戦の頓挫は日本連邦評議会を騒然とさせていたが、実際、官僚の勘違いで黒江達の交代要員を帰させた事は、黒江達にブラック企業もかくやの労働を強いる事でもあるからだ――



――2019年を迎え、年号が平成から更に改元される予定の日本は前年の冬からの官僚の勘違いの尻ぬぐいを黒江に押し付けた防衛事務次官らを次々と正式に更迭、黒江のシンパ達を後釜に添えた。これは政治的には左派の出張する『従軍記章の防衛記念章への統廃合』、『金鵄勲章の廃止に伴う瑞宝章への切り替えと年金の廃止に伴う一時金の支給』の大義名分の喪失に繋がった。この作戦に参加予定の多くの将兵の帰国による不利益が生ずることなど、目に見えていたからだ。教官級の派遣は『レイブンズの交代要員は教官級でないと釣り合わない』というのが第一次的な理由、第二次的理由は『激戦地なので、半端な練度では戦力にならない』、第三次は『現役世代の古参に手柄を立てさせ、レイブンズの復活に伴う反発を抑える』という理由だ。しかし、ウィッチ社会の仕組みなどは日本側に殆ど理解されず、そのことが扶桑のクーデターに繋がってしまう。クーデターの鎮圧後の粛清人事を徹底した事は、扶桑皇国を逆に苦しめる事となり、それが扶桑海軍の作戦遂行能力を大きく削り、近代の海戦に必須の空母機動部隊による作戦遂行能力が無きに等しいとまで言われるに至る。なし崩し的に空軍が航空作戦をほぼ一手に担わざるを得ない状況となっていき、開戦時の空母機動部隊は『形骸化している』と揶揄される状況に堕ちていた。パイロット/ウィッチの平均飛行時間が大きく低下し、800時間は愚か、400時間以下という惨状である。これに海軍の提督達は大きく未来を悲観したが、すぐに空軍のウィッチ達の乗艦が行われ、とりあえずの作戦能力は取り戻す事になる――


――連合艦隊旗艦『富士』――

「そうか。クーデターはもはやボヤでは済まんか」

「小沢さん、これからやるべきことは」

「わかっておる。海軍航空の中枢を空軍に移して保護し、空軍ウィッチの乗艦と、規則を設けることだろう?坂本少佐、君には今後、数年は激務を強いることになりそうだ」

「構いません。私にできる事はこんな事くらいですので」

「烈風や九九式機銃の事で人事が君の昇進を渋っとるから、中佐昇進はしばらく待ってくれ」

「ハッ。しばらくは少佐に甘んじます」

坂本は『色々と提言をし、軍備計画に混乱を起こした』という事で、人事に睨まれており、中佐昇進は遅れる見込みであった。レイブンズのように、『冷や飯食いにしていたら、往年の神通力が健在と分かり、国策で昇進させた』ケースもあるが、坂本は比較的に普通の出世コースであった。これはGウィッチと分かったが故に疎んじられずに済んだからでもある。前史では疎んじられたので、そこは上手く反省を活かした点だろう。これは源田の真意を転生で理解したからで、前史とは真逆に、源田の子飼いウィッチの一人と見なされるほどである。また、坂本は海軍軍人であり続けるので、そこも坂本が海軍にしてやれる奉公であった。坂本は前史でもそうだが、海軍軍人である事に誇りを持っていた。前史とは違う理由で空軍の引き抜きを固辞したが、64F飛行長の任は引き受けており、志賀の穴埋めをしている。

「小沢さん、山本大臣の手筈通りに」

「分かっとるよ。大臣から通達されている。儂はクーデターで辞める事になるから、せいぜい今回の戦を楽しむとするよ」

「小沢さんが最初ですからね、人間同士の戦を率いた連合艦隊司令」

「東郷さんは別世界では日本に勝利を齎し、儂は敗北を決定づけた戦を率いていた事を考えれば、世界的な皮肉だがね」

小沢は自分が大抵の世界で、マリアナ沖海戦の敗将である事実を気にしているようである。実際、小沢は航空機に無知と罵られるが、日本海軍では航空機の運用に一家言を持っていた大物である。それを考えれば、アメリカのスプルーアンスよりも適任と言える。

「日本の連中は栗田や宇垣を罵るが、儂にも無いわけでもない。それを気にせねばならぬというのは、疲れるよ」

「仕方ありませんよ。日本は『学閥』が強い軍隊だったんですから」

「大学校出ていない将校の提言を取り上げ無かっただけで、学閥至上主義と罵倒されるのだよ?栗田など、今度こそ突っ込んで死ねと言われるのだ。栗田が郷里に引きこもるのも無理ないな」

「あの人は意外に弱いですな」

「三川もそうだが、儂の一期下は運命の女神に嫌われているらしい。この儂も、だがな」

小沢は自分が空母機動部隊を率いたマリアナ沖海戦での敗北を気にしており、そのために、伝統的な戦艦部隊を率いたほどだと示唆する。また、この頃にはショックで郷里に引きこもった栗田健男のことにも触れる。

「儂は連合艦隊の葬送をした司令長官だ。それを思えば、たとえ、クーデターで辞めようとも、勝ち戦を味わう事ができる。これは神がくれた儂への贈り物だよ」

小沢は米内光政などの歴代司令長官と異なり、連合艦隊司令長官の地位には執着していないが、勝ち戦を率いた提督として名を残したいという密かな願いを持つ。たとえクーデターで辞める事になろうと、山口多聞が職責を引き継いでくれるし、自分は皇国に敗北の恥辱ではなく、勝利の栄光をもたらした提督でいられる。そのことへの安堵を感じさせた。





――シャーリーは他世界と違い、Gウィッチになった事で、以前の明るさを概ねは維持しつつも、根本的な人間性は様変わりしており、俗にいう主人公属性を得るに至った。これは前史での娘たちとの時間、孫との関係などを経た故か、黒江が防衛本能の暴走という心の脆さを『虚勢』で隠しているのとは対照的に、『守るべきものを得たからこその強さ』を持つ様になった。そのための力が紅蓮聖天八極式を模したIS『武天八極式』である。シャーリーはその力を得た影響もあり、『友情に篤く、熱血漢である』性格へ変貌しており、黒江へ負い目を持つ智子に強く釘を刺すほどになっている。さて、シャーリーがISを得た事で、501隊員が入手していたISはおおよそ四機ほどだが、黒江は聖闘士となった都合上、ISは予備機材として置いているので、稼働状態なのは三機である。シャーリーの機体は黒江がテストしていた『旋風』の後を受けて造られた、ハルトマンの『シュワルベ』、バルクホルンの『バンシィ』、アウロラの『フェネクス』に次ぐ第二期生産モデルである。真田志郎が地球連邦科学省で制作したモデルで、このあたりになると、篠ノ之束を脅せるようになった(流石に束も、人という存在そのものを超える神の使徒とも言える、聖闘士の力の前では従うしかない)ので、完全新規にコアを調達している。箒の聖闘士叙任で、姉妹の力関係が逆転した事もあり、束は『あーん!箒ちゃんがいじめる〜!』と嘆くが、千冬が監視を強めた事(それと、似た声のレヴィに脅された)などもあり、現在は箒、千冬、レヴィの三者の監視下で地球連邦に卸すISコアの生成を行ったり、瞬く間に第四世代相当以上のISを製造した真田志郎を科学者として認めるなど、意外な人間性を見せている。そして、それらの機体のデータも取っているのだが……。


――IS世界――

「ぬぬぬ〜!ずるい〜!ロボットアニメの機体をそのままモチーフに落とし込むなんて〜!確かにそういうアイデア考えてたけどー!」

「うるさいぞ、束」

「だって、ちーちゃん!ロボットアニメの機体をそのまま機体のデザインモチーフにするなんてありー!?」

「先方の都合だろう?それに、閣下の声が私に似ているのには驚いたろう?」

「うぅ。声紋でも判別つかないくらい似てるなんてぇー!」

「お前は当分の間、私達のもとにいろ。いくらお前でも、神の使徒相手には分が悪いだろう?」

「うぅ。オリンポス十二神の使徒なんて、ズルいよぉー!」

と、黒江達を指して嘆く束。自由行動をオリンポス十二神が直々に規制したに等しいためか、さすがの束も言うことを聞くしかない。力の次元が違いすぎるのだ。

「どうしてこうなったのー!」

「お前が好き勝手に動き回ったから、世界は変わった。だから、その世界にした責任を取れということだろう」

――IS世界は篠ノ之束が世界秩序を変え、アメリカの原子力空母を含めた既存兵器を過去の遺物に変えた(とは言うものの、絶対数の問題もあり、数的主力は維持している)世界であるが、グレートマジンガーが持ち込まれた事もあり、ISの優位に疑義が呈され始めた。IS自体は地球連邦が第4世代機を基本ベースにした事もあり、さらなる可能性は示されたものの、装甲服としての進化としては袋小路に入りつつあるのは確かで、地球連邦軍が主に、自身の持つ機動兵器をモチーフにしての機体制作に入っているのは、そのためだろう――


「だからって、箒ちゃんが行ってる世界にまでコアを卸す必要あるー!?」

「先方は装甲服としての有用性を高く評価している。それだけでも良いじゃないか。この世界では一笑に付されたからな。それに、ロボットアニメのような兵器が飛び交う時代においても使われるだけでも、開発者冥利に尽きるというものだろう?」


千冬は自分も世界を変える片棒を担いだためか、その贖罪とばかりに、束の監視をしている。どの道、束が悪さをすれば、レイブンズにとっちめられるのが関の山だが、千冬は『わざわざ彼女達の手を煩わせるのも悪いだろう』と、束の監視を買って出た。そのため、束は千冬やレイブンズによって、行動を公的に規制される事で、ようやく真っ当な道を歩みだすのだった。(妹らに監視などがついていた事を考えれば、因果応報でもあるが)




――実際、地球連邦製ISは『一兵器の粋を出ない』とされており、地球連邦軍の諸兵科連合運用思想に組み込まれている。シャーリーの機体はその中での接近戦仕様とされている。自己進化でエナジーウイングなどを得たのは予想の斜め上を行くものではあったが、ある意味ではモチーフ元の最終到達点に到達点していた。そのため、他の機体とはあまり武装の融通が利かないものの、それを補って余りあるスピードとパワーを誇る。また、赤椿の基本構造を継いでいるが、真田志郎は『エネルギー容量が比較的小さいから常用より非常用と考えた方が良いかもしれん。 ウィッチのストライカー対抗装備としては十分に実用に供せるレベルではあるかな』としている。実際、防御力は23世紀の宇宙戦艦の主砲一発を完全防御で防いで解除されるレベルであるので、エネルギー容量自体は宇宙戦闘機と大差ないという。その事も、ISを得ても保有ウィッチが常用しない理由であった。赤椿であってもそれは同じであるため、箒も近頃は常用装備をアガートラームのシンフォギアに切り替えている。(シンフォギアは聖遺物の力を媒介にしている分、ISよりも高い防御力を持つ)シャーリーはその技術的難点を知る故、『どうせなら、モチーフ元の紅蓮聖天八極式を空中元素固定で作ってくれ』と頼んでいるという。

――戦場――

「やりたい事やって、ストレス解消はしたけどよ、やっぱモチーフ元のナイトメアフレーム作ってくれよ〜」

「そんな暇あるか!」

黒江に一喝され、しょげるシャーリー。実際、モチーフ元の兵器を作っても、色々な手続きが煩雑であるため、戦闘中にはその暇がない。例えるなら、ゼロ戦をつなぎ合わせて再生し、複座にするのとはわけが違うのだ。大きさなどにおいて、どこそのオーラバトラーよりも小型になる上、紅蓮系は操縦系統がバイクのような形態であるので、長期的居住性は落ちる。また、大きさがAT並みになる事で、地球連邦の法制でプチモビのどれが該当するかという問題も絡み、ダイ・アナザー・デイ中は果たされなかった。だが、デザリアム戦役までには自衛隊のアドバイスもあり、シャーリーの願いは聞き入れられ、制作される。ゲリラ戦に向いていたからで、シャーリーが同機を受領するのは、デザリアム戦役中。戦役中という事もあり、正式な生産ラインを介さずに制作された。その代わり、ワンオフの超高性能は再現されており、自身より遥かに大きいジムUを持ち上げられるだけのトルクを誇ったという。


「え〜!」

「大きさでどんな感じになるか調べてねぇし、相応の高性能はいるだろ。真田さんが空間騎兵用にガイアと機動甲冑の共通規格を作ろうかとか言うから、その時についでに予算通してもらう」

「間に合う?」

「なーに、あと一年はあるから、その間に予算は通るだろ」

「向こうは今、2201年だっけ?」

「ああ。ちょうど2月くらいだ」

「すると、向こうはベガ星連合とドンパチ中かよ」

「そうだよ。デザリアムのおかげで生き永らえたしな、ベガ星の連中」

「どうなるんだろう」

「一応、真田さんに後で聞いておけ。要望は伝えてある。資材も渡してあるし、製造待ちだ」

「わかった」

「で、敵は?」

「スーパーメカで追い散らしたら一時退散しやがったよ。今は他から増援待ちだろうよ」

「しっかし、約束された勝利の剣を連発してもめげねぇって…」

「まぁ、あいつらにはまだショッカーライダーやライダー三号がいるからな」

バダンには、仮面ライダー三号やショッカーライダーが控えているため、まだまだ余裕であり、別世界から仮面ライダーカイザやオーガ、キックホッパーなどを言いくるめて洗脳して連れてくる可能性もありえる。そのため、ディケイドの情報頼りのところもある。

「アンタ、ライダー三号のこと嫌いなんだっけ」

「前史の時に骨を何本か折られて、血反吐吐かされたしな、あの野郎には今度あったらエクスカリバーだ」

黒江は三号の事を嫌っているが、昭和仮面ライダーの系譜の一つの可能性でありながら、一号と二号を倒したというのが琴線に触れるらしい。また、執拗に攻撃されて、骨を折られたことを恨んでいるらしい。黒江はこの事で聖闘士の力を求める様になったため、三号は黒江を聖闘士世界に導くきっかけと言えるが、骨を折られて血反吐吐かされたというのは屈辱らしい。

「平成ライダーなら納得いくが、あいつは昭和期のライダーだからな」

「三号か。世界線によっては、風見のポジションを担うが、極めて稀だ」

「本郷さん」

「なに、今の俺は別世界からのメタ情報で再改造をもう一回してある。君の想いを裏切るわけにも行かんからな」

「本郷さん、まさかネオ化を」

「三号に勝つには、俺と一文字はさらなる再改造を必要としたからな。君の知る新一号を超える『ネオ一号』。あれが俺の切り札だ」

新一号からの二段変身によるネオ化。本郷がディケイドのつてで伝えられし情報で再度の強化を施した形態。よりパーフェクトサイボーグに近くなった事でもある。そのため、本郷の容姿が若干だが若々しくなっている。

「あれ、ずいぶんデブってません?」

「ハハ、なあに、あの姿はフルアーマーだ。キャストオフできるよ、俺はね」

本郷はネオ一号のマッシブな姿をイナズマンで言うところのサナギマンのような位置づけとしているようで、別の姿を隠すための装甲としているようだ。

「カブトのマスクドフォームみたいなもんですか」

「そういうことだ。パワー重視だと一文字と被るし、新一号と両立させてるから、新一号から二段変身の形を取っている」

「チャージアップみたいですね」

「より多くのエネルギーがいるから、体内の原子炉の補助ダイナモの呼び水もいるしな」

ネオ一号になるには、ある一定の電力が必要になるのと、コンバータラングの大容量化や人工筋肉の増量などの内面的増加もあり、外見が太って見えるが、それはさらなるキャストオフ形態への布石らしい。

「これ以上は企業秘密だが、君の期待は裏切らんさ。見ててくれ」

「本郷の奴、君の事を娘代わりに見てるからな。意外に優しいんだよ」

一文字がニヤニヤしながら言う。自身もパワーアップしたことが示唆されつつも。

「恥ずかしいな、本人の前で言うなよ」

「良いじゃないさ。この子はオレたちの娘であり、妹分なんだし。でも、容姿安定しないな」

「ウチのガキ来てるし、見分けのためですよ」

「そ言えば、翼ちゃんもいるんだっけ」

「ええ」

「そう考えると、ややこしいな」

「姿変えるのは俺達もだろう、Gの皆は俺達のテレパシーに引っ掛かるから姿変えてても判るから細かい事は言いっこ無しだ」

「そういえばそうだな」

「でも、私の姿使ってるんで、友達がぶーたれてるんです」

「お、調ちゃん。ああ、あの翠の子?」

「ええ。今はちょっとこじれちゃって、あまり話せないんですけど」

「ああ、綾ちゃんと入れ替わってることが分かった上に、のび太君のところに行ったもんだから、ショックのあまり寝込んだとか?」

「不可抗力だって言っても、聞いてくれなかったんです。それと、私の姿に、魂を狩れる鎌を向けたってのも、ねぇ。師匠だったから事なきを得たんであって…」

「愛ゆえ、だろうが、過激だな」

「だから、幻滅しちゃって」

「仕方ないな。その子には試練だろうが、乗り越えて貰わんといかんよ」

「あと、やっと師匠への詫びを引き出しましたよ」

「ああ、あの黄色の子」

「はい。トラウマスイッチ入ると止められないのが難点で……。師匠に迷惑かけたのは変わりないですし」

「まぁ、なのはちゃんはやりすぎのきらいがあるがな」

響の扱いに困る事を調は愚痴った。調がなのはの片棒を担いだのは、黒江に一年は演技を強いた事に不満があったからである。響はその事の『借り』がある事は自覚していたのか、落ち着いた後、調に黒江に伝えてほしいという趣旨で詫びている。(なのはの行為はやりすぎの嫌いがあり、短慮であるという批判もあるが、なのはとしては正しいやり方ではあった。軍隊式のシゴキは理解されにくいので、同じ管理局局員でも反発はあるが、軍人でもあるなのはとしては、『うーん……。軍隊じゃこれくらい序の口だったんだけど。スポーツ部だとさ、もっとしごかれるし』とのことで、調に漏らしている。)

「なのはさん、軍隊生活のほうが学園生活より長いから、一般常識が抜けてるところあるんですよ」

「いや、一般常識ないと、士官にはなれんさ。問題は軍隊の世界は一般人には理解されない世界ってことだ。自衛隊もそれで防衛省が締め上げられているしな」

「そういうものですか」

「俺達は親が太平洋戦争を生き延びてる世代だし、親は旧軍の空気を知っていた。だから、軍隊の世界を聞かされて育った」

「本郷の親父さんは旧軍時代に大鳳や雲龍に関わった造船技師だしな」

「先輩、俺の父さんは陸軍あがりですよ」

「一也。こういう感じさ。俺たちは太平洋戦争もそう遠い過去でもない時代に生きていたから、こういう事はよくある」

本郷や一文字は、親が太平洋戦争でそれなりの立場として働いていた世代であり、一也でも、父親は従軍経験がある。なのはの行為をやりすぎと言いつつも、シゴキ自体には理解があるのは、体育会系である故だろう。

「確かになのはちゃんの行為はやりすぎではあるが、シゴキを乗り越えられないようでは、世の中生きていけないってことだ」

「うむ。スポーツ部は21世紀になっても、けっこう厳しい風習残ってるしな」

本郷や一文字は大学時代は柔道や空手部に属し、そこでシゴカれた過去がある。

「体を壊さない程度に追い込むのは、鍛錬の基本だ。のび太くんもそこは分かっている」

「僕も高校や大学で射撃部だったしね」

のび太は成長に従い、高校や大学での射撃部で揉まれた事があるため、多少の口撃ではビクともしなくなった。玉子が懸念していた『傷つきやすさ』は成長で改善されたらしいのが分かる。(少年時代は傷つきやすく、12歳の誕生日、のび太の誕生日を失念していた両親が叱りつけ、家を飛び出した際、居合わせた菅野と調が抗議し、それで思い出す有様だったが)

「まぁ、なのはちゃん、アニメでのイメージに縛られるの嫌がってるからねぇ。実際はズボラだしね、意外に」

「ヴィヴィオに仕えてるから言うけど、ズボラだから、なのはさん。ある時なんて、教導隊の飲み会でベロンベロンに酔っ払って、はやてさんが『この子、酒弱いのよねぇ』とか呆れながら連れ帰ってきてくれた時はおったまげたんだよ」

「はやてちゃん、G化したらあかいあくまだっけね」

「標準語で、しかも荒っぽいから、ヴィータさんがビビってた」

はやては覚醒後、『遠坂凛』を思わせる口調と服装をするようになり、標準語を使う機会がグンと増えている。なのはを『この子』と形容したり、『こちとら、バーゲンの情報に命かけてんのよ』というなど、かなり以前から変化がある。

「ヴィータちゃんのことは可愛がっているけど、思考が今までと違って、ドSに近いからなぁ」

笑いつつ、のび太が言う。のび太は、はやて達には年上として接しているが、はやての変化を楽しんでいるクチがある。青年になると余計にそうらしい。


「あ、忘れてたけど、クリス先輩が復帰したって?」

「ああ。こっちに向かってるというけど?」

「ミサイルで来るんじゃ?」

「あの子、移動手段にミサイル使うしね。どこの桃○白だよ」

のび太にネタにされる雪音クリス。どっと笑う一同。クリスの『笑うんじゃねー!』という怒鳴り声が響いてくるのは、それから間もなくであった。



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