外伝その259『イベリア半島攻防戦8』


――キュアドリームに突きつけられた形の終焉の魔神の存在。因果さえ操り、気に入らない存在を抹消する者。それから逃れるには、仮面ライダー一号や初代プリキュアなどの歴史を作った偉大な存在の加護を得るか、黒江の言うように『神を超え、悪魔を倒す』しか方法はない。ドリームは愛する者との絆さえも無意味としてしまうほどの威力を持つ因果律兵器に恐怖し、マジンガーZEROという敵を、初めて意識した――


――駐屯地に戻る途中、ドリームは自分がプリキュアであったことすらも『無かった』事にできる力がある事に内心で怯えつつも、初代とスプラッシュスター(二代目)が事実上不在である以上、三代目たるプリキュア5のリーダー格だった自分が後輩を束ねなくてはならないと使命を背負った事を悟っていた――

「……先輩、教えてください。マジンガーZEROの事を。私達――ううん、私の先代達がいない以上、三代目のプリキュアの私がみんなをまとめないとならないんです」

「そう気負うな。奴はマジンガーZの派生存在だ。ただし、奴の場合、甲児がどこかで抱いた『時と共に忘れられていく恐怖』とZへの偶像崇拝を拠り所に、いつしか暴走した邪の自我がマジンガーZそのものを変貌させた姿になる。武器の威力はどれも破滅的で、ブレストファイヤー一発で地球を削り取る。因果律操作と強力な自己再生能力で殆どの武器を封じるから、同等以上の力を持つマジンガー、それも異種のエネルギーとのハイブリッド動力でないと、まず、戦にもならん。素で奴と戦えるのはゲッターロボだけだ」

「……私の力じゃ敵わない…?」

「今の状態じゃ、な。お前はあくまで、パワーアップフォームを奇跡で成し得たが、それじゃだめだ。ZEROがもしも再臨した時に戦うことも出来ずに封殺される。それを更に超えるんだ。神を超えるってのは、そういう意味合いもある」

「シャイニングドリームのその先…?」

「そうだ。仮面ライダークウガがアルティメットフォームになったように、最低でも『それ』を自己制御しろ。俺にとっての神聖衣のように」

「今の生活じゃ、とてもそんな特訓の時間は…」

「だから、子供ん時のこいつのとこに行くんだよ。あ、変身はなるべく維持しとけ。調にもやらせてるが、そうすれば、体力が自然に上がる」

「どこかの漫画的発送ですよぉ、先輩〜!」

「つべこべ言うな。まあ、最初のうちだけだ、恥ずいのは」

「う〜……」

「天姫は当分、テストで帰らねぇし、当分は夢原のぞみでいられるだろう。天姫は練度的に作戦にゃ出せんから、当分は釘付けにさせるつもりだ」

「いいんですか?」

「仕方あるまい。あいつの素養は認めるが、お前に会わせると、余計に混乱を強めるだけだからな。本国にはそう通達してある。プリキュアの変身を解除した後は、軍服姿で当面はいろ。坂本は俺たちが黙らす」

「わ、わかりました」

坂本は割合、服装には厳し目なので、当面は軍服を着て勤務しろと言う黒江。プリキュアとしての変身姿には寛容だが、割合、普段の服装には厳し目である。これはバルクホルンが覚醒で甘めになっているためのバランス取りと、式典などのためでもあった。日本は前線での食事処を『士官と下士官、兵を食事処でも差別するな』という元・日本兵の強い批判を拠り所に、独自の施策を実行。ワードルームを事実上置かないようになり、駐屯地にダーティ・ワードルームしか設置していない。これは士官の特別扱いをしないという意味での施策であるが、他国から批判があるため、結局、士官専用食堂が式典などのために臨時で設けられるようになった。これは他国軍隊の要望によるものである。坂本は来客の応対や式典に備え、最低でも軍服は着させたいのだ。しかし、前線でそういった夜会が行われる機会はほぼないし、今や最前線の中の最前線に身を置いている以上、服装で戦は出来ないのだ。

「坂本は式典や夜会を使って、マスコミ向けに規律をバシッとしてるのを見せたいんだろうが、ここは最前線の中の最前線だぞ。そんな暇があるか。夜中でもヤーボは飛んでくるし、遠距離からのカノン砲のハラスメント攻撃が定期的にあるんだからな」

501に割り当てられている駐屯地はけして後方ではない。ヤーボ(戦闘爆撃機)の爆撃や掃射の迎撃戦はしょっちゅうだし、駐屯地のどこかにカノン砲のハラスメント攻撃が行われる事もザラである。そんな暇はないし、最悪、グライダーを使っての空挺強襲すら起こりかねない地にいるのだ。

「グライダー使っての空挺強襲もあり得るくらい近くに、敵の一師団が突出してきたらしいからな。ヒスパニアはフランコの失脚で、まるで使い物にならん。喉元に刃を突きつけられてんのに、無為無策だ。だからこそのお前らだ」

「よい子には見せられませんね、それ」

「うむ。お前らが実銃使って戦闘してるのは見せられないぜ。だから、プリキュア本来の腕っ節を鍛えておけってことだ。初代やピーチみたいにな。ティターンズには、意外な事に、ガンダムファイター志望崩れも多いからな」

「ガンダムファイターって、人間じゃないですよぉ」

「お前がいうか?モビルトレースシステムに耐えられるように鍛えてた連中だしな。そこそこ名が通った格闘家から転じた奴も多い。だから、スペックに頼っていると、闘技でイチコロだ。特に、採用まであと一歩までいった層は『気』を練れるし、扱えるからな」

ティターンズは大半が地球出身者だったが、ジャミトフ・ハイマンは在りし日、ガンダムファイトにも影響力を行使しようと目論見、構成員の何割かにガンダムファイターとしての教育を施していたが、ティターンズ存続中にそれは間に合わず、水泡に帰した。だが、育成途上だった人員は無傷で、その全てを残党軍が有する事が分かったので、各地で隠遁生活を送っていた『新・シャッフル同盟』もがとうとう動き始めている。プリキュアは身体能力こそ超人レベルに強化されているが、肉弾戦主体の戦闘経験が豊富な初代を除いては、肉弾戦は所詮、『できる程度』の技量。ガンダムファイター志望崩れにはそれだけでは通じないのだ。

「お前らプリキュアの大半は身体能力は上がっても、普通の中学生だから、ステゴロにゃ弱い部類だ。…初代の連中除いて」

「ブラックとホワイトのあの強さはこっちが聞きたいですよぉ!」

「お前、前世で聞いとけよぉ〜」

「聞けませんよ〜!」

初代は肉弾戦で歴代最強を誇っていた。その事は後代のプリキュア達を不思議がらせていた。それはドリームも例外ではない。芳佳とシャーリーが記憶の覚醒でDVDを買い込んでいたので、そこから二人のプリキュア化を吐かせた黒江としては、知りたかった謎らしい。

「あれ、若さんからだ。珍しいな。…若さん?俺っす。なんか変わった事でも…」

『そこにキュアドリームはいるな?火急の伝言が加藤の坊主からある』

「ええ。いますけど?フジからなんて?」

『キュアピーチが転生していた、と伝えろ』

「は…?マジで?」

『特に素体となった人物は確認出来ていない。どうやら、そのまま転生してきた口と見える。加藤の坊主が今、コスモタイガーで本国に迎えに行っている』

「了解、伝えます。…ドリーム。朗報、と言えるかはわかんねぇが、ピーチが転生してきたぞ」

「え!?ラブちゃ…キュアピーチが!?」

「確か、お前の一個後のフレッシュプリキュアだったな?」

「いきなりですよぉ!?あの子とは入れ替わる形でバトンタッチしたから、仲良かったんですけど、まさか、こんな形で…」

年代で言えば、ほぼ同時期に活動していた上、代が近いこともあり、のぞみは自分の直接の後輩であるキュアピーチ/桃園ラブと親交があったらしい。それは二人がさらなる後輩達に襷を引き継がせてからも続いていたらしい。キュアピーチ/桃園ラブは、臨終を迎えたはずが、気がついたら現役当時の姿に若返っていた上、変身後の姿で凌雲閣のてっぺんに放り出されていたと答えていると若松は伝えた。

「り、凌雲閣のてっぺんに放り出されていたぁ?なんすかそれ」

「儂に聞くな。とにかく、自力で降りて、困っていたら、加藤の坊主が保護したとのことだ」

「…先輩?」

「ピーチのやつ、気がついたらな、浅草十二階のてっぺんに放り出されていたってよ」

「あ、浅草十二階ぃ!?」

「自力で降りて、パニックってたら、フジに保護されたってよ。今はフジの事情聴取を受けてるそうだ」

「若松大先輩、加藤先輩に繋げられますか!?」

『ドリームか。どうするつもりだ?』

「ピーチはわたしの妹みたいな子なんです、プリキュアとして直接バトンタッチしたのもあるんですけど、あの子はわたしの仲間なんです!」

『便宜を図りたいと?』

「そうです。このままじゃ密航者みたいなことにもなりかねないし、わたしが便宜を図れば……!」

『分かった。黒江に加藤と連絡を取ってもらえ。今ならまだ事情聴取は途中のはずだ』

「あ、ありがとうございます!先輩、早く、早く!」

「だーっ!急かすな!今、フジに連絡を取ってやるから!」

キュアピーチはこの後のキュアドリームの必死の説明と武子への黒江の取り成しもあり、64F預かりの身となり、欧州へ移送となった。ドリームもプリキュア5の戦友や恋人と別離した身であるため、直接の後輩である上、生涯の友人であったピーチにはかなり思い入れがあったようで、武子に熱弁を奮った。黒江も『漂流者として、時空管理局に引き渡す』と言う武子をなだめすかし、プリキュアである事から、『俺が呼び寄せたことで通してやれ』と説得した。黒江はこういう局面の乗り切りでは武子の上を行くため、上手くドリームの元へ送り込む口実を作ってやる。

「ふう。あいつは堅物だからな〜」

「せ、せんぱぁ〜い!」

「どわぁ!プリキュアのパワーで抱きつくなー!」

「大丈夫ですってー!私達、攻撃以外はブーストかかってないしー!」

黒江はキュアドリームとキュアピーチの友情を引き裂くような武子の行為を阻止したかったので、扶桑軍の人間にした上で、Gウィッチ枠に入れてしまう事で保護したのである。武子を未来の高品質カメラフィルムの三ダースでどうにか、なだめすかしたのだ。堅物と言ったのは、国家間の取り決めに忠実かつ、実直な性格だからだろう。これでプリキュアとしての戦友を三人得た事になるキュアドリーム。この世界での中島錦としての役目はこの時には、半分はかなぐり捨てていたと言える。

「転生転移は初めてだな。そうなると、プリキュアはまだまだ来そうだなぁ」

「傷を舐め合うって、わたしを笑いますか?」

「いや、俺もそういう経験あるからな。友達は大事にしろよ」

自分自身も経験があるため、キュアドリームの自嘲気味な言葉に優しく返す。これでキュアドリームに絶大な信頼を寄せられるようになった黒江。抱きつきも許してやる。安心したのか、プリキュア姿のままでそのまま寝入ってしまう。

「のび太、これどうしよう」

「寝かしといてあげましょう。すごく安心した寝顔ですしね」

「お前なぁ…」

困ったような表情の黒江。そこにハッピーが茶々をいれる。

「でも、ピーチのことであんな必死なドリームなんて、初めてみたよー?これで黒江さん、子分獲得ですね」

「茶化すなよ」

「ムニャムニャ……ココ、みんな……私…頑張ったよね…?」

「ああ、君はよく頑張った。よくやったね、のぞみ」

「あ、黒江さん。ドリームの好きだった人の声色…」

ハッピーへそっと、鼻の前で指を立てる黒江。黒江なりの気遣いである。黒江はドリームが前世で愛した者、つまりは妖精の国『パルミエ王国』の王位継承者であり、のぞみが愛していた『ココ』の声色を出したのだ。黒江なりの気遣いであった。

「アニメで声色の感じは掴んでたから、声は出せるよ。こいつを安心させるには、これが合うらしい」

「さすが、前史で女優も兼業してたことはありますね」

「まーな。こいつは寂しかったんだろうな。いきなり第二次世界大戦相当の時代に、日本軍人として放り出されて、見知らぬ土地、見知らぬ人だ。平静を装ってても、仲間が欲しかったんだろう」

のぞみは元々、最終的な職業は教諭であった。その記憶があるがために、無理に平静を装っていたが、本当は愛していた人も、友人も失い、泣き出したかったはずだ。しかし、かつてプリキュアであった者としての誇りで、自分を律し、どうにかやってこれたのだろう。恐らく、かつての戦友や後輩の無事を確認できた事で、徐々に心が往時のものに若返ってきている間違いない。そして、同じ境遇にあるレイブンズを頼り、プリキュアであることを話せた。居場所と安らぎをようやく得られたという嬉しさもあるのだろう。

「この子はあとで、子供の僕のところで鍛えましょう。キュアピーチの事の裏工作はドラえもんと僕がしときます」

「頼む」

「ところで、裏工作ってどうやんだ?」

「なーに、経理や人事担当者に金と酒を握らせて引き込むんです。ラルさんの常套手段ですよ」

「あの人、そんな事してんのか」

「政治的には犯罪スレスレですけどね、メロディさん」

ラルも一枚噛んでいる『裏工作』。今回はドラえもんと青年のび太も行う手であり、プリキュア関係者の転移であることもあり、かなり急である。実際に下原の時にやられ、ミーナは激怒しているが、こうしないと、芳佳加入フラグが立たないので、今回は坂本も黙認している。ラルの昇進に『正気か?』とガランドを責める意見が続出したのは、こうした分捕り行為の常習犯でありつつ、皇帝のお気に入りであり、バルクホルンに次ぐスコアを持っていたので黙認されていたということからだ。

「思いっきり黒だぞ。うーん。ま、今回はドリームのためだと思って、見なかった事にしよう。あたしも紅蓮をもらいたいしなぁ」

「発注書は出しました。当面は貴方がコピーしたのを使っててくださいな」

「OK。北条響としての記憶は薄いし、そっちのほうが気が楽なんだよなあ」

メロディは北条響というより、紅月カレンとしての記憶のほうが強く出ているため、北条響としての側面はあまり表に出ていない。むしろ、紅月カレンの好戦的で勝ち気の性格が彼女のデフォルトになっていると言える。

「口も荒いし、輻射波動好きですしね」

「血が騒ぐっていうか、その、ノッちゃうからしゃーねーだろ!どーせあたしはガサツですよーだ!」

「あ、拗ねた」

のび太に指摘され、拗ねるメロディ。この事からも、変身前の北条響の記憶は有しているが、彼女の自我の主体は紅月カレン寄りになりつつあるのが分かる。また、紅月カレンの自我の覚醒が始まってきたためか、自分がガサツであるという自覚があるようだ。混合的な覚醒者は、こうした複数の人物の人格が混じり合う事があるが、シャーリーの場合は美雲・ギンヌメールを除くと、似た性格かつ似た思考の持ち主であるため、傍目からは変化がないように見えるが、激怒したりすると好戦的な台詞を言うようになっているため、バルクホルンには気づかれている。また、ルッキーニがクロとしての姿をデフォルトにしたのも、シャーリーにクロとしての変化を知られたくなかったのも絡んでいるので、お互いに不器用である。この時点ではお互いに変化を知られ、受け入れているため、ルッキーニはイリヤの事もあり、クロエ・フォン・アインツベルンとして振る舞うのを選んだ。シャーリーはその背中を押し、自分も混じり合う自分の自我と向き合い、キュアメロディに変身できるようになったのだ。ただ、二人して変身できるというのも因果である。

「でも、ピーチと、あと一人でも来れば、プリキュアピンクチームが出来ますよ」

「誰がいるんだよ」

「さあ、僕にもそこまでは」

ドリームはすっかり寝入っており、ハッピーには生暖かい視線を向けられ、のび太にはズバリな事を言われ、拗ねているメロディ。プリキュアにしてはガサツな態度だが、北条響としての要素は薄いので、前世での優しさは表面的にはあまり感じられない。むしろ、スイートプリキュアとしての弱点を紅月カレンとしての機動兵器乗りとしての側面で補っているようにも見える。

「ドリームが羨ましいぜ。あたしは北条響、紅月カレン、美雲・ギンヌメール、シャーロット・E・イェーガーのどれでもなくなっちまった感じがするんだ。だから、本当は怖いんだよ。自分が誰なのかもはっきりわからねぇんだ…」

「なら、どれも受け入れればいい。それらをひっくるめて、新しい生を生きればいい。僕は前史やその前の記憶もありますから、綾香さんがいつか、似たようなことを言いましたよ」

「ああ、ありゃ…二個前だったか。シャーリー。何も転生で悩んでるのはお前だけじゃないんだ。俺も、のび太も同じだ。俺なんてな。なんて言われたと思う?本国で。『死を受け入れた方が馬鹿を見るんじゃないか。野比のび太を倒して見せろよ、神様なんだろ?』だぞ。おりゃ、ハッキリ言って、そいつを殺したくなったよ」

のび太やゴルゴに勝てていないことや、神として存在が昇華した事をなじられる事が多くなった黒江。敵対派閥には二人に勝てないことを『只の言い訳、友達ごっこ』となじられるため、精神的には投げ出したい心境であるのが分かる。黒江は不老不死属性を持つ上、聖闘士であるのもあり、敵対派閥にはそこから責められ、罵声を浴びせられる。『人間として戦ってみせろよコラァ!』というのも日常茶飯事だ。黒江はこうした敵対派閥の罵りと戦っているためか、最近は青年のび太やドラえもんに、裏ですがりついて泣いている。黒江は存在が神に昇華しただけで、肉体や精神は人のままだが、敵対派閥の心無い言葉が黒江を苦しめ、それを憂いるヒーロー達が慮り、公に加勢しているのだ。黒江は兄と慕う城茂に心情を吐露して泣いており、憤った茂がその部隊に殴り込む事も起こっている。それ故、黒江は夢原のぞみの心情をよく理解しているのだ。今後、自分と同じような罵詈雑言を浴びかねないことを。

「こいつも、プロパガンダに使われる以上、俺と同じ目にあいかねない。あんなのはオレ一人で充分なんだ」

「黒江さん、アンタ…」

「それに、俺は…自分の上官が自分が慕ってたヒーローの不倶戴天の敵の仲間で、しかも俺と部下を駒としてしか見ていなかった事を経験している。こいつにゃそんな残酷な光景は見せたくねぇんだ。お前も、紅月カレンの記憶があるなら、わかるだろう?…ルの文字が付く人の事だよ」

「……あいつは前世で一度だけど、あたしと仲間を利用していたからね…。後で真意は分かったけど、許せない気持ちは残ったもの。鎮魂歌ってコードネームの行動を話してくれていれば、もっとやりようはあったろうに…って気持ちは残った。アンタって人はピュアだね…」

「何度か生き返って、同じような人生をして、同じように戦ってきたんだ。せめて、せめて信じたいモノがあるんだ。のび太とドラえもんはそれを守ってくれたんだ…」

幾度となく仲間や友に裏切られ、母の愛にも飢えていた黒江が縋るもの。それは純粋無垢なまでののび太とドラえもんの友情と愛情であること、のぞみには自分が幾度も味わってきた人間の醜悪な側面を味わってはほしくないという、ピュアな感情を顕にし、紅月カレンとしての記憶を有するが故に、いささか人の善意の裏を見てしまうキュアメロディに感銘を与えた。

「転生した以上、無意味だと思うけど、紅月カレンとして聞いていい?ルルーシュとスザクは戻れたと思う?昔の関係に…?」

「だと思う。でなきゃ、ゼロ・レクイエムの最終段階であんな事を頼めるか」

「かしら」

「ブリタニアを変えるために、ブリタニアで栄達しようとしたスザク、敵対、後にその権力の座につくことでブリタニアを壊そうとしたルルーシュ。ブリタニアって国をお互いの目的のために利用していたのはお互い様だろう?近い目的に至ったから、同志と言えるはずだぞ、メロディ。いや、カレン?」

「ありがとう。これで紅月カレンとしての気持ちに踏ん切りがつけられたわ。ずっと疑問に思ってたから…」

「バニーガールコスチュームの事、バルクホルンに言っていいか?」

「そ、それは駄目!ゼッタイ!」

紅月カレンとしての記憶も宿すため、変な弱みが出来てしまったシャーリー。その一方で自分という存在を殺すという事で、ブリタニアという国を変えたルルーシュ・ランペルージへの想いを引きずっていた事を紅月カレンとして吐露する。転生者の苦しみ。それを告白し合うことでお互いに過去と向き合い、以前の人格を維持した夢原のぞみを周りの罵詈雑言から守ることを誓う二人であった。なんとも危険だが、シャーリーと黒江はお互いに人の闇を見てきているが、のぞみは人生で幸福が続いたであろう事が想像できる。だからこそ、のぞみにはプリキュアとしてのピュアな心を保ってほしいのだろう…。



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