外伝その233『フューチャーヒーロー4』


――ジャンヌがぶっちゃけトークをする。英霊としては、かなりぶっちゃけている。苦笑いのクリス。ロマーニャ戦線は小康状態になりつつあった。この頃には怪人軍団も昼夜を問わぬ消耗戦で、軍団を指揮するデルザー軍団のほうが精神的に消耗し、一時撤退をしたのである。

『敵が引き上げて行くぞー!』

「連中、音を上げたかしら」

「ここ5日間、戦い通しでしたからね。敵のほうがしびれを切らしたんでしょうね」

「やれやれ、これでやっと一息入れられるよ」

「何体倒しました?」

「ざっと見積もって、怪人は300体、戦闘員は5000人だな。連中も君たちが強いんで、泡食ったと見える」

戦闘面での貢献度はアルトリアとジャンヌは相当なものである。さしもの怪人たちも、宝具をぶちかまされては形無しだからで、ライダー二号はおどけてみせる。

「これからどうなるんだ?」

「主戦場はスペインに移りつつある。俺達もスペインに転戦する」

「どうやって行くんだ?」

「幸い、イベリア半島はイタリア半島とは大陸を挟んで陸続きだ。バイクで行く」

「お、お、おい!オートバイで行くには遠すぎだぞ!?」

「行けないわけじゃないし、俺達のマシンは直線なら400キロは軽いしな」

仮面ライダーやスーパー戦隊のオートバイは皆、市販品とは比較にならない性能があるため、その気になれば、イベリア半島まで陸路で走破可能だ。アルトリアとジャンヌも誰かのマシンに相乗りする意思を見せる。呆れるクリス。彼女はバイクで行くのは性に合わないとし、自分のミサイルをロケット代わりにして移動するのだった。









――64Fは部隊としての行動が公認された当初の編成でも、扶桑陸海軍航空部隊の編成常識からは大きく逸脱した特異な編成であった。特に343空の中核であった幹部級に、旧編成時代の古参を加え、実質的にエース部隊として運用するというのは、軍ウィッチが目減りしていた中では贅沢なものではあったが、兵科そのものが消滅の危機にあったダイ・アナザー・デイ当時の切迫した時勢では組織防衛のために必要と見做された。また、ウィッチは戦闘機パイロットほどは質の均一化ができない兵科であり、501を実質的な『新人と古参の混合実験』としていたが、二度の査問で失敗と判断された事も古参の集中運用という結論に至る要因であり、ミーナは源田実の運用理論を半ば頓挫させてしまったという負い目を持つ事になった。ミーナはその事で西住まほとしての生真面目さから、責任を感じた。そこも大尉待遇での留学に異議を唱えなかった理由だろう。64Fの編成はMATの設立で新人や中堅の多くが流れ、本来は部隊付きの教官になるべき要員の行き場がほとんど無くなり、多くの古参が宙ぶらりんの状態になった上、更に私的制裁への見方(海軍精神注入棒など。陸軍はまだ軽いほうである)などで教育要員としての価値も低く見られたため、前線で使い倒したほうがマシと考えられた。そのため、本来設立予定の部隊が『定数確保困難』を理由に立ち消えになったので、そこに教官配置予定だった者たちの身元引受も64の復活理由だった。そのため、実績のない雁渕ひかりの配属は異例中の異例と言えた。人員構成はGウィッチを中心にしたトップエース級の幹部、能力が扱いに難儀するとされた古参級、次世代のエース候補の若手。それが64の実態であった。――




――ロンド・ベルから借り受けたラー・カイラムを暫定的な旗艦とし、64は本格稼働を開始する。これが64(二代)の活動開始である。中核となる隊員は転生者であり、言うなれば、『これだけ強いのいるんだから、兵科存続は保証しろ』という脅しである。当時の精鋭の七割が結果的に集まったが、源田実としては不本意ではあった。本来は古参と新人の切磋琢磨によるボトムアップを主眼のはずが、日本側の圧力もあり、精鋭中の精鋭ばかりのチームになってしまったのだから――

『加藤。お前としても不本意ではあるだろうが、これは日本側へのリップ・サービスでもある。やってきた連中の配属処理はこちらで行っておく』

『はい、司令…。』

『古参連中もやりにくいだろうが、シゴキは原則、フィジカルトレーニング程度に留めておくように通達しろ。バッターなんかで殴ったら、やった奴が懲戒免職処分されて、恩給もでんからな』

源田はこの時から、隊員に私的制裁を禁止させた。下手すれば『軍籍抹消』が待っているからで、規則を日本側に合わせる都合上、目に見える形のシゴキは避けたほうが賢明であるからだ。また、日本側の『怨念返し』とも取られる人事介入が激しかったのもこの頃だ。粛清人事は当たり前、連合軍の名のもとに、他国軍将校の粛清も辞さないのは傲慢である。一部政治勢力はそれが自由と民主主義のための『文民統制』と思っているからタチが悪い。地球連邦軍が裏で統制に動き出したが、そこまでに起こった混乱はかなり連合軍の足を引っ張ったのは事実だ。ガリアはメンツ丸つぶれ、カールスラントは外交パイプを潰され、軍事大国の地位は保ったが、技術立国のブランドを喪失した。日本が規格等一の名のもとに流した技術と兵器は現地雇用も揺るがしたため、現地企業を日本の同位企業の後身らに吸収させ、現地法人化させる事でどうにか命脈を保たせたが、これも混乱の一因だ。

『日本の扱いは大変ですね』

『21世紀の頃はまだ戦争嫌いだったし、非戦が国是だったからな。まるで馬の扱いに難儀する騎兵の気分だ』

『やれやれ。物質だけ豊かになっても…』

『彼らはいつか見返すという目標で復興したが、その後にどうなるのか、を考えていなかったのだよ、加藤。その証拠に、80年代に少子高齢社会の到来が見えていながら、何ら手を打たなかった。その結果が2000年代の惨状だ』

源田の言う通り、21世紀日本は大国に戻るという目標を達成した後に繁栄を謳歌したが、その後の努力を怠り、2000年頃には繁栄に陰りが見えていた。時代が個人主義の時代に成りつつあったので、日本連邦案に日本の保守政党はあっさりと乗った。しかし、色々な妨害があり、20年近くかかった。その間に黒江が空将になってしまったのである。黒江の出世速度は保守政党が政権についている時は早くされた。防衛省制服組の思惑もあったからだ。革新政党時代は旧軍人の経歴が鳩山ユキヲの不興を買い、肩たたきまで検討された。(もちろん、一郎のお叱りが飛んだ)その頃に飛行隊幹部が一斉に進退伺いを出すなどの自衛隊で騒動が絶えず、鳩山一郎が脳溢血を起こし、一命は取り留めたが、内定していた次期総理の座を逃す。その代打で担ぎ出されたのが小泉純也。小泉又次郎の娘婿だ。史実では防衛庁長官止まりの彼を担ぎ上げたのは、場繋ぎだ。吉田茂の後継者と目された池田勇人の成熟までの。

『小泉純也次期総理もお前たちに期待しておられる』

『必ず、吉報を司令に報告してご覧に入れます』

武子は陸軍出身であるが、転生者という出自もあり、源田子飼いの若手将校と評判であった。G化が遅めであったが、武子は直ちに源田に忠誠を近い、以後は源田の右腕とまで言われている。転生者できちんと司令と呼ぶのは武子と坂本に竹井くらいなもので、黒江、圭子達は『親父さん』である。源田もそれを許しており、64はアットホームな雰囲気もある。また、元・厚木航空隊との交流があり、同隊からかなり整備員の補助を受けてもいる。編成上は陸軍の部隊の後継ながら、基本ベースが343空なのも、源田が同位体の知名度を利用するつもりがあり、敢えて編成を変えなかったからだ。そんな複雑な事情なので、江藤は自分の部隊の後継がその革を被った343空なことには不満があった。だが、64Fの武勇は戦後日本ではほとんど覚えている者がいないため、343空の知名度はうってつけなのも事実だ。若松は『古い皮袋に新しい酒を注ぐ時が来たのだ、童よ』といい、新64を理解しろと脅している。実際、旧時代の戦績も45年にはお伽噺扱いであったため、若松の物言いは的を射ていた。

「ふう。これで1つ片付いたわ」

「ご苦労さまです、お姉さま」

檜少尉は元々、武子の家の個人的なメイドであり、母親が武子の両親の女中であったという。そのためか、自分が少尉になっても、武子の従卒的役目を続けていた。軍服姿以外の服装がメイド服であり、片足が義足という属性も持っている。常に武子の側に仕えるため、メイドというよりは執事と言える。

「貴方は配属される連中の名簿を確認して。連中が連れてきた新人は特にね」

「了解しました」

武子は今回の難題と向き合っていた。やってきた10数人の中に新人がいたからで、その技能調査の必要があるからだ。(その新人だが、後に64の幹部となり、むしろ次の戦争で活躍する事になる。その人物は大器晩成型であったので、太平洋戦争中は奇兵隊、後に維新隊に転じたらしい)


「日本の連中にはいい薬になるでしょうね。カイラム級機動戦艦は」

「マニアにいいアピールになりますからね。ジェスタも積まれてたし」

「最新型のジェガン系ね。コマンド任務向けよね」

借り受けたラー・カイラムにはRGM-96X『ジェスタ』が何機か積まれていた。アムロ曰く、『ブライトからの手土産』であり、ジム系としては久しぶりの標準サイズ機である。

「ジェガンそのものの後継機がミドルサイズなのに、どうしてグスタフ・カールやジェスタは標準サイズなんです?」

「実体弾への耐性や整備性の問題らしいわ。大型機は整備ノウハウも確立されてるし、V系でもないと、小型機は整備性が悪くてね。ジェガン系はそれこそ星の数ほどあるから、精度のいいパーツも手に入りやすいし」

ロンド・ベル含め、特務部隊は大型機を好むので、大型機はその需要に移行しつつあった。大型機には小型機にはない『実体弾への高い防弾性能と、ユニット化されているので、装甲と電子機器が一体化している小型機より整備技能の難度が低い』という再発見されたメリットがある。パーツが現地調達可能という事もあり、ジェガン系は未だ開発が進められている。小型機は結局、サイコフレーム製造技術を応用したその機体構造そのものがデメリットとなったと言える。アニメでは大型機は小型機の的扱いであったが、実際はバルキリーなどとの兼ね合いで余り普及しなかったのだ。



――地球連邦軍のMSは示威効果もあり、戦場では存在感を放っていた。ジム系にしても、『弱そうな』外観は兎も角も、人間の持つ火器をサイズアップさせたものを基本的に持つ事から、アメリカ人にも受け入れられていた。ティターンズやジオンが『モノアイ系』の悪役じみた外観を持つ機体を主用していた事もあり、Z系やF系、ν系のヒロイックなデザインは日本人受けした。また、デザリアム戦が迫る頃であったので、技術力でティターンズやジオンに差をつけつつあった事が小型MSを含む次世代機の投入で示されていた――







戦場では、ティターンズの持つ旧式MSでは新型機に対抗しきれない事が明らかとなった。ハイザックは連邦軍で最も型落ちであるジェガン以下の性能であり、いくらティターンズ生え抜き兵が高練度と言っても、根本的な性能差はパイロットの質で埋められるほどのものではなく、ジェガンにも容易く狩られるハイザックが続出した。これはハイザックそのものの相対的性能低下によるもので、公式なものでは、これがハイザックの最後の実戦記録となった。ハイザックは元々、グリプス戦役最末期には一線から退きつつあったため、残党の保有率は高くなかった。最終型ジェガンとの性能差は一年戦争時のザクとガンダム以上であり、もはや為す術がないという有様である。



「あ、ハイザックがジェガンに一蹴されてるぞ」

「アニメでも世代が違うしな。でも、ジェスタがあるんなら、量産型νは立ち消えか?」」

「いや、オリジナルと同等の仕様で量産されるそうだ。ジェスタより性能を上げるから、オリジナルと同等で」

「んじゃ、アムロさん、何に乗ってんだ」

「あるだろ、強化型のHI-νガンダムが。あれを使ってる。アニメと違って、脅威が来まくるから、ガンダムタイプが使用しやすいんだと」

自衛隊の隊員が遠目に、ハイザックがジェガンに一蹴される光景を見ながら話している。量産型νガンダムは当初、νガンダムの8割低度の性能を予定していたが、ジェスタの登場で存在意義が問われ、オリジナルと同等の性能という破格の性能で量産される。それを更に超える性能がHI-νガンダムには与えられた。そこからさらなる改良が加えられ、この時点では、ユニコーンガンダムへのカウンター的役目さえ期待されている。



「ユニコーンガンダムのほうが強くないか」

「パイロットの質が違う、質が。初代ガンダムのパイロットで、百戦錬磨の彼がぽっと出の若造の乗るマシンに遅れを取るか」

実際、アムロはユニコーンガンダムのデストロイモードすら歴戦のカンで抑え込めるほどにパイロットとしての技能に優れている。そのため、ユニコーンガンダムは他世界ほどの絶対性は持たないと言える。

「それに、もっと強いモノが溢れてる世界じゃ、ユニコーンガンダムも霞むよ」

実際、アニメでは『より後の世代』とされているMSが同時代に存在する未来世界では、ユニコーンガンダムに絶対性はない。アナハイム・エレクトロニクス社の技術誇示の思惑も絡んでいるが、サナリィ・ガンダムの登場後であるので、些か保守的なガンダムと言える。既存技術では最高レベルの機体だが、ヴェスバーやビームシールドがないので、サナリィは保守的という嘲りをしている。しかし、サイコフレームは大型機用技術に等しいため、そこは小型機にほぼない利点だ(F91に積んでいたとも)。




「そう言えば、環境省にいる野比のび太、知ってるか?あいつ、高校時代にクラスが一緒だったんだが、今は鉄人28号FXを使ってるらしいぞ」

「本当かよ」

「あいつは高校時代は地を這う成績だったくせに、クラスのマドンナ捕まえてな。信じられんよ」

のび太の人物評は高校時代までは子供時代と大差なかった事がわかる。のび太は女運は上がったが、学業面は高校時代までは大幅には改善せず、玉子やのび助も頭を抱えた。高校時代までに友人だった者は、のび太の大学から成人後の変貌に驚いている。しかし、のび太が地道に努力していたのも事実だ。調が事実上、妹分として居候するようになってからは学業面の改善率がアップしており、ときたま30点から40点は取れるようになり、高校時代は赤点は回避できる程度にはなっていた。志望校が実力より上の偏差値であったので、大学は一浪したが、補欠合格で合格。玉子が大人しくなったのもその頃だ。玉子は『あんたは人の倍は努力して、やっと一人前』と説教していたが、のび太の実際の潜在能力は予想より高かったので、大学入学後に優秀な成績を修めるようになった。それを見届けた玉子はのび太が大学に入る頃には、調にお見合いを勧めていたりする。表向き、のび太成人時には20代という事になっていたからだが、調はやんわりと断っている。(玉子は気づいていないが、調は外見上で年齢を重ねる事は無くなっていたし、そもそも結婚する気が無いのだが)彼のように、大学以降の躍進が信じられないとする者はかなりに登るらしい。


「うだつの上がらない風な姿なのに、やたらモテやがる。学生時代の七不思議だった。統括官にも可愛がられてな」

彼はのび太が黒江に可愛がられていて、かわいい妹分を持ち、クラスのマドンナだったしずかと結婚に至った経緯を七不思議と評した。彼曰く、のび太は大学時代、古生物学を専攻し、恐竜関連の論文で博士号を取ったらしいという。(フタバスズキリュウの論文らしい)古生物学に行くと思いきや、なぜか環境省に入省した。そこも七不思議らしい。(のび太はこの頃には、自分の死後の家の仕切りを調に託す意思を伝えており、後事を託していた)

「奴は裏世界に生きる身、いつ死ぬかわからん。だから、もしもの時に備えて、妹分に子供の養育を頼んだんだろうな」

のび太はもしもの時に備えていた。妻のしずかへの気遣いだろう。デューク東郷との敵対も考えていたのか、遺書を書いている。その遺書は後に天寿を全うした際の遺言書となり、調はひ孫ののび三の代まで仕え、セワシの孫に再雇用される。G化と聖闘士叙任で精神以外は老けなくなったため、セワシの孫は家の立て直しのために呼び戻し、実質的に50年以上のインターバルを経て、野比家に居続けるのだった。



――その調は黒江の代理を務めており、この日は空戦に臨んでいた。敵はF8FやF6Fと、史実グラマン系戦闘機。F8Fはスペック上、紫電改や烈風を超越するとされており、そこも騒ぎ立てられた理由だが、扶桑の紫電改などは史実より遥かに高性能である。また、F8Fは小型であるが故に航続距離が無いのも重要な要素であり、意外にF8Fは数がいない。F6Fのほうが扱いやすいからだろう。もちろん、調が使っているのは遥かに高性能な次世代機だが、油断は禁物だ――

「F6Fは防弾性能が低いコックピットを狙わないと…」

F6Fはミニガンには耐えられないものの、数秒間の射撃程度では致命傷とならない。そのため、キャノピーを狙うことが常態になっていた。これはGウィッチでなければ出来ない事だ。基本的に米軍機は頑丈で、胴体に並大抵の銃弾が当たった程度ではびくともしない。その事もウィッチの戦果が低調である理由である。(例外的な機種もあるにはあるが)航空ウィッチは基本的に同時代の重機関銃程度の火力を携行するが、B-29やF6F、P-47といった頑丈さで鳴らす機種には無力(怪異と違い、装甲の弱体化の恩恵がないがため、ゴリ押ししかない)に等しい。同時代のウィッチの火力では基本的に米軍機は落としにくいと言え、爆撃機の防御陣形には近接格闘技能が必須とされた。Gウィッチは通常ウィッチが忌み嫌うような攻撃を行える利点から、軍事的には重宝される存在である。(この時期の扶桑の標準である13ミリ銃では、F6Fはびくともしない)


「ふう。ヘルキャットは艦上機でも頑丈だからなぁ。コルセアのほうが弾使わないんだよね」

ヘルキャットはGウィッチでも『厄介』と見ているのがわかる。F-15であれば容易に倒せるが、武器の弾を使う事から、コルセアより厄介と見ている。F8Fは小回りが効くので、頭を抑えるしかない。

「弾は少なめ、狙いは正確に…!」

すれ違いざまに銃をF8Fの主翼の付け根に当て、主翼をへし折って墜落に追い込む。マルセイユから偏差射撃のノウハウを仕込まれたので、偏差射撃で当てた。如何にF8Fと言えど、主翼を狙われてはたまらない。調はF-15J改を使っているという優位点はあるが、レシプロ機相手に巴戦で戦果を残すのは、カールスラント空軍の度肝を抜くものだ。当時の標準ストライカーでは苦戦は免れない機種であったので、そこも第3世代宮藤理論の威力であった。この哨戒中の戦果が調の初戦果であり、次世代の航空ウィッチとして知られるきっかけとなった。扶桑で徒弟制が解消される前に間に合ったという点で、Gウィッチとしては、最も通常ウィッチとの差異が少ないと見做された。そのあどけない風貌もあり、クーデター後に使いにくいとされた智子に代わり、若手勧誘のポスターに起用され、実質的に広報にとっての智子の後継と見做されたという。


――扶桑では十字教の信仰に史実ほどの規制がかかる事は無かったため、扶桑にいる伊達侯爵家は日本やアメリカからの支倉常長の件での抗議に困惑し、宮内省に政治的理由で爵位の伯爵への降格すら示唆された事で『伊達騒動』になり、結局は史実と違う形で伊達家は不遇の時代を迎える。(爵位の降格こそ免れたが、家内がギクシャクしてしまい、結局は騒動になってしまった)また、不幸にも、当代に分家含めてさえ、ウィッチがいなかったので、黒田家と対照的に武功で汚名返上が出来なかったため、侯爵家ながら、華族社会で軽んじられる事になり、10数年後にようやく、ウィッチが出るまでの期間、大抵の世界での支倉常長の蟄居や伊達小次郎の手打ちの件の報いかのように、十数年の辛酸を嘗める事になった。(不幸中の幸いで爵位は維持された)この種の混乱は当時としては珍しくなく、徳川家、羽柴家も巻き込まれた。史実と異なる道を辿っている者達に史実の行いの報いを与えるのはナンセンスであり、反論もあったが、たとえ、間違っていおうと、その勢いがついていた時は何をしても無意味なものだ。黒江へのいじめが知られた時のヒステリックな反応しかり。嵐が過ぎるまで、ひたすら待つしかないのだ。そこも日本人の負の面といえた。嵐が過ぎ去った後に残ったのは混沌。黒江達はこの一連の騒動で、対立する派閥の後輩らとの和解を諦める羽目となった。上層部も軍事的な必要上、Gウィッチを優遇するため、反G派はクーデターの鎮圧を期に衰退し初める。黒江達は来る『クーデター』がウィッチ兵科の寿命を縮める事を予期しており、竹井の祖父が存命時はなんとしても兵科を維持したい意向であった。それはウィッチ擁護派の大物である源田や小園の意向でもあり、日本や部内の圧力を跳ね除け、太平洋戦争中はなんとか維持に成功する。その人数が機甲科や砲兵科よりも更に少ないウィッチ兵科はダイ・アナザー・デイ当時、航空部門は航空科、陸戦部門は機甲科への統合がMATの設立を理由に行われようとしたが、扶桑の現場の反対で先延ばしにされた。結局、1950年代に竹井退役少将が亡くなるまで先延ばしとなったため、昭和天皇が退役少将の功績を鑑み、要望を出していたともされる。二代目レイブンズの時代には『無意味な派閥抗争が軍隊に混沌を齎した』と伝わっているため、ダイ・アナザー・デイ前後の派閥抗争は軍隊に混沌をもたらしただけだとされているのがわかる。ダイ・アナザー・デイでの混乱は、反対派閥からは『陛下のお気に入りだけを優遇してる』という反発を日本側が『叛乱だ!』と判断して引き起こされたものであり、そこが海軍航空隊ウィッチ主流派の最大の誤算であったし、扶桑軍全体の困惑であった。――



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