外伝その291『プリキュア・プロジェクト4』


――扶桑を強引に変革させつつある日本だが、軍隊へ強引に厳格な文民統制(日本式の文官優位)を適応させようとしたが、それがもとで扶桑の内乱は引き起こされる。また、史実と異なり、イギリス式の統制ながら、皇室が明確に軍隊の最高指揮権を持つ戦国時代の名残りが残っていたからだ。問題にされたのは、皇室から指揮権を取り上げ、数年でコロコロ代わる内閣総理大臣に指揮権を与えようとした事だ。日本は2.26と5・15事件の教訓で、内乱へは銃殺も含めた厳罰で臨むつもりなので、黒江はダイ・アナザー・デイ当時から、ウィッチの新規志願が落ち込む事を見込んでいた。数回の転生のいずれも、日本が戦前期に存在していた軍閥を解体せんとして、人員削減を強引に進めたことで起こったので、今回は武子と竹井(海藤みなみ)が裏工作を進めているが、大した成果は出ないだろうと見込んでいた。坂本も、『日本の政策は一方的な見方からのものだ。我々を内心で見下してるからこそのものだよ』と言っている通り、日本側が内心で自分たちを見下しているのが見え見えだからだった。黒江は日本側による扶桑軍人事への介入を避けるため、内乱の早期鎮圧を狙いつつ、それで起こる新規志願数の落ち込みに対応するため、プリキュア・プロジェクトを開始した。それはいくつかのアクシデントを挟みつつも成功を収め、黒江は自分の後輩がプリキュアの転生体であったという幸運にも恵まれた。その転生が偶々に『プリキュア5』のリーダーであった夢原のぞみであったため、黒江は中島錦を素体に転生したのぞみの育成を開始。のぞみ自身の研鑽もあり、草薙流古武術の習得に至った。そこから更に鍛え上げるため、黒江は特訓を開始した。ゲッターエネルギーの制御法、光子力の制御法なども仕込んでいき、基礎能力と胆力向上のため、映像で言及されたような特訓をル・マン24時間レースまでの期間に課していく。圭子も加担したので、特訓は苛烈を極めた。だが、本人のバダンへの復讐心、義憤などもあり、それらは滞りなく行われた。真冬の滝に打たれたり、ジープの全速力で追っかけ回される、視覚を遮断しての生活などをフランスへやってきたはーちゃん(ことは)と共に課された。短時間だが、濃密な特訓(仮面ライダー流の特訓。なのはが知れば、いい顔はしないだろうが、そもそも、成果を求めるティアナと、基礎を固めるなのはの育成方針に大きな行き違いがあったことが転生前のティアナとの『事件』の原因であるためと、即興の特訓で仮面ライダーが強くなった実例から、転生後は教育方針を変えたが、立花響の一軒のミスで、当人も技の教授は出来ても、精神的育成には向かないと自覚した)で24時間レースの四日前までにはセブンセンシズを完全にものにし、はーちゃんもエイトセンシズへ覚醒した。また、短時間でも、濃密な『ドワォ』特訓を受けたためか、温厚なはーちゃんでも、変身時の口調が若干であるが、荒っぽくなっている。のぞみは素体である錦に口調の傾向が寄るなどの影響を受けた。

――24時間レースの4日前――

「二人共、ご苦労さん」

「こ、殺す気ですか!?」

特訓でかなりひどい目になったはーちゃんとのぞみ。かなりボロボロになっていた。のび太も一枚噛んでの特訓で力はついたが、風邪は引くわ、ジープに追っかけ回される、怪我はしまくるなどの苦痛もそれ相応に味わった。だが、苦労の甲斐あって、セブンセンシズの完全制御に成功した面は大きい。のぞみは錦との人格融合を選んだ影響か、悪態をつく時に『ニャロウ』、また、不自然なく錦の口調を出すためか、黒江と同様に『俺』という一人称を混ぜるようにしている。黒江からは爆笑の対象だが、当人としては苦労しているのだ。また、はーちゃんもドワォ特訓のおかげか、ことはの姿では従来とほぼ変化はないが、変身時の口調は大きく変わり、ガイアのスーパーロボット乗り『由木翼』を想起させるものへ変化している。それに共鳴したかは不明だが、この頃、ガイアでは、マジンカイザーの情報が伝わってから、誰かが模倣品ともいうべきマジンガーを作っており、アースでの正規のマジンガーではない異端児の魔神が生まれていた。現地の技術では、光子力反応炉はコピー出来たが、ジャパニウムが存在しないガイアでは、装甲は劣化コピーにならざるを得なかった。そのマジンガーは『神が慄き、悪魔も怯える』という冠句がついたが、ガイアの地球連邦防衛軍の管理下では無かった事もあり、アースが調査する必要に追われている。ただし、アースの光子力研究所に酷似した場所で完成したらしいのは確かだ。既に廃墟同然になっていたので、真偽は不明だが、兜十蔵の同位体が作っていた可能性はある。何故、供与された情報から、ZとGではなく、皇帝を基本ベースに選んだのかはわからないが、もっとも強いからだろう。はーちゃんの変化はマジンカイザーSkLとも言うべきマジンガーの完成と不思議なほどに同期していた。黒江も気づいてないが、はーちゃんの口調の変化の訪れは、マジンカイザーSKLの覚醒と同期している。

「そいや、はーちゃん。肉体年齢に精神が追いついたのか、意外にドワォ要素増えたな?もしかして…」

「なんか思い当たる節があるんスか、先輩」

「お、いい感じに錦の口調出せてるぞ。つか、まるで某ジャンプ漫画の忍者の子供みたいだぞ」

「先輩、りんちゃんがやめてくれって言ってたでしょうが、それ」

「お前ら、ものまねで食っていけるくらい似てるしな、声。某NAR○TOの親子に」

のぞみはこの時から少しづつ、錦との人格統合が進み、のぞみの一途さと錦のボクっ娘要素が同居していく事になる。映像で確認しなかったが、シャイニングドリームから錦の姿になる事も可能となっている。このように、転生者でも、生前からキャラの変化を選ぶケースも出始めた。リーネが美遊になったのが、一番に極端なケースなので、のぞみの変化、基本がそれほど違わないイリヤとサーニャは些細なレベルに入る。リーネの極端な変化の理由が同性愛に近いレベルの『愛』であるのは、ガランドの意向で家族には伏せられている。1940年代当時、同性愛は日本連邦では容認されてはいても、欧州では悍ましく見られる事があり、家族とのトラブルが懸念されたからだ。しかし、娘の消息が『特別任務中』との一点張りであった事が、元・空軍大尉のミニー・ビショップの琴線に触れ、ガランドは義理の孫にあたるスバル・ナカジマのの入れ知恵で、菓子折りを持っていく羽目になったのだ。ミニーはブリタニアの英雄で、軍人として、大尉まで栄達していて、素人ではない。ガランドのうっかりはこれだった。

「あ、スバルからだ。何々、『いそいで、ばーちゃんのタブレットにリーネの写真を送ってくれ』?ケイから転送してもらったファイルにあったような…。あった、これだ」

「スバルからなんて?」

「うん。察するに、閣下、美遊…いやリーネのおふくろさんに相当やられてるな。特別任務中と言って照会をしない方法に、おふくろさんが業を煮やしたらしいんだ」

「確か、リーネのお母さん、英雄じゃ?」

「ブリタニアのな。レッドバロンと同世代だから、いくら閣下でも圧されるよ。ブリタニア空軍の高官を向かわせよう。閣下が半殺しに遭いそうだ」

黒江はロンメルに連絡を取り、更にそこからの伝言ゲームでアイゼンハワーとモンティが事の次第を知り、ブリタニア空軍の高官と海軍提督がガランドの救援に向かう事になった。ウィッチの世界は年功序列が意外に強いため、いくらガランドでも、レッドバロン世代には頭があがらない。それは上層部も認識していたので、ビショップ家へブリタニア空軍と海軍の高官が急いで向かう事になったのだ。海軍の高官はなんと、当時の海軍卿のアンドルー・カニンガム提督であった。リーネの任務に説得力を持たすため、海軍の制服組トップが赴いたのだ。なんとも無駄に豪華な布陣だが、如何に彼らとて、変貌までは説明は不可能なので、極秘任務中であると、彼らの証言が必要だったのだ。ガランドも若松の護衛つきで援軍に駆けつけた高官達に安堵し、なんとか半殺しは避けられたというが、激昂したミニーに首を締められたと愚痴ったとか。黒江が送った、ガランドの救いとなる写真は、当時の最新鋭ストライカー『シーフューリー』を履き、戦うリーネの姿であった。模擬戦闘訓練中の一枚だが、当時に配備開始間もない新鋭機を訓練に供する考えがミニーの現役時代には無かった事、当時の最新技術であったカラー写真であった事がガランドの救いだった。お馴染みのスピットファイア系統でないのは、キングスユニオンの機体整備方針のせいでもあったが、ミーナが補給科への要請の折、スパイトフルを回避し、堅実なシーフューリーを選んだからである。まほの因子の覚醒後は稼働率の維持を気にするようになりつつ、火力重視の傾向が出たため、MG151/20を使うようになっているが、その影響だ。黒江達がレシプロでキ100を使っているのもそうだが、芳佳は魔力値の都合で『吊るし』が使えないので、吾郎技師チューンの烈風に乗り換えている。

「やれやれ。模擬戦の時の写真があってよかった。ほい、送信っと…」

「いつの写真です?」

「行く前、模擬戦したろ?その時のだ。シーフューリー使ってたから、そのデータをもらってたんだ。芳佳の烈風は不評だけど」

「ああ、震電じゃないから、ですか?」

「横空の連中が出さない上に燃やしちまうんだよな、あれ」

「タイムトリモチで救出できませんか?」

「お!それだ、それ!燃やされる前に救出して、ガワだけでも吾郎にプレゼントできるかも」

「確か、ドラえもんくんに見せてもらったんですけど、燃やされる直前はマ43特と機体は別々に管理されてたはず。マ43特は無理でも、ガワだけでも」

黒江はコロンブスの卵的なのぞみのアイデアを即座に実行。その日の夜、はーちゃん、のぞみと共に『震電のガワ救出』を実行。釣りが得意だった黒江のテクニックにより、震電の機体の救出を成功させる。ダミーを置いて。吾郎技師へ現物が日本連邦軍の定期便で送られ、それを元にジェット化の検討が始められた。極秘に。実機の遅れは作り直しに近いので、レシプロ震電があろうとも、どうにもならないが、ストライカーなら変更がまだ効く。当時、橘花に用いられた耐熱合金では魔導オグメンダー(アフターバーナー)の熱に耐えられないが、1946年に完成するはずの新型なら耐えられる。耐熱合金の進歩、魔導ターボジェットエンジンの進歩(燃費性能改善)が第二世代理論の実現には必須だったが、その耐熱合金が研究中では、いくらメタ情報があろうとも無理だ。吾郎技師曰く、『しばらくは烈風の改造で持たせ、翼嬢たちの持ち込んだ機体を時たま使うように』とのこと。


――夜遅く――

「ふう。これが震電か。芳佳級の魔力でないと起動しないって、実用製品的には欠陥だよな」

「ガワ、初めて見ました。後退翼ですね」

「エンジンと別管理で軽かったのが幸いしたな。マ43特は重いっていうし」

「これ、どうやってジェットに?」

「翼がダブルデルタになって、足にあたる尾翼らしいところがノズルに変わったはずだ」

前史では、ダブルデルタ翼を持つジェットストライカーとして改造された震電だが、吾郎技師は『ダブルデルタ翼を前進翼に変更したい』と述べている。要撃機としては成功したが、肝心の機動性が旭光とどっこいレベルだったのが不満だったらしい。その彼が兼ねてから羨望を抱いていたのが。VF-19シリーズである。前進翼による驚異的機動力を売りにする同機に憧れたらしい。それを聞きつけた芳佳が黒江のツテで新星インダストリー社のヤン・ノイマン博士に伝えたところ、彼はこういった。『ダブルテーパードウイングが時代的に適当だよ』と。ヤンは1940年代の製造技術では前進翼は手に負えないとし、奇抜なアイデアで名を馳せている彼にしては堅実な案を与えた。ヤンはこうして、イサムのツテで扶桑に招かれ、震電改二に携わる事になった。黒江が休暇を取っている頃には、南洋島の建設中のジオフロント工廠で21世紀の航空メーカーのエンジニア、扶桑のエンジニア、ブリタニアのエンジニア、自由リベリオンのエンジニアとディスカッションの真っ最中であったりする。

「みゆきちゃんからのメールが来たんですけど、彼、前進翼に変えるつもりですって」

「無理だろ。製造技術が追いついてない。ヤン博士が言ってたが、ダブルテーパー翼にしたほうがいいって」

「そういうもんですかね」

「ああ。彼にメモ書いてもらったけど、こういうのだ。強度が無い材料で前進翼はかえって危険度ばかり増して重くなるだけの愚かな選択さ。ダブルテーパードウイングの内翼をデルタに近いテーパー翼、外翼を前縁を2%程の僅かな前進にして後縁を大きく前進させる形でも十分に前進翼的効果は得られるよ。まぁ、空気抵抗は大きくなるから層流翼のなるべく厚みが後ろに来る設計にするのがいいんじゃないかな?だって」

「ライトスタッフみたいな展開だなぁ」

「航空開発はそういうもんさ。自衛隊でその方面の部隊にいたが、メーカーの内部の議論はこういう航空力学が絡むもんだ」

「彼、まだ若いでしょ。舐められるんじゃ?」

「ま、ウチの年寄りエンジニアからは青二才って言われると思うけど、日本の若手からは神様だと思うぞ。バサラやイサムさんのバルキリーの設計主務だし」

「31は絡んでます?」

「いや、聞いてないな。ただ、前進翼自体はカットラスの時に実効性がわかってるから、あれのチームが参考にしたのは間違いないだろ。アースフリートお気に入りだぞ、あれ」

19をアースフリートのお気に入りというように、アースフリートが好む機種であり、30世紀のGヤマトに搭載されているコスモタイガーとゼロの末裔『コスモシンデン』(その外見はゼロとタイガーの間の子かつ前進翼で、機首周りの設計はコスモタイガーに近い)もその血を継いでいる。23世紀時点でのアースフリートは19を好むようになっているが、それ以後の機種が生産数を思うように伸ばせない資源的制約を持つがための政治的選択でもある。一部のトップにワンオフの29は回せるが、量産可能な最新型の31はデザリアム戦前の時点では生産開始間もない新鋭機である。そのため、型落ちし始めの19は吾郎技師のアクセス権で閲覧可能な限界点にあたる。その流麗な姿に魅了されたのも無理はないが、1940年代の加工技術では前進翼の再現は無理である。黒江やヤンの予測通りに事は進み、熱いディスカッションを交わした末に、現地の製造技術の限界を鑑み、ダブルテーパードウイングで妥協されたという。ストライカーのほうが先に完成したのだが、前身角のついた翼端を有したため、一応は吾郎技師の思惑通りにはなったという。また、実機の方は設計が変更され、ドラケンを参考にしつつ、F-16XL寄りの外見で完成し、F-4用ターボジェットエンジンを積んだことで搭載量が倍増。第一世代ジェット戦闘爆撃機の嚆矢になったという。また、当時に扶桑で製造可能な最強のエンジンを積んだことによる副次効果であった。しかし、量産型はキングスユニオンの要請もあり、アドーアエンジンを積むことになった。しかし、F-1開発当時のロールスロイスのアフターサービスが悪かったため、背広組はこれに反発したが、ウィンストン・チャーチル自ら、『わがブリタニアが責任を持ってアフターサービスをする』と発言したことで採用された。多分に政治的やり取りが関わったが、日本では『アドーアの悲劇』と言って、巷にもアフターサービスの悪さが知られており、ブリタニアの同社がイメージ払拭に動くほどのものであり、ブリタニアの政治的要請があった事がわかる。ブリタニアとしても、日本からのメタ情報で自国製品が売れなくなる事は大問題であり、震電の改良に関わることで、その悪評がコモンウェルスに広がるのを阻止するためでもあった。これにはフランスも一枚噛んでおり、干渉に近かったが、フランスとしてもガリアに援助することは財政難で難しいため、こうした方法での影響力行使を狙ったのだ。


「うーん。量産型はアドーアかもな。部下からメールが来たが、さっそくキングスユニオンとフランスが絡んできたらしい。アドーアは日本に不評買ってるから、どう説得させるんだ?チャーチルのおっちゃんにロールスロイスを叱ってもらうのかね」

「あいつら、アフターサービスをきちんとしないと、日本人のハートを掴めないって分かってるのかねぇ。あれこれ込みで売り込まないと、日本人は政治家が買ってくれないってのに」

「それに、F-1の一軒で不信感抱いてる背広組も多いんだぞ、ロールスロイスに。いくらアメリカのせいとは言え、メーカー側を小一時間罵りかねん」

「イギリスが作った最終型、日本の技術で改良した末の産物って評もありますしね。ロールスロイスとしちゃ『未来のことで俺達を責めないで!』だろうけど…」

黒江とのぞみの懸念とは裏腹に、ウィンストン・チャーチル自らの指揮による『アドーアNG(ニュージェネレーション)計画』が開始され、チャーチルの豪腕が現地ロールスロイスにアフターサービスの保証を出させた事、キングス・ユニオン名義での『慰謝料』が出た事で日本も折れたという。(日本には『今度こそ国産を…』の声があったため、キングス・ユニオンの介入に不満を持つ層も多いが、自国製ジェット戦闘機がある時点で途絶えるとされたキングス・ユニオンとしても、取引先を得たい思惑があった。実際、カールスラントは軍縮と同時に、航空技師の離散が始まり、軍需産業が衰退し始めたため、キングス・ユニオンは技師の雇用維持も兼ねてのライセンス契約に活路を開こうとした。)

「たぶん、ドイツの強引な軍縮でカールスラント空軍が傾くのに顔面蒼白になったモンティが進言したんだろう。今の調子で軍縮すれば、五年でドイツ機は連合軍から消え失せるしな」

「つまり、今までカールスラントが担ってた屋台骨の役目をウチに?」

「ブリタニアも財政難だ。と、なると、俺達が連合空軍の屋台骨にならないといけなくなる。ドイツっていうシロアリがカールスラントって柱を腐らしたしな」

「ドイツが聞いたら、顔を真赤にしてヒスりますよ?」

「事実だ。何が非ナチ化だ。ビスマルク帝国が生きてることを知った途端に手のひら返しし始めるシロアリ連中だぞ。カールスラント軍がいないと戦線がパニックだ。センチュリオンはまだ、一部の機甲部隊にしか行き渡ってないんだぞ」

「奴さんご自慢のレーヴェ戦車は?」

「エンジンで行き詰まったらしい。どうせなら航空機用エンジンをそのまま載せちまえよ。チリは水冷エンジンを載せてたし」

「ドイツの干渉で、レオパルト2が渡されるらしいですからねぇ。あれのエンジンなら、レーヴェくらいなら60は行けるんじゃ」

「前線のインフラをウチらが整備しないと、欧州製MBTは重くて通んないぜ?地球連邦軍と日本製は軽めだから良かったけど」


「そうなんですよ。フランスはルクレールをガリアに引き渡したいらしいんですけど」

「おいおい。いきなりあれじゃ、ガリア陸軍が泡ふくぞ」

「うちらもストップギャップで61と74なのに、奴さんは対抗心だけで最新MBTなんだから、よっぽど悔しいんだろうか」

フランスの21世紀で存在する戦闘車両でMBTというと、ルクレールである。その前のAMX-30も残存してはいるが、経年劣化と現存数の問題で結局はルクレールが提供される手筈となったが、問題は戦間期型戦車からベトロニクス充実のMBTはいくらなんでも無理なことで、日本連邦でさえも断念した。のぞみのいうこととは裏腹に、戦間期型戦車からベトロニクスのある世代の戦車への飛び級は、MSで例えば、ザクUからαアジールに乗り換えるようなもので、ジオンでさえも現実味がないとしている。日本連邦でも、ルビーを使う照準器が『扶桑の手に余るだろう』と言って、74の生産を試みる扶桑を嘲笑する声があったほどなのだ。(扶桑が照準器の開発に成功したら、腰を抜かす識者が続出したとも)

「青天井の予算で74をコピーしてるウチらが言えたことじゃないが、大和民族は手本があれば、それ以上のモノは作れるからな。コピーの74はオリジナル版を超えてるそうだ」

「え、どのへんが?」

「装甲がオリジナル版より厚いそうだ。戦時型と撃ち合える防御力が必要ってんで、オリジナル版にはない爆発反応装甲も検討されてる」

「第二世代は装甲捨ててますもね」

「まーな。理論が実証される事も無かったから、74のオリジナル版は待ち伏せが主で、騎兵閥の顰蹙買ってるそうな。テケ車とかの連中に」

「馬キチ連中でしょ?テケ車とか九五式の時代から脱却できない」

「そそ。扶桑海ん時に地獄見たの忘れた連中多いなぁ、あのへん」

「一〇式をもっと使いたいが、ティターンズの61を恐れて、背広組が出し惜しんでるんだよな。連邦の最新型の22式(2202年採用見込み)の先行車両でも融通してもらおうかな」

黒江が口に出した22式戦車。戦車の需要が回復したため、ガトランティスから接収した戦車技術と在来の地球製MBTの技術を組み合わせて開発中の久しぶりの次期MBTである。試作車が前戦役から投入されてきた車両で、外見は61式の改良型そのものだ。主砲は180ミリ滑腔砲になる見込みで、支援兵器としても活用予定であるため、あくまで61式の代替目的での車両である。

「ガンヘッドはどうします?のび太くんが統合戦争初期の段階の八丈島にあった工廠から、54台もかっぱらってきましたよ?」

「使わせておけ。いくらなんでも21世紀の陸自にMSは酷だ。ガンヘッドがせいぜいだろ」

「確かに。でも、いろんな時代のが混ざってますね。30世紀のGヤマトがコスモシンデンを持ち込んできたと思ったら、23世紀にマンマシーン時代の飛行技術を提供しちゃうし、F-4がセイバーフィッシュやコスモタイガーと飛んでるし」

「コスモシンデンはコスモ・ゼロとタイガーの末裔だが、前進翼で、操縦感覚違うぞ?アルカディア号のスペース・ウルフと同世代機だそうだ」

30世紀のGヤマトが持ち込んだコスモ・ゼロとコスモタイガーの末裔にあたる『コスモシンデン』。双方のシリーズの統合発展型のような外見で、まほろばに最初に積まれたものをGヤマトが艦内工廠で増産した機体である。アルカディア号のスペース・ウルフと同世代にあたる機体であるが、ゼロの系譜であるため、当代最高の機動力を誇る。コスモシンデンが正式名だが、開発コードはコスモ・ゼロXで、コスモ・ゼロの5代目を意図していた。ところがアースフリートが機体採用を決定した年が、その時代のキリがいい年からズレたため、ゼロ以外のペットネームになったという。運動性能向上に前進翼というのは、30世紀でも不変の法則なのがわかる事例で、黒江は沖田十三の許しを得、試乗していた。その感覚はエクスカリバーとブレイザーバルキリーの中間程度で、23世紀時点のコスモタイガーT(ガイアの競作機ではない)を思わせるもので、意外に初心者向けでない挙動である。栄光のヤマト航空隊の使用機なので、エース向けに調整したのだろうが、23世紀のハイエンド機と大差はない操縦感覚である

「23世紀と、そこから700年も進んだ時代のがどうして同じなんですか」

「全部の基本が23世紀で完成されて、後の時代の進歩は『23世紀のハイエンド機のスペックをどうやって、一般兵のローエンド機に与えるか』なんだろう」

「えーと、つまり?」

「ガンダムで言えば、ガンダムmk-Uのスペックをジムに与えようとしたら、ジェガンまでかかったのと一緒だ。百式でもいいか?ジェガンも今じゃ型落ちだが、百式より強いのが最新型だった頃の売りだそうだし」

「量産型ってなんで、性能が妥協されるんですかね?」

「フレデリカが?マークだが、人型機動兵器の時代だと、ガンダムにしろ、マジンガーやゲッターロボにしろ、そのまま量産すると、金がかかるだろ?グレートの量産型が結局、弓博士の提言で、ジムっぽいのにダウングレードされる事になったし」

最終的にトライアルで生き残った量産型マジンガーこと、イチナナ式は黒江や智子に不評で、『ジムみたいな凸な顔しやがって!』とフェイスデザインで不況を買っている。これはグレートの量産でマジンカイザーが魔モードで起動することを懸念した弓弦之助博士の下した決定で、政治家転向前の最後の決定だった。黒江達には不評なイチナナ式、35万馬力と非力であるが、一応は光子力兵器の運用に支障はなく、ビューナス程度の能力ではある。実用上は充分な性能と見なされているので、マジンカイザーやマジンエンペラーGの超パワーは軍事的には過剰性能と見なされている証である。しかし、そのパワーは一種のシンボリックな意味合いが含まれているため、軍事的に量産型グレートは過剰であったのだ。(ブラックグレートで130万馬力で、オリジナルのゲッターポセイドン以上のパワーを持つ)

「あれ、なんかジムみたいでカッコ悪いですよー」

「おう。ジムの凸顔だって弓博士に言ったら『量産化に最適なフェイスデザインはあの顔なのだ』って返されたけど、頼りないよなあ」

マジンガー系の擬人化されたツインアイのフェイスデザインを見慣れた黒江、アニメという形で、ジムを知るのぞみには、イチナナ式のフェイスデザインは不評だが、バイザー式フェイスは地球連邦の量産型ロボとしての普遍的なデザインである。黒江は頼りないと言うが、ジェガン系やジム・カスタム系、ジム・コマンド系列のように『イケメン』も多いのだが。それに、連邦の新し目の量産型のジャベリンとジェイブスはバイザーの中にツインアイがあるのだが…。

「ヒーローロボはツインアイでナンボと思うが、ジオニック出身者はモノアイ好きだしなー」

「先輩〜、リック・ディアスとか嫌いでしょ」

「あれはコロニー守備隊に太っちょおじさんってあだ名つけられてるんだよ。おりゃ、Zプラスとかのほうが好みだ」

「先輩、世の中にはまだ、古いネモ使ってる部隊多いって言うし、Z乗りなのをひけらかすと、陸軍と殴りあいですよ」

Z乗りは宇宙と空中では羨望の的だが、エリートの証であるので、宇宙軍の型落ち品が回される傾向が未だにある陸軍に目の敵にされることも多い。ジェガンすら地上軍には数がないため、グリプス戦役前半時の高級機のリック・ディアスもあまりなく、ネモを使う部隊も多い。そのため、空中を翔けるZ系列のパイロットは嫉妬を買いやすく、黒江もアムロに注意事項という形で教えられている。

「アムロさんに教えてもらったけど、宇宙大航海時代に陸軍の存在意義はあまりねぇからなー。陸戦型ジムを持ち出されるよりはマシだけど」

「部隊によっちゃ、陸戦型ガンダムが予備機扱いで保管されてるとか?」

「博物館に出せよ、もったいない」

一年戦争の後、地上軍は宇宙軍とフィールドが被る空軍以外はおざなりにされている事がわかる会話だが、ジム・ストライカーなどの機体も予備機扱いでまだ保管されているあたり、陸軍の困窮と、潤沢な予算と最先端技術を使う宇宙軍(実質的な海軍)との対立が見え見えである。黒江達はその中でも一番に優遇措置を受ける部隊の隊員なので、幹部であるアムロやブライトは喧嘩を起こすことに戦々恐々で、ロンド・ベルが愚連隊扱いな理由である。ロンド・ベルは地球連邦軍一の血の気の多さで鳴らしているのもあり、政府高官のハト派の左派に『愚連隊』扱いだ。黒江はそれを担う一人であるため、ブライト・ノアの胃痛の原因の一つである(階級が高い割に、やんちゃ盛りであるため)。比較的にパイロットで年齢が高い神隼人や剣鉄也が手綱を握っているので、彼らは意外に軍内で高い地位にある。剣鉄也で大佐、神隼人でこの時点で准将である。それに伴い、ブライトは中将である。元々、連邦から離反していたエゥーゴ/カラバを出自に持つ部隊のロンド・ベルは優遇措置に伴う血の献身を求められる。ただし、度重なる戦争の影響で、機材の優遇措置が認められたのもあり、Z系やRX系、スーパーロボットのたまり場である。ネオ・ジオンの右派に目の敵にされるのも無理からぬ陣容だ。そのシンボリックなガンダムがRX-93系とされている事で、後に、ネオ・ジオンの穏健派がサイコフレーム規制の交渉で苦難を強いられることになるのも事実だ。(νガンダム系統の配備の是非に踏み込むため、デザリアム戦が間近の連邦はネオ・ジオン穏健派に強硬姿勢であり、首魁のミネバ・ザビは『私達が言っているのはユニコーンであり、νガンダムではないのです』といい、本来の趣旨の説明に苦慮したとも。サイコフレーム研究に規制をかけるにしろ、完成済みのマシンは脅威への対抗で用いたい連邦と、ナイチンゲールの事もあり、そうこられると弱いネオ・ジオンの弱みが出てしまっていた)

黒江達がホテルで会話を楽しむ裏で、23世紀では、強硬派のネオ・ジオング建造の阻止のために『合法的にサイコフレームを規制したい穏健派』のネオ・ジオン、地球連邦の『サザビーやヤクト・ドーガ持ってんやん、お前ら!俺達がνガンダム持っていいじゃん!』な対立がロンデニオンコロニーの一角で繰り広げられている。結局、一回目の交渉は物別れに終わったが、暴走の抑止のための基礎研究の継続は技術維持のために容認され、地球連邦軍のνガンダム(Hi-ν含む)、ネオ・ジオンのナイチンゲールは保有を容認された。また、アムロ・レイがテスト中のHi-νガンダムも自動的に容認される見通しである。ネオ・ジオンはネオ・ジオングの阻止のため、あらゆる手を尽くすが、意外な盲点があり、ある人物の手で、ネオ・ジオングはもう50%の建造率であった。その人物とは?その野望を止められるゲッターロボが新早乙女研究所の地獄の釜と呼ばれる、元地下増幅炉付近の底で目覚め始める。宿命とも言うべき使命のために。鼓動を刻みながら、ゲッター核分裂で変化し、目覚め始めたそのゲッターロボ。その名も真の龍。龍の名を持つゲッターロボ…その復活は近い――。



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