外伝その216『勇壮3』


――ドイツ領邦連邦の成立後初の仕事はカールスラント空軍がぼったくっていたライセンス料の補填であった。日本連邦の猛抗議は凄まじく、世界貿易機関、国際司法裁判所での訴訟を起こすというところにまで話が大きくなり、結局、ドイツ領邦連邦がエアバス・グループの現地法人を立ち上げ、メッサーシュミットのライセンス料の過払い分を補填し、当時に完成済みであったMe262の性能向上プランの設計図を提供する事で手打ちとなった。これに伴い、カールスラントでの犯人探しが始まった。カールスラントの技術的優位を日本連邦が数十年分追い抜いてしまい、メッサーシュミットMe262の商品価値がすっかり好事家向けのおもちゃ同然に落ちたことは大誤算であった――




――日本連邦はカールスラントのぼったくりに対する報復もかね、米国製高性能ジェット機を続々と登場させた。ダイ・アナザー・デイでは米軍がF-22、F-35をデモンストレーションも兼ねて使用したため、カールスラントのメッサーシュミットMe262は登場からわずか数ヶ月で『時代遅れの飛行機』の烙印を押された。F-86以下の性能であった同機は『爆撃機迎撃にしか使えない』事もあり、F-86に駆逐されていった。日本連邦はF-86の生産に全力を傾け、ダイ・アナザー・デイでも元自衛隊経験者向けに用意されている。橘花の調達中止は理に適っていたと言えるが、F-86のように『対戦闘機戦闘』目的にジェット機を使うのが非効率とされていた時代、技術者でさえも自衛隊や米軍のやり方を疑問視していた。ところが、実際には、F-86はどんなレシプロ戦闘機も圧倒せしめ、同じジェット機とドッグファイトをやらかす。これにウィッチ世界の技術陣は泡を食い、猛研究を始める。この時の猛研究の成果が第二世代宮藤理論である。それまでと違い、『実機を落とし込む』手法に航空ストライカー開発がシフトしていったのは、実機が相次いで登場し、それにストライカーの開発速度が追いつかなくなったからでもあり、ISやシンフォギアという上位互換の強化装備が使われた事で開発への情熱が薄れたが、ノウハウ維持のためにプロジェクトが続いたという事情も絡んでいたのである――(ちなみに、ドイツ領邦連邦として、カールスラント側のプライドが木っ端微塵に砕かれた事への救済措置を米国に求め、低燃費高性能ジェットエンジンが輸出され、メッサーシュミットMe262は好事家向けの自家用機として売り出され、大好評。それがカールスラントを慰めたという)




――戦場に供給されるストライカーは日本連邦でMATが大口顧客になったこともあり、需要と供給のバランスが崩れていた。そのため、優先供給が約束されているはずの501でさえ、途中からは機材不足に陥った。黒江は子孫たちに『後世の機材を持ってこい』と指令を出し、二代目レイブンズらが機材を供給していた。


――駐屯地――

「芳佳先生、義母さんに頼まれてた機材を届けにきました」

「澪ちゃん、ご苦労さんー。F-15J?」

「義母さんたちが欲しがってたんですよ。栄光も数が少ないし、個体によっては不調なんで、イーグルを引っ張って来ました」

「よく持ってこれたね?」

「ラプターが配備され始めて型落ちになったんで、確保できたんですよ。イリヤおばさまの頼みでSU-27も持って来ました」

「装備一式と予備パーツ、それと燃料を入れて、員数外装備扱いでどうにか上はごまかせるな」

圭子の後継者『加東澪』が持ってきた第三世代宮藤理論型ストライカーユニット『F-15J』。未来のパワードスーツに近づいた外見と武装は、ウィッチ世界は70年代までに魔導技術も技術革新が無数に起こった事の証明であり、ISなどの影響が強いのがわかる。

「腕試しも兼ねて、私達の分も用意してます。しかし、まさか、軍にそういう事情があるなんて」

「後世に残す記録なんてのは、いくらでも誤魔化せる。黒江さんが505出身なのは、一部にしか伝わってない『アングラ』な情報になってるだろ?」

「ええ。505のことはだいぶオープンになりましたが、おばさまのことは501からの出向だったと」

「軍の体のいい情報操作だな。不祥事は隠したいと見える」

澪は転生前の圭子に近い容姿と声である。また、今の圭子よりは生真面目である。趣味はカメラではなく、バイクなので、そこは黒江の影響である。

「ええ。公にはおばさまは『505の崩壊を押し留めようとした良心』とされています。ゴロプが505をバダンに誘おうとしたのは、よほど都合が悪いようで」

「ドイツの介入を招くからね。日本があれこれ扶桑に口出しして、あっちこっちパニクってるだろ?それを恐れたのさ。ノイマン大佐が降格させられて左遷だものな」

「やれやれ。実際に見ると、こんな感じなんですね」

「うちらは連中からすりゃ、『負けを知らない愚か者』だそうだよ。それを思い知らせるためには、広島と長崎の40万人が死のうが構いやしないのさ」

「扶桑は浦塩から先の大陸領を事実上…」

「連中からすりゃ、外地は日本じゃないそうだ」

21世紀日本には扶桑の大陸領奪還への執念を冷笑したり、嘲笑する声が存在している。扶桑は安土時代にオラーシャから合法的に領土を購入したが、日本には『戦争で手に入れた』と早合点する者が多く、大陸領奪還にはほぼ無関心で、『浦塩を確保できていれば良し』とする考えから、元大陸方面軍所属将兵を太平洋戦争で優先的に投入し、すり減らした。だが、扶桑の元住民からすれば大迷惑であり、猛抗議を食らう羽目になり、地球連邦軍に第二次扶桑海事変の際にその任務を代行してもらう事になった。大陸生まれの扶桑人は日本からすれば『厄介者』であると言えるが、扶桑にとっては数百年前に合法的に得た土地である。その兼ね合いが、大陸方面出身者への多額の慰謝料であり、南洋第二新島への優先居住権であった。

「第二新島に優先的に居住権を与えたのは?」

「その兼ね合いだよ。日本としては厄介な連中だけど、無下にもできないしね」

オラーシャの四散に伴い、日本連邦は東アジア地域の秩序維持を事実上引き受けなくてはならなくなったため、軍事費を減らすわけにもいかなくなった。この当時、財務省は1000万人近くなった軍隊の人事費抑制のため、防衛省の背広組と結託し、高給取りとされたウィッチの削減を行おうとしていた。その弊害が太平洋戦争で生ずる事となり、Gウィッチが文字通りの屋台骨になって軍を支える事になるのだ。こうして、員数外の後世から持ち込まれる装備を公然と使用することが許されるのも、Gウィッチになし崩し的に付与された『特権』であり、それと引き換えの一騎当千を求められるのは当然であった。64FはGウィッチの運用管理所の側面が強いが、日本を満足させるための『トップエース部隊』のプロパガンダの舞台でもあった。当初のボトムアップ案が頓挫したのと引き換えに、機材と人員を最高にすることが条件になったため、当時の軍在籍のエースの7割から8割が在籍した。しかもその大半が転生者。64F復活時のメンバーが終生在籍扱いとなったのは、転生者であり、他部隊では扱えないとされたためでもある。

「だから、64のこの時のメンバーが終生在籍に変更されたんだよ。転生者は他の部隊じゃ扱いあぐねるし、レベルが違いすぎて、やっかみを受ける。黒江さん達が事変ん時の前半期、あんまり強すぎたから、江藤さんに快く思われてなかったようにね」

源田実は本来、Gウィッチを各部隊に教官として配置することを考えていた。しかし、その構想は真501で世代間対立が顕現したこともあり、頓挫した。日本側を抑えるためもあり、343空の思想を更に先鋭化した『精鋭部隊』を結成する。その結果が64Fであり、様々な要因が重なって出来上がった部隊なのだ。加藤隼戦闘隊は戦後世界ではマイナーであるため、343空の組織をそのまま継承することがプロパガンダ上も都合がいいため、武子は第一中隊の新選組隊長も兼任している。この陸海混合の組織は陸軍航空部隊の業績がマイナーな事と、源田実の直接指揮下にある点での343空との共通点を利用するためという複雑な思惑が入り混じった結果の産物である。芳佳は江藤が事変の前半期、まだ黒江達に実績がない頃にあまりに技能が突出していた事を『若い故のやんちゃ』と見ていたと、黒江から聞かされているため、江藤の行ったことには批判的だ。

「江藤司令のやったことは若気の至りで済まない結果になりましたからね。御本人も今の時期に辛酸をなめたはずですし」

「まー、覚醒したのが今の時期じゃ、後の祭りだよ。色々分かってれば手を打てたのに、って言い出してるけど、黒江さん達の代と下原さんや菅野さんの代の対立を生み出したのはあの人の罪さ。ウィッチ組織の存亡の危機に陥ったしね」

「対立って、そんなにひどかったんですか?」

「澪ちゃんたちの代の教本には軽くしか扱われてないけど、ウィッチ組織の存亡の危機って言われてる。この時代じゃね。軍の暗部だし、後世に恥を晒すことだから、『臭いものに蓋』をやったのさ。第三世代宮藤理論型を持って来ないとまともな戦にならない物量差。それがこの時代の真実さ、澪ちゃん」

「先生……」

芳佳は21世紀には孫もいるが、外見は変わっていない。軍退役後は実家の診療所と軍病院を行き交う日々である。そのため、圭子の義娘の澪から『先生』と呼ばれている。

「さあて、旦那のチューンした烈風を使わないとね。澪ちゃんはあたしのバックアップを頼む。駐屯所に流れ弾が飛び込んできたお礼参りをしなくちゃねぇ」

「行くんですか」

「これでも、空の宮本武蔵だよ?殺るときゃ殺るって」

今回はレシプロストライカーなので、そのままでユニットを履く芳佳。澪が第三世代宮藤理論型を使用するのに比すれば旧態依然としているが、当時としては最新鋭であった…。芳佳の第三代の愛機である烈風改。吾郎技師の改良により、その性能はシーフューリーをも一部凌ぐほどになっており、事実上のB世界における震電のポジションであった。違うのは、宮藤一郎技師が生前に自社で直接手がけ、吾郎技師がチューンナップしたという点だろう。事実、瞬間的加速力は当代屈指であり、第一世代型宮藤理論型ベースのワンオフの改造モデルという事を考慮しても、第三世代宮藤理論型ストライカーにも追従可能な加速力は破格であった。

「海軍機はセルスタートが有難いんだよねー、15Jだと大丈夫だろうけど、ジェットは電源とコンプレッサー必要な機体が多いからねー」

「まぁ、そういう設計ですしね。先生の時代はそんな軽装だったんですね」

「そもそも、戦闘機との交戦は考慮されてなかったし、機体の装甲板を外して、機動性重視にするのが横行してた時代なのさ。ビームを避けるために」

「でも、万一…」

「そうさ。それがエクスウィッチの戦力外感を強めた。『当たらなければどうということはない』ってのは、赤い彗星や白い流星クラスのトップエースで初めて実現できる事だよ。だから、ミサイルの破片への防御力も無くしてたこの時期の前線に流通してたストライカーじゃ、今の実戦には耐えられない」

「ここからだんだん重武装に?」

「正確に言えば、個人技能に依存するシールド主体の時代が終わったんだよ。エクスウィッチがR化で再戦力化されるようになってからは気にされなくなったしな。だから、一見して未来のパワードスーツに見える外観になったのさ。なのはの元々の特性だった『重装甲、高火力』、それにそこそこの機動性さ、求められたのは」

EX-ギアとISを混ぜたような外観のF-15J。バトロイドにシルエットが近い事もあり、まるで擬人化されたバルキリーだ。違うのは、前世代機にあったグリップ式の舟形武装ユニットが技術の進歩で手持ち火器と連動する火器管制装置が備えられ、置き換えられた。バルキリーのような固定武装を携行しつつ、手持ち武装を持てるようになり、エンジン出力の利用自由度が増し、魔導光学兵器が実現し、ウィッチによって使用可能となった初のモデルである。ブーストで機動中に使えるようになった最初の機体である。初飛行はベトナム戦争中であり、レイブンズも使用経験があり、芳佳も90年代の退役までには使用していた。光学兵器自体は時空管理局の技術供与で前世代機の頃から試験が重ねられたが、当時の技術では直線飛行やホバリング状態等の安定状態から撃たないと当たらない難点があり、レイブンズなどの大戦時からのエースが使用した程度であった。ベトナム戦争が後半に入った後、改良が重ねられ、第三世代宮藤理論でエンジン制御技術が向上したことが契機になり、実用化にこぎつけた。また、1980年代後半、レイブンズが退役する頃に『先進戦術戦闘脚』計画で後継機種が計画された。その成果が二代目レイブンズの時代の新鋭機『F-22J』である。基本構成は同じだが、ステルス設計の都合上、機動性は向上したが、搭載兵器の選択肢が狭まった難点もあり、特務部隊以外には好まれていない。そのため、F-15の近代化が数回行われており、光学兵器の改良、エンジン換装、内蔵電子装備の交換などが施された改型が配備されている。持ってきた機体はデモンストレーション用に保存されていた機体だが、その改良は反映されているため、70年代当時より腕部装甲の形状が細めになっている。技術進歩でアクチュエータなどが小型化され、装甲材もより軽く強いモノに変わっているための変化だ。

「それを使うと、フライトジャケットに着替えないといけないのがめんどーなんだよね。坂本さんには買ってこいって怒られたし」

「大佐はお厳しいと聞いてましたが」

「あの人はスパルタで鳴らしたからな。だから、若い連中には反感買うんだよな。話せばいい人なんだけど」

「いや、制服着てないと墜ちた時に困るからだと思いますけど」

「そうかねー。」

「あ、百合香のこともあるんで、ご挨拶してきましたよ。また呼んできてくれと頼まれました」

「前史じゃ、ろくにおばあちゃんらしー事できなかったって言ったらしいからなー」

今回、坂本は孫を溺愛し、孫バカぶりを見せている。孫の百合香は北郷家と坂本家のサラブレッドであり、北郷家の落ち着きと、坂本家の一本気な所を程よく受け継いでおり、坂本の後継者として名が知られ始めたルーキーで、芳佳の次女『劾子』の弟子にあたる。芳佳の孫の二期後輩であり、共に血縁と才能で二代目レイブンズの部下に抜擢された。2000年代後半時の64Fでの若手であり、共に宮藤劾子の教えを受けた。それが北郷百合香と芳佳の孫娘の関係だ。

「ウチの孫には宜しく言っといて。劾子のやつに胃薬渡しといてね」

「劾子おばさま、最近は貴方の元に行きたいとかぼやいてます」

「講師やってるのに疲れたかー?あいつめ」

劾子は除隊後に現役時の名声もあり、ウィッチ訓練校の教師に再就職したが、ストレスマッハで胃痛に悩んでいるという。劾子は次女ながら芳佳の面影を残す風貌であるが、髪型は芳佳の母のそれである。最近は統合士官学校ウィッチ科講師であるというので、ストレスがマッハなのだろうと澪が言う。二代目レイブンズが活躍する時代になると、ウィッチの講師もベトナム戦争で活躍した世代が担うようになっていたので、大戦世代との共闘経験がある劾子は目玉人事であった。大戦世代が隠居して久しい時代、講師の世代の中心は彼女たちであり、新しい世代の教え子を見出すのが仕事であった。大戦世代もGウィッチ以外の者たちは死去するものが出てきているため、21世紀からは劾子の代に徐々に入れ替わり、2010年代には世代交代が講師でも完了している。芳佳や黒江など、引退後も軍へ影響力を持つGウィッチも2010年代では表立って行動は控えているため、劾子は比較的有名な近年のウィッチ扱いである。二代目レイブンズは実績がまだ浅いこともあり、『血縁で成り上がった若者』と陰口をその前の代から叩かれており、劾子はそれを気にしている。かつてであれば、ベテランと言われる年齢の二代目レイブンズだが、21世紀では『若造』扱いであるため、その風評の払拭のため、初代のサポートを行っていた。血縁だけで成り上がれないのは劾子で既に示されたが、二代目レイブンズは栄光のレイブンズの名を受け継いでいたため、陰口も多いが、黒江翼がアロンダイトと草薙を持つのがレイブンズたる所以ともされている。ただし、アロンダイトは一対一で威力を発揮するため、綾香のエクスカリバーよりは小粒感があり、そこは残念がられている。綾香は対軍が普段遣いだが、対人級の宝具が普段遣いの翼は違う特性を持つと言える。また、技としてのエクスカリバーは継承はしているので、使えないわけではない。容貌がほぼ綾香の素の容姿と瓜二つなので、綾香が調の容姿をダイ・アナザー・デイで使用した理由でもあった。







――一方、ダイ・アナザー・デイで示された戦車の進化は当時の陸軍参謀本部を揺るがした。当時は諸外国の内、怪異と交戦機会の多かったカールスラントで88ミリ砲が重戦車に積まれていた時代で、中戦車は75ミリ砲クラス搭載が最新鋭と目されていた。だが、リベリオン本国軍はM46戦車を実用化していた。これは扶桑陸軍の戦車の大口径砲搭載を抑えようとした騎兵閥の失墜を促進させた。また、本来はまるゆやあきつ丸の増産に使用されるはずの鋼材が戦車用に割り当てられたのも、戦車の増産には結果としては役に立った。船団護衛を海援隊に委託することを海保に鬼の首を取ったように責められた扶桑海軍は必然的に船団護衛にも人員を割り振らなければならなくなり、船が足りないと泣く有様であった。そこで日本は大規模に上陸戦用の艦艇を有した暁部隊をそっくりそのまま海軍に編入し、陸軍航空を海軍基地航空と共に空軍とした。そのため、まるゆやあきつ丸増産用の資材が浮いてしまうことになり、陸軍は遠隔地に戦力を迅速に送れないと猛抗議したが、『予算は機械化の進展に充てるべき。戦力輸送は空海軍の協力を仰ぐべし』とされ、評議会に一蹴された。その結果、ダイ・アナザー・デイとM動乱は扶桑の機械化・装甲部隊を同時代の水準からは大きく進化させるに充分な理由となった。陸軍としては本土の近衛戦車部隊と、M動乱経験部隊の補充目的にしか五式改を用いない思惑が外れ、全機甲師団に配備する羽目になり、その次を早急に開発せねばならなくなったことは不本意であった。しかし、日本側が想定している戦車は『T-34-85』や『IS-2』などのウィッチ世界では開発計画すら出されていない車種であることへの異論は存在したが、日本はそれを力で押さえつけた。逆に五式改の存在を察知したオラーシャが逆にその車種の開発に迫られるのが実情だった。しかしオラーシャ革命とその混乱で中止されてしまう。同位国のロシア連邦が冷淡だった事も重なり、オラーシャは陸軍強国としての地位さえも半ば失った状態となる。また、リベリオン本国がM26/M46を使用したことは、カールスラント装甲師団の性能的優位を一気に突き崩してしまった。当時最新のケーニッヒティーガーすら撃ち抜く『スーパーパーシング戦車』が確認され、自衛隊が74式でアウトレンジしようかという話になっていることは、ケーニッヒティーガーすら無敵ではないことを妙実に示してしまったため、その次であるレーヴェ戦車の研究を急いだ。この急激な戦車の強大化は扶桑、カールスラントを振り回した。ブリタニアはセンチュリオンとコンカラーを配備すれば事足りたので、それほど混乱は起きなかった。だが、扶桑は九五式軽戦車や豆戦車などの需要があったため、戦車の大型化には反対論があったが、ダイ・アナザー・デイの模様がそれら楽観論を完膚なきまでに打ち砕いた――







――テレビ中継で映し出される、チハやチへとは比較にならないほど大型のM26重戦車が疾駆し、それが更に強大なコンカラー重戦車に粉砕される。当時の最高火力である『L5/105ミリライフル砲』を有する74式戦車は少数であり、その次に火力がある従来型120ミリ砲重戦車のコンカラーは猛威を奮い、当時最新の砲弾である「HESH」を有する利点から、M4中戦車の撃破率は最高ランクであった。(最も、元々がIS-3想定の重戦車なので当然の事であるが)ただし、支援戦車としての運用が想定されていたので、正面からの戦車掃討に駆り出されるのは予想外であった。しかし、その防御力は当時としては最高ランクであり、M4中戦車とは一対十二でも生き残れるくらいの生存率(ティーガーは5対1くらいで生き残れるかどうか)を叩き出した。これはブリタニアが威信をかけて、教導部隊の要員を駆り出していた事と、敵戦車に戦車戦経験がほぼ皆無であった事による幸運によるものもあった――






――陸軍機甲本部――

「うぅーむ……。これが奇っ怪な戦車を連発していたブリタニアの新鋭重戦車なのか…」

映像で活躍するコンカラーを突然変異の動物でも見る目で注目する扶桑陸軍機甲本部の高官達。ブリタニアはどこか尖った性能の戦車を作りがちで、コメット巡航戦車を経て、センチュリオンに達した。センチュリオンはイギリスを長く支えた名戦車。それを支援するための戦車がコンカラーだったのだ。センチュリオンの火力改良で存在意義は失われたが、ウィッチ世界では機動力が改良されて投入され、米国製重戦車/中戦車(正確に言えば、リベリオン製か)を圧倒する活躍を見せている。扶桑には火力は砲戦車に任せ、主力戦車は一にも二にも機動力というドクトリンがあったが、このコンカラーの活躍に触発され、74式戦車の解析とコピーに邁進する事になる。

「しかし、砲戦車隊の存在意義が」

「砲戦車は時代が進めば消えゆく宿命だ。中戦車が強力になれば、重戦車が飲み込まれたように、砲戦車も消えていく。それは地球連邦軍が既に証明している」

「どうすればよろしいのでしょう」

「自衛隊の74式戦車をコピーし、その後に90式、10式とコピーしていけばいい。見本は好きに輸入できるのだ。早いペースでものにできれば、敵を圧倒できる。日本側は数十年単位の軍事的優位を求めているからな」

「無茶苦茶ですな」

「彼等は戦後、GHQの戦車との落差に愕然とした過去がある。だから、我々に『あらゆる同時代の戦車を圧倒する』性能の戦車を装備するように迫ったのだ。インフラを替えて、暁部隊を海軍に差し出したのを引き換えにしても、彼等をギャフンと言わせなくてはならぬ」

機甲本部はこの方針の下、加速度的に戦車の研究を進め、47年に74式戦車のコピーに成功し、独自改良を加えた型を『七式中戦車』として採用して、配備を促進するが、従来型より高価であることが災いし、早急な配備は財政的に困難とわかったため、ハイアンドローの要領で『四式中戦車改』を配備せねばならなくなるなど、財政に意外と縛られる軍備整備であったが、この貴重な経験が扶桑の戦車技術を飛躍させる事になる。元々、ブリタニアと同盟関係であるがため、欧州の軍事情報は多めに入っているが、保守派、騎兵閥のしがらみで戦車の大型化に反対論があったのだ。しかし、M動乱とダイ・アナザー・デイがそのしがらみを吹き飛ばした。日本をギャフンと言わせたいとする子供じみた考えも含まれていたものの、機甲装備近代化には大いに役立つ事になった。45年には完成していたその青写真。彼等はダイ・アナザー・デイの様子を見ることで、74式のコピーに邁進してゆくのだった。




――戦場の各地でGウィッチが活躍していたが、その様子を大事をとって病室で療養していた立花響が中継で見ていた。その様子を確認しに、調が光速移動で駐屯地の病室を訪れた。戦闘中なので、シュルシャガナは持ったままだ。

「響さん、大丈夫ですか?とどめを刺した当人がいうのもなんなんですけど、お見舞いに」

「うわっ!?いきなり入ってきたぁ!?」

「すみません、急いで来たもんで」

「つか、シンフォギア姿でいる意義ないよね。今の」

「あ、アハハ…。聖闘士候補生なんで、ギアのギミック使うより、自分で走ったほうが早いんです」

「調ちゃん、どうしてギアを展開したままなの?」

「あれやっちゃう前に言ったように、今の私には普段着代わりなんですよ。師匠がいた時と同じようなもんです」

「あれ、クリスちゃんが凄くぶーたれてたよ」

「でしょうねぇ。私も行った先でコスプレ喫茶を週二でバイトしてますし」

「あの映像、切歌ちゃんが凄くムスッとしてね、正気に戻った後。綾香さんが手こずってたよ」

「師匠、切ちゃん苦手だから」

黒江は切歌に色々と付き合わされたため、苦手である。切歌は釈明として、『調が乗っ取られたと思い込んで、居なくなるのが怖かった』と言っているが、黒江には引かれている。ハルカの同類の匂いを感じたからだろう。

「どこが不味いのかな」

「私からはなんとも」(うーん。普通、わかると思うんだけどなぁ)

切歌のことはこの時期、若干疎遠になっていたため、言葉を濁した。珍しいが、黒江寄りの心情であることは暗示している。

「調ちゃんはどうして、のび太くんのところに?」

「自分の居場所を自分で作りたかったんです。古代ベルカに飛ばされて、そこで王に仕えたけど、戦争には負けて、王も死んだ。私は主を亡くした騎士なんですよ、響さん」

調はエクスキャリバーというアームドデバイスを現地で使用した。黒江の容姿であったものの、オリヴィエに誠心誠意仕え、黒江から受け継がれていた示現流の技能もあり、畏れられた。のび太は招来、『銃士』になることは黒江との感応で気づき、その従士たらんと、野比家に転がり込んだ。それがダイ・アナザー・デイでは『ほぼ20年』という感覚になっている。

「銃と剣の違いは有るけどのび太君は騎士でもあるんですよ、だから従士として自分を磨く場所として野比家が最適だと感じたので。かれこれ、もう20年かな」

「に、20年!?」

「タイムマシン使って時代を交互に行ってるんで、累積で。あの大人ののび太くんは子持ちになった頃だから、28くらいです。それと、もうそろそろ、別の時間軸の切ちゃんが来るかもしれません」

「ど、どういう事!?」

「タイム電話で連絡してあるんですよ。ちょうど修行が終わった時間軸の切ちゃんに。強さは比較になりませんね、多分」

「どんな感じなの?」

「マッハ5の拳と蹴りが乱れ飛ぶ感じですね。イガリマも斬山剣だし」

「ま、マッハ5!?」

「その時間軸の切ちゃんなら、日本アルプスをぶった斬れますよ。正直言って」

聖闘士になることで宝具の力が引き出されたため、切歌の武器は鎌から斬山剣に変化したと語る調。その時間軸では和解しているため、その時間軸の切歌には好意的だ。

「あれ、同じ人間が二人いても大丈夫なの?」

「ドラえもんなんて、自分でのび太くんの宿題しようとして、自分だらけになってましたよ。最後、追いかけ回されましたけど」

「あの話に立ち遭ったの?」

「そうなります。8時間後のドラえもん君、ブチギレ状態で『野郎!ぶっ殺してやる!!』でした」

「いいなー」

「こっちはハラハラもんでしたよ。何せ、目が血走って、2010年代の『グランド・セ○ト・オート』のヤク中主人公みたいにイカれてましたから」

「ああ、世界一売れてる洋ゲーの。持ってるんだ…」

「のび太くんが成人後に買ったんですよ」

ドラえもんは眠気が極限に達した状態でキレると、子守ロボの開発目的を窓から投げ捨てる勢いでとち狂う。形容するなら、『グランド・セ○ト・オートX』の『ト○バー・フィリップス』(ヤク中プアホワイト)というべきか。のび太が冷や汗タラタラになって逃げ惑ったあたり、6時間後のドラえもん曰く『眠いと気が荒くなるんだなあ』ではすまない。


「想像できないなぁ、あの声で」

「古いほうだから、余計に乖離しますよ、その時のト○バー・フィリップスもかくやのブチギレぶり」

8時間後のドラえもんのブチギレはもはや語り草で、グランド・セ○ト・オートXのトレ○バー・フィリップスもかくやの勢い。のび太と調が逃げ惑ったほどにヤバイと語られる。理性が吹き飛び、目は血走り、ライオンもかくやの勢いでのび太をぶちのめそうとする姿。調もその勢いに負け、一緒に逃げ惑った。シンフォギアを展開していたのに、である。その様子が想像できたのか、笑う響。笑い事でもないといいつつも、楽しそうに語る調。かつて敵対していた姿からは想像だもできない。フレンドリーな会話であった。内容はともかくも。



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